断腸亭日常日記 2015年 9月奈良・京都旅行

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年のスペイン滞在日記です。
太字で書いたモノは2010年11月京都旅行。2011年3月奈良旅行東日本大震災、11月が京都旅行、2012年4月、11月、12月の京都旅行、2013年4月京都旅行5月出雲遷宮旅行10月伊勢神宮の遷宮旅行11月京都旅行、2014年5月6月、7月の京都旅行、2015年6月京都旅行滞在日記です。

99年4月15日〜5月11日 5月12日〜6月4日 6月7日〜6月10日 2000年4月20日〜4月29日 5月1日〜5月14日
5月15日〜5月31日 6月1日〜6月15日 6月16日〜6月29日 2001年4月19日〜5月3日 5月4日〜5月17日
5月18日〜5月31日 6月1日〜6月11日 6月12日〜6月22日 2002年4月16日〜4月30日 5月1日〜5月15日
5月16〜5月31日 6月1日〜6月13日 2003年4月16日〜5月24日 5月25日〜6月10日 6月12日〜6月26日
2004年4月14日〜5月7日 5月8日〜5月31日 6月1日〜6月17日 2005年3月31日〜4月24日 4月25日〜5月22日
5月23日〜6月16日 2006年4月13日〜5月6日 5月7日〜5月29日 5月30日〜6月19日 2007年4月20日〜5月19日
5月20日〜6月16日 2008年5月13日〜6月16日 2009年5月25日〜6月6日 6月7日〜6月12日 6月13日〜6月22日
6月23日〜7月3日 7月4日〜7月21日 9月24日〜10月2日 2010年5月29日〜6月7日 6月8日〜6月26日
11月14日〜11月26日 2011年3月5日〜3月17日 7月20日〜7月31日 8月1日〜8月22日 9月14日〜10月3日
 11月21日〜11月27日 2012年 4月2日〜4月22日 11月1日〜11月13日  12月4日〜12月11日 2013年 4月18日〜5月4日
 5月5日〜5月13日  5月14日〜5月24日 10月1日〜10月29日  11月25日〜12月6日  2014年1月1日〜1月8日
 1月9日〜1月31日  2月2日〜3月11日  3月12日〜4月5日  4月6日〜4月14日  4月15日〜4月30日
 5月1日〜5月8日  5月9日〜5月21日  5月22日〜5月30日  5月31日〜6月23日  6月24日〜8月19日
 8月24日〜9月2日  9月3日〜9月17日  9月18日〜10月27日  10月28日〜12月18日 2015年1月2日〜3月10日
 3月11日〜5月22日  5月28日〜6月10日  6月17日〜9月20日    

 9月22日(火) 晴 19006/2

 朝、東京駅から新幹線に乗って京都へ。京都に着いたら直ぐに、近鉄に乗って奈良へ到着。近鉄の奈良駅を降りて、地上にあがると『ブラタモリ』でやっていた、東向き商店街あった。そして、なんと人を連れてブラタモリでタモリを連れ歩いた、断差評論家?がいた。いきなり、じぇじぇじぇ!!!人の多さに、じぇじぇじぇ!!!

 そして、その東向き商店街を通り抜け、一条通を抜け、ならまちの方へ。ずっと人が一杯で、食事処は混んでいる。取り敢えず宿に行って、荷物を預けた。それから、昼食を取りに出かけた。やはり何処も混んでいる。13時過ぎているのに。猿沢池を通り、興福寺を抜け、県庁と国立博物館の間にある広場で、「C’FESTA」をやっていた。Cは、Chef のC。美味そうなのが一杯あったがここも、何処も長い列が出来ている。仕方なしに、博物館を過ぎて、東大寺門前夢風ひろばで、吉野葛の店で食事した。

 それから、目的の国立博物館の、『白鳳展』を観た。うーんなるほどと、収穫があった。奈良に来て、天武天皇、持統天皇の白鳳時代は、日本史の中で、非常に重要な時代だ。その時代の仏像などを観ていると、日本を日本にしようという仏教や大宝律令によって国を治める形を作った。その文化が、白鳳文化。

 ところで、仏像には印相というのがある。つまり、仏像の手の形である。それを読みながら、ラグビー日本代表の五郎丸歩のプレスキック前のルーティン(決まり事)の、両膝を曲げ、尻を後ろに出し、脇を締め両手を重ね人差し指と親指同士を付けて、尖らせて後両手3本の指を結ぶルーティン。まるで仏像の様だ。あるいは、忍法を唱える前の忍者の様だ。初めて観ると恥ずかしい気もするが、それで、PKが決まるから様になる。

 今日はネットが繋がらない旅館。明日、京都へ行ったらアップしよう。


 9月26日(土) 晴 80236/4

 23日は朝から自転車を借りて、正倉院、二月堂などの東大寺を観て、C'Festへ行ってソーセージを食べて、春日大社へ行った。遷宮なので、特別参拝で仮本殿が観れた。本殿前の大木前では、剣の殺陣のような儀式が行われた。女性もいた。本当は、歩いて一の鳥居、二の鳥居を通って春日大社へ行きたかったが、とっても時間が足りなすぎる。いつか朝日の昇る御蓋山のバックの春日大社を観たい。

 それから、京都へ戻って、ホテルにチェックイン。相国寺の承天閣美術館へ。そこで鹿苑寺書院に描かれた、長谷川等伯の絵を観る。この絵が観たかった。、淋派の美術展が多い中で、こういうのはなかなか観れないモノの1つだ。それから地下鉄で三条京阪へ行って、ISOさんと夕食。コースを頼んでいたが、店の手際が悪く、なかなか出てこない。途中で、ISOさんが怒っていた。

 翌日は、朝食後シャワーを浴びて、大徳寺へ向かった。弧篷庵を観るためだが、まず興臨院へ。小説『等伯』で、夕姫と等伯が会うところだ。昼食を大慈院の精進料理屋で、結衣さんと食べる約束をしていたからだ。7つの漆の器に入れられた料理が順番に手際よく出され、味も美味しかった。そこで、スペインでセバスティアン・カステージャの闘牛を観てきた話を聞いた。下山さんは、結衣さんに付き合って何日が闘牛を見に行った。下山さんは、ロペス・シモンの闘牛を観にオトーニョの闘牛を見に来るようにメールをよこしたが、なかなかなぁ。

 結衣さんは、本当に良かったら、来年も良い闘牛をするだろうと、俺が言っていたと、下山さんへ言うという。食べ終わった器を片づけないので、聞くと、この漆の器は、大きいのから小さいものまで7つが重なるようになっているのだという。食べ終わったら全部重ねて片付けるということだった。なるほどと思った。昼食後駐車場まで一緒に行って、タバコを吸って、結衣さんと別れた。

 それから弧篷庵。小堀遠州が隠居所として過ごした家。火災で焼失後、弟子の不味が図面を基に再建したのがそれ。多分庭は残っていたのだろう。非常に落ち着きのある庭。ずっとそこに佇みたい気分にさせられる。こんな所にいたら、幸せだろうと思った。

 25日は、朝食後シャワーを浴びて、チェックアウト。ロッカーに荷物を預けてタクシーで、角屋おもてなし文化美術館へ。そこで、与謝蕪村、円山応挙の絵を観る。ここの庭もよかった。臥龍の松がある庭でなく、小さな庭の方が好みだ。くつろげる。1時間くらい観て、西本願寺へ。こういう時じゃなければ観れない。桜や紅葉の季節は、美術館や西本願寺へは来ない。その時期は他に行くところが一杯あるからだ。そして、1度食べたかった、湯葉納豆丼を食べた。美味しかった。こういう値段の店でも、充分京都は楽しめる。


 10月1日(木) 雨 44394/5

雨の降る夜は 心もぬれる
まして一人じゃ なお淋し
憎い仕打ちと うらんでみても
戻っちゃこない あの人は
ああ 柳ヶ瀬の 夜に泣いている


二度と逢えない 人なのに
なぜか心が 又いたむ
忘れたいのに あの夢を
想い出させる この酒が
ああ 柳ヶ瀬の 夜に泣いている

青い灯影(ほかげ)に つぐ酒は
ほろり落とした エメラルド
もだえ身を焼く 火の鳥が
雨に打たれて 夜に泣く
ああ 柳ヶ瀬の 夜に泣いている♪ ーー『柳ヶ瀬ブルース』 作詞作曲:宇佐英雄ーー

 雨が降っているからだろうか?美川憲一が歌う柳ヶ瀬ブルースを思い出した。この歌は、典型的な男が歌う、女歌である。美川の声は、非常に男性的な太い声である。なのに、女心が解る。彼の特異性は、後の美川の変貌ぶりによってこの歌の中に漂っていたのかも知れない。歌謡曲には、男が歌う女心の歌というのがある。

♪流す涙で割る酒は 騙した男の味がする♪ 森進一が歌う『港町ブルース』もまた、男が歌う女心の歌である。森の声はだみ声である。それ以前、矢吹健が歌った、『あなたのブルース』のだみ声があったので、森の声が受け入れられる土壌があった。男のだみ声で、せつない女心を歌う。そして、それを大衆が受け入れる。

 かと思えば、同時代に、♪あなたが咬んだ 小指が痛い 昨日の夜の 小指が痛い♪を歌う伊東ゆかりの『小指の思い出』の様に女が歌う女心の歌もある。約束の指である小指を、前日男に咬まれた女がそれを思い出している風景。想像が脹らむ歌詞だ。伊東ゆかりの表情も声も、想像を脹らんでくる。

 何となく、夜降る雨を観ながら、口ずさんだ、♪雨の降る夜は 心もぬれる♪からこんな事を考えてしまった。


10月7日(水) 晴 76720/7

 子供の頃、盛岡駅にあった珈琲屋のコーヒーの香りは今でも思い出す。あの香りがする珈琲屋はなかなかない。東京にも何処かにあった記憶があるが、京都へ行くと、そういうコーヒーの香りがするところがある。

 土塀に素焼きに近い花入れがあり、そこに青紫の花が一輪飾られた珈琲屋。和服の老人は入ってくる。
「いつもの」
「はい」
水差しでコップに水を入れ1枚板のカンターの老人に差し出す。
「ええ夏のしつらえや。 朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど 夕影にこそ 咲きまさりけれ」
「それは桔梗です」
「桔梗を朝顔と間違えて詠んだ、万葉集の詠み人知らずや。朝顔は夕方に咲かへんよってにな」 ーー『京都人の密かな愉しみ 夏編』よりーー

 珈琲屋の店主は、息子。客はその父親。父親は茶道の家元。息子は長男で、大喧嘩して7年間南米やヨーロッパを放浪して各国でカフェやバルなどで働きバリスタ資格を取った。家元を継いだ次男が、どう考えても茶の才能があるのは兄貴の方や。凡才の俺が家元。などとぼやく。なぜ京都へ戻ってきたかと言えば、理想の水が京都にあるからと、言う。

 京都は、北山あたりの水が、船岡山に当たり、地下水脈が東へ行き、今の御所の辺りを通り南へ下り、昔宇治川と繋がっていた巨椋池(おぐらいけ)に湧き出たという。

老人が風呂敷を抱えて入ってくる。
「おこしやす」
風呂敷から長徳利を出して、「これでコーヒー入れてくれんか」
長徳利の水をコップに入れて香りかぎ、水を飲む。利き水である。壁には、花瓶に蓮の葉と花が生けてある。
「これは何処の水ですか?」
「妙心寺さんの水や」
「最高の軟水や」
「豆はいつものエチオピアでええわ」
時計をはずし、竹で編んだ行李を出し開ける。茶入れ、茶杓、茶筅、茶碗、袱紗の茶道具が入っている。
「昔自分で焼いた茶碗です」
そういって茶釜を出し湯をたてる。それから抹茶を茶碗へ入れ湯をそそぎ、茶筅で茶をたてて老人の前に出した。
「どうぞ」
「ちょうだいします」
音を出して飲み干し「けっこうなお手前でした」と言い、頭を下げる。
「うちは珈琲屋ですが、お望みやったらいつでも茶をたてます。その時、私の手前に不調法があれば、遠慮のう叱って下さい」
壁に生けられた蓮の花と葉を観て、「ええ夏の終わりのしつらえや」 
カメラが引き、和服の背にある蓮の花の家紋を写す。
「心尽くしのもてなし、胸に沁みました」と言って、頭を下げる。店主も頭を下げる。 ーー『京都人の密かな愉しみ 夏編』よりーー

こういうやりとりが、何故かジーンと来る。

 ラグビーのワールド・カップで日本はサモアに圧勝。そして、2日続けて日本人がノーベル賞受賞。


 10月16日(金) 雨 99185/9

 ラグビーのワールド・カップ日本代表は、初めて予選リーグ3勝をした。が、3勝して決勝トーナメントへ進めなかった初めてのチームになった。優勝候補補の一角南アフリカを破ったインパクトは凄かった。その後、ゲームプランがちぐはぐだったスコットランドに負けたのが痛かった。サモア、アメリカには、余裕をもって勝っていたのは、非常に驚きだ。安心して観ていられた。バックスに展開していても、攻められていても、バックス負けはしないだろうと思ってみて入れたし、フォワード戦もスクラムで押したり、モールでも勝っているシーンが数多く観られた。

 帰国した、エディー・ジョーンズヘッド・コーチ以下チームは、記者会見やテレビ出演など忙しく過ごしたという。


 10月22日(木) 曇 51643/6

 盛岡から戻った。東京では売り切れていた『Number』の臨時増刊号ラグビー特集が2軒目の本屋で見つかった。弟と昼食を取り親父の所へ行った。それから家に戻り、録画していた京都関係のテレビ番組を観て、そば屋へ行って、鴨南蛮を食べた。夜は弟と話をした。今日は、母親と親父の所へ行った。母はもう何も出来ない。寝返りは勿論、話すことも出来ない。終わりが近づいてきているのだろう。

 「これは私の持論だが、文化人類学的に言って、日本には、二種類の人間が存在する。日本人と、そして、京都人だ。」 ーー『京都人の密かな愉しみ』よりーー


 10月29日(木) 66468/7

 盛岡で買えた、『Number』の臨時増刊号ラグビー特集は、その書店にあった最後の1冊だった。東京の書店で聞いた話では、売り切れが続出する書店が増えて、21日に増刷が出来上がるという。それから全国の書店に出回るだろう。買いたい人はこれからでも買えると言うことだ。

 今年琳派誕生400年を記念して京都国立博物館で、『琳派 京を彩る』が開催されている。これを観に11月京都へ行く。勿論、紅葉も観る。その前には、永青文庫で行われている、『春画展』を見に行きたいと思っている。

 京都新聞のHPには、神護寺の紅葉が色づき始めたと出ていた。そろそろ京都も1年で1番観光客が来る11月が近づいて、心も踊り出す時期になってきた。


 11月5日(木) 晴 67888/7

 11月の始めに、結衣さんからメールが来て、細見美術館が2時間待ちだという。京都国立博物館は、3時間待ちだという。『淋派 京を彩る』は、京都で爆発的な人気になっている様だ。お寺などでは秋の特別拝観も始まっている。奈良でも、『正倉院展』も行われている。

 秋です。栗も芋も街角で売られ始めている。京都のお寺の紅葉も色づき始めてきた。


 11月11日(火) 雨 45880/6

 3日間雨が降り続いている。先日、『春画展』に行ってきた。下山と何度か通った、椿山荘の隣にある芭蕉庵の近くの永青文庫。普段人通りが少ない通りにタクシーが入ってきて、降りる人。ここを知っている人は少ない。会場の永青文庫の中は、人で一杯だ。女性の方が多い。春画にこんなに興味があるのかと、驚いてしまう。少し前、河鍋暁斎の展覧会でも、、春画のコーナーがあった。

 展示されている絵の絵師は、浮世絵のそうそうたる絵師たちだ。北斎、歌麿、豊国、狩野派や長谷川派の絵師の名前もあるし、応挙の絵までで評判である。猥褻か、芸術家かという論争もあるのかも知れないが、イギリスで開催した、『春画展』が今回日本でという話になったが、何処の美術館も手を挙げなかったという。それで、元首相の細川護煕が動き、細川家の文化財を保管展示している永青文庫での開催になった。

 日本で初めての、『春画展』。もっと広いスペースでやるきっかけになるだろうと思う。そのきっかけを、関係者の尽力で開催の運びになったようだ。女性や外国人が多く関わったことは、この春画展の特徴だ。おそらく、今の漫画の原点の様な春画。笑い、ユーモアがあるから良い。エロいだけでは面白くない。


 11月16日(月) 晴のち曇一時雨 58930/5

 「なんでどす、なんでどす、なんでどす」 「びっくりぽんや」 NHK朝の連続テレビ小説『朝が来た』の朝の台詞のような事件がパリで起きた。IS(イスラム国)が組織的な無差別テロを決行した。120人以上の殺害され、300人近い人が負傷し、内80人くらいの人が深刻な状態だという。殺害された7人のテロリストの内1人がギリシア経由のシリア難民だという。非常に複雑な要素を含んで、ヨーロッパの難民政策の見直しや、アメリカ、ロシアを含めたIS対策が取られて行くことだろう。

 恨みや憎しみには、仇をとるのではなく、知恵で対抗しなければならない。強い意志を持って、テロに対抗しなければならない。暴力を否定することはしない。しかし、暴力よりも、もっと良い解決方法があることを、提示しなければならない。


 11月19日(木) 曇 28581/3

 準備は出来た。明日から京都へ行く。淋派、紅葉の京都へ。


http://www2u.biglobe.ne.jp/~tougyuu/以下のHPの著作権は、斎藤祐司のものです。勝手に転載、または使用することを禁止する。