断腸亭日常日記 2017年 5月 スペイン旅行 その1

--バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  --バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

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 5月22日(月) 晴 10555

 レアル・マドリードが優勝して、乾がバルセロナ戦で2ゴールをし、セリエAで本田がフリーキックから今期初得点し、それぞれ絶賛された。バルサから2得点するのは、『キャプテン翼』の様に漫画の世界にしか存在しないような出来事だ。勿論翼が入団するは、バルサだからそれもあり得ないのだが…。しかし、昨日の主役は、アントニオ・フェレーラだった。あんなにラス・ベンタス闘牛場の観客が興奮するとは思わなかった。それを全部ビデオに撮れたことは非常に良かった。しかも1番遠いT10辺りから始まったファエナは、後半は近くでやっていたのでとても良く見れた。怪我で3年間休んでいたとTHさんが言っていたが、全然知らなかった。

 セビージャで、トゥリウファドールになって、マドリードでも良いファエナをした。各メディアは次の様な見出して伝えた。Un verzo libre(ムンドトロ) Una maravillosa invención de Ferrera(エル・ムンド) El palco le cierra la Puerta Grande a un grandioso Antonio Ferrera(ラス・ベンタス闘牛場) Extraordinario Ferrera, oreja de peso en Madrid(アプラウソス) inmenso Ferrera(ブルラデロ)

 何なんだろう?あのカッコマン的な闘牛士だったアントニオ・フェレーラが…。スペイン闘牛士史上初めて女性闘牛士から女性闘牛士へのアルテルナティーバ(マリ・パス・ベガ)で、パドリーノ、クリスティーナ・サンチェス、テスティーゴ、フェレーラで出ていた彼が…。サン・イシドロで1度1頭の牛で耳2枚切ったフェレーラが、大怪我から復帰して3年ぶりのアレナで、彼のイメージを大きく変え、ラス・ベンタス闘牛場の観客を虜にしてしまった。

 この日5頭目。足を止めたカポーテをなかなか振ることが出来なかった。バンデリージャは自分で打った。最後はタブラ近くで牛を誘いキエブロ。牛がまた向かってくると、またキエブロで牛を交わした。ファエナは、テンディド10の外側の白線で牛を観ずにデレチャソ。パセの後そのまま前に歩き内側の白線の所で、パセ。そのまま5m歩きパセ。そのまま3、4mくらい歩きパセをした。アレナ中央部の所に牛を置き、一旦距離を取り、遠目から牛を誘うと牛は動き出した。

 牛の動きは緩慢な感じだった。しかし、良いファエナの始まり方だった。中央部付近でやったタンダ・デ・ムレタソも、牛の動きはそれほど良くはなかった。しかし、距離感が良かった。丁寧にレマテの後に、距離を取って牛に息を入れさせた。耳が出るようなファエナではなかった。それがテンディド5付近でのファエナで、緩慢な牛の動きを上手く読んで、距離を取り手の高いナトゥラルで少しずつ頭を下げさせ長いパセを繋いだ。すると少しずつビエン声から「オーレ」の声に変わっていった。

 頭が高く緩慢だが、ゆっくりとしたテンプラールのパセが繋がり出すと、「オーレ」の声はより大きく響いていった。クルサールしてデレチャッソの長いパセを繋ぎ、パセ・デ・ペチョ。牛はくるくる回った。離れ右手のムレタで牛を誘い、ムレタを左手に代えてナトゥラル。牛の動きが止まったが、焦らずに牛の前に止まって、牛が仕掛けてくるとムレタで交わした。それからクルサードして、手の高いナトゥラルを繋ぐと、1回転するパセを2回続けた。「オーレ」と歓声、拍手が入り交じる中、パセ・デ・ペチョをすると、観客は立ち上がって喝采を送った。もう耳1枚は確定して2枚目もいけるかどうかという感じになってきた。

 剣を代えて、パセを繋ぐ。外連がないシンプルなパセ。飾り気ない。それが良い。今まで味わったことがないようなファエナだった。感動というのでもない。美しいというのともちょっと違う。牛の力を最大限に引き出そうとする、ある意味自分を殺した誠実さがそこには感じられた。もうこの雰囲気から剣が決まらないでどうするという感じだった。スエルテ・コントラリア見事に決まると、「オー」をいう歓声と共に観客は立ち上がった。口笛が鳴り響き、プレシデンテに耳を要求した。白いハンカチが闘牛場をおおった。プレシデンテは白いハンカチを出したが、それでも観客は白いハンカチを振り続け、口笛を吹いた。2枚目は出なかった。

 感想を言えば、雑味というかアク抜きされた良い味が出ていた。柿の渋みの味だが、サンマの苦味も味。フェレーラのファエナは、そういう複雑な味が、微妙なバランスで混ざり合った絶妙感というか、外連のみのない良いお手前だった。色々な雑念が取れた、ある種の悟りにも似た、それでいて非常に人間味のある誠実さを感じた。出来るじゃない、フェレーラ。このファエナを見せられたんじゃ、タラバンテも、外連のロカ・レイも目じゃないと思う。全く新しいタイプの闘牛を発見したような感覚に囚われた。

 誠実。言葉にすれば簡単だ。しかし、こういう闘牛は、誰でも出来る闘牛ではないのだ。昔のフェレーラなら、観客にアピールしながら闘牛をやっていた。それが鼻につくことが良くあった。でも、そういうアピールは一つも感じられなかった。ただただ牛をどう動かそうか、牛を観て、牛と対話しているような感じだった。牛の1番良い部分をどうやったら引き出せるのか、それを考え、今出来る最良の事を出し尽くそうとする姿がそこにあった。そこにある素材の良さを充分に引き出そうと、それだけを考えているような誠実さ集中力を感じた。これは長く余韻が残る。心に沁みた。

 耳2枚じゃなくても、闘牛の新しい感覚を呼び覚ますには、充分だった。牛に対する誠実さ。人生に対する誠実さ。自分に対する誠実さ。それは、ただ単に美しいという言葉でいうには、勿体ないような気がする。誰にも解って貰えなくても、誠実で在り続ける事は大事なのだと感じさせられた。非常にありがたい気持ちでメトロで帰路に着いた。Antonio Ferrera Gracias por todos.

 そして、この日一緒に出たファン・ホセ・パディージャ、マヌエル・エスクリバノ。3人のバンデリージャを打つ闘牛士の競演。そして、コリーダ・ドゥーラの闘牛士なのに、ファン・ペドロ・ドメク系の牛(ラス・ランブラス牧場)で、みんな良かった。パディージャは、ある時期は、サン・イシドロに出てきただけでブーイングを浴びていた。それが、片眼を失って、彼の闘牛士としての価値が認められた。そして、それに甘んじることなく、誠実に闘牛と向かい合っている姿を、アフィショナードは支持している。この変化は、凄いことだ。感動さえ覚える。マヌエル・エスクリバノも、去年の後半を、怪我で棒に振り、復帰してきた闘牛士。彼も真面目にファエナをしていた。出ないとは思ったが、剣が決まっていれば耳1枚かという良い感じのファエナだった。


 5月23日(火) 晴 9949

 今日もソルテオに出掛けた。何日か前からラス・ベンタス闘牛場 wifi が繋がらなくなった。もともと強くなかったので、アップも出来なかったりしていたので、しょうがないと思う。万希ちゃんが来る前くらいからだから1週間くらい経つのだろう。再三アクセスしてパスワードを入れたり色々してみたが為なのだ。よく解らない。

 昨日は、見習い闘牛。エル・モンテシジョ牧場の若牛で、ヘスス・エンリケ・コロンボ、パブロ・アグアド、ラファエル・セルナ。ベネズエラ人のコロンボが耳を取り損ねた。4頭目の牛で観客は耳を強く要求したが、プレシデンテが出さず、場内1周して、2周目も観客が要求したがコロンボはしなかった。プレシデンテには口笛と罵声が浴びせられた。ちゃんとやろうとしているが、危なっかしい闘牛で、剣刺しの時にコヒーダもされた。そういう状況だから、余計耳を要求したが、闘牛士じゃなく、見習い闘牛士なんだから耳を出してあげるべきだと思った。

 パブロ・アグアドは、5頭目が動く牛だった。これは耳かと思ってみていたら、ムレタになって、左角がブスカンドして危なくなったので、良いファエナにはならなかった。彼はこういう動く牛じゃないとトレアールが出来ないようで、印象に残らない。パブロと同じセビージャ人のラファエル・セルナは、ちょっとは考えて闘牛しているかと思ってみていたが、こちらも印象に残らない。

 下山さんと電話で話したが、セビージャ行ってからの計画などを訊いた。まだ3週間くらい先のことだが、暑いセビージャになるんだろうなぁと思う。


 5月24日(水) 晴 11840

 ここ何日かで暑くなってきた。闘牛場が1番暑い。闘牛場に着くと、空いていると自分の席ではなく、上の席へ行く。そうすると20時半過ぎくらいまで日陰にいられるからだ。それから、自分の席が空いていればそこに座って5頭目、6頭目を見るのだが、今日は多分、ノー・アイ・ビジェテだろうから、1頭目からめっちゃ暑そうだ。

 昨日の闘牛は、牛が悪かった。毎日そうだが…。バルデフレスノ牧場の牛で、ダニエル・ルケ、フォルテス、ファン・レアル。ダニエル・ルケは、若いときに良いファエナを何度も観たことがあるが…。ファン・レアルは、この日、1番闘牛場を沸かせたのかも知れない。牛に背を向けて、デレチャッソで牛回してパセ。それは良い。後期のホセリートが良くやっていた。でもなんだろう、俺はやっているぞというアピールをするから、鼻につく。やはりそういう反感から三拍子の手拍子が起こっていた。喝采を浴びて、挨拶していたが、ああいうのは、地方の闘牛場でやれば良いこと。ラス・ベンタス闘牛場では反発される。

 フォルテスの孤独感は何なんだろう。2頭目の牛は、そんなに良い牛に感じられなかったが、ムレタでは、モンテラをかぶったまま始めた。多分、前回もそうだったと思う。アレナ中央部で膝を着いてタブラにいる牛を呼ぶ。カルトゥーチョ・デ・ペスカドから始めると闘牛場が沸いた。その後も、ちゃんとトレアールしようとしていた。他の闘牛士のバンデリージャの場の時に、バンデリジェーロの危険を回避するためにキーテの準備も、誰よりもちゃんとやっている。闘牛に対する誠実さを感じる。観客にアピールすることだけを、観るのではなく、そういう所をちゃんと観てあげないとと思った。無口そうな孤独感を感じるフォルテスが、ひとつひとつ闘牛の大事なものを、掴み取ってファエナに表現できるようになれば、嬉しい。

 帰ってきたら、鶏鍋。友人が作っていてくれた。ビールなど飲んで最後はラーメンを入れて食べた。だしもちゃんと取ってあったので上手かった。その後、曲一杯知っているけど、何かこれっていう歌ないの?と急にいわれて、何だろうと考えたが、判らない。でも、そうか中学か高校時に、心に響いた歌が、ホモ・サピエンスの『何かいいことないかな』だったので、それをYouTubeで探した。ホモ・サピエンスのボーカルだった河島英五で検索。

 今聴いても良いなぁと思う。そんな感じで歌を聴きながら酒呑んでいた。『酒と泪と男と女』は、今聴くと良い歌だ。でも、流行っていた時って、酔っぱらいがよく歌っていたので嫌いだった。英五らしくないと、思っていた。でも、『時代おくれ』など聴くと、男の優しさというか、英五らしい優しさが感じられる。ビールにマンサニージャ、ラム。飲み過ぎ。朝起きたら、頭が痛かった。ソルテオも迷ったが、行ったらやばいと思った。THさんから電話かかって来たが、お断りして、ガスパチョ2杯呑んで、プリン食べて寝て、それから、鍋などを洗ったりしていたらようやく、少しよくなった。


 5月25日(木) 晴 7821

 昨日は、サン・イシドロで3回目のノー・アイ・ビジェテ。だから、始まったからソルの自分の席に座ったので暑かった。こんな感じだと顔が、変な日焼けの後が付くと思って、わざと帽子を取って顔に太陽が当たるようにして、日焼けしようと思った。後から来た老夫婦のアボナードの爺さんに婆さんが、水の付いたタオルで腕をタオルで拭いていた。そういうやり方もあるのかと思った。

 闘牛は、ヌニェス・デル・クビジョ牧場の牛で、ファン・バウティスタ、アレハンドロ・タラバンテ、ロカ・レイ。イメージしていたより牛は良かった。タラバンテは、2回とも良いファエナをした。ちょっと駄目かなという牛でも、ちゃんとしたファエナになる。しかも、簡単そうに見える。あれは本当は、難しいと思うが、そう見えない。多分、ホセ・トマスだと、観客に大変そうだ思わせて、それでもやってしまうところがあるが、それが違いだろう。その違いが、観客の反応になって帰ってくる。おそらく、大変そうと思ってみている観客が多い方が、盛り上がる。

 この日5頭目の牛でのファエナの後半、デレチャッソでコヒーダされた。右太股、膝の後ろ辺りをざっくり刺された。危ない牛には見えなかったが、突然のコヒーダ。みんなに囲まれたが、そのまま続け剣はカイーダだったが、耳1枚出た。耳を受け取ると、そのまま場内1周せずに、アレナの中を歩いて医務室に向かった。手術は15間行われ病院に搬送された。6月6日のビクトリーノ・マルティン牧場に出場できるか、まだ判らない。

 ファン・バウティスタの4頭目。ホセリートが昔ウニコでやった、カジョシーナとかいうカポーテを手から手へ持ち替えてやるキーテをやって、沸かせた。基本的に、不器用なバウティスタが、ロカ・レイとかカステージャとかが出てきて、色々な技を習得した結果が、こういうところに出たのだろう。しかし、観客の態度というのが気にくわない。1部のオピニオンリーダー気取りのアフィショナードが、牛が悪い抗議する。その中でファエナ。昔から老人たちのアフィショナードは、若い彼らに批判的で、3回くらいタンダ・デ・ムレタソを観るように声を荒げている人がいた。牛が悪いのは判るが、闘牛士がトレアールしているのであれば、それを受け止めなければ、ファエナにならなく。こういう馬鹿は何とかならないかと思う。知識だけを本やネットでかじっても、老人たち様なアナログ的な闘牛体験者には、全くかなわない。あの牛を批判するは、ファエナを見極めてからにして欲しいと強く思った。

 ロカ・レイは、相変わらず派手にやっている。見切り発車的な冒険というか、危険を顧みない闘牛をしてハラハラさせている。しかし、ファエナの初めだけ良くても、牛が弱かったのでそれについて来れず、つまらないファエナになっていた。デレチャソで背中を通すパセをやっても中心点がぶれたりしていては、危ないだけで技術を感じることはない。そして、バンデリージャの場で、アレナ中央部の定位置に付くのが遅いのでテンディド7とかに批判されていた。それは、キーテの後のろのろ歩いているから批判される。本人それに気付いたかどうかは、知らないが…。

 闘牛が終わった後、偶然万希ちゃんと会った。それで、バルに行って話をした。2回タラバンテを観て、2回とも耳1枚が観れたことを喜んでいた。それと、フェレーラを観なかったことを、後悔していた。移動でマドリードに着いたのが18時で、それからだとしんどいと思って来なかったけど、観たかったといっていた。体的には疲れるだろうから、それはしょうがないのだろうと思う。今頃は、飛行機の中だ。


 5月26日(金) 晴 14195

 昨日は、ソルテオに行って牛を観た。クリスティーナ・サンチェスが来ていた。THさんが腕とか太いですねといっていた。よく観たら、確かにカポーテを持ったりするから筋肉があるし、太くなっているんだと思った。最後の牛が、妙に骨盤というか後ろ脚を支える部分が頑丈で、厚みがあった。あの牛だけガッチリしているねと、THさんと話していた。

 昨日の闘牛は、アルクルセン牧場の牛で、フリ、アルバロ・ロレンソ、ヒネス・マリン。ほぼ満員。フリ以外の2人がコンフィルマシオン。去年観た印象から、変わらなかったアルバロ・ロレンソ。なかなか良いところが見えてこない。牛の扱いも良いようには感じない。フリは、この日2頭目の牛で耳1枚。ファエナも普通に良いし、こういう時って剣も決まるだろうと思っていたが決まった。4頭目も牛を動かして、剣が決まれば耳1枚でプエルタ・グランデかと思っていたら、剣が決まらす。このファエナ観ながら、今日はプエルタ・グランデが出るだろうなぁと、感じたが…。フリじゃなかったらヒネス・マリンしかいないだろう。でも1頭で耳2枚?出るのか?

 そう思っていたら最後の6頭目が始まった。カポーテ、ピカ、バンデリージャと進むが観客は口笛吹いたり、ブーイングしたり不満たらたら。でも、そんなに悪いかと思っていた。ファエナは、アレナの内側から牛との距離を取って、ナトゥラルで誘う。距離が合っていて牛が動き出す。ゆっくりした長いパセが繋がると、「オーレ」の合唱がなった。レマテの後、距離を取ってまた遠目から牛を誘うと牛が動き出した。ナトゥラルを繋げ、長いゆっくりした3/4回転するようなナトゥラルが決まると一気に盛り上がった。

 レマテの後、距離を取りデレチャソ。これもゆっくりした長いパセが続き、「オーレ」が響いた。牛は口を閉じたままムレタの向かっていた。丁度良い感じのスピードで通過する。ムレタにちゃんと付いていくので、パセが長くなる。つまり、テンプラールの長いパセなので、観客が1番喜ぶ。途中からもうデレチャソは良いから、ナトゥラルだけにすればいいのにと思って観ていた。剣を代え、そこでもテンプラールの長目のパセを繋いだ。これは、剣が決めれば2枚出るぞ思った。スエルテ・コントラリアで、良い剣が決まると観客は歓声を上げて立ち上がった。牛が倒れた。

 闘牛場には白いハンカチが揺れ口笛が吹かれる。プレシデンテは、白いハンカチを出した。それでも観客は口笛を吹き、白いハンカチを振り続けた。プレシデンテは2枚の白いハンカチを出した。最後の牛でプエルタ・グランデが決まった。隣の爺さんは、1枚といっていたが、2枚でしょ、凄い要求だからというと、2枚目が出た。

 コンフィルマシオンの日にプエルタ・グランデを決めるというのも、なかなか良い。これで終わって欲しくない。気付いた事を2つ書いておく。ソルテオで最後に観た牛。妙に骨盤というか後ろ脚を支える部分が頑丈で、厚みがあった牛が、この日、ヒネス・マリンが相手にした最後の牛だった。ああいう牛が、良いんだという体型が1つインプットされた。それともう1つ。それは部屋に戻って、この日のテレビ中継の動画を観ていたら、最後の牛のピカが終わった後に、フリがキーテをやった。それの時、誘い方もあるんだろうけど、最後3回のパセは全て左角を通していた。つまり、フリは、ヒネス・マリンにこっち方の角の方が良いよと、教えているような事をやっていた。それを見て、彼は、左角が良いと判断したんじゃないかと思う。いずれにしろ素晴らしい。

 朝起きるのが遅くグズグズしていたら、THさんから電話があった。昨日は興奮しました。終わった後、一緒に話したかってけど、バテバテで出来なかったといっていたが、初めてラス・ベンタス闘牛場で、プエルタ・グランデを観て興奮していた。まだ、闘牛の見方が定まっていないので、迷い迷い観ているという。それは、1年や2年で、闘牛の見方が定まったら、こっちの立場がない。何年観たらいいとか、何年以上観なきゃという気は、サラサラない。自分の思った見方をして、その中で、人と話したりして、築いて行けば良いことなのだから。下山さんとも電話で話したが、ちゃんとまだ話していた。残念。

 20歳のヒネス・マリンは、27日にまた、サン・イシドロに出てくる。それは楽しみ。そして、このグラン・ファエナがあっても、フェレーラのファエナが色あせることもないのだ。


 5月27日(土) 晴 10789

 暑い。昨日闘牛へ行って、上の席に着いていたら隣の人が、呼んでるよと教えてくれた。自分の席の隣の人だった。前日の約束通り、ベネフィセンシアの切符を持ってきてくれたのだ。それで、15ユーロ出したら、おつりを出すというので、いらないといった。でも、財布を出しておつりを渡された。それから上の席で、3頭目まで観て、4頭目の間にトイレに行って、元の席に着いた。そしたら、切符売ってくれた叔父さんが、カステージャ良いでしょうというので、そうだよね。と答えた。

 昨日の闘牛は、ハンディージャ牧場の牛で、パキーリ、セバスティアン・カステージャ、ロペス・シモン。パキーリ最後のラス・ベンタス。だから拍手をする人がいた。それはいいが、どうせ何もしないのだから…。案の定4頭目の牛はファエナが出来る牛なのに何も出来ない。さすが、NADAの生1本。純粋です。正確には、バンデリジェーロが打ち損じた、バンデリージャを拾って拍手を受けてました。

 2頭目カステージャの牛は凄く良い牛だった。前日のアルクルセン牧場のプエルタ・グランデした牛も良かったが、遠くから呼んで来る牛。前日の牛も素晴らしい牛だったが、この牛は、ピカの場で、白線の内側3mくらいの所から2回ピカに向かった。2回目のクイダッソ良かったのでピカドールが拍手を貰っていた。牛は観客へ捧げられた。そのまま、アレナ中央部に右手に剣を添えたムレタを持って立った。牛はテンディド6前のブルラデロにいった。

 2・3度誘っても来なかった。風が吹いてムレタが揺れていたので、カステージャはムレタの揺れを観ながらおさまるのを待っていた。するとその揺れに反応したように、牛は動き出した。カステージャは気付いていなかったので、牛が動き出し事を観客が教えた。5mくらいになったとき気づきムレタを背の方に振った。牛はそれに反応して背の方を通過した。「オーレ」がなる。3、4回パセを繋ぎ、ナトゥラル、モリネーテ、トゥリンチェラ。「オーレ」が続いた。

 遠目から牛を呼べること、従順なほどムレタの動きに付いてくる。いくらパセを繋いでも、口は閉じたままだった。タンダ・デ・ムレタソのあとに、充分に距離を取って、牛を誘っていた。基本中の基本。それを忘れてはいけない。デレチャッソから始まり手を代えてナトゥラルを繋ぎ、パセ・デ・ペチョやトゥリンチェラを織り交ぜてするパセは、牛の躍動感ある動きに支えられている。

 この日の牛もムレタの動きに合わせて、付いて来る牛。正面を向いてデレチャッソから3回パセを綺麗に繋ぎ、、ナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。喝采がなるがそのままパセを繋ぐ。途中で靴が脱げた。タンダが終わると、履いている靴も脱いで続けた。デレチャッソで牛を回し、ナトゥラルが約1回転のパセが繋がると闘牛場に歓声が大きくなった。歓声が鳴っている間パセを繋ぎ続けた。パセの後牛の前に立っていたが、ムレタを投げ捨て、右手に持った剣を上に上げるようにすると、歓声はより大きくなった。もう耳2枚でしょうと思った。しかし、剣は良いところに入った、半分しか刺さっていなかった。これでは2枚あげられない。牛は青いハンカチが出されて場内1周した。ハンディージャ牧場の、“エブレア”(ユダヤ教徒)という名の牛だった。場内1周している牛が、近くに来たら、カステージャは、指を口にやり、それを牛の体に触れていた。オメナッヘしたのだ。

 ロペス・シモンは、3頭目の牛は良いファエナをした。ハンディージャ牧場の牛も出来るんだ。しかし、6頭目最後の牛は出来なかった。パキーリよりは全然ましだけど。実はカステージャは、5頭目の牛のファエナも良かった。もし剣が決まっていれば耳が出ていたかも知れないのだが…。


 5月28日(日) 曇時々雨 8603

 東京競馬場では、日本ダービーが行われレイデオロに騎乗したクリストフ・ルメール騎手が優勝した。これで3種連続GⅠ制覇。藤澤和雄調教師は、オークスに続き、念願のダービー馬の栄誉を掴んだ。それにしてもルメールの騎乗は完璧だった。横山典弘のマイスタイルが逃げるスローな流れを1000m通過時点で読んで、向正面で仕掛け2、3番手に押し上げたのが勝因。それを観て中途半端に仕掛けた戸崎の馬は直線でたれていった。

 スローの流れを利して、弥生賞の様にはまった感じのマイスタイルだったが、さすがにレイデオロには通用しなかった。東京の共同通信杯を勝っているスワーヴリチャードが、追い上げたが届かず、最後デムーロの1番人気アドミラブルが3着に入って、マイスタイルは4着になったが、横山典弘の術中にはまることだった。それをさせなかった、ルメールの向正面の動きは、最高のタイミングで、最高の結果に結びつけた。賞賛に値する騎乗だった。おめでとう、ルメール!やっぱり思ったとおりでした。あれでの典ちゃんが残ったら凄いことになっていたが、結果的に、2番人気、3番人気、1番人気での決着になった。実況の最後は、「ついにやりました。クリストフ・ルメール、藤澤和雄の名コンビ!」だった。

 昨日の闘牛は何だったんだろう。最低の耳が出た。ほとんど何もしないのに、ムレタ無しの剣刺しで耳1枚切ったホセリート・アダメ。何なんだろう?だって、剣刺し一つとっても、ムレタを持っていないときは、ムレタを持っているときと違って、牛の顔、つまり、角と角の間に体を向かわせて剣を刺さなければ、角に刺される。でも、彼は、ムレタを持っている時と同じ左側に体を向かわせたので、牛の右角に右腰の辺りをプンタッソされて倒れた。それを牛が追ってきて刺そうとしたが、そのまま倒れて動かなくなり下敷きになった。よっぽど良い剣刺しだったのだが、メキシコを代表するフィグラが、足を止めたパセで観客を沸かせないで、こんな事で耳を取ってどうするの?

 牛の利き角を判っているのかどうかも、判然としないようなファエナしか出来なくて耳とっても、明日はない。よっぽど、ヒネス・マリンの方が、利き角を分かってファエナをしているし、牛の扱い方が上手だ。目立つことだけやって耳を貰うより、価値がある。これじゃ、スペインでは、正当派の闘牛士としてやっていけないだろうと、何年も続けてスペインのフェリアで活躍することは出来ないだろう。下手物扱いだ。

 コンフィルマシオンのフランシスコ・ホセ・エスパーダが、この日1番良いファエナをした。若いからか牛の扱いがぎこちないが、それもまた良い。好感が持てる。一生懸命闘牛をしようとしている姿が良い。耳取れるかとというところまで行って、ピンチャッソ。それ後、剣が決まったが、コヒーダされて頭部からアレナに落下して、強打して脳しんとうを起こしたようだ。そのため予定の6頭目がホセリート・アダメにいって耳を切った。今年のサン・イシドロで、1番価値の低い耳だった。


 5月29日(月) 晴 9461

 遅く起きてソルテオどころではなかった。水を飲み、ガスパチョを飲み、飯を作って食べた。それから散歩。レイナ・ソフィアまで行った。それから戻ってきた。途中で綺麗な花を見た。街路樹で、日本では記憶にない。スペインでは、時々、花が散ったあとの枯れた物が落ちていることがある。

 昨日の騎馬闘牛は、マノ・ア・マノで、カペア牧場の牛で、ディエゴ・ベントゥラ、レオナルド・エルナンデス。もうプエルタ・グランデして下さいという様なカルテル。昼買い物に出てたとき、雨が降ってきたのでこのまま土砂降りになってくれたら、嬉しいなぁと思っていたが、そうはならなかった。ベントゥラが耳1枚、耳2枚。エルナンデスが、耳1枚が2回。1番の見せ場は、この日3頭目のベントゥラ。白い馬で手綱とハミを取り外して、両手にバンデリージャを持って2本打ち。これは本来邪道。しかし、牛と対峙して、馬がそれに向かっていくということは、どれだけ人と馬が厚い信頼関係が出来ているかが伺える。そして、一発で決めた。耳2枚取ったときの場内1周の時も馬を出して一緒に廻っていた。

 騎馬闘牛は、普段と客層が違う。アボナードはあまり来ない。つまり、顔ぶれが違うのだ。間が何処に刺さっていても、文句をいう人は少ない。極端に言えば何処に刺さっても、観客の乗りで耳が出たり、出なかったり。そういうのを、ラス・ベンタス闘牛場といえど、ちゃんと考えなくても良いのだと言うことを、経験から学んだ。こういう物なのね、と。

 終わった後、偶然THさんと会う。バルに行って食事したが、そのことをいっていた。それと、コルドバに2日行く予定を、1日で戻ってきた。理由は、コルドバのアフィショナードの反応が、ベンタスに比べてあまりの違いに、嫌気がさしたようだ。もうアンダルシアの闘牛場へは行かないと、いっていた。この日も、reconocimiento を見せて貰い、抽選するところも前回は人が多くて観れなかったが、観れたといっていた。前回の時はアルクルセン牧場。この時は、ロサノが3組の牛を決めて、誰がこの組と決めて、抽選はしなかったという。牧場がロサノ、3人中2人がロサノがアポデラードをしているので、ヒネス・マリン側から何も言えなかったのだろう。しかし、それで、1番良い牛でファエナが出来てプエルタ・グランデしたのだから凄い!

 コルドバじゃなく、やっぱり、ラス・ベンタス。それはそうでしょうと思う。追っかける闘牛士がいなければ、ラス・ベンタスが1番いい。ヘミングウェイの短編小説に、『世界の首都』というのがあるが、つまり、闘牛の世界では、首都はマドリードだという事なのだ。


 5月30日(火) 晴 10533

 朝起きるのが遅いのは相変わらずだが、メルカドに行って買い物を済ませ、それから知り合いのやっている日本食料理店に行った。もう14時過ぎには満席になっていた。前菜の三皿を食べて、やっぱり日本人として恥ずかしい仕事はしない人だなと思った。昆布かワカメのサラダ。多分かつおの煮物。美味しかった。隣のスペイン人は電話しながら食べていたが、煮物がお気に入りのようだった。それから寿司。ちゃんとした仕事していると思った。隣のスペイン人は、握りの寿司を、しゃりの方にたっぷり醤油を付けて食べている。どうしてしゃりに醤油をつけるのか僕には理解が出来ない。

 昨日の闘牛は、入場行進の後、去年テルエルで死んだ、闘牛士、ビクトル・バリオを記念して1分間の黙祷が捧げられた。ホセ・ルイス・ペレダ牧場の牛で、モレニート・デ・アランダ、イバン・ファンディニョ、ゴンサロ・カバジェーロ。コンフィルマシオンのカバジェーロが、最後の牛で場内1周をした。カバジェーロは、真面目にパセを繋いでいた。しかし、この日は牛があまり良くなかった。アランダもそう。ファンディニョは、この前よりも少し良かった。見所が少ない闘牛だった。最後の牛の最後の剣刺しだけが印象的だ。角度の深い剣が決まり牛が倒れると、弱い耳要求があった。それで、場内1周。口笛も吹かれていた。


 5月31日(水) 晴 11005

 朝定刻より遅めに起きて、散歩に出た。今日はソルテオに行く気満々だ。昨日闘牛は見習い闘牛。若牛が、モンテアルト牧場(ドメク系)。見習い闘牛士が、レオ・バラデス(メキシコ)、ディエゴ・カレテロ、アンディー・ジョウネス(フランス)。久々に酷い闘牛だった。若牛はほぼトレアール出来るのに、ほぼ何も出来ずに終わっている。レオは、カポーテで沸かせた。ガジョシーナをやったり、ロペシーナをやったりメキシコ風派手さを持っている。初めの牛を動かしていたがそれだけ。クルサードしない、パセの時、牛を遠くを通すなど、パセをすればするほどアラばかりが見えてくる。口笛を吹かれていた。アンダルシア風もそうだが、パセを繋げれば、「オーレ」がなると思った大間違い。質の高いパセでなければ「オーレ」はならない。耳取れる若牛が出ているのに、耳を取れない。勿体ない。

 ディエゴは、牛の扱いが下手。2頭目の牛も耳の取れるような牛だったのに、レオ以上に出来なかった。3人の中で1番特徴がない。アンディーは、もう酷すぎ。それって闘牛?レマテの後、牛から7・8m離れてそれからタンダ・デ・ムレタソをするのがセオリー。でも、その場で左から右、右から左とムレタを持ち替えて、直ぐまたパセをする。それじゃ牛はますます動かなくなる。だから、牛の近くにずっといる。ラス・ベンタス闘牛場の観客は最後は黙ってしまった。早く終わらないかな…。隣の爺さんと距離が判ってないとか、ブツブツ言っていた。

 闘牛を見始めた頃、酷い闘牛の後、新聞に、?Donde estan Novilleros?(見習い闘牛士はどこ?) と、書かれた事があった。昨日はまさにそんな感じだった。牛がいうのに、闘牛士がいない。そういう状態だった。


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