断腸亭日常日記 2011年 その3

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年のスペイン滞在日記です。

99年4月15日〜5月11日 5月12日〜6月4日 6月7日〜6月10日 2000年4月20日〜4月29日 5月1日〜5月14日
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2011年1月1日〜22日 1月23日〜2月9日 2月10日〜3月4日

 3月5日(土) 晴 3340

 京都大学などの入学試験で、ネットを通じてカンニングして逮捕された仙台の予備校生は、どうしても京都大学に入りたかったと供述しているという。NHKニュースで、京大生にインタビューをしていたが、その中の1人が、カンニングは誰でもやっていることなので、彼の今後の人生がダメになるような事にはならないで欲しいといっていた。それを訊いて、その通りだと思った。カンニングがネットを通じて行われた事で、社会的な問題になっているが、本当に彼個人だけでやっているのであれば、そういう風に望む。


 3月6日(日) 晴 31244

 土日と競馬は、牝馬牡馬それぞれの本番にむけての最重要トライアルが行われた。牝馬は、チューリップ賞でレーヴディソールがムチなして4馬身の圧勝。本番の桜花賞に当確ランプが点いた。牡馬トライアル弥生賞は、ザダムパテックが勝ったが、牡馬は依然として混成模様になっている。

 のんびりしようと、スパに行ってきた。久々の岩盤浴。ビッシリ汗をかいて体も楽になった気がする。本当は、奈良行きのために体力作りをした方が良いのだけれど、今日は脱力したかった。


 3月7日(月) 雨 7070

 昨日の暖かさに比べると、今日は寒い。外は雨が降っている。平野部でも雪になるところがあるという。この間、長靴を買っておいた。それをはいて出かける。この前TVで、サエラという2人組のグループの、『ホーハイ節』を聴いた。ジャズ風ピアノにのせて唄うに.民謡の『ホーハイ節』。ピアノも良いし、歌が凄く良かった。50歳くらいのグループなのにデビューしたてで、歌手になるのが夢だったとボーカルが言っていた。諦めずに続けていて良かったといっていた。2人とも孫がいるという。そのことにも驚いた。

 長友がインテル移籍後、初ゴールを決めた。Jリーグも開幕して多くの観客がスタジアムに足を運んだようだ。アジア杯で優勝し日本も盛り上がっているところでの開幕。


 3月8日(火) 晴 35676

 マドリード、ラス・ベンタス闘牛場の興行主タウロデルタのホセ・アントニオ・マルティネス・ウランが、興行権は今年が最後になることを明言した。そして、サン・イシドロにはフィグラが出場して、アニベルサリオには、フィグラが出ないと言っている。アニベルサリオは、闘牛4回、騎馬闘牛1回を開催する。サン・イシドロとアニベルサリオの期間および期日は、発言していない。ホセ・トマスについては言っている。が、去年のメキシコのアグアスカリエンテスでの大怪我から闘牛場に戻ってくることを喜んでいる。復帰へのリハビリなどの長い道のりを、讃えている。交渉しているかどうかは言っていないが、水面下で動いているだろうと思う。

 カナル・プルスは、明日から24時間闘牛放送を有料で開始する。そして、12日からはバレンシアのファジャス(火祭り)が始まる。これも中継される。

 奈良行きがせまっている。11日には奈良にいる。


 3月9日(水) 晴 8063

 気になる記事がネットに載っていた。それは、ホセ・トマスの事である。記事は編集となっていて署名がなかった。そこには、復帰が8月になるのではないかと思わせる事が書かれてあった。マドリードの事は一切書かれていない。どうなるのだろう?もしそうなるのなら、スペインに行く時期は大きく変わるかも知れないと思った。そうなるのだろう。確実なのは、9月のバルセロナが最後になるだろうということ。


 3月10日(木) 晴 15510

 買った当初は、4月まで持つと思っていたタバコは、もう2カートンを切った。いっぱいあると思って吸い過ぎなのだ。昨日も地震があり、今朝も地震があった宮城県沖地震。


 3月11日(金) 曇/小雨 18267 奈良のホテルにて

 東京から京都に着いて、中村さんと京都のおばんざいの昼食を取った。話が面白かった。色々話したが、近鉄で奈良へ特急で向かう。乗り換えの大和西大寺の駅のホームでから奈良行きの急行に乗ったら向の50くらいの女性が携帯で電話していてマナーが悪いなぁと、思っていたら、その会話に震度7のがあったとという言葉が聞こえて、直ぐに携帯でネットのニュースを見たら宮城県沖で震度7と書いてあり、大津波警報がでていると…。奈良の駅で我慢していた大便をして、バスでホテルに向かう。チェックインの時にお水取りの情報を集中して部屋のTVをつけたら宮古市の津波の映像がTV朝日系のTVが流していた。NHKにチャンネルを合わせると、仙台市名取川を遡上する津波が家や畑、自動車を飲み込んでいくヘリコプターの映像を映し出している。地震の被害よりも、まず、津波に注意するように伝えている。

 興福寺へ行こうと思っていたが、東大寺のお水取りが始まるまで、部屋でTVを観ていたくなった。関東でも地震の被害が出ていて、千葉のコンビナートでコスモ石油のタンクが火災で炎上している。凄いことになった。あの名取川の映像を見ていただけでも、一体何人がなくなっただろうと、怖くなる。詳しい被害状況をまとめるだけで、相当な労力がかかるだろう。菅首相は国会を中止して被害対策本部を立ち上げ、全閣僚を召集した。


 TVはNHK民放全てが地震のニュースをやっている。仙台市若林区荒浜地区の海岸に、200人から300人の津波に流されたと思われる遺体が漂着しているという。東京など首都圏は交通網が遮断され、帰宅困難者が多数発生して、都が協力を要請して、武道館や文化センター、コンサートホールや横浜球場なども、宿泊施設として提供しているという。首都圏も含め、特に東北はまだまだ寒い。そんな中での避難所での生活。被災して、空腹や寒さに震える姿は、とても辛いモノだと思う。東大寺のお水取りに行ってきた。3時間くらい外にいたが、寒かった。これは観たくて寒さに耐えているが、自分が望まずに寒さに耐えているのとでは、全然意味合いが違う。

 お水取りの火は、この世のモノとは思えないモノだった。そして、被災地はまさにこの世のモノとは思えない惨劇になっている。電話も通じない。海岸から2キロ離れた仙台空港が津波の被害で孤立しているそうだ。成田空港も乗客で溢れ買っている。飛行機が欠航しているようだ。JRは、青森から静岡まで在来線が一時完全に止まった。今でも首都圏では一部の交通機関を除いて不通になっている。

 追記。宮城県気仙沼市で大規模な火災が発生しているという。物凄い範囲の火災だ。南北4キロ×東西4キロの規模だという。もう壊滅的と言っていい状態だろう。まさに物凄い火災だ。


 3月12日(土) 曇 11649 奈良のホテルにて

 一夜明けた。TVをつけっぱなしで寝ていた。NHKは、ずっと地震のニュースを流していた。朝、TVで盛岡在住の人と電話でインタビューをしていたので、再度盛岡の実家に電話したが繋がらない。弟の携帯にかけたが繋がらない。叔父さんの家と携帯にかけたが、繋がらない。朝食を取りに下に降りようとしたら弟から電話。みんな元気だという。家の中はちょっとだけモノが棚から落ちた程度のようだ。水道とガスが使える。電気は使えない。寒いべ?と訊くと、電気を使わない昔の石油ストーブが使えるから大丈夫だという。市内は、コンビニにはモノがないという。電気が通じていないので、店では食事が出来ない状態のようだ。電話していたら泣きそうになった。

 下に行って朝食を取る。大勢いる。新聞を売っていたのでそれを読む。読んでいたら涙がボロボロ出てきた。日本最大のマグニチュード8.8の地震。そして、10mを超える津波を記録しているところがある。TVでは、夜中に新潟や長野で震度6の地震があったことを伝えている。中部地方から東北にかけて地震が起こっている。朝から自衛隊が出動して復興に当たり始めた。相馬から仙台辺りまで海岸線から陸地は高低差がなく、陸地の奥まで津波が押し寄せたようだ。仙台では10m津波が来て、海岸線から10キロ先の陸地まで津波が到達したという。それだけではなくは、岩手から福島の海岸線にあった町が消えたところが複数ある。更地のようになっているところや、がれきの残骸が残っているところがある。壊滅的な大災害である。株式市場や為替相場がどうなっているのか判らないが、経済への影響は甚大である。朝9時過ぎの時点で死者・行方不明は判っているだけで1000人を超える。把握できていない所が半数以上だろうからとんでもないことになっている。

 今TVで、陸前高田市はほぼ壊滅状態だという。恐ろしいことだ。宮古は10ヶ所の集落が壊滅したという。弟の電話では、あるスーパーで、カップ麺を半額や他の品物も100円で安く売っている所があるという。何で?と、訊くと、こういう大変な時だから、安く売っているのだという。こういう盛岡人の心意気が嬉しい。泣けるくらい嬉しいことだ。こういう気持ちが早期の復興の手がかりになるのだろうと思う。

 ネットでホセ・トマスの復帰がグラナダからとでている。今日は競馬をやる気がしない。しかし、出来る人はやって欲しい。何故なら、スペインの闘牛を同じで、いつでもこういう災害があると義捐金を出す団体はいつもJRA日本中央競馬会なのだから…。

 これから、ホテルを変える。その後、興福寺に行く。日本創成期に、仏教を基に国を作ろうとした。そういう仏像が展示されている。それを拝みに行きたい。気づいたら、メールが何通か来ていた。弟からのメールには大丈夫というコメントと、『あしたのジョー』マンガの1シーンが載っている。力石にダウンさせられたジョーのマンガ。そして弟のコメントが書かれている。立つんだ日本 立つんだジョー


 3月13日(日) 晴 22708 奈良のホテルにて

 お水取りの最も華やかな日で、実際に唯一水を取る昨日から今日の2時半頃にかけて東大寺、二月堂へ行ってきた。それと興福寺と東大寺の大仏へ行って仏像を観てきた。それ以外はTVで東北関東大震災の様子を見ていた。南三陸町では、1万人と連絡がついていないと宮城県が発表した。また、今まで観れなかった、南相馬の津波の映像やその他の津波の映像が放送局だけではなく、むしろ視聴者から寄せられて観れるようになった。本当に信じられない津波の威力だ。それを見ている住民の絶望的な悲鳴や嘆きも、入っている。被災して避難している住民のインタビューも流れている。家も民宿も船も流されてしまったけど、生きていて欲しいです。疲れ切った表情の50くらいの女性が言っていた。

 絶望している中で、家族の無事を祈って姿を見ると、涙が溢れてくる。ある男性は、嫁さんと子供の手を繋いで高台に向かって走っている途中で、津波にあって、繋いでいた手が離れて、自分も津波に流されたが助かった。しかし、子供と嫁さんが流されて何処にいるのか判らない。この男性は、嘆いているが、どちらかというと、自分だけ助かって、子供と嫁さんを助けられなかった事を、自分で自分を責めている様な感じを受けた。そういう心の傷を受けている人たちも多いのだろうと思った。昼食を東大寺門前で取ったが、自分が今食事をしていることさえ、これで良いのかと、自分自身感じている。東大寺のお水取りは、人々の幸福を祈る儀式だ。昨日の松明の始まる前に、被災された人たちの復興を祈りましょうという言葉があった。練行僧も祈るが、僕もそういう気持ちでいた。

 昼食を取りながら新聞を読んでいたら、涙が溢れてきた。鼻水も出て来る。とんでもないことになった。岩手、宮城、福島の三県の被害が凄い。海岸線は、津波により壊滅的な打撃を受けた。内陸部でも、ライフラインである、水道、電気、ガスも遮断されている所が多数あるだろう。食べ物がない寒い状態で、ただただ耐えている被災者。乳児を抱えて、あるいは、離乳食もない状態で子供を抱えている母親。老人や子供たち。悲しくて悲しくてしょうがない。


 3月14日(月) 晴 18666 奈良のホテルにて

 昨日は、薬師寺、唐招提寺へ行ってきた。薬師寺では4月から約7年間の解体修理する東塔に入る事が出来た。向の西塔にも入れた。奈良時代に作られた仏像群を観ながら何度も祈った。薬師寺の僧侶が、今私たちが出来ることは、被災に遭われた人たちの事を考えることで。何にも出来なくても、考えることから始めなければならない、と、言っていた。東大寺のお水取りでも、また、始まる前に、マイクで僧侶がコメントを出した。災害に遭われた人々に、何が出来るか。それぞれの発揮できる力をそれぞれ出来ることから始めなければならないでしょう。被災に遭われた人々の祈りましょう。そういうようなことを言っていた。一昨日は観なかった、被災者への募金運動が、JR奈良駅、近鉄奈良駅や商店街で行われている。

 岩手県田老町は、過去何度も津波の被害受けていたため、高さ10mの防潮堤を2キロ作っていた。世界に類を見ない巨大なモノだった。しかし、今回の津波はそれを軽々と乗り越えて集落を破壊した。宮城県警は、死者が1万人を超える事は確実だとコメントは発表した。それと原発の問題が大きい。これをちゃんと処理しないと、大変事態になる。最大レベルの危険がそこにあるのだから。計画停電第1グループを実施するのかどうかも、情報が錯綜している。JRは一部を除いて首都圏では運行されていない。電気を使わないようにという政府からの指示でそうなった。通勤通学は、大混乱しているようだ。この発表が夜中に行われたので、混乱に拍車がかかっているようだ。

 今日は、状況をかんがみ、法隆寺を観に行って一旦奈良に戻り、京都へ行き、それから東京へ戻ることにする。


 3月15日(火) 曇 12695 東京にて

 東京に戻ってきた。部屋にはいると本やDVD、CDが落ちていた。でも、本棚やTVなどは倒れたりしていなかった。部屋のことは奈良にいたときに少し考えたが、そんなに深く考えなかった。何故なら、TVで津波の状況を見ていると、悲しくなってそれ何処ではなかったから。地震が起きてTVで津波の物凄さを観てから毎日泣いていた。新聞を読んで泣き、TVを観て泣いている。それにしても、東京電力の原発関連の記者会見は、非道いモノだ。正確に事象を伝えようとしていないと思われても仕方がないような記者会見だ。専門用語がどうのという問題以前に、言葉で説明していない。しようとしていないようにさえ思う。政府は。ついに業を煮やして政府と東電合同の緊急対策本部を立ち上げた。東電は、重大なことでも報告しないという隠ぺい体質があるのかも知れない。どうなっているんだ!!!

 奈良最後の日に、法隆寺に行った。感動的だった。五重塔を前にしてビデオをまわそうとしていたら、僧侶が来たので話しかけた。屋根の四隅などに鬼瓦などがありますが、あれは魔よけですか?と、言うと、話に乗ってきた。例えば、龍なども魔よけですし、そういう風に守っているんです。という。それから五重塔が1300年前に建てられ、その都なりの金堂が1400年前に建てられた日本最古、世界最古の木造建築物であることを訊く。両方とも、江戸時代や昭和など3度ほど解体修理をやったという。金堂の上の屋根を支えるために柱を付けて、タダ柱ではおかしいと言うことで柱に龍などの彫刻を入れたという。では、五重塔の1番上の屋根の所にも柱がありますが、それも江戸の解体修理の時にやったのですか?と訊くと、判りません。という、答えだった。

 12時に西円堂横の鐘を突いていたのでそれをビデオに撮った。約10分かかった。西円堂したの無料休憩所でタバコを吸っていたが僧侶が来たので、鐘はいつ鳴らすんですか?と訊くと、8時、12時、14時、18時というように正確ではないが4回ほど鳴らしているようだった。そして、あれが正岡子規が詠んだ、柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺 の鐘です。と、言った。やっぱりそうだったかと思った。そして、五重塔前の僧侶が言う。西円堂に行きましたか?はい、今行ってきました。薬師如来さん観ました。はい、観ました。あそこの日光さん、月光さんは、瓦屋根の所にあるんですよ。えっ、そんなことがあるんですか。初めてです、そんなのは。というと、そうでしょうね、あまりないでしょうからという。これは、驚くべき事だ。普通は、左右に日光菩薩と月光菩薩を従えているが、法隆寺では、あまり仏像横に名称を書いていないので、観た仏像が、日光、月光と思っていたが、やられたという感じがした。

 色んな事を10分弱訊いたが、1番印象に残っている話は、五重塔である。芯柱は、薬師寺の東塔の芯柱は割れてますね。あれは奈良時代から残っているから割れているのは判るけど、西塔の芯柱も割れてます。西塔は昭和に作られたモノなのにどうして割れているんですか。ここの芯柱はどうですか?と訊くと、ここの芯柱は、割れていません。中をくり抜いているからです。今、家で使う柱も判らない様に4つくらいに切ってあって、それを繋いでいるんです。そういう風に芯柱も切って中心部分をくり抜いているんです。だから割れていないんです。ちょっと、唸った。それから、どこか忘れたんですが、五重塔で耐震性が物凄いという結果が発表されて、地震の専門家が言ってましたが、芯柱があるから、建物が耐えれるって言ってました。と、言うと、それはこれです。と、目の前の五重塔を指さした。そして、今東京でスカイツリーを作ってますが、あれが設計上法隆寺の五重塔を真似て造っています。芯柱が建物に触れていないんです。だから、建物が倒壊しないんです。と。

 日本人の知恵を生かせば、地震にも倒壊しない建物が造れるのだと思った。こういう風に昔の技術や、知恵を生かして行ければ、日本はまだまだ大丈夫だと実感した。境内の広さとその落ち着きも、何処の寺にも真似の出来ないものだ。薬師寺のように観光という商売をやっているような感じもないし、東大寺のように修行をやっているんだという気張りもないが、境内はバリアフリーの体勢は整っているし、庭などに植えられている樹木を観ても、何故か詫び寂を感じる。根もとから5.6本に別れた枝。添え木をしたと言うよりも、連理の枝のような感じがした。夢殿で訊いたが、それは判らないと言っていた。とても幸せな気分で法隆寺を後にすることが出来た。

 東京に戻って驚いたことは、スーパーにモノがないというと。コンビニにもモノがない。地震の影響だという。交通網や計画停電だけでない変化が首都圏の中にある。これが被災地ならもっと凄いことになっているだろうと思う。


 3月16日(水) 曇 風強し 29410

 福島原発は、未だに危険な状態にある。危険と言うより、非常に深刻な状態である。スペインの新聞『エル・パイス』紙は、Cuando la verdad es descortes (日本語訳すると、時に真実は失礼です。とでも訳すのだろうか?)のタイトルで伝えているのは、本音をいわずに、建前を話していて、大事なことを隠しているのではないかというようなことを記事で書いている。こういう記事は、外国人が感じる感覚だろうと思う。確かに、そういうこともあるかも知れないが、割と落ち着いているように思う。少なくても東京ではそういう感じがする。マスクをしている人が増えているが、日常生活を淡々と行っている。計画停電などで、交通網が通常の状態になってはいないが、14日月曜日に比べて、15日火曜日の方が、良くなっているし、今日はもっと良くなっている。

 朝、喫煙室で、施設内に詰めている建設会社の所長と話をしたが、東電の記者会見についての混乱を、僕は、およそ人に伝える気がないような記者会見だと批判したら、それは、言葉の問題で、普段そういうことをやったことがない人がああいう場に出てきても、ちゃんとモノを伝えられないでしょう。と、言っていた。それと、現場にいて作業している人と、その情報を基に記者会見する人とでは、内容が判らずに会見をしているので答えようがないのかも知れない。それから、それにしても、記者会見して東電社員の混乱ぶりを観ていると、人間ああいう状態にどうやって良いかとか、自分が何をやっているのかが、判らなくなるんだなぁと思った。と、言う。それはそうだと思う。しかしねぇ…。

 その所長は、今回の地震について、津波や計画停電にしても、原発の問題にして、今は混乱していて、色々な感情が出てくるかもしてないが、交通網にしても、日がたつにつれて段々良くなってきているでしょう。これが自分の孫の代とかになって、今回のことが役立てば良いんじゃないか。これだけの事が起きたから、混乱するのは当たり前。都内のスーパーとかでモノが棚からなくなっていて、買いだめしている人がいるけど、被災地じゃないのに、どうしてこういう事になるのか判らない。もっと、冷静にならないと。と、言っていた。被災者のことを考えると計画停電も良いだろう。今、世界中から支援の手がさしのべられている。


 3月17日(木) 晴 8355

 先日、福原愛が仙台観光大使に任命されたとき、1週間で5回仙台の夢を見ていたので、何かあるなと、思っていたがこれだったんですね。と、言っていた。しかし、それじゃなかったのだ。今は、この大震災を感じていたような気がする。女子ゴルフの有村は、女子ツアーが中止になって会見を開き、涙ながらに被災者に何かをしたいといっていた。東北高校出身の有村。友人が一杯宮城にいる。今はゴルフなんか出来ない状態だと言うこともいっていた。プロ野球パ・リーグは開幕を延期した。セ・リーグは未だ決まっていないが…。競馬は、中山競馬場での開催が3月は中止になった。阪神と小倉の開催になる。4月はクラシック・レースが始まるが、そのトライアルですら中山で行われない、非常事態だ。Jリーグも、3月の開催を中止した。

 大リーグの日本人選手は、大震災の募金を集める活動をしている。ヨーロッパの各国サッカーリーグは、試合前黙祷を捧げて試合を始めている。日本人選手が在籍するチームは勿論、全然関係ない、スペインの、レアル・マドリードやバルセロナも試合前に黙祷を捧げた。日本人選手は、日本の被災者に応援のメッセージを発信している。一般市民も、奈良でも、募金活動をしていたし、東京でも、コンビニや放送局など色々なところで義援金を募っている。ユニクロの柳井社長は10億円の寄付をして、ヒートテックなどを被災地に大量に送ることにしたという。複数の企業も義援金を送る様だ。日本の芸能人も募金活動をしている。韓国の芸能人も寄付を表明している。他の外国の有名人も募金活動や義援金の活動をしている。

 奈良、東大寺の12日のお水取りの帰り。この日の人出は物凄かった。お松明がでかいのと1番有名な日だから近隣からも人がやってくる。待ち時間は早めに行ったので2時間半以上待ったが、他にも人が待っているからと言うことで15分くらいしか観れずに、会場の二月堂から出されたので、夕食を食べに行った。東大寺の暗い境内を歩いていくと、この日だけ参道の両脇に竹にロウソクを入れて灯がともっていた。竹は、正月の門松のように、先が切られてある。その側面には色々なメッセージが書かれていたが、大震災の事も多く書かれてあった。胸が熱くなった。奈良を発つ14日は、市内の何カ所で、募金を募っていた。あるところでは、透明な入れ物に千円札が何十枚も入っていた。非常に関心が高いことを示しているのだろう。東北から遠い関西の奈良でも、日本人として、人間として支援を表明している人たちがいるのだ。

 被災地は、昨日今日と真冬並みの寒波が襲っている。医療品や、毛布や防寒用の服、食料、粉ミルク、ほ乳瓶。ガソリン、灯油など直接生活に関係している物資が不足している。首都圏のガソリンスタンドには、通常の5倍の人が来て、ガソリンなどを買っているという。そういうことをしないで、被災地に回して欲しい。馬鹿なことは止めて欲しい。自分だけ良ければいいと言うような考え方は止めて欲しい。そういうことをすれば、被災者を苦しめることになることが判らないのだろうか? 自分が今出来ることをやろう!節電、買いだめをしない。義援金の募金など、やれることをやろう。

 職場に、南相馬市に実家がある人間がいて、家族と友人に連絡がつかないという。どうすることも出来ないので仕事をしているという。仕事を休んで帰りたいんだろうなぁと思う。実家がこっちでも、TVで大震災の惨状を観て、仕事を休んで被災地に行きたいという人もいる。何にも出来ない、行っても片づけることしか出来なくても良いから行きたいといっていた。こういう1人ひとりの気持ちが大きな力になっていって欲しいと思う。


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