断腸亭日常日記 2017年 3月

--バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  --バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年、2016年のスペイン滞在日記です。
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 3月11日(土) 晴 13055

 「そばにしますか、うどんにしますか、それともマメブにしますか?」。朝の連ドラ『あまちゃん』で、安部ちゃんが、東京に出稼ぎに来て屋台で売っていた時に、お客さんに訊く言葉だ。あれから、6年が経った。NHKでは、朝から東日本大震災関連の番組をやっている。岩手・宮城・福島の復興は未だ遠い。朝一に出ているアッキーの「アッキーがゆく復興の地」は、三陸鉄道の久慈駅から始まった。『あまちゃん』も終わり、観光客は年々減って、去年は台風の影響もあり上半期で7万5千人の乗降客が減ったという。うに丼食べたい。

 東日本大震災がドンドン風化する中で、福島県の被災者が避難地で「いじめ」にあっている事件が数多く起こっているニュースが報道されている。あの日、日本中が、何とかならない物かと思った気持ちは、もう何処にもないような感じになってきている。2020年東京オリンピックは、復興を阻害する強い要因として立ち塞いでいる様でもある。企業も個人もそちらの方に重心が傾いている。そういう自分自身もそうなのだが・・・。

 震災後、福島から来た人が働いていた事があった。仕事がなくなって東京に出てきたのだという。東京は、驚くことばかりだといっていたが、故郷の話になると目が輝いていた。春になると桜の名所が一杯あると言っていた。その中で三春という処は、梅・桃・桜の花が一緒に咲くので、三春という名前が付いたのだといっていた。綺麗な花が咲く三春。観光客がいても、いなくても、花は咲く。津波で子供を亡くした親は行き場のない悲しみを抱えて生きている。語り部になったり、人との繋がりが生きる糧になっている人もいる。震災遺児たちの番組も。岩手・宮城・福島の子供たちが笑顔で、夢を語れる様にと、いつも思っている。未来が輝くことを願っている。

 ビパップ全盛の時代を作った、バードこと、チャーリー・パーカー率いるバンドには、トランペットの名手ディジー・ガレスビーがいた。吹くとき、ほっぺたから耳の近くまで、ぷっくら膨らんだ状態でトランペットを吹く姿は、それだけでもう名手。折れ曲がって上を向いたトランペットがトレードマーク。高音をあれだけ早く切れがある演奏をするのは、物凄く難しいのだという。そんな中に、マイルス・デイヴィス登場した。バードたちの演奏に付いていけない。多くのミュージシャンがマイルスとやるのを嫌がったという。しかし、音楽学校へ行っていたが、それを辞める決断をして父親に会いに行く。

 父親は息子が相当な覚悟を持っていることに気づいたようで、マイルスにあるアドバイスを送る。「モッキンバードという鳥は、他の鳥の鳴き声を真似することが上手い。だが、自分の鳴き声を持っていない。お前は、ああなってはいけないんだ。」といったという。ディジー・ガレスビーが辞めた後釜でバードのバンドに入る。それから自分名義のアルバムを出すようになる。そして、ルイ・マル監督の『死刑台のエレベーター』のサウンドトラックで、一般に名前が知れ渡る。あの音は映画と共に、強烈な印象を残している。元バンド仲間がいっていた。マイルスはよくミュート(弱音器)を壁にぶつけたり、踏んづけたりしていたという。何やっているだと訊くと、俺のサウンドを作っているんだといったという。ベル(トランペットの音が出る部分)にミュートを付けて演奏したからだ。


 3月12日(日) 晴 6717

 バレンシアの火祭りが始まった。THさんは、闘牛を観に行っているようだ。春を知らせる火祭り。日本では、東大寺のお水取り。火も水も同じ意味を持つ。実際にお水取りで1番人が集まるのは、二月堂で、火を点けた大きな松明のようなものを持って駆けるのだ。いよいよ春である。と、いってもまだ寒いが、バレンシアは暖かそうだ。

 ドラマ『スリル!』を観ていて、占い師の女が、盗聴器を付けて話の内容を聞いて、その人間の秘密を当てるというシーンがあった。その後、策が過ぎて、ばれることになる。墓穴を掘るのだが・・・。それを観ていて、西岡恭三の『占い師のバラード』という歌を思い出した。内容は、お金のことや、人の恋占いをズバズバ当てる女占い師が、ある日ぴょこり来た風来坊に一目惚れして、お金を貢ぐ。みんなにろくな奴じゃない。やめた方がいいといわれた。でも付き合い続け捨てられる。それから男を探すも足跡すら見つけることが出来なかった。♪あんたの未来がどんなものだか 言い当てられるそんな人がだよ 自分の明日が判らなんだってお話さ♪って落ち。

 つ・ま・り(ドラマ『スリル!』風に)。客観的に占えば当てることが出来ても、主観が入ると占えなくということか、恋して占いの能力が消えてしまったかと、いう事なのだろうと思う。


 3月13日(月) 曇 7107

 昨日闘牛では、闘牛士2人がコヒーダされた。アンドゥハルで、ロカ・レイがコヒーダされ入院した。仙骨と尾骨を痛がっているので、痛みを緩和するために、抗炎症剤の処方治療したようだ。耳2枚と尻尾1つを取って、病院に行った。バレンシアでは、ファン・ホセ・パディージャが、右大腿部に15cmと20cm、胸部に15cmの角傷を受けた。可能性として重傷。最後まで闘牛をしてピンチャソ2回なのに耳1枚取った。

 バレンシアのビデオをダイジェストで観た。凄いと思ったのが、クーロ・ディアス。何なんだろうと思った。昔から観ているが、これほどとは思わなかった。ムレタ捌きが半端じゃない。上手く言えないが、料理でいうなら、味がある。濃い。コクがある。驚きがある。もし、同じムレタ捌きを牛がいない状態でやっても、これほど感動しないだろう。でも、牛の動きとムレタの調和が感動をよぶ。ちょっと、これほどのムレタ捌きは観ることは出来ない。凄い。よだれが出てくるようなファエナだ。剣刺しだけが駄目だったが・・・。


 3月14日(火) 曇/雨 14042

 子供の頃、触っていて幸せな気持ちにさせてくれたのは、米びつの米を触っているときだった。この米全部食べれるんだと思ったら米のぬくもりと共に幸せな気持ちになった。触っていて、気持ちが良いなぁと思ったのは、灰だ。粒子が細かいからだろうけど、スベスベでとっても気持ちが良かった。炭を入れて火がついていると熱いが、火が入っていないと触れたので、誰もいないときに触っていた。咳やくしゃみをすると大変な事になるが、灰ほど気持ちの良い触感はない。

 下山さんは今日スペインへ帰る。セビージャでまた会える。帰国していろいろ動いていたようだ。今回一緒に墨東を散策したのは、面白かった。1人じゃ歩かなかったかも知れない。でも、散策してインパクトがあった。永井荷風を感じ、葛飾北斎を感じ、風太郎を感じだ。江戸と明治を感じた。この地に生まれ、坊主頭で、地味な色の着物に帯び、下駄を履いてというのが、トレードマークの漫画家、滝田ゆうの『寺島町奇譚』が読みたくなった。漫画に描かれる電信柱が、何故あんなに郷愁をよぶのだろう。

 現世(うつしよ)に 現れ出でたる 結界の 向で輝く 剣士(torero)の舞踏 風吟
 依り代(よりしろ)に 成ったか如き ファエナを見 霊が下りたる クーロ・ディアスや  風吟


 3月15日(水) 雨/曇 10050

 朝リハビリに行き、出来上がったパスポートを取ってきた。スペイン行きの準備は整ってきた。下山さんも無事にセビージャに着いたようだ。

 物言いが付いた一番、「勢(いきおい)の肘が先に着いたのではと、物言いが付きましたが、白鳳の体(たい)がなかったため、行事軍配通り勢の勝ちと致します。」と、審判部長がアナウンスした。横綱を破った勢は、金星をあげた。日本人なら何を言っているか判る、審判部長の言葉も、日本語が分かる外国人でも、何を言っているか判らないかも知れない、言い回しだろう。「体がない」という言葉と同じような外国語はあるのだろうか?「つっぱり」という言葉も、同じような事が言えるのではないだろうか。

 同じような事は、闘牛用語にある。toque という言葉は、一般的には、触る、(楽器を)弾く、事である。しかし、闘牛では違う意味で使う。ayuda という言葉は、助けるとか、サポートを意味する言葉だが、闘牛では両手を使ったパセのやり方をいう。日本では、相撲用語は、一般にも浸透している。スペインでも闘牛用語は、色々使われている。言葉も分かれば、いままで気付かなかった事まで見えてくることもある。


 3月16日(木) 晴/曇 7272

 昨日までの2日間は寒かった。雪が降るくらい寒かった。渡瀬恒彦が死亡した。探偵もというか刑事物のシリーズドラマで、主演していた。庶民的な感じの人だった。芸能界では、最強の喧嘩人ともいわれる人だった。しかし、兄・渡哲也の前では、あくまで弟の顔だったという。女優の大原麗子と一時結婚をしていた。彼女の葬式の時は、目立たないようにしていたという。渡瀬恒彦って、非常に人情味を感じる役柄が多かったと思うが、実際もそうだったんだろうと思う。兄のコメントも発表されたが、余命1年と宣告されていたという。追悼番組で、シリーズドラマを再放送して貰いたいと思う。

 WBCの中継があると、見入ってしまう。大リーガーは青木しか出ていない。田中将大もダルビッシュも岩隈も上原も出ていない。そして、大谷翔平もいない。それでも、勝ち続けているから、テレビの視聴率も32%を超えた。日本人って野球が好きなんだと思う。サッカーのワールド・カップの中継ももう直ぐあるが、絶対的なファン層が多いからだと思う。押さえの牧田は、アンダースローピッチャー。マウンドの土10cmか20cmくらいからボールが出てくる。こういうピッチャーは外国にはいないだろう。急速は早くて130キロ台。遅い球は、100キロ以下の球を投げる。それでいて、なかなか打てない。

 日本は、1次リーグ、2次リーグを全勝で、アメリカでやる決勝トーナメント出場を決めた。アメリカラウンドからは何処が出てくるかは判らない。前回優勝の、ドミニカ

か、それに勝ったプエルト・リコか、アメリカか。いずれにしろ簡単にはいかない試合ばかりだ。先発投手は、菅野、千賀が良い。野球は投手が良ければ何とかなる。後は、チーム力。守備も良い。向は、バリバリの大リーガーが中心。それでも、出来るところを見せて欲しいものだ。


 3月17日(金) 晴 9483

 今日も朝が寒いかと思ったら、そうでもなかった。Eテレを観ていたら、『100分de名著』は宮沢賢治スペシャルだった。テキスト買って来なきゃと思った。久々にカレーを食った気がする。自分で作ると、毎日にでも良いけど、今のカレーは辛いから、甘口が好きだから、外ではちょっとなぁと、思ってしまう。昔のそば屋とかにあった、豚バラ肉の甘口カレーが食べたい。もう絶滅してしまったようなカレー。

 サン・イシドロの切符を買った。考えてみれば、切符も高くなった。ソルのバレラが、4000ペセタくらいで、ソルのアンダナーダが300ペセタだった。多分、3倍くらいになっている気がする。それだけ、スペイン人の所得が上がったとは思わない。ものの値段というのは、そういうものとは、影響を受けるにしても、決して比例するものではない。昼の定食もマドリードで400ペセタくらいだった。今、10ユーロが普通。ちなみにユーロに切り替わるときの率は1ユーロ=166ペセタだった。


 3月18日(土) 曇 10468

 昨日というか、正確には今日の夜中、バレンシアの闘牛のライブをネットで観れた。ロカ・レイの耳。エル・ファンディの耳も観れた。ファンディは、世界一バンデリージャ打ちで観客を沸かせることが出来る。カポーテもそこそこだが、ファエナが落ちる。牛が凄く良いのに、なかなか盛り上がらない。ムレタの振り方に問題がある。この時も、それが露呈した。遠くから呼べる牛。左の方が良かったかな。アイホンで観ているので、画面が小さい。

 そんなことやってたら、THさんから連絡。ネットでバレンシアの闘牛のライブを観ているのを驚いていた。こっちも驚いている。去年は、たまにしか、観れなかった。今年は、それが出来るようだ。こんなんだったら、セビージャのフェリアを観に行かなくても良いじゃないかとも思う。その辺は、考えようと思う。THさんは、ビクトリーノ・マルティンの牛で、クーロ・ディアス、パコ・ウレニャなどを観に行くといっていた。向に住んでいると、こうやって観に行ける。羨ましい。サン・イシドロに通い始めて、ビクトリーノ・マルティンの牛を観に行こうと思ったのは、何年経ってからだろう。それを2・3年でそう感じるというのは、物凄い吸収力だ。今のクーロは凄い!良い闘牛を観れることを祈る。


 3月19日(日) 晴 7711

 春めいてきたなと思っていたら、明日は春分の日。桜のつぼみもふくらんできた。来週は満開になるだろう。天皇賞と皐月賞のトライアルが行われた。天皇賞へは、順当にサトノダイヤモンドが勝ち。皐月賞は、2歳チャンピオンが負けて、混沌としてきた。今日は、バレンシアの闘牛最終日。


 3月20日(月) 晴 7345

 18日チャック・ベリーが死んだ。ロックンロールの元祖といって良いだろう。映画『アメリカン・グラフィティ』の中で、DJのウルフマン・ジャックがかけるレコードが50年代のポップスで、ビル・ヘイリー&ザ・コメッツの『ロック・アラウンド・ザ・クロック』やチャック・ベリーの『ジョニー・B・グッド』。リーゼントにGパンとタバコに車。アメリカの青春映画だ。この映画の監督が、ジョージ・ルーカス。

 チャック・ベリーは、アメリカだけじゃなく、イギリスや他の国のミュージシャン影響を与え、ロックが時代の音楽になっていった。その礎を築いた重要な1人だ。ゴスペルや、ブルースなどの黒人音楽を、白人が弾き歌うことによって、ロックが出来ていく。文化の融合だ。多くの黒人ミュージシャンが、白人のプロデューサーに見いだされ、レコーディングしていった。アメリカに黒人差別が根強くあった時代に、音楽で自己表現していったのが、ロックの礎を築いていった多くの黒人ミュージシャンたちだ。チャック・ベリーはその象徴の1人。ご冥福を祈る。


 3月21日(火) 雨 11361

 開花宣言が発令された東京は、雨が降り続いている。朝の早い内に、選抜高校野球3日目は中止の発表があった。全国的に雨である。WBC準決勝プエルト・リコとオランダは、バレンティンの先制ホームランで始まったので、乱打戦になるのかと思いきや、3-3で延長になり、11回から導入されたタイブレーク制(ノーアウト、1・2塁からその回をスタートする)で、オランダはゲッツーで無得点。プエルト・リコは、犠牲フライで決勝点をあげ、決勝に進んだ。明日は、日本とアメリカの準決勝。どうなるか楽しみ。選抜で岩手県の高校がというか、盛岡の高校が二校出るのは初めてじゃないかいかなぁ。こういうのって、菊池とか、大谷効果なのだろうか?その一校が延長で10-9で逆転サヨナラ。校歌を聴いていたら、?と思った。高校名も、自分が高校生の時はなかった高校。

 ニームのフェリアで、ファン・バウティスタがウニコをやるらしい。これは、シモン・カサスのメッセージなのか?今年から自分がアポデラードになって直ぐに、ニームでウニコをやらせる。これを初めにメディアに情報が流れたという事は、ホセ・トマスは出ないということを意味しているような気がする。ヘレスの情報はまだないが、出るならここだろう。マティジャが発表しなければ、ホセ・トマスの出場の目は、ほぼなくなる可能性が高くなる。メキシコで、闘牛士が牛に尻を刺されて重傷を負った。肛門付近に刺さった角は、直腸に達して、深刻な損傷を与え、括約筋を破壊し人工肛門にせざるを得なかったようだ。


 3月22日(水) 晴 15084

 WBC準決勝日本対アメリカは、1-2で惜敗した。2つのエラーが失点に繋がった。先発した菅野投手は、素晴らしい出来だった。初めのエラーは名手菊池が何でもないセカンドゴロを後逸して2塁にバッターランナーが進んだ。そしてタイムリーで失点。菊池は、ソロホームランで1-1の同点に追いつき、8回には、サードの松田がゴロをファンブルして、三塁走者が生還して1-2になった。千賀が4者連続三振を取った後、2本のヒットで1アウト2、3塁でのファンブル。1塁に投げて1アウトを取ったが、結果的にこれが決勝点。

 ピッチャーが良かっただけに、残念だ。小久保監督は試合後の会見の最後に、「選手はリスクを顧みず球界を引っ張っていくという使命感でやってきたので、それについてはしっかりと敬意を表したいと思います。ここまで日本球界を引っ張ってくれた選手たちだと思います。」と、いって締めくくった。小林捕手は、「グランド上で自分の力以上のものが、出せたと思いますので、色んな人に感謝したい」。 テレビでは、終了直後は悔しかったけど、時間が経つと良くやったと思いますねと、いっていた人がいた。

 大相撲中継を観ていて感じたことがある。良いところまで行って、惜しくも負けた力士に対して、観客は惜しみない喝采や歓声を上げる。これなんだなぁ日本人はと思った。この残存感を味わうのだ。昔でいえば、舞の海、今でいえば、宇良の様な小さな力士が、大きな力士を倒す処に、勝負を観るのだ。負けて元々からの逆転。強いと思われるものに対して、挑むものを応援する。負けたとしても、その余韻に浸るのだ。

 何だろう、野球で1番好きな試合は、投手戦で、しかもエラーのない1-0というのに感動する。強力打線をバックに投げる投手にでなく、貧打の打線をバックに投げる投手が、1-0で勝つととても嬉しい。そして、負けても、その投手が好きになる。勝者のやりきったという表情と、力を出したのに負けてしまったという、やりきれないような表情に、何故か勝者よりもより敗戦投手に感情移入する。沢木耕太朗の『敗れざる者たち』は、そういう敗者たちのドキュメンタリーで、面白い本だった。

 全員大リーガーのアメリカ対日本。負けたが、良い試合だったという残存感、余韻というもの。判官贔屓というメンタリティーと混ざり合って、心に漂っている。


 3月23日(木) 曇 7889

 WBC決勝は、アメリカが先制2ランから、一方的に攻めて守っては、ストローマンが150キロ台のツーシームで、6回までノーヒットに押さえる快投。7回にツーアウトからダメ押しの3点を入れ、7-0と勝負は決まった。後は、ストローマンがノーヒット・ノーラン出来るかという処が焦点になった。しかし、7回の先頭打者がレフト前へ2塁打を打たれたところで、交代になった。プエルト・リコは最後まで得点をあげることが出来ず8-0でアメリカが優勝した。

 ネットに、9月2日ロンダでホセリートが復帰し、リベラ・オルドニェス、エンリケ・ポンセとゴヤ闘牛に出るという記事が載ったが、ホセリートの、自筆と思われる、NO VOY A TOREAR EN RONDA. NO TOREO EN RONDA. と、いうものがネットに出た。それで良い。僕は復帰しない方が良いと思う。セサル・リンコンもそうだが、今さら復帰して何のメリットがあるのだろう?フェスティバル闘牛ならいざ知らず、今さら何をする?エスパルタコじゃあるまいし・・・。


 3月24日(金) 晴/曇 10488

 昨日夜は、東京ドームへ行って、巨人対日本ハム戦を観戦した。初めて大谷翔平を観た。足首の関係で、打者だけで出場した。第三打席に、レフトへのソロホームランを打った。あそこに、打てるのはもう才能だ。そんなに強振したわけでもないのに、ライナーで飛び込んだ。まさか、初めて観に行ったのに、ホームランを観れるとは思わなかった。

 それにして、不思議な感じがした。試合前に当日券を買ったのだが、ホームの巨人側、つまり1塁側の切符が余っているのに、日本ハム側、つまり3塁側は切符が売り切れていて、しょうがなしに1塁側を買っている人が結構いたのだ。巨人って球界一の人気球団じゃなかったけ?と思っていたが、今や、優勝と大谷人気で巨人のホームにもかかわらず、日本ハムが人気で圧倒している。9回の第五打席で、大谷に代打が送られると、球場に、「えー」と声がなっていた。もう大谷様々である。そういう俺も、郷土の大スター大谷翔平を観に行ったのだが・・・。

 ラス・ベンタス闘牛場のサン・イシドロ以外の切符が23日から売れ出された。問題は、5月2日のゴヤ闘牛。観るとほとんど売れていない。好きなところ買えるよ、という状態だ。こうなるとますます、『とと姉ちゃん』の様に、どうしたもんじゃろなぁと、考えてしまう。取りあえず、ヘレスを待つ。こうなると、今回はおそらく1回という事になるだろう。


 3月25日(土) 晴/曇 14069

 月末からプロ野球の開幕。札幌に行って日本ハムの開幕を観ようかと思っていたが、大谷が怪我をして切符を買うのを躊躇していたら、気付いたときは、切符は売り切れになっていた。それで、札幌行きはやめた。変更ついでに、違うことをやろうと思う。この前のサッカーW杯最終予選は2-0で完勝。久しぶりに、イライラせずにサッカーが観れた。久しぶりに招集された今野がMVPの大活躍。しかし、帰国したら左足小指の骨折が判明した。大相撲は、昨日全勝の稀勢の里が日馬富士に破れ左肩を負傷。救急車で搬送された。長期休養が予想されたが、親方との話し合いで強行出場することになった。テレビ解説の親方が、止めても駄目なんでしょうね。と、いっていた。今野にしても、稀勢の里にしても、良いことは続かない。というか、良いときにこそ、注意しなければならないという教訓なのだろうかと、思ってしまう。


 3月26日(日) 雨 6417

 夜中、競馬のドバイ・ワールドカップ・デーで、5つのGⅠと2つのG2が行われた。日本馬は、元大リーガー大魔神佐々木がオーナーのヴィブロスが、ドバイターフ(1着賞金360万米ドル)を勝った。他では、UAEダービーで、ルメール騎乗のエピカリスが2着で惜敗した。注目のドバイ・ワールドカップは、大本命のアメリカ馬、アロゲートがスタートで出遅れて最後方から最終の4コーナーでは好位に取り付き最後は余裕の完勝。これで勝つならもうお手上げ。見事というしかない。

 放送の後チャンネルを変えずにいたら、アメリカの大学で映像の授業をやっている映像作家想田和弘のドキュメントをやっていた。全米一の10万人収容のフットボール場を持つミシガン大学の映像。そして、大統領選。オバマ大統領のヒラリーを応援する演説。そして、トランプの当選。ここは民主党支持者が多いところ。面白いと思ったのは、ある学生が高校時代のフットボールのチームメイトとフェイスブック上で辛辣なやり取りをやって、その友人に2年ぶりに会いに行く。ヒラリー派とトランプ派の話し合い。終始笑顔で話している。こういうのって日本ではあり得るのだろうか?アメリカって面白いよなと思った。今国会でやっている森友学園の問題は、狸と狸の化かし合い。誰が嘘をついているというより、みんなが嘘をついている気がする。


 3月27日(月) 雨のち曇 7625

 開花宣言がされたのに、今日の朝も寒く、東京でも雪がちらついたという。関東の山では雪が積もった所があるようだ。桜は来週にずれ込みそうだ。

 怪我を押して、土俵に上がった稀勢の里は、照ノ富士勝ち、13勝2敗で並び、優勝決定戦。そこでも小手投げ勝って優勝を決めた。こんなことあるかという事が、現実に起こった。そのあと、稀勢の里は男泣き。テレビなどで観ていた人たちも大勢が感動してもらい泣きしたようだ。本当日本人のメンタリティーに合っている。でも、思うのだ。確かに感動的だが、誰か止める人はいなかったのか。13日目に怪我をして、14日目の相撲を観ると、とても出来ような状態ではなかった。それでも勝ったから良いじゃないかという思いもあるが・・・。5月場所に万全で出場できれば良いのだけど・・・。


 3月28日(火) 晴 9581

 前略、養老孟司様
Eテレの、『ネコメンタリー 猫も杓子も。 養老センセイとまる。』を、拝見いたしました。凄い家に住んでいるんですね。鎌倉生まれの鎌倉育ち。茶室に入る様な、古い木の門と露地。庭にはウグイスなど色々な鳥が来て、リスまでいる。そこにまるという猫がいる。寝るのが仕事のような年老いた猫。ちょっと歩いては、休んでアグラをかく。まるで人がアグラをかくように。養老家では通称、どすこい座りという。「やる気ないんでしょ」と、ぼそっという養老さん。

 もの書く人の かたわらには いつも猫がいた
縁側で日向ぼっこするまる。のんびりで、マイペース。僕は餌をやるだけという。原稿書くかたらにまるがいる。マヨネーズを木のスプーンであげる。大好きなようだ。娘が体に悪いからやめるようにいうけど、食べるからしょうがない。という。「本当にいいところですね」と番組ディレクターがいうと、「以前はね。どこでも日本、こんなもんだった。ぶっ壊したんだよ。人間むちゃくちゃ増えて、ビル造って、マンションにしてね。で、近所つきあいなくして。しょうがないでしょうね、人が増えて。また戻るんじゃないですか?」といったときに写った岩をくりぬいた様な門の様なもの。鎌倉の切り通しの一種なのかもしれない。素晴らしい風景だ。

 「それイヤだって言う人は、少ないと思うんだね。だって、会社の社長さんなんかもそうだけど、お金持ちになったら、どっかに、別荘か何かにいって、ゴルフやってるじゃないですか。そしたら、若いうちから外行きゃいいのにね。」ディレクター「みんなやりたいけど、できないんです」 「そりゃおかしいんだ。できないっていうのが。なんのために、生きているかって話なんで。」

 「犬でも猿でも飼ったことありますけど、だいたい同じですよね、人と。猫、社会性ないもんね。でも全然ないかっていうと、少しあるからいいんでしょ、そういうもの。あとフンていう顔してるから。大事なところ、つかんでるんですよね。あんまり皆さん人間と動物、どこが違うか考えないからね。感情はだいたいだから・・・。基本的には同じなんですよ。理屈が分かんないんだよ、猫は。」

 「根本にあるのは感覚的に生きるか、理屈で生きるかの違い。そこなんだよ。動物は違いの世界で生きている。違いって何かというと感覚が捉える。だから、人を見たら、全部違う人です。おそらく、においかいでも全部違う。犬なんか人間の嗅覚の1万倍ある。なんで1万倍も嗅覚がよくないといけないんですか?違いだけで生きていこうとすると、そういうことになるんです。おそらく。」

 「感覚を通すと絶対同じものはない。100個大量生産品が並んでいても、置いてある場所が違うんだから、違うに決まってる。じゃ、どうしてSMAPは、「世界にひとつだけの花」と歌うんですか?」ディレクター「ふふふ」 「学生が歌ってるから、世界にふたつある花があったら、もってこいと、いつも言っている。どう思います?何気ないけど、実は、現代社会に生きていると、世界は同じになってくるんですよ。それがグローバリゼーションの根本でしょ。スターバックスのコーヒーって、マレーシアの田舎で買っても、新幹線の品川駅で買っても、ものは同じだよ。人は同じにしようとするんだよ。もういいかげん世界の人が、疲れてきたんじゃない。猫見ると少し分かる。絶対同じじゃないですから。日々新た。」

 面白いと思ったのは、木の切り株を見て、「こういうのを見ると、皮をはぎたくなる。こういうところで、冬を越しているんです虫は。」ディレクター「いるかもしれないなと?」 「そうなんです。かもしれないというより、いるまではぐんですよ。普通は。」

 そういう感覚が探求心がある何よりの証拠です。見ていて嬉しくなりました。「世の中がガラッと変わったときに、それを見ていた子どもっていうのは、人の世の中より、自然をよく見るようになる。ああいうものはウソつかないから。それは僕、よーく知っているんですよ。なぜかというと、戦争中育っているから。つまり、何を信用していいか。世の中信用していると、180度変わちゃうし、、、まるの方がよっぽど信用できるよね。」

 「そういう思いを今の人してないから。何を信用していいかというと迷うだけだと思う。でもそれは自分で判断するしかないですよ。そすると、そうなっても変わらないものって、何だろうというのは・・・。意識するんじゃなくて、ひとりでにそう思うんですね。当てになるもの何だろうって。」

 タバコを吸いながら話す養老節が心地良いです。『唯脳論』『バカの壁』など色々読みました。書斎でタバコを吸いながらまるの話をする。パソコンのキーボードを打ちながらタバコを吸う。ある時、「タバコが体に悪いって医学的データは存在しない」と断言していましたよね。敬服する言葉です。昆虫を捕りに野原を駆け回った少年は、解剖学者になり、自然について話をする。素晴らしい日本人だと思います。


 3月29日(水) 曇 8211

 ようやく温かくなったようで、桜の花が咲き始めた。土曜日は雨らしいが、それまではあったかくなるので一気に満開になるのかも知れない。朝、リハビリ。股関節の可動域は、広くならない。毎日コツコツとやるしかない。でも、基本的に体を動かす事は楽しい。ストレッチの後は、運動。それを繰り返そう。

 買い物から帰ってきて、BSを見ていたら、沖縄の竹富島の事をやっていた。そこの御嶽(うたき。普通は、みたけとかおんたけと読む)の奥は、男子禁制。レヴィ=ストロースの『月の裏側』に出てきた話と同じだった。こういうのは、感動的だ。何故、沖縄はこういう女性が中心になる社会が、今でも存在するのかというのも、不思議の一つである。レヴィ=ストロースがなんて書いていたか、もう一度読み返して見たくなった。それと、豚骨でつくった沖縄そばが美味しそうだなぁと思った。


 3月30日(木) 晴 8560

 昼飯を食べてから、京橋へ出掛けた。加賀美術というギャラリーで、渡辺省亭の絵が見れるからだ。等伯も若沖も北斎も暁斎も、鳥の正面の描き方には、違和感を感じるが、省亭の描く絵にはそれを感じなかった。凄いなぁとネットで観て思ったので、出掛けたのだ。京橋の後、上野へ行って国立博物館でも、省亭を見た。上野は、花見に来た人で一杯だった。時代でいえば、明治の日本画家で、河鍋暁斎の後である。パリに行き、ドガの前で筆を持って描き、墨で鳥を描きプレゼントしたという。それを見たイタリア人画家ジュゼッペ・デ・ニッティスがパリ万博出展作品≪群鳩浴水盤ノ図≫を買ったという。パリで西洋画も学び帰国後、ますます画力が上がったようだ。今東京では、省亭の再評価をするために、上記2つの他、合計5つの場所で作品展示が行われている。今日の2つは、タダで観れたので、非常にラッキーだった。しかも、写真が撮れたので大満足だった。

 柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺  子規

 『あさいち』で、奈良をやっていた。そこで、お寺の鐘が自動鐘突き機で、鐘を突いている所があった。地元奈良の会社が200以上ある奈良のお寺の鐘を調べて造ったのだという。思い出すのは、東日本大震災の時、奈良にいた。東大寺のお水取りを観に行っていた。最終日に法隆寺に行こうと思っていた。五重塔などを見る前に左側にある六角のお堂に行ったら、横の鐘があるところにお坊さんが来て、鐘を打ち始めた。12時なので12回打った。時の鐘だ。それをビデオでずっと撮っていた。何か取らなければならない様な気がしたのだ。その鐘が、子規が詠んだ歌の鐘だとあとで教えて貰った。

 余命2ヶ月といわれたカメラマンが、故郷奈良の撮影し始め、奈良の自然の美しさと向き合いたくなったという。命を慈しむ気持ちに溢れている動画だ。保山耕一の映像は、素晴らしいと思った。人はこういう状況になると、余計なモノが取れて、本来向き合わなければいけないことに、向き合おうとするようだ。それが、見ている側にすーと入ってくる様な映像になっている気がする。そのせいだろう、余命2ヶ月と宣告されて、4年が経ったという。ガン治療しながら撮り続けている映像は、みんなの財産になるのだと思う。


 3月31日(金) 曇のち雨 12892

 朝から曇っていて寒かった。恵比寿の東京都写真美術館へ出掛けた。映画『文楽 冥途の飛脚』を観るためだ。この映画は、カナダ生まれのマーティ・グロスが1979年夏に京都・太秦の大映撮影所で舞台セットを作って3週間で撮影された。撮影監督は、岡崎宏三。音響・音楽監修は、武満徹。出演者は、当時人間国宝の人や、のちに全ての出演者が人間国宝になった人たちである。作は勿論、近松門左衛門である。三段のうち、最後の三段目新口村の段は、のちの文楽を上演するうちに改訂された「恋飛脚大和往来」を採用している。

 昔劇場で、文楽を観たことがあるが、途中で眠くなって寝ていたことがある。本を読んでいるので、近松の話は大体分かる。でも、あの三味線と、義太夫の声は、子守歌だった。今日も眠かったが、年を取ったせいか、耐えることが出来た。映画で観ると面白いと思った。ロックバンド、サンタナのギタリストのカルロス・サンタナは、強調するときは、同じ音を繰り返すと、いっていたが、文楽でも同じで、繰り返しで強調されていた。勿論声色も替えている。人形使いは、淡々と演じているが、細かな芸が見えて面白かった。大阪府は、文楽への助成金を確か廃止したが、残念なことだと思う。客も入らないのであれば、文化の伝承も難しい。滅び行く文化なのかも知れない。でも、近松は後生に残さなければならない物のような気がする。

 京都府では、文化財保護法に則って、創建当時の修復をしようとしている。東寺観智院のお披露目会には、修復担当者がその説明をするという。これは素晴らしいことだ。畳も替えたというが、畳床を足で踏んで、手で縫うという業者は、日本で2社しかないという。京都ではないというのには、ちょっと驚いた。昔は、どこでも当たり前にそういう畳床だったのに・・・。恐ろしいことだ。『京都 国宝浪漫』でやっていた。


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