断腸亭日常日記 2018年 6月

--バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  --バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年、2016年、2017年、2018年のスペイン滞在日記です。
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 6月8日(金) 曇 12712

 無事日本に戻った。成田に着いたら暑かった。マドリードの夜の気温が12度くらいだったが、到着した成田は25度。もう夏に近い。例年ならマドリードの方が気温が高いのが、今年はそれが逆転している。セビージャも涼しかった。セビージャで闘牛を観た後、THさんが車に戻ってサンダルから靴に替えたくらい寒かった。4月で35度ある時もあるセビージャ。雨が降って涼しいですと、下山さんが言っていたが、本当に涼しかった。それから6月になっても、マドリードは雨が降って冬の様に寒かった。特に、6月4・5日は風を引きそうな寒さだった。そんなマドリードから日本に帰ってきて、暑いと思ってしまうのは当然だ。

 到着後タバコを吸って、スーツケースの配送を頼み、空港をぶらついた。到着前に飛行機で朝食が出たのでお腹は空いていない。店には入らなかったが覗いてみたかった。それから家に帰ってきた。最寄りの駅のスーパーで買い物をして、部屋で昼食を取った。録画していた『ブラタモリ』天城越えを観る。海底から隆起した火山の上に、出来た火山。天城山。その周りには溶岩が固まった柱状節理。そこから湧き出る湧き水を使ってワサビ田が作られた。江戸時代に握り寿司が流行って出来たのだという。『ブラタモリ』を観ていると日本に帰って来たんだと思う。

 10年前、秋葉原で自動車で歩行者の列に突っ込みナイフを振り回して7人が死亡した通り魔事件があったとニュースでやっていた。ほぼ毎日ラス・ベンタス闘牛場に、ソルテロと、闘牛を観に通ったスペインの生活と、日本の生活は違う。そういう物を感じながら東京で過ごす。台風も来ていて月曜日には関東に接近するという。夕方、買い物に出掛けたが、曇り空が雨が降ってきそうな感じになってきた。それでも気温はマドリードよりも高く暖かい。

 6月9日(土) 雨/曇 10593

 昨日のサン・イシドロは、ペペ・モラルがアドルフォ・マルティン牧場の牛で耳を切った。エル・シドがコヒーダされて、早々に医務室へ行ったために、形としては、アンヘル・サンチェスとのマノ・ア・マノになった。アンヘルはコンフィルマシオン。ダイジェスト動画を観たが、闘牛場で観るのとはだいぶ違う。良く判らない。

 大谷翔平は、10日間の故障者リスト(DL)入りした。右ひじ靱帯損傷で、今後3週間は投げさせないと、エンプラ―GMが語った。7日登板後「マメができて降板し、アドレナリンが収まったらヒジが張ってきたと大谷が言ってきた」という。患部の損傷レベルは「グレード2」で完全断裂を意味する「グレード3」ではないというが、ひじの治療を受けながら指名打者としての出場させるつもりはないという。3週間後の再検査で治療方針が決まるという。当然の様に、オールスター戦の出場はなくなった。日本に帰って来て、楽しみにしていた大谷翔平。これもまた勝負の世界につきもの。ソーシア監督は、レギュラーや先発投手が次々にDL入りしている現状でも、最良の事を考えて試合をしている。超現実主義で、シーズンを戦っている。こういう監督やGMがいるチームに大谷がいることは非常に幸運なことだ。とても残念なニュースだが、仕方ないこと。順調な時こそ、気を付けなければならない事がある。大事に至らないことを祈るのみ。


 6月10日(日) 雨 6165

 サミットが終わり、米朝首脳会談が行われようとしている。昨日、新幹線で殺傷事件が起きた。22歳の犯人は、「誰でもよかった」と言ったという。30代の男性が首を切られて病院で死亡した。むしゃくしゃしたのが理由だという。訳が分からない。逮捕後も顔を隠すこともない映像がニュースで流れた。

 NHKBSで、ヴィクトワールピサが勝ったドバイワールドカップの物語を、『True Story 本当にあった物語「涙のワンツーフィニッシュ」』として放送された。東日本大震災から2週間後のレースだった。競馬を始めJリーグやプロ野球のオープン戦など中止の中で、日本競馬から3頭の馬が挑戦した。各陣営は、1つになりどの馬が勝っても良いと、胸と腕に、「HOPE」と書かれた字をTシャツ刻んだ。それはまだ、被災地で避難所や、多くの死者・行方不明の人たちや、日本人に少しでも、希望が持てるように頑張ろうという思いからだったという。

 レースは、日本馬トランゼントがスローペースで逃げ、最後方から行った、ヴィクトワールピサのミルコ・デムーロ騎手が中盤で好位に取り付き、最後の直線は、トランゼントとヴィクトワールピサの2頭の日本馬の叩き合いになった。外国馬も迫ってきたが、日本馬のワンツーフィニッシュだった。2着になったトランゼントの藤田伸二騎手は、日本馬がワンツーで良かったと語り、優勝したヴィクトワールピサのミルコ・デムーロ騎手は、泣きながらインタビューに応えた。「けさ、日本人の為に祈ってました。ドバイワールドカップを勝てるなんて、信じられません。ありがとう。家族のみんな、ありがとう。私は日本を愛しています。」

 当時、ミルコ・デムーロがどんな気持ちで騎乗したのかが、判るコメントだ。この優勝のニュースを知った時、希望が見えた気がした。ミルコ・デムーロが本当の意味で、日本人に愛された瞬間だったのかもしれない。ミルコは当時イタリア所属の騎手だった。これが切欠になったのかJRA騎手免許試験を受験して合格し、今はJRA所属騎手として騎乗している。そんな放送があったせいか、今日ミルコは、6勝をあげた。こういう日は、ミルコに乗るしかないだろう。


 6月11日(月) 雨 11345

 昨日の昼から降り続いている雨は、台風の影響でまだ降っている。遠いので風は強くない。雨も強く降っている訳ではない。

 「京都。なんと蠱惑的(こわくてき)な響きをもつ名か。我々を引き付けてやまないこの街の魔法の源泉は何か。それは人である。京都の街はそこで生きる人間に、美しく生きよ、という無言の呪縛をかけている。この美しい人も、京都の街に忠誠を誓った人間の一人だ。私にとって京都人ほど興味深い研究対象はない。中でも、頭の先からつま先まで京都人であるこの人は、最高のサンプルだ。京都は、美しい。しかし、京都人は、わからない。」(京都人の密かな愉しみ)

 紅葉の映像の後、着物を着た常盤貴子の映像が映り、団時朗の上記のナレーションの声が流れる。もうそれだけで、物語の中に引き込まれるようだ。

 しかし、美しいとは、なんだろう?サン・イシドロの時、THさんと闘牛の話をしていた。闘牛士のファエナを美しいという事を言っていた。クーロ・ディアスだったと思う。それは分かるんだけど、闘牛士をそういう風に観たことがないのだ。僕の中には、闘牛に美しいという概念がないと、言った。闘牛を観ている時は、感動があるか、無いか。そういう事を観ている気がする。美しいと言えば、ポンセは美しいだろうが、何も感じない。そんなものどうでも良いと思っている。というか、THさんから言われて気付いたのだが、どうでも良いと思っているようなのだ。

 そういうのっておかしいだろうか?下山さんは闘牛を美しいと思って観ているのだろうか?というか、闘牛に美しさを求めているのだろうか?美しさとは、形や動きの事だろうか?そういう疑問を持つのだ。しかし、そういう物にすら、美しさを求めていないような気がするのだ。違う物を観ているのだ。

 例えば、歌でもそうだ。美しい声という物にあまり興味がない。マドリードの同居人Y君と、YouTubeで歌を聴きながら酒を飲む事が良くあるが、「斎藤さんって、だみ声が好きだよね」と言われる。ボブ・ディラン、トム・ウェイツ、森進一、サッチモなど。良い声よりも、印象に残る声を聴いた方がグッと来るのだ。そりぁ、MISIAの『逢いたくていま』はドラマ『JIN-仁』の中で流れた歌で、とても好きだし良い声だ。でも、良い声の歌手が、色々な歌を歌う中で、そういうイメージじゃなくなるとがっくりする。むしろだみ声の歌手の歌を聴いていると、響いてくる。たぶん、良い声に壊れやすさを感じるのだと思う。

 ディランはだみ声で、しかも裏声。忌野清志郎も裏声で歌っている。そういう屈折したものの方が好きなようだ。ただ美しいという物は響かない。感動を感じない。美しいものには何か違和感を感じるのだ。闘牛には、美しさではなく、その闘牛士の人生を観たいと思う。その人生がみえると感動する。たとえそれが良いファエナでなくても。セラフィン・マリンがサン・イシドロに初めて登場した時、カポーテで右側を牛を通そうとして振ったが、牛は左側を通った。危なくコヒーダされそうになったが、カポーテを上手く振って左側を通した。それでいて平気な顔をしていた。ファエナも一つも良いパセがなかった。危ない牛で、良いパセを引き出せるような牛ではなかったのだ。それでも逃げることなく真面目に丁寧にファエナを続けた。観客は静かにそれを観ていた。素晴らしい剣が決まると、一斉に白いハンカチを出した。そして、耳が出た。「オーレ」の声が一度もなることがなくても耳が出た。何故ならそこに感動があったからだ。剣が決まった瞬間、観客は耳の価値があるファエナだと気付いたのだ。

 セラフィンの一場面、一場面を切り取って、あそこはこういう風に美しかったという事は言えるだろう。だが、そうではなく、彼の技術と共に、覚悟がみえた処が感動を呼び覚ましたのだと思うのだ。つまり、人生がみえたから感動したのだ。下山さんと話していた時に、「心」という言葉には、宗教的な感じがすると言った。宗教的な言葉や、哲学的な事がを嫌う人がいるので、僕は、そういう言葉で何かを語りたくないと言った。具体的な言葉で、闘牛を語りたいと言った。THさんの言葉や下山さんの言葉はその人の言葉で、それはその人が周りの人と語る時は非常に有効だと思う。だから二人の批判をしているのではないのだ。誤解があっては困る。僕は、抽象的な言葉ではなく、出来るだけ具体的な言葉で語りたいと思っている。その中心にあるのが、人生がみえる闘牛だと思っている。

 セサル・リンコンの闘牛。ホセ・トマスの闘牛。ホセリートの闘牛。闘牛に出会った時に、それを感じたのだ。この三つの人生に出会ったのは、闘牛における偉大な財産だ。この無言のファエナの中から、言葉を紡ぎたいと思うのだ。


 6月12日(火) 曇 10498

 米朝首脳会談が行われ、朝鮮半島の完全非核化に合意したという。合意文書に署名した。トランプ大統領は、「我々が署名する文書は非常に重要で包括的な文書だ。大変すばらしい時間を過ごし、いい関係を築くことができた」「非核化のプロセスは迅速にはじまる。我々が署名している文書は非常に包括的なものだ。結果については満足できると思う」「またお目にかかりましょう。きょうのことを誇りに思う」と話し「米国と北朝鮮の関係は全く違うものになると思う。過去と全く違う状況が展開するだろう」

 金委員長は「歴史的なこの出会いによって、過去をしまい、新たな出発を知らせる歴史的な文書に署名することになる。世界はおそらく重大な変化を見ることだろう。この場を持つために努力してくださったトランプ大統領に謝意を表します」と言った。トランプ大統領は、ホワイトハウスに招待する意向を明らかにした。

 「 ガロの『学生街の喫茶店』を歌ったあと。 草太 良い歌だね。 仙吉 うん。草太が生まれた1972年に流行っとった歌やぁ。生まれたばっかりの草太を抱っこしてレコード屋に買いに行った。お爺ちゃん年甲斐もなく、フォークソングが好きなんや。 草太 ねぇ爺ちゃん。爺ちゃんが僕くらいの時の、青春の歌、歌ってよ、聴きたい。 仙吉 うーん、お爺ちゃんの青春時代の歌は、ろくなもんなかった。あんまり好きやなかった。軍歌とか。

 お婆ちゃん(廉子)のナレーション そう。あれはまだ草太が小学生の時、学校の宿題で、身内に戦争の体験を聞いてくるというのが出た時に、仙吉さんは言いました。 仙吉 ごめんな草太。戦争の話をしたない。お爺ちゃんは、草太の頭の中で、幸せなお爺ちゃんでいたい。戦争の事は、いろんな本や体験談が出とるやろ。それ読んでくれ。 草太 黙ってうなずく。 ナレーション 仙吉さんは、戦争で満州へ行き、終戦後なんとか生きて日本に帰り着き、そして、私とお見合いして結婚しました。逆にあの時、何も語らなかったお爺ちゃんに、草太はお爺ちゃんの戦争の深い傷と濃い闇を感じていました。

 仙吉 草太。サザン歌おうか? 草太 サザンの何? 仙吉 ♪涙があふれる 悲しい季節は 誰かに抱かれた夢をみる 泣きたい気持ちは言葉に出来ない 今夜も冷たい雨が降る 遠く離れても 黄昏時は 熱い面影が胸に迫る 四六時中も好きと言って 夢の中へ連れて行って 忘れられない Heart & Soul 声にならない 砂に書いた名前消して 波はどこへ帰るのか 通り過ぎ行く Love & Roll 愛をそのままに♪ こんな歌がお爺ちゃんの青春時代にあったらよかった。そしたら爺ちゃん、廉子さんに、お婆ちゃんに歌ってやった。 ♪こんな夜は涙見せずに また逢えると言って欲しい♪」(半分、青い。)

 戦争の話をしたくないと孫に言い、一緒にサザンの歌を歌う。こんな風に朝ドラの中で話がすすむなんて、ちょっと良いなぁと思った。


 6月13日(水) 曇/晴 10174

 夕方前に、新宿へ行った。用事を済ませていた時に、ある話が耳に入ってきた。それを訊いていてマドリードで痛かった腹の事ではないかと思った。それからその話をしていた人に声を掛けて、話を訊いたら、どうやらほぼ腹の痛みだろうと思った。原因を訊いたら、加齢の場合もあるという。明日、病院へ行ってくる。外科に行くべきと言われた。行きつけの内科に行って紹介してもらおうと思う。話の通りだと、手術をすれば治るらしい。入院2日くらいという。

 12日の朝、結衣さんから連絡があった。モスクワから帰ってきて、たぶん、朝方日記を観たのだろう、そのことについて書いてきた。闘牛は色々な見方がある。ラス・ベンタス闘牛場でいつも感じる、テンディド7とその他の反応の対立。もしそれがなくなったら、それは、ラス・ベンタス闘牛場ではなくなる。実際現場にいると、もううるさいなぁと思う時もあれば、もっと騒げよと思う時もある。だから、テンディド7に距離を置きたいと思っている。だから、初めの頃、8で観たときに、このホームページのタイトル、ソル・イ・ソンブラは、テンディド8のつもりで作ったのだ。ちゃんと副題にもなっている。

 11日の日記に、そもそもそういう概念がない。と、書いたが、これは10代のエリック・クラプトンが、当時アメリカから黒人ブルース歌手がイギリス公演に来た時に、バッグバンドに参加していて、その時に、1番困った事を話した時に、ジョン・リー・フッカーがギターの奏法に合わせるために苦労し、何故苦労したかというと、そもそも彼のギターの弾き方には、コードという概念がないと、言っていたのが頭にあったのだと思う。

 実際聴いてみると、それはダンスミュージックに近い。当時黒人は、ライブでしか金を稼げなかった。だから、来ている客を喜ばせには、男と女が手を繋いで踊ってもらうスタイルが金になったからだろうと思う。でも、その時にコードを必要としなかったのだ。フォークギターを手にして初めて覚えるのは、コード進行だ。それを、流行っている歌に合わせてピックで弾くだけで、ステージに上がった気分になれた。だから、コード進行が全くない彼のギターの弾き方には、戸惑って当然だと思う。でもそれでも歌って作れるのだ。

 既成概念という物を、ブルースという音楽の世界でとっぱらったのがジョン・リー・フッカー。アメリカの黒人はまだまだ著作権とか、人権とかが、ほとんどなかったに等しい。1960年代、まともにそういう物を手に入れていたのは、売れていた、レイ・チャールズくらいかもしれない。売れない黒人ミュージシャンは、ヨーロッパ公演1か月すると、アメリカでの半年とか1年分の金を手に入れたと読んだ本に書いてあった。手渡された金を観て、泣き崩れたミュージシャンがいたというから、凄い話だ。

 そう話を戻せば、そもそも概念がないである。ブルースにリズムに乗って歌われるその歌詞も、クラプトンやストーンズのミックやキースに響いたのだ。クラプトンは、ブルースに人生を捧げようと決意し、ミックやキースはその路線で、ヒットチャートをにぎわせ、それでメシが食えるようになる。彼らは、自分の体で感じたものを、音楽という世界に表現する方法を見つけた。その方法が大衆に理解され、自分の道を歩いて行った。クラプトンが、ヤードバーズを辞めて、クリーム時代、黒人ブルースシンガー、ロバート・ジョンソンの『クロスロード』をロック風に編曲して歌った。原曲からどうすればあんなリズムのギターが弾けるのか、不思議だ。セビージャからマラガへ向か途中と、マラガから帰り、下山さんは、運転しながら、クリームの『クロスロード』を何度も聴いていた。僕らにとってクラプトンのかっこよさって、『クロスロード』に始まる。もちろん、ベースのジャック・ブルースと、ドラムのジンジャー・ベーカーがいなければ、この曲はこういう風にならなかっただろうけど…。クラプトンの歌と、三人のギターとベースとドラムがライブで火花を散らした時、名演奏の『クロスロード』が生まれた。

 闘牛に、そもそも美しいという概念が僕にはない。それを分かり易く、子供でも判る言葉で書ければ、面白いものになってい行くのだと思う。


 6月14日(木) 曇 11676

 朝食を食べて、病院へ行った。一杯待っていたので、1時間後に来ることして、茶店でタバコ吸いながら読書。それから、先生に話を訊いてもらい、腹などを触って、診察してもらった。結論は、昨日想定していた物と同じだった。紹介状を書いてもらうことにした。土曜日に出来るという。それをもって、来週の水曜日に外科へ行こうと思う。手術の必要があるのかないのか。なんか、行きつけの内科の先生の感じだと、緊急性はないようだし、手術の必要はなさそうな感じだ。

 サッカー日本代表監督が交代し、全然ダメだったが、12日の試合で4-2と勝った。乾と香川、柴崎が良かった。岡崎の動きも空いてDFを攪乱した感がある。一筋の光が見えるような勝利だった。ワールドカップ直前、スペインの代表監督ロペテギが解任された。前日レアル・マドリードの監督就任が発表されたが、それがスペインサッカー協会会長の逆鱗にふれたようで、解任され後任には、フェルナンド・イエロが就任した。イエロは、あの銀河系と言われたレアル・マドリード黄金時代のキャプテン。監督経験がほとんどない。ロペテギ監督の続投を嘆願したセルヒオ・ラモスやイニエスタの意見は排除された。どうなるんだろうと思う。スペインの新聞社のアンケートでは、解任賛成が70%近くの支持があるという。代表よりレアル・マドリードが大事というのはおかしいという事らしい。特にバルセロナのメディアは、批判的だという。これでも、スペインが優勝するようなら、イエロは将来のレアル・マドリード監督の座が約束されるような雰囲気になるだろう。今日から始まるワールドカップ。


 6月15日(金) 曇のち雨 7921

 昼前に、病院へ行った。深爪の親指が痛いので、そうしたもんかと行った。でも、結局今までと同じで、テーピングでしのぐしかない様な感じ。あとは、下駄とか雪駄などを履いて指に圧をかけないようにした方が良いという。早目の昼食を取って友人と待ち合わせ。帰って来たのは19時頃。

 ネットで検索していた時、『京都人の密かな愉しみ』の本が、NHKから出ているのを知って、本屋で買って読み始めた。脚本と監督をつとめる源孝志とNHK『京都人の密かな愉しみ』制作部が監修したものだった。常盤貴子、大原千鶴などのインタビューなども載っている。一部には、放送された脚本も載っている。これはこれで面白いと思った。テレビ放送の時は音で訊いていた物が、文字になっていると、それはそれでなるほどと思ってしまう。特に、こういう物では、どういう字を書くのか分からない時があるから、余計面白い。


 6月16日(土) 曇 12605

 サッカーのワールドカップをテレビでやっていると観てしまう。スペイン対ポルトガルは、クリスティアーノ・ロナウドのPKで先制したポルトガル。こうじゃなくちゃつまらないと思っていた。ジエゴ・コスタが個人技で同点に追いついた。DFに囲まれている中で、ああいうシュートを決めれてところがコスタの良い処。前半終了間際にクリスティアーノのシュートを取り損ねたGKデ・ヘア。良くあるんだよなぁ。マンチェスターユナイテッドにいるけど、もとはアトレティコのユース出身。マンチェスターユナイテッドから、レアル・マドリード移籍合意していたがタイムオーバーで出来ず。この時カシージャスがレアルを離れる。デ・ヘアは各世代のスペイン代表。イングランドのプレミアリーグでやるくらいだから上手いんだけど、こういうチョンボがある。だから、レアルはあれ以降オファーを出していない。高さには強い。競り合いも。カシージャスは若い時は、飛び出しも上手かったが、どうも、目測を誤ることがある。デ・ヘアはそういうのには強いが、こういうチョンボがある。カシージャスはそれがない。これで、1-2で前半を終える。

 後半になって、コスタが2点目を取って同点。パスサッカーでポルトガルを圧倒。勝ち越し点は、DFのナチョのスーパーゴール。最後が終了間際のクリスティアーノのFKからのゴール。あれを決められたんじゃ仕方ない。3-3の引き分け。クリスティアーノのハットトリックにやられた感じだ。でも、悪童コスタが2点あげたのが良かった。こういう選手が何故か好きだ。普段は、ろくなことしないのに、試合を決める決定力がある。元日本代表の岡田監督が、好きな選手をマンチェスターユナイテッドのジョージ・ベストと言っていた。判るのだ。俺も大好きだ。

 ブラジルのストリートサッカーからのし上がってきた、強さも、もろさも同居する点取り屋。コスタの不良ぶりを押さえることが出来るのは、アトレティコ・デ・マドリードのディエゴ・シメオネ監督くらいしかいないのかもしれない。ともあれスペインは、レアル、アトレティコ、バルサの3つの国内クラブと、イングランドプレミアで活躍するデ・ヘア、シルバの先発で良くやった。イニエスタは一応はまだ、バルサという事になっているらしい。とても面白い試合だった。監督更迭で揺れたスペイン代表。イエロ監督第1戦は悔しい思いの船出になった。

 そして意外と面白かったのが、イラン対モロッコの試合。終了間際の自殺点で、1-0でアジアのイランが勝った。非常に緊張感がある攻防で楽しめた。多分、スペインの新聞は、レアルのクリスティアーノ・ロナウドを褒めるだろうし、コスタなど代表チームの選手を讃えるだろう。そうミスを犯したデ・ヘアの事もそんなに悪くは書かないだろう。


 6月17日(日) 曇 6167

 今日までは曇で、明日からは雨が降り続くという予報が出ている。洗濯するなら今日ですと、朝のNHKのニュースで言っていた。父の日の洗濯。龍馬なら選択だなと思ったりする。字が違うけど。

 アルゼンチンは、アイスランドに1-1で引き分けた。ボール支配率が75%くらいあって攻めたが、決め手に欠けた。メッシがPKを外した。フランスも、ビデオ判定で、PKやゴールが認められて2-1で勝った。夜これからブラジルとドイツが登場する。今のところ、明確な優勝候補と思われる処が見当たらない。

 日曜美術館で、フランス人の美術評論家が出て、日本の美術館の紹介をやっていた。原美術館、足立美術館、根津美術館など。東京にある原、根津の美術館は行ったことがある。特に、根津美術館は、日本庭園が素晴らしい。外国人から観ると、季節によって展示が替わるのは不思議なことだという。例えば、光琳の『燕子花図屏風』が4月5月だけの展示という。でも、絵を観た後に、庭園で燕子花(かきつばた)が観れるは、とても楽しみだと言っていた。


 6月18日(月) 雨/曇 13240

 昨日競馬を観ていたら、緊急地震速報が流れて身構えたが、大丈夫だった。あの音は嫌な音だ。でも、今日大阪で、震度6弱の地震があって3人の死亡が確認された。震度4までの地区が、関西全域広範囲だったので、関西の鉄道網JR私鉄など運休で、大混乱。8時前だったので凄いことになったのだろう。新幹線も運休。ライフラインもズタズタになっているようだ。停電、水道管破裂、ガスの供給が止まっている処もあるようだ。

 ワールドカップは、荒れている。前回優勝のドイツは、メキシコの高速カウンターにやられて1-0で負けた。守備も素晴らしく、ボールを奪うと縦パスを通して、バックスの裏を突いてドイツの守備を攪乱して、主導権を渡さなかった。ブラジルも1-1の引き分け。エース、ネイマールは10回のファールを受けて攻撃の芽をつぶしたようだ。こっちも激震に揺れている。優勝候補と言われている処が、つまずいている状態だ。ところで、マラドーナは、自身が5回連続でPKを失敗したことがあるが、マラドーナであり続けたと語り、メッシを擁護した。監督の采配について批判した。

 やっぱり腹がおかしい。病院で診て貰わないと・・・。昨日は、イバン・ファンディーニョの命日。1年前フランスの地方の闘牛場で死んだ。Facebookでは、そういう投稿が多く観られた。


 6月19日(火) 曇 16551

 今日は暑かった。関西には雨が降るという。地震後の大雨は、ダメージが大きくなる可能性が大きい。明日は、東京も雨。それでも、病院に行かなければならない。

 「ごくわかりやすい例でいえば、三十年ほど前までは、専門店や高級レストランをべつにすると、スパゲッティというと喫茶店でも出てくるナポリタンやミートソースだったのですが(私の体験です)、やがて本格的なパスタ料理を麗々しくフォークとスプーンで食べるようになり、ではそれで収まったかというと、いつのまにかたらこスパゲッティに細切りの海苔をたっぷりかけ、それを箸で食べるようになっていたのです。アイスクリームを通してトッピングという言葉が定着すると、それをカレーにも天むすにも冷麺にもあてはめる。 ・・・中略・・・

 そうだとすると、やはりここには何らかの「日本という方法」があるんです。それが検討されるべきなのです。それと「編集的な方法」あるいは「日本的編集方法」というふうにとらえたいと思っています。」 --『日本という方法』松岡正剛 著--

 これからワールドカップ、日本対コロンビアが始まる。西野監督の日本という方法を観ようと思う。


 6月20日(水) 雨 8364

 朝から病院へ行った。病院は物凄く混んでいた。これじゃ順番が来るのは1時間くらいかかるだろうと思っていた。そしたら、直ぐに呼ばれて、診察してもらえた。多分、そうでしょうという事で、検査をした結果から、手術することになった。2泊3日で入院する予定を組んだ。7月の第2週。病院を出て街を歩いていたら、もう12時だった。それから、昼食を取って本屋に寄って松岡正剛の本を買った。それをもって喫茶店へ行って読み始めた。

 帰ってきて録画していたブラジル対スイス戦を観た。ブラジルはかなり押していたが、決め手を欠いた。スイスのGKが素晴らしい。エースのネイマールは、マークがきつく、良い処を見せられなかった。今大会は、エースが徹底マークされて引き分けや、負けたりするケースが非常に多い。昨日の日本は、開始早々に、PKでコロンビアのDFが退場。香川のゴールで先制した。これでほぼ日本の勝ち点が見えた。FKで1-1の同点で前半を終え、後半は1人多い日本が完全試合を支配した。そして、大迫のゴールで勝ち切った。

 2か月前に監督交代で、賛否両論で興味半減状態になった。交代後の練習試合もなかなか結果が出なかったが、この試合前の会見で西野監督が、リアクションのサッカーをしないないと、いっていた。その通り積極的な姿勢で試合に挑んだ。それが、PK獲得と退場者を出した。大迫、香川、乾、柴崎を先発させたのも、技術の高いボールキープ出来る選手を起用した采配に現れた。それが、2-1で勝った結果に出た。ワールドカップで、アジア勢が南米チームは初めて勝った。日本だけでなく、世界がこの結果を驚いた。西野監督は、選手を上手い事使うという編集作業をやった。これもいわゆる、「日本という方法」の1つなのだと思う。課題も見えたが、勝ち点3という最高の結果を出した。これは賞賛に値する。

 スペインから帰国した安田さんからさっき連絡があった。これからビデオ会開催のメールをみんなに送ろうと思う。


 6月21日(木) 曇 11712

 ビデオ会のメールを流したら、楽しみです。と返信あった人の中に、ワールドカップで寝不足ですと書いてあった。そう遅いと日本時間3時から始まる。それを観ていると5時になる。まさに、スペイン対イランがそうだった。前半は自陣に全員で守るイランに全く攻め手がないスペイン。0-0で終わる。後半は、守備のバランスを崩すパスが繋がり出し、ジエゴ・コスタが1点を入れた。イニエスタに替えてコケが入ったりメンバーを交代した。スペインでは、イニエスタのプレーに批判が出ているという。しかし、得点時にコスタへパスしたのはイニエスタなんだけど。おかしな言いがかりのような気がする。バルサ出たらそう見えるのか?

 スペイン戦の前に、NHKで日本と対戦するH組のコロンビアのファルカオ、セネガルのマネ、ポーランドのレバンドフスキというストライカーをインタビューしてそれぞれの思いを話していた。13歳でプロデビューしたファルカオ。アトレティコでスパースターになった。移籍してからは怪我などでパッとしなかったが、去年のシーズンは復活した。歌手である妻の作った歌が支えになっているという。マネは、貧しい生活の中でサッカーの才能を認められてプロになり、セネガルの誇りになる。リバプールで活躍している。レバンドフスキも、幼くして父親を亡くし母と姉の為に、プロ契約をする。しかし、ある日契約解除される。それが間違いであったことを証明するために、他のチームで練習を重ね、今やバイエルンのエースストライカー。それぞれの国の期待を背負って戦いの場にやってきている。それぞれの人生と、代表チームのプレッシャーを感じながら、ワールドカップにやってきた。生半可な気持ちでは、試合に挑めないことを改めて感じた。

 くまさんから、腹の具合どうなったかメールが来た。THさんからは心配するメッセージがきた。米ちゃんからも同じようなものがきた。大丈夫だという事を連絡した。あんまりこういうのは、書かない方が良いのかもしれないと思った。が、書いてしまったのでもう遅い。


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