断腸亭日常日記 2018年 5月

--バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  --バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年、2016年、2017年のスペイン滞在日記です。
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 5月5日(土) 晴 8195

 ゴールデンウイーク真っ盛り。イチロー対大谷翔平の対決を観にツアーがシアトルで組まれ、人気になって大勢の日本人が行くようだが、事実上のイチロー引退にガッカリした人も多いだろう。テレビでは、わざわざアナハイム、シアトルの観戦を予定していた中年の女性ファンが、25年ファンでした。と言いながら涙を流している映像が流れていた。

 イチメーターのエイミーさんは、ヤンキースへ移籍した時よりもショックじゃないといっていた。何故なら、イチローはマリナーズにいるからだという。たしかこの人、3000本安打の時、お金がないからとインターネットで募金を募り、イチローを追いかけていた。この日球場に来ていた彼女の手には、「いつまでも私たちのヒーロー」と応援ボードには書かれていた。そして、ツイートには、「Thanks Ichiro!(ありがと、イチロー!)#GoMariners #IchiroForever」と、書かれていたという。

 ワールドスポーツMLBではイチローの会見の模様など映していた。色んな人がいろんな思いを抱いてイチローのニュースを受け止めようとしているのだと思う。記事やイチローを観ていたら涙が出てきた。日本人には配慮とかいう感覚がある。アメリカは契約の世界。それによって規定される。来年マリナーズは日本で開幕戦をする。日本人の多くは、開幕戦でイチローが出て最後になるのかもしれないと思ったのかもしれない。そうあって欲しいとも思い、それが最後になるのではないか。それをするために、現役復帰の道を残す契約をしたのではないかと思う。マリナーズそういう配慮を考えて契約をしたのでないかとさえ思うのだ。

 シアトルでの今日の試合前、イチローとエンジェルスのプホルスが抱擁を交わした。同じ年にデビューして同じ年に新人王を取った。イチローは10年連続200安打し、プホルスは、10年連続3割30ホームラン100打点した。イチメーターのエイミーさんは、プホルスのメーターを掲げていた。その中で第3打席ライト前ヒットを打って3000本安打達成。こういう歴史的なものに立ち会えたのも大谷にとっていい経験になると思う。

 91年に闘牛と出会い、野球を見なくなった。それ以降は野球場に通う事はなかったし、阪神ファンも捨てた。闘牛の方が断然面白いと思ったからだ。でも、長いそういう時期でも、唯一野球との関係を繋ぎとめていたのは、イチローだった。特に大リーグへ行ってからは中継があれば観たりした。でもイチローは消費されつくしたような気がする。丁度セサル・リンコンの最後の頃に似ている。ホセ・トマスもそういう日が来るだろう。それがいつのなのかは分からない。でも、怪我による大量輸血以降は、余生なのかもしれないとも思う。それに付き合っているのが今の自分なのかもしれないと思う。

 アメリカのメディアが言うようにイチローのスタイルは、「模倣不可能」である。打撃練習では、ホームランを連発しても、試合ではヒットにこだわった。大谷翔平は、100年間誰もできなかった投手と打者の二刀流に挑んでいる。イチローにしろ、大谷翔平にしろ、大リーグでは通用しないとか言われた時もあったが、それを乗り越えたのは何か?それは、思いであり、情熱なのではないかと思う。理屈や理論では計り知れない人間の力は、そういう処にあるのだと思う。そういう気持ちが1番重要なのだと、闘牛や野球が教えてくれているのだ。楽しんでいれば、苦境も乗り越えられるし、苦労も苦労ではなくなるのだ。全てが学びの場になり、その人の栄養になって行く。その姿が、人々の心を掴んでいくのだろう。


 5月6日(日) 曇 11461

 八十八夜を過ぎて暑くなっている。明日は、凄い雨が降るという予報が出ている。

 大谷の記事を読んでいて笑った。大リーグに入って初めてグランドでイチロー再会し挨拶して話をした。試合では4打数2安打二塁打1四球。打席に入るとブーイングを浴びたが、「野球教室に来た小学生がすごく張り切って、いいところを見せようという気持ち。憧れている選手に見てもらいたいのはどの選手も思うこと。ずっと目標に頑張ってきた。いいところを出したかった」(スポーツ報知) 「二回の第1打席は「アメリカに来て一番力んでスイングした」と告白。しかし、2打席目以降は対応力の高さを証明する2安打。「自分の持ち味というか、出せるものは出せたと思う」とにこやかに話した。」(デイリースポーツ)

 イチローはその打撃について「雰囲気あります、やっぱり。あるじゃないですか。なんかあるなって。そういう感じ。野球やってる人間だったら感じるでしょうね」」と称賛。その「対応能力」に特に感心し、「それは大きな才能ですよね。100マイル(約161キロ)投げるとか、誰よりも飛ばすとか、そういうことよりも実は大事な能力というかね」と話した。

 大谷は、イチローが対応能力を褒めていたことを伝え聞くと、「すごく光栄なことですし、僕のことについて話してくれるだけで、僕は満足なので、うれしいなと思います」と話していた。

 試合前には、外野で挨拶に来た大谷からイチローがいったんは逃げるように走り出し、その後、すぐに談笑した。これについて、イチロー流の「サイレントトリートメント」かと聞かれると、「(正面にいた)ディー(ゴードン)のサングラスに映ってたんですよ」と明かしていた。(Full-Count)

 このイチローと大谷が談笑する写真はMLBの公式ホームページに載った。バトンタッチという感じになった。人との出会い。その交差。感慨深い。


 5月7日(月) 曇のち雨 15142

 昨日夜は風が強く吹いていた。今朝は半袖では肌寒い感じで風が冷たかった。夕方になり雨の量が増えてきた。

 早朝大谷翔平は、マリナーズ戦に12日ぶりに先発登板して6回まで0点に抑えていたが、7回に崩れヒットホームラン四球で、降板した。1回からカーブを使い、スライダーで空振りの三振を取っていた。アストロズ戦去年MVPのアルトゥーベが腰を引いたスライダーを観て、使える球なのでもっと投げたほうが良いと思っていたが、ようやく、使い始めた。正捕手が家族の不幸で休んでいるので、リベラというベテランの捕手と組んだが、今日は制球が良く色んな球がいきた。

「試合後、大谷はカーブを多く使ったことについて「その方が抑えられると思ったので」とした上で「今日に関してはカーブをしっかり使っていくというのは相手の映像であったりとか反応であったりとか、マウンドに行く前に決めていた」と話した。」(Full-Count)テーマをもって、テーマ通りに投球出来ていたようだ。マリナーズの先発は、過去に完全試合をしたことのあるサイ・ヤング賞投手、ヘルナンデス。どっちがサイ・ヤング賞投手かと思えるような投球だった。

 マリナーズのサービス監督は、「 「彼はいい結果を出している。まさに私が想定していた通りだ。ファストボールにはスピードがある。より制球が高い場面もあった。変化球は本物だ。カーブ、スライダー、スプリットフィンガーは全て落差があり、威力もある。彼はとても落ち着いていた」 「しかし、彼は我々にチャンスも与えてくれた。何球か失投があった。ヒットや長打をつなげることができなかった。彼は称賛に値するよ。今日の仕事をやり遂げたんだ」 」(Full-Count)

 相手の監督も賞賛しているが、対戦バッターも衝撃的だった。と言っていた。今までは、160キロの直球とフォークボールが注目が集まっていたが、それにプラスして、カーブとスライダーが切れているとなると、さらに打ちにくくなる。そして、懸念されていたフォークボールの多投による肘への負担が、軽減されるだろう。160キロの直球と、119キロのカーブ。球速差41キロ。「試合後、地元テレビのインタビューに答えたリベラは「オオタニは今日、素晴らしい投球を見せてくれた」と絶賛。「ゲームプランに沿って投げたよ。彼ら(マリナーズ)が良いチームだということは分かっていたからね。彼らに対して上手くプレーできたと思う。あらゆる球種を駆使したんだ。必要な場面で、スプリット、スライダーなどを使ったんだ。そして今日の彼の直球は良く制球できていたね。極めて優れた仕事をしてくれたよ」とコントロールの良さも評価した。」(Full-Count編集部)

 海風が吹くセーフィコ・フィールド。湿度が高く、変化球が投げやすい条件も重なったようだ。大谷翔平は、どこまで行くんだろうと思ってしまう。マウンドでも余裕が出てきたような感じだった。野球を楽しそうにやっている。世界一の舞台に立ちたいと、日本ハム時代よりもおよそ1/5の年俸になっても、やり甲斐を感じ楽しさも感じてやっているようだ。


 5月8日(火) 曇のち雨 11228

 今日は、新幹線の切符を買い、ユーロの両替をして、医者に行って処方箋を貰い薬を取ってきた。徐々に準備をやっていかないといけない。

 「元中日監督の落合博満氏(64)が6日放送のテレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」(日曜・正午)に出演し、エンゼルス・大谷翔平投手(23)の「生き方」を解説した。
 落合氏は「大谷の中ではバッターとピッチャー、これをやるのが自分のスタイル」とした上で、「大谷がピッチャーだけって言ったら、オレ、20は勝つと思っているから、米国でも。でも、それが彼の目的ではないの。彼の目的は、ピッチャーもやりバッターもやる、これがすべてなの」と明かした。
 さらに「周りがこっちがいいあっちがいいっていうのは、彼の生き方には存在しないの」とし、二刀流について「米国は契約社会でしょ。契約書見てないけど、契約書の中にあるはずだよ。条件はあるはず」と分析していた。

 「オレ、そんなに波が上がっているとは思ってないもん。普通にやっている状態じゃないのかな」と評価。その上で「ひとつだけ不安な材料がある」と指摘した。
 それは「一塁ベース踏んだときにケガしたでしょ。一塁手ってベースの上に足を置いてベースタッチすること、まずないんです。あれがピッチャーじゃなくて野手だったら、恐らく我々の受けた教育は、走っていって一塁手を体ごとはね飛ばしている。その代わりお互いにこけちゃうかもしれないけど、そうなるとケガするリスクはあるんです。あるんだけども、それに対して押された方が文句を言うかって絶対に言わないと思う」

 大谷がケガをしたのは4月27日(日本時間28日)のヤンキース戦。5番指名打者で先発し、五回に打者走者として一塁に駆け込んだ際に負傷し「左足首の軽度の捻挫」と発表された。落合氏はこのプレーで大谷が一塁手を突き飛ばす行為をしなかったことから「ただ、大谷の優しさっていうのかな。ケガさせちゃいけないっていうのと、変に自分が手を出して。あさって投げるものに差し支えあったらいかんなっていうんで端を踏みにいってケガした。この優しさがどういう風にこれから出てくるのか。一番の不安材料はその一点だけ」と指摘していた。」(スポーツ報知)

 松岡正剛は、日本という方法の中に、デュアル・スタンダードというのがあるといっている。二項同体。その事例として、漢と和、神と仏、見立とやつし、荒霊(あらたま)と和霊(にぎたま)などがあるが、分かり易いのは、天皇と将軍だろうと思う。天皇がいるのに、将軍がいる。形として天皇から征夷大将軍を命ぜられ将軍になるが、軍事力で1番にならなければ武家の統領にはなれない。どっちが権力を持っているの?その中でも、上皇と天皇が存在したりこっちも二重構造で、徳川時代には、将軍よりも大老が権力をふるったりでこっちも二重構造で、まさに日本的といって良い。二重構造というより、多重構造になっている。日本的二項同体の編集性。

 落合がいう大谷翔平は、投手と打者の二刀流でなければ、大谷翔平ではないと、言っている。この価値観はまさにデュアルなのだ。これをやり続けることが、大谷翔平が大谷翔平になる意味があるのだといっている。非常に重要なことを落合は理解している。そして、それを分かり易く言っている。誰も歩いたことのない道を進んでいる。そして、それを見続けたいと思っている。打って投げてが観たい。落合と同じでそれが観たいのだ。


 5月9日(水) 雨 16093

 これから盛岡に帰省する。母親や弟と会ってくる。サン・イシドロが始まった。18日23日6月1日の切符は売り切れたという。ロカ・レイとセバスティアン・カステージャの日が2日である。

 『ブラタモリ』103回は京都・宇治だった。お題は「なぜ宇治は“天下一の茶どころ”になった?」。宇治は高級抹茶の産地。鎌倉時代から栽培が始まる。宇治橋のたもとに、通円という茶屋がある。創業800年の老舗。戸籍上の名字が、通円。一休が彫ったという、狂言の通円が飾られている。そこで抹茶を飲む。30gで5400円の抹茶。めちゃ高い。商店街を通って平等院鳳凰堂へ行く。10円玉である。藤原道長が京都と奈良の間に作った貴族のリゾート地。極楽浄土を模して造られているので池がある。池の水は宇治川から持ってきているのではない。湧き水を引いて池を作った。今は湧いていない。ここは、扇状地。これがお茶の栽培と関係が深い。

 柔らかい砂地は、根が伸びやすい上に肥料をうまく吸収できる。どうやってできたか?この扇状地は、宇治川が作ったものではない。平等院から西に1キロの宇治市役所前。そこは崖の間の谷になっている。今の川は暗渠(あんきょ)になっていて道路の下を通っている、折居川。その先が扇状地になっている。その先に茶畑がある。鎌倉時代は、貴族の別荘地。平安時代になって武士の力が強くなると、貴族のブランドイメージをもったまま茶畑に変わって行く。

 江戸時代はお茶を作っていた人を茶師といった。茶師は特権階級で、名字帯刀を許されていたという。こういうのを訊くと、千利休などの茶人がどういう処から出て、どういう人だったかが判る気がする。宇治は幕府の直轄地として将軍家にお茶を納める重要な場所だった。30を超える茶師の家が並び茶づくりの腕を競った宇治。天下一の茶どころという名声ができた。

 栽培方法。室町時代から続く茶園。日光が当たりすぎるとテアニンがカテキンという成分に代わってしまうので、新芽が出る4月に1か月くらいは日陰を作る。そうするとうまみが残るようにする。昔やっていた遮光の仕方は、よしずを広げその上に藁をかける。扇状地と段丘の上に違う茶畑を作る。扇状地は砂地なので味が濃いお茶が出来、段丘はちょっと標高が高いから香りが高いお茶が出来る。たった50mくらいでも香りの差が出る。ひとつのところに異なる性質の違う茶葉があったことが宇治のお茶の特徴になる。

 抹茶工場で、石臼で1分間52回転で1時間に出来る抹茶は40g。だから高いんだろうなぁ。北向きに作られた拝見所でお茶をチェックする。そして、茶師の重要な仕事は、茶葉のブレンド。これによって味が決まる。大名や将軍と取引をした茶師。だから、名字帯刀を許されたのだろう。宇治には、今はない巨椋池があった。伏見城築城の頃、太閤堤が造られた。巨椋池は、京都の北山の地下水が湧き出る処で、その対岸側にある平等院に方に茶畑が出来て宇治茶が生産された。それも宇治川とは違う川の扇状地というのは面白かった。源義経が京都に入ったのは、この宇治川を渡って行った。そういう歴史も考えると余計面白いと思った。


 5月10日(木) 曇一時雨 8571

 東京に戻った。東京も寒いが盛岡も寒かった。母親に会いに行った。膝の上の太腿が腕くらい細くなっていた。眼は閉じて口を開けていた。口で息を吸っているのかと花の前に指をやると鼻で息をしているのが分かった。開いている口の中にある舌を観たら、綺麗なピンク色だった。ほとんど、歯はなかった。食事を食べれていないんだろうなぁと思った。歯がなくなると口の周りに皺が寄るが口を開けているので皺が寄っていない。ただ息をして生きているだけに見える。それでも、意識がハッキリしているのかもしれないが、ボケていたのでそれはないだろう。

 それから、昔からあるそば屋に行って、たらの芽の天ぷらそばと中華そばを頼んで、弟と半分ずつ食べた。たらの芽ってあまり食べた記憶がないが、甘い味がした。中華そばは、昔風の物で、これだったらおばあちゃんが作って食べていた中華そばの方がずっと美味しいと思った。わんこそばも出す老舗で、混んでいたので二階の座敷で食べた。馬生だったか、志ん生だった忘れたが、昔はそば屋で結婚の披露宴をやったもんだ、言っていたのを思いだした。そういえば、確か馬生の娘の池波志乃は、そば屋でやったとか言っていた気がする。江戸の雰囲気がそういう処に残っていたのかもしれない。ある落語家がそば屋に行って食べていたら、そばをどうやって食べるかを、他の客がじっと見ていて食べにくかったという話も思い出す。

 外に出ると雨が降っていた。車を出す間タバコを吸って待っていた。喫茶店へ行って話をして新幹線で帰って来た。夕方、隣の駅に住む友人に会った。嫁さんも連れてきたので3人で話をして頼まれていたものを渡した。

生命線ひそかに変へむためにわが抽出しにある 一本の釘  寺山修司


 5月11日(金) 曇/晴 8812

 部屋の片づけをしながら大リーグの試合を観ていた。洗濯もした。外は肌寒い。大谷翔平5番DHで先発。二塁打とセンターへのホームランを打った。大谷は、凄いなぁと思って観ていた。楽しいんだろうなぁ。一つひとつ出来ることをやっている姿は、頭が下がる。向上心があるから対応力も生まれるのだろう。

 そろそろ荷造りもしないとなぁ。準備もちゃんとしないと思う。


 5月12日(土) 曇 4572

 京都・祇園の四条通近くの三ツ星割烹で火事があり5棟へ延焼した。四条通は一時通行止めになった。今日も長野で地震があった。ここの処、地震も多い。

 NHKで、『仮想通貨ウォーズ』で、犯人を突き止めようとしているホワイトハッカーと言われる人達が、ビットコインを盗んだ犯人の追跡をしている姿を追った番組をやっていた。複数のグループや個人が追跡する。色々な手口で資金浄化をしようとしている。ある時は、ネット上にある闇空間ダークウェブの中で資金浄化をしている。犯人vsホワイトハッカー。ビットコイン関連のネット関連企業、金融機関や、FBIなど様々な処を巻き込みながら追跡を続ける。

 追跡も色々な方法でやる。ビットコインの動きを丹念に追い掛ける。その為のソフトを作ったりする。消えた580億円分のビットコイン。外国にある人身売や麻薬取引をしている組織。あるいはテロ組織が資金を集めるためにやっているとも言われているようだ。そういう不正義に対して、無償で追跡するホワイトハッカー。そして、ビットコインなど仮想通貨を守ろうする企業も加わって追跡する。仮想通貨の流れが明らかになっている部分で、あることが判ってきた。しかし、まだ犯人は特定されていない。

 おっと、そろそろ荷造り始めないと。


 5月13日(日) 曇のち雨 7668

 夕方前に、成田のホテルに到着した。明日からスペインへ行く。これから夕食を取って早々に寝て、朝早く起きて大谷翔平の登板を観てから成田に向かおうと思っている。荷造りもたぶん大丈夫だと思う。部屋を出る前に、『メジャー2』を続けて観た。ドジャースの前田建太が、「うまくなるよりも、野球を好きになるのが大事」というような事を言っていた。そういう気持ちを持ってプロになり、そして、メジャーリーガーになったのだろう。大谷もそうだと思う。2年待てば、2億ドルとも3億ドルともいわれる契約を結べたといわれたが、お金などどうでもいい、今行きたいと、言って活躍している。野球が好き。野球が楽しいと思ってやっているから出来ること。明日も、きよわずにやって欲しい。それで結果が付くてくると思う。


 5月14日(月) 雨のち曇 8324

 昨日成田のホテルに到着した時は雨だった。晴れていたらホテルの庭を散策したかった。たぶんタバコは吸えないだろうが、のんびりゆっくり歩いてみたかった。そういう気持ち余裕をいつ持てるようにしたい。しっかり日本を感じてスペインへ向かいたい。

 「大谷の女房役を務めるマーティン・マルドナド捕手は、23歳ルーキーについて「あの年齢にして、本当に賢いんだよ」と語ったという。
「彼はしっかりプランを持っている。自分が何をすべきかわかっているんだ。ピッチャーとしてどこまで突き進みたいのか理解しているし、打者としても何をすべきか分かっている。誰よりも自分自身について理解する能力を持っている。これが感心するべき点だと思う」
 キャンプインからバッテリーを組み、頻繁に意思疎通を交わす男は、大谷の優れた内面を評価。設定した目標に向かい、現状を理解する自己分析能力の高さに驚嘆した。
 一方、圧巻のパフォーマンスの裏に潜む大谷の人間力を買うのは、ジャスティン・アップトン外野手だ。「自分が最も感銘を受けたのは、日本からここに至るまでの適応力、そして彼の持つ冷静さだ」と30歳のベテランは語ったという。記事では、これまでアップトンが3冠王ミゲル・カブレラやサイ・ヤング賞投手ジャスティン・バーランダーと同僚としてプレーした経歴を紹介しながら「彼が簡単に感心することはない」と指摘する。そんなアップトンの心を動かしたのは、大谷が打率.125、防御率27.00と結果が残せず試行錯誤した開幕前の日々だったという。
「スプリングトレーニングではメディアからの注目を集めながらも、いい結果が残せなかった。それでも雑音をブロックしてプレーに集中していた。彼は冷静さを維持し、その結果、実力を発揮できたんだ。そんな男が23歳というのが、自分にとっては最も印象的だったんだ」 」(Full-Count編集部)

 大谷は、岩手県人してみれば、今や神である。そういう存在だ。弟と話していたら、「大谷より菊池雄星の方が好きだ」という。それも分かる。甲子園でノーヒットノーラン寸前まで行ったあの投球は忘れられない。おばちゃんは、本当に悔しがっていた。雄星が岩手県人の共感を得るのは、たぶん田舎臭さだ。盛岡市見前の怪物が、全国に名乗りを上げて活躍する。でも、田舎者の風情を漂わせている処に、岩手県人はグッとくるのだと思う。それはすごく分かる。30年前ならプロ野球のスーパースターだ。でも、今は大リーグがある。

 大リーグという言葉も、今や古い。メジャーというのが普通らしい。どうしても、『巨人の星』の大リーグ養成ギブスが頭の中にあるので、メジャーというなじみの薄い言葉より、今まで使ってきた言葉を使ってしまう。その大リーグに来年雄星が行くとしたら、対応できるだろうか?と、思ってしまうのだ。大谷は、雄星の甲子園を観て花巻東に入学した。いわば憧れの人である。しかし、プロに入って対戦して、勝っている。特に印象的なのは、日本一になった時のリーグ優勝を決めた西武球場でやった試合で、雄星と投げ合って、1-0で勝っている。あの時、雄星は「大谷に勝てるようになりたい」と言った。

 後輩が先輩を追い越していくのはつらい。でも、そういう事を受け入れて、涙を飲んで前に進もうとする姿に人は心を動かされる。そしてそこに優勝の為と、一生懸命にやり抜く大谷翔平がいた。そこで大谷が大リーグへの夢が見えたのだと思う。今年のオフには、雄星も大リーグへ行くような報道がされている。大谷より雄星の方が心配だ。あれもとてつもない天才だが、不器用な人間。そこが井川に重なってしまうのは俺だけだろうか?

 大谷は普段通りやっていれば結果は付いてくると思う。彼は目の前の課題に一つひとつ対応している。その積み重ねが結果に結びつく。落合が言うように、普通にやっているだけだと思う。でもそれって、普通じゃないのだ。そんなことは、普通の人間は出来ないのだ。野茂英雄が近鉄に見切りをつけて大リーグに挑戦した時、マスコミの多くは批判した。しかし、野茂は出来ることをやった。直球とフォークボールの二種類しかないのに大リーグで三振の山を築いてセンセーションを巻き起こした。たぶん、普段通り自分が出来ることをやることが最も重要な事なのだ。

 大谷は、6回11奪三振で無失点の押さえて1-0でリードしている。7回も投げるようだ。用意して成田に向かう。スライダー、カーブをまじえて良いピッチングをしている。サン・イシドロは、初めての耳が出た。


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