断腸亭日常日記 2018年 11月

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年、2016年、2017年、2018年のスペイン滞在日記です。
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 11月15日(木) 曇 7719

 午後から研修があって、夕方に終わりラーメンを食べて帰ってきた。それからスーパーへ行って買い物。こんな話を訊いた。健康診断を受けた人が、ガンが発見されその時点でステージ4。それから入院したが、1か月もしないうちに死んだ。20年間無遅刻無欠席の人が、体の調子が悪いので休ませてくれと連絡があり、休んだ。それから連絡が取れなくなって、行ったらトイレの電気だけがついていた。大家に開けて貰ったら、トイレの便座に座ったまま死んでいた。もう一人、調子悪いからと休んだ人と、連絡が取れなくて、行ってみたら小さな小窓の処だけに、灯りが見えた。警察に相談し、近くに住む、80の母親に連絡すると、振り込み詐欺に間違えられ、警察官に代わってもらうも、信じて貰えず、それならと交番に来てもらう。それから母親が鍵で部屋を開けて、警官が中を観るとトイレから出た処で倒れて死んでいたという。後の二人は健康診断はオールA。何処もおかしい処がなかったという。

 多分、何らかの自覚症状があったはずだ。病院に行っていれば、こんなことにはならなかっただろうという話。初めの人は、発見された時はステージ4。これからは、そういう物と向き合って、生きていかなければならないのだろうと思った話だ。帰りは、30分くらい歩いたりしたからか疲れた。


 11月16日(金) 曇 12962

 「敵を知り己を知れば、百戦殆(あや)うからず」という孫子の言葉がある。戦国の武将などや多くの兵を指揮する者が、心に留めたであろう言葉。今なら、スポーツの世界でも、データなどを活用して、それを生かしているのだと思う。宮本武蔵の『五輪書』にも同じような事が書かれている。敵の強みを消して、「先々の先」で手を打てば、負けないといっている。命のやり取りをする真剣勝負。

 闘牛でも同じような事が言えるだろう。牛を知り、それに対応する。エンリケ・ポンセは、実に上手い事、闘牛をやる。自分の安全を確保して、観客を楽しませることに長けている。しかし、観ていて面白さを全く感じない。いつもやっていることが同じで、危険もなければ、気迫も感じない。有名という野心と、華やかさがあるだけだ。僕はどっちに転ぶか解らない危うさに魅かれる。セサル・リンコンやホセ・トマスの危険な香りが好きだ。

 それは、牛が持っている最大限の能力を出そうとする闘牛をするからだ。だから、そこに危険な香りする。足を全く動かさずパセをするパコ・オヘダもそっちにいる。闘牛士になりたてだった頃の、セバスティアン・カステージャもそうだった。ホセリートもそういう香りがした。また、コリーダ・ドゥーラの闘牛士もそうだ。観ていて退屈な時もある。こんな牛を相手に、不可能だろうと思う牛には、さっさと剣刺しに行ったりもするが、トロ・ブラボ―への対応は非常に難しい。そういう牛を相手にする闘牛士は、成功を収めるのは難しいが、それでも興行として成立するのは、人とほぼ野生の牛の緊張したやり取りの中にしか、見えないものがあるからだと思う。だから、何かに輝きを観ようと目を凝らすのだ。確率が低くても・・・。

 処で競馬。やっていて思うことは、敵を知ることが出来ても、自分の事が判っていないと、思うことがしばしばある。どうして、俺は自分の事が判っていないのかと、ため息をつくことがある。人間いつになったら、自分のことが判るのだろうと思う。


 11月17日(土) 晴 11059

 NHKで『ドキュメント 72hours』で、熊本・美里町にある3333段の日本一の石段でのロケをやっていた。入口から2キロ。2時間以上かかるという。それを登る人たち。熊本では、学校でここに登りに来ることがあるのだという。家族で2回目に来たという人は、前回は2000段までで下の子がギブアップしたので、今回は、3000段まで行きたいといっていた。登った人は、達成感があるという。人間関係や会社のストレスを感じて、お遍路のように、ここを登る人たちもいる。登り切ったところには、「白龍が昇るが如し石段は三三三三で日本一」と書いてある。そこには何もない。それから1時間歩くと、お寺がある。ここに参拝すると、苦しまずにぽっくり死ねるという、通称ぽっくり寺。おばあさんが家族らしい人たちと登ってきた。いくつですか?と、訊くと、100歳引く18歳。と、言っていた。笑えるおばあさんだ。ということは、来年になると、100歳引く17歳になる。何という計算だ。スゲェー、この婆さん。

 昨日、羽生結弦が、ロシア大会のSPでまた、ルール改正後世界最高点を叩き出した。凄いもんだ。キリンカップの日本対ベネズエラは、1−1で引き分けた。1−0のまま勝つのかと思っていたら、PKを取られて引き分けた。攻撃を研究されていた感がある。こうなった時に、どうするかを考える必要がある。怪我で招集されなかった、長友がいないと、中島がいまいち生きてこない気がした。


 11月18日(日) 晴 14363

 きょう未明、イギリスで行われたラグビー、日本対イングランドは、前半2トライをあげた日本が、15−10のリードで終えた。8万に入ったスタジアムは、日本リードで静まり返っている。しかし、後半はノートライに抑えられて、15−35で完敗した。イングランドの監督は、前日本代表監督のエディー・ジョーンズ。エディーが日本代表に選んだ選手たちが活躍した。ハーフタイム前は、険しい表情だった。後半は、エディーの言葉で立直ったのか、圧勝した。試合後、エディーは、日本を簡単な相手ではないと言い、福岡を褒めていた。彼が初めて代表に呼んだ選手。日本も大分強くなってきて、来年の日本開催のワールドカップをむかえる。楽しみだ。スポーツの中で、観ていて1番面白いのがラグビー。サッカーもラグビーも、イングランドが発祥の地。

 昨日の『SONGS』は、クィーン。世界的に売れない時代に来日して、大ブームを起こす。それが世界に波及して、スーパーバンドになって行った。それまでは、ロックは男。女にロックは判らないと言われていた時代。『ミュージックライフ』の多分編集をやっていた東郷かおる子が言っていたが、あのフレーズがとか、ギターがとか、アンプがとか言っている男はめんどくさいけど、女性ファンは、違う処に熱狂した。羽田に降り立つと2500人のファンが待ち構え、髪を引っ張られたり、靴が脱げたり大騒ぎ。メンバーは、他の惑星に来たみたいだと、驚いたという。

 当時、盛岡で楽器やレコードを売っていた東山堂で、PVを流した時、女子高生が殺到して、キャーキャー叫んでいたのを思い出す。何が良いのか全然判らなかった。だって、フレディー・マーキュリーって気持ち悪かった。初期の髪を伸ばしていた頃は本当に、何が良いのか全く判らなかった。東京に出てきてロック喫茶へ行っていた頃、フレディー君の名前のクィーンファンの子がいて、曲がかかると踊りまくっていたのを、思い出す。それが、スペインでチャンピオンズリーグの決勝で、レアル・マドリードが優勝した時、かかった曲が、クィーンの『ウィー・アー・ザ・チャンピン』。その曲にのせて、ラウルがカポーテを振って、観客が、「オーレ」を叫んだ。

 もしあの時、クィーンが来日していなかったら、クィーンはもっと売れるのが遅かったかっただろう。いまさらながらあの頃の女の子たちの感性に感服する。『GLEE』でも、多くの曲がコピーされて歌われた。今、聴くと良い曲が多い。あの頃は、あの奇天烈なファッションや、フレディーの気味悪さは受け入れがたかったが、フレディーが死んだ今はそういう物は、なくなった。ああいうハーモニーは、アメリカからは出てこない。イギリス的な音を感じる。今、クィーンの映画が上映されているので、NHKもこういう放送をしたのだろう。ちなみに、レディー・ガガは、クィーンの『レディオ・ガガ』をいう曲から名前を取った。


 11月19日(月) 曇/雨 15704

 日産自動車は、カルロス・ゴーン会長と、グレッグ・ケリー代表取締役について取締役会で解任を提案すると発表した。これは、東京地検がカルロス・ゴーンを有価証券報告書過少記載で逮捕したことを受けての物。どうやら、日産内部の告発によるもののようだ。この他に、私的に資金流用をしていたと、日産は言っている。3年連続10億円の報酬を受け取っていたカルロス・ゴーン。そんなことをするような人ではないと思うのが普通だが、どうやらこれは事実の様で、衝撃的なニュースになって、夕方日本中に拡散していった。

 朝ドラの話をしていていたら、DVDレコーダーが欲しいというので、今はブルーレイでしょうと、笑った。HDDでも録画できるけど、あれはディスクにダビングできないので、3番組同時録画できるものが欲しいと言っていた。3番組ってなんで?と訊くと、正月とか見たい番組が重なったりするからといっていた。金あるんだから定価で買ったら、今は定価って言わないのか、というと、オープン価格。パナソニックとか弟はソニー使っているけど、というと、テレビがソニーだからソニーにしようかといっていた。今日の朝ドラも展開が変わってきた。どうなる新事業。


 11月20日(火) 曇/晴 7524

 カルロス・ゴーン逮捕の報道を受けて、フランスのルノーの株価は、一時15%下落した。マクロンフランス大統領は、「(ルノー、日産、三菱自動車)連合の安定性に注視している」を語った。今日予定されていた三菱自動車の取締役会は中止になった。日産の対応を観て動く模様。一部の報道では、三菱自動車も解任に動いているという。株式市場では、日産の株価は一時、7%下落した。いずれにしても、三社連合は、中心になるカルロス・ゴーンがいなくなることになって、強力な求心力がなくなってしまうだろう。

 2年前のルノー株主総会で、725万ユーロ(9億4千万円)の報酬に対して54%が反対したという。日産の西川(さいかわ)社長は、昨日本社で長時間弁護士も付けずに一人で記者会見を行い、その中で、二人の行為は、専門家から重大な不正があると判断を受けており、22日臨時取締役会を開き、二人の解任を提案すると、いった。これは19年に渡る長期間トップに立った、弊害が出たという。これは入口の名目の逮捕で、その他にも不正があると様だ。東京地検特捜部は日産社員との、司法取引を行っているようだ。情報を出すことによって、自分の刑の軽減をするという物。

 しかし、本当にカルロス・ゴーンの不正が成立するのだろうかという疑問もある。多くの部分は否定されてしまう事もあり得る話だ。日産内部のクーデターかもしれないとも言われているが、西川社長は否定している。それにしても、日産は国営企業ルノーに飲み込まれてしまう可能性が大きくなるのではないか?バランスが崩れた連合は、フランス政府の介入が強力になって行くようになるのか?

 『西郷どん』で、外遊から帰った大久保利通と岩倉具視対西郷隆盛、江藤新平、後藤象二郎などは決別した。西郷たちは、まるで時代に取り残された、人達のようになった。激変の維新の政府は、近代日本を作るために。これによって、士族の反乱が各地に起こって行く。維新の為に、薩摩、長州、土佐、肥前(佐賀)が中心になって幕府に政権の返還をさせて、戊辰戦争で、会津などの東北諸藩の血をがした。政府がこれで薩長土肥が一枚岩で行くのかと思いきや、征韓論で、土佐と肥前が抜ける形になり、金なので不正で長州が抜けていたのが、入ってきて、薩長の政府になる。そして、佐賀で反乱が起き、西南戦争になる。大久保は、急ぎ過ぎたのかもしれない。肥前や土佐の優秀な人材を、薩摩も西南戦争人材を失くした。

 松岡正剛は、西郷隆盛が、何故ああいう風になったのかが、判らないと近代日本が判らないというような事を言っていた。政治の権力力学という物は判らないが、西洋と日本、追いつけ追い越せの文明開化の時代。激動の時代だからこういうことが起こるのだろうか?

 フランスで三ツ星レストランをやっていたティエリー・ヴォワザンが帝国ホテルで働くようになって13年。『人生は旅だ 料理も旅だ〜三ツ星シェフが見つけた日本』や、料理人たちや杜氏などの『和を彩る神々の物語』を見ていると面白い。料理、美味しいものっていいなと思う。金沢で日本酒を作っている農口さんの酒を飲んでみたいと思った。


 11月21日(水) 晴/雨 13232

 半袖を着て、上にフリースを着ていても寒い。長袖が必要だ。明日は、最高気温が13度の予報が出ている。もしかしたら、木枯らし1号が吹くかもしれないと言っている。週末も、寒い予報になっている。冬に向かっている。今日、国立博物館へ行った。庭園を散策したが、楓の色は、これからという感じだった。これから色づき始めるのだろう。

 今日は喫茶店でモーニングを取って、上野へ行った。千本釈迦堂の名前で知られる、京都・大報恩寺の快慶・定慶の仏像を観に行った。仏像の後ろにある後光というか光背だけが飾ってある処があった。そこの中央上部に、蓮の実を上から観たデザインがあり、縁取りの処に三鈷ある。これで、真言宗だろというのが判る。千手観音菩薩像は、両肩に8本の腕があり、中央に胸の位置で両手を合掌し、その下に、親指の先を付けその下に両手を重ねて印を結んでいる。こういう千手観世音菩薩像を観た記憶がなかったのでビックリした。全部で20本ある腕。僕が定型で記憶しているものは、片方肩に、20本中央部に1本。つまり、42本の腕がある。今はもう色が脱落しているが、極彩色に彩られていたことがしのばれる。

 大谷翔平が帰国。明日10時から記者クラブで会見をする。テレビかネットで観れないかなと思う。夜は、日本ハム時代の番組に続いて、今年1年メジャーでの全記録が110分の番組としてBSで放送される。非常に楽しみだ。


 11月22日(木) 雨のち曇 15010

 今日は良い夫婦の日だという。朝早く目覚めて、納豆と作っていた味噌汁で朝食。それから、雨上がりの散歩に出掛けた。それから朝ドラを観て、大谷翔平の会見を観る。NHKで中継した。冒頭25分だけで、あとはネットで中継を見る。記者に対する大谷の対応は素晴らしい。多くを語らないが、嫌われるようなことがない。嫌な質問でも、さらりと交わす。そしてそこには、笑顔がある。あれだけの活躍をしても、天狗にならない。上のステージに行けば行くほど、人間を成長させている印象だ。

 NHKテキスト『小泉八雲 日本の面影』を読み直していた。八雲が日本に来た年に鎌倉・江の島を訪ねている。始めに北鎌倉の円覚寺、建長寺、円応寺を訪ねる。円覚寺では釈迦如来像を観て、弁天堂にある釣鐘をついていいと言われ、ついた音の響きに感動している。その音が、10分も続いた事にも。建長寺では、本尊が地蔵菩薩であることを訊く。人々を救済する菩薩。円応寺では、本尊が閻魔大王。人を裁く閻魔様。建長寺は、刑場だった処に建てたので、人々を救済する地蔵菩薩が本尊になったようだ。テキストでは、地蔵と閻魔大王が二身同体と感じていたのではないかという。八雲が円応寺で観た閻魔大王は、仏師運慶作と言われる怖い表情のもの。何なんだろうなこの感覚と思ってしまう。勿論、仏教を知っている、通訳の鍋島晃が同行していたのだが・・・。

 仁徳天皇陵の発掘が行われているが、これがマスコミに公開された。これは2つある堤の保全調査の為だという。つまり、侵食状況を調べるためで、結果によっては、補修工事が行われるようだ。発掘で、出て来たのは大きな埴輪のかけら。第1堤の処だという。これは聖域を示す為に埋められていたのではないかという。

 昨日といひ 今日と暮らして あすか川 流れてはやき 月日なりけり  春道列樹 古今和歌集 341


 11月23日(金) 晴 10507

 昨日本社で開かれた日産の臨時取締役会で、ルノーから派遣されている取締役も含め、全会一致で、カルロス・ゴーン会長と、グレッグ・ケリー取締役の解任決議が可決された。逮捕されている二人は勿論欠席の状態である。また、ルノーとの連合は、不変であるという声明を発表した。フランスを訪問中の世耕経済産業相は、パリでフランスのルメール経済・財務相と会談。事態の鎮静化させるため、おそらく、フランス側から会談が持ちかけられたものだろう。「日産とルノーの連合が協力関係を維持する意思を、両国政府は強く支持する」という声明が発表された。会談後、世耕経済産業相は、「連合の関係が安定的に続くことが非常に重要だということも確認した」と述べたという。

 昨日のNHK『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』は、京都お名前修学旅行 清水寺の謎が、放送された。そもそも、「しみず」ではなく、何故「きよみず」なのか?元々は、北観音寺と言われていた。「きよみず」あだ名だったという。それが、音羽の瀧から流れる3すじの流水。昔ここで水垢離、滝行をしていた。清らかな水で穢れを落としていた。「しみず」は、澄水ではなく、清水。澄んだ水ではなく清める水。心身の穢れを落としてくれる貴いものだった。いにしえの人々は、穢れを清める水がある寺ということで、分かり易いように、清水寺と呼んだ。

 清水寺、東寺、仁和寺、延暦寺。多くのお寺は、音読みになっている。浅草(あさくさ)は訓読み。寺になると浅草寺(せんそうじ)になる。東寺、仁和寺、延暦寺も音読み。何故清水寺は、訓読みになっているか?能『白田村』の中で、寺を観に来た人たが、「きよみずでら」といっていて、寺の内部の人は、いいえ「せいすいじ」と言っている。カジュアルな言い方と、フォーマルな言い方。両方併用されていた。「きよみずでら」は、寺を訪れた観光客がつけた名前だったという。つまり、「きよみずでら」はあだ名だった。それが正式名称になったのは、何があったのか?

 そこで入口まで行く。仁王門。清水寺は、テーマパークであった。戦国時代、庶民により一層の参詣と寄付を促す為に、『清水寺参詣曼荼羅』という絵図を作って、各地をまわり、境内までの行き方や境内の楽しみ方が判るように、説明した。いわゆる、ガイドブック。それで、大衆の支持を受けて、正式名称を、「きよみずでら」にした。テーマパークの今でいう駐車場が馬駐(うまとどめ)。ここに馬を繋ぎ、寺はどんなに身分の高い人でも歩いて行くことになる。

 西門は今は、中に入れないが、ここから西山連峰が見える。その下に京都の街が見える。そこに夕日が沈む。その景色を拝む。つまり、西方極楽浄土。夕焼けの向こうに浄土があると信じられていた。西門はそれにピッタリの場所だった。昔の人気スポットだという。若者たちの人気スポットは、地主神社。ナンパスポット。縁結びの神。本堂の両側に石がある。縄文からあるとも言われているという。石から石まで目をつぶって辿り着くと良縁が結ばれるという。一説には、スイカ割の基になっているという。

 清水の舞台。江戸時代の俳句の作法書には、清水の舞台から後ろ飛びと、書いているという。観音様に願い事をし、それが叶うように、観音様を観ながら舞台から飛び降りたのだという。生存率85%だったという。これ確か、『ブラタモリ』でもやっていた。今日は満月。京都で観ようと思っていたが、そういう訳にはいかなかった。

 22日23日はNHKBSで、大谷翔平の特集番組が組まれた。スポーツ酒場語り亭や、今年1年を大谷が語ったものや、今年メジャーの全記録などあったが、16年リーグ優勝を決めた西武戦。菊池雄星と投げ合った試合を元メジャーリーガーの斎藤隆のインタビューで構成された番組が1番面白かった。


 11月24日(土) 晴 12685

 京都二条にある日本料理店がんこを紹介してくれたのは、スペイン語圏の客を連れてガイドなどをやっているDさんだった。それが高瀬川沿いにある店で、日本庭園がある。植冶こと、七代目小川治兵衛が作った庭。そう南禅寺界隈に明治から大正にかけて琵琶湖疏水を使った庭群を作った庭師である。そんな庭を観ながら、日本料理が食べれる店だ。Dさんが言うには、外人を連れて行くとみんな喜ぶと言っていた。

 『カンブリア宮殿』で、がんこをやっていた。4年前に新宿にオープンした店は、山野愛子邸。その日本庭園が観える処に、内装を改装して店を開いた。相変わらず安い。1番安い2100円の特別いろどり弁当には、刺身や天ぷら小皿などの弁当の他に、15時まではケーキとコーヒーがついているという。Dさん、「あのおやじ、がんこなおやじで、安くて美味いもの出すって、大阪人」と言っていた。テレビ観ていたら、また行ってみたくなった。

 築地から豊洲へ市場が移転して1か月。豊洲には日本人が駆けつけ、築地場外には、外国人が殺到しているという。ガラス張りで、匂いもしないので、雰囲気がないと外国人が言い、築地場外は、その雰囲気があるという。マグロの解体ショーも、寿司屋の前で見せたり、店の中でや店頭で触れ合えるのが人気のようだ。

 時々京都へ行く時とかに取り出して読む本がある。光文社の<カッパ ビブリア> 『今日の風土記 京都の旅』。『今日の風土記』シリーズは12巻出ているが、京都だけ2巻ある。書いているのは、推理小説家の松本清張と、梅干し先生こと国学院大学の樋口清之。古本である。なかなか読み物としても面白い。本願寺の処・・・

 「東本願寺をおとずれると、女の髪の毛があつめてつくった綱が本堂の一隅においてある。びっくりするほど、ふとい。なにをするものだろうと思ってきいてみたら、いまの本堂(御影堂)が明治二十八年(一八九五年)にできたとき、棟木などを曳いた綱だそうだ。
 女の髪は象をもつなぐ、とむかしからいう。これは、女の魅力をたとえていったのだが、それはほんとうに丈夫なものと思いちがいをした笑えない話である。なぜ笑えないかというと、女にとって髪の毛はいのちについでたいせつなものとされてきた。その髪を本山の綱のためによろこんで供出した、何十万人という熱烈な信者がいたという、事実を考えさせられるからである。」

 などと、書いてあったりする。そして、この本が出版された昭和41年、42年当時の行き方などが書かれている。〔交通〕 東本願寺=市電CEJ、東本願寺前、南西へ徒歩二分。または、京都駅より徒歩八分。西本願寺=市電CI、七条西洞院、北西へ徒歩五分。京都駅から市バス、西本願寺前。
拝観料 ともに志。西本願寺は、まえもって参観願いを出す。と書いてある。

 昭和41・42年には、まだ京都に路面電車の市電が走って駅名も判るのだ。拝観料なども二十円とか、六十円(金閣寺)、高い処で、百円(苔寺)と書いてあって、そういう処も、資料としても面白い。


 11月25日(日) 晴 17499

 今日は何の日?と訊いたら、誕生日ですか?と言われた。三島由紀夫の命日だ。そして、ジャパン・カップの日。東京競馬場には、10万弱の人が集まった。勝つのは、アーモンドアイしかいないと思っていた。サトノダイヤモンドから流すか、それともキセキから流すか、と思っていた。後はスワーヴリチャードと、シュバルグラン。この5頭で決まるだろうと思っていた。結果は、キセキが逃げて、番手の位置を取ったアーモンドアイ。1000m59.9のペース。淀むことがないペースで、そのままの隊列で直線に向いた。各馬、手が動き、鞭が入っている中で、アーモンドアイは持ったまま。やっぱり、勝つのはアーモンドアイだと思った。坂の途中の残り300mで、ようやくルメールの手綱が動く。それから鞭が入ると、馬体が合い、坂を登ったところで一気に抜け出していった。後続は、固まった馬郡の中から、スワーヴリチャードが抜け出し、サトノダイヤモンドも追ってくるが、前の2頭には追い付かない。アーモンドアイの完勝、圧勝。そして掲示板に表示されたタイムが、2.20.6の驚異的なレコード・タイムだった。

 ゴール後、ルメールは右手を突き上げ、人差し指を1本かざした。実況のアナウンサーは、強い!アーモンドアイ。四冠目のゴール。2分20秒6!物凄いレコードが生れました!と、絶叫した。ルメールはインタビューで、もう素晴らしい以外の言葉が出てこないですね。といった。レコードを1秒5上回る世界レコード。それまでの記録を6着までに入ったサトノダイヤモンドまでが上回っていた。並みいる牡馬をあっさりと鮮やかに牝馬のアーモンドアイが、蹴散らした。凄いものだ。ルメールは、新馬戦の頃から三冠を取れると、言っていたが、実際今年牝馬三冠を取り、その勢いで古馬戦線に殴り込み、牡馬までも蹴散らした。同じ主戦をつとめるレイデオロは、ジャパンカップには参戦せず、有馬記念に向かったのも、ルメールを確保するための、藤沢和雄調教師や馬主サイドの判断だったのだろう。新たな牝馬伝説が生まれた。ルメールは今年8勝目のGT勝ち。多分、JRAの新記録だ。記録づくめのジャパンカップだった。


 11月26日(月) 曇/晴 7173

 普通に考えれば、昨日のキセキの逃げを打った川田将雅騎手は、勝ったレースだ。あの淀みのないペースを刻み、直線で後続がもがく中、逃げ切ることが出来た。スタミナのある菊花賞馬のキセキには最高のレースで、なし崩しに後続に脚を使わせる展開だった。その最高のレースをやってもまだ、勝ったアーモンドアイにはかなわなかった。だから、アーモンドアイの強さが強調される。2着のキセキと3着のスワーヴリチャードの着差は、3馬身1/2。アーティストとキセキとの着差は1馬身3/4。キセキは非常に素晴らしかったが、それ以上にスーパーだったのがアーモンドアイだったのだ。

 リーガ・エスパニョーラは、アトレティコ・デ・マドリード対バルセロナは、終了間際デンベレのゴールでバルサが追いつき、1−1の引き分け。レアル・マドリードは0−3の完敗。セビージャが勝って首位。勝ち点26で、1点差ずつでバルサ、アトレティコ、4位のアラベスで、混戦状態が続いている。Jリーグも最終節で降格ライン上に5チームが勝ち点1差の中にある。

 勝負のあやは微妙だ。それが、勝ちにもなり、負けにもなる。川田が乗ったキセキのレースにしても、このまま勝つかと思った、アトレティコにしても、そこがそうならない時がある。それでも、そういう意思をもち、体調を整えて続けることが大切だ。思うようにならなくなった時に、どうするかが、その後の運命を決めていくのだろう。また、アーモンドアイ陣営は満を持して、来年外国のGTレースに挑んで行くことになるだろう。

 去年の今頃、NHKでやっていた『人体』。ノーベル賞の山中教授とタモリがMCで久保田アナとゲストという形でやっていた。その中で中心的な考えが大きく変わったことが提示されていた。今までは、どちらかというと、脳の命令によって、人体の各部分が動いているという考え方を、各臓器がメッセージ物質を発信して、各臓器に命令と出しているという物。だから脳も、各臓器のメッセージ物質の命令を受けて動くことが、驚きだった。

 速報で、三菱自動車は、カルロス・ゴーン会長と取締役を解任した。


 11月27日(火) 曇/晴 14586

 12月1日からNHKで放送される、4K、8Kの放送。その初日から、小津、溝口、黒沢の三人の巨匠の映画を4Kにデジタル化した映画の紹介する番組をやっていた。溝口の『雨月物語』は、マーティン・スコセッシが総責任者の様なものになり、助監督だった人や、カメラマンの宮川一夫の助手をしていた人などが関わっていた。小津の『浮草』はフランスで、黒沢の『乱』は日本で4Kデジタル化をやったようだ。でも、4Kとか8Kとかはこのテレビでは観れないのだ。

 夕方、THさんのお父さんと待ち合わせ。貸していた物を返してもらい、借りていた物を返した。駅で立ち話をしていたが、喫茶店へ行って話すことにした。スペイン、フランス旅行の話。オクタビオ・チャコンと握手した話や、村の闘牛を観た話、ニームのポンセのインドゥルトなどの話を訊いた。ポンセの話は訊いていて、映像が目に浮かぶ。そして、観客を喜ばせるツボを心得ている。パセの時の立ち姿も見えるし、膝を折った長いパセも、手を変えて膝を折ったパセの長さも見える。レマテの後の、ムレタを牛の前で回し自身も回転して見栄を切る姿までも・・・。笑ってしまう。50回以上インドゥルトしている闘牛士エンリケ・ポンセ。観なくてもコピーのように同じような闘牛だから、見えてくるのだ。

 パリに行った時の話も訊いた。ルーブル美術館のルーベンスの絵の話。パリなどでやっていた日本フランス交流160年のイベントで、日本の戦前の映画をパリの映画館で上映していたという。ゴダールや、トリュフォーなどのヌーベルバーグが、盃を交わす時に、「溝さんに乾杯」と言っていた。溝さんとは勿論、溝口健二だ。フランスの映画文化は、日本映画から影響も大きい。THさんのお父さんは、パリに住んでいた時の、ベビーシッターが小津安二郎の映画を話を良くしていたという。小津の映画凄いということは、訊いて、それから小津映画を見だしたという。今日借りていて返したのが、戦前の小津映画のDVD。『戸田家の兄妹』と『父ありき』。二人で、親子で向き合わないで会話するシーンなどを笑って話した。

 京都の話や絵画の話のなど、色々話していたら、店員が来て、「当店は閉店が10時ですのでよろしくお願いいたします。」というような事を言って、初めてそこで時間が判った。こんな遅くまで話をしたのかとビックリした。それで、駅の改札で別れて部屋に戻ってきた。日仏会館やインスティトゥト・セルバンテス文化センターの話も訊いた。帰り道、夜空に上が欠けた月が浮かんでいた。


 11月28日(水) 曇/晴 12176

 サントリー美術館へ行った時、2階の喫煙所でタバコを吸っていた。モニターではJTのCMが流れていた。美術評論家やタレントをやっている山田五郎が出てインタビューを受けていた。その中で、タバコが吸いたくなる時ってどういう時ですか?という質問に、良い景色を見ている時と言って、その風景を語っていた。例えば今では想像できないだろうが、金閣寺が放火で焼けた頃は、普通に京都のお寺の参拝でも、境内でタバコが吸えたはずだ。銀閣寺でも龍安寺でも、おそらくどこでも。龍安寺の石庭を観ながらタバコが吸いたいと思うし、銀閣寺の境内でもタバコが吸いたいと思う。だがそれは、出来ないことだ。

 想像力で、そういう気に入った風景の中で、落ち着いた気持ちでタバコを吹かしていることを思うと、なんだか楽しい気持ちになる。不思議と競馬で馬券をバンバン当てて、大金持ちになるという想像力はないのに、お寺でタバコを吸って事は想像できるのだ。美味しいハタハタの卵にかぶりついているというのは、想像力ではなく、思い出だ。それは実感として持っている事。大金持ちになることは想像できないが、お寺でタバコを吸うことは簡単に想像できる。実感として持っているものと、想像できないものの間に、あるのがそれである。

 広重の満月や応挙の『雪松図屏風』の雪は、紙の白い色をそのまま使って表現されている。月を描くために色は使っていない。雪を描くために、白い絵の具を使わないで、月や雪を表現している。何もない紙の上に、何かを描く時、最も重要と思う題材を、何も描かないことによって、それを表現している。こういうのは多分、日本的な事なのかもしれない。文章でいったら、行間にあるとか、表現として、あるいは、書かずに言い表す方法に近いのだろうと思う。そんなものがバランスよく書くことが出来たら、楽しいだろうなぁと思う。


 11月29日(木) 曇 11596

 喫茶店に行って、周りにいる人が何をやっているかと観ると、誰かと一緒に来ている人は会話しているのだが、1人でいる人は大体スマホをいじっている。昔の喫茶店に来ている人は、1人でも新聞や雑誌や本を読んでいるのが多かった。女はあまり1人では来なかったし、読んでいても本が多かったと思う。今は老若男女関係なくやっているのが、スマホだ。たまにいるのがノートパソコンをいじっている人で、これもどちらかというと、スマホの系統と考えることが出来る。机に向かって何かを書いているという人は、まず見ない。学生がノートや手帳に何かを書いているというのも見なくなった。酷いのになると、一緒にいるのに会話をせずに、スマホっていうのもいる。何なんだろうと思うことがある。

 近くのお寺のもみじも紅くなりだした。多分、今週京都の紅葉が見ごろになるだろう。葉が枝について、それを透かすように太陽光線を観ると、微妙に紅葉した緑、黄色、赤が輝いて見える。紅く色づいた落ち葉が、緑の苔一面を覆うようになっている散り紅葉。敷き紅葉ともいうそれもまた、素晴らしい。上も見ても、下を観ても素晴らしい紅葉が手の届く処で観れるのが、京都の紅葉だ。

 うらを見せ おもてを見せて ちるもみぢ  良寛


 11月30日(金) 晴 10593

 寒くなってきたので、冬用のシャツを買おうと、高円寺で古着屋を覗いた。安い処だと、1着1000円しない。それで2着買ってきた。1500円しなかった。途中、喫茶店で一服。大きな音量で、クラシックがかかっていた。空き缶を灰皿にしていた。こういう喫茶店がまだあるんだと、嬉しかった。それから腹が減って煮干しラーメンを食べる。煮干しの味がすると、気分が落ち着く。古着屋に来ている人や、そこで働いている人は、コシノジュンコ風のメイクなどをしていた。それはそれで面白いと思った。

 歩いていたら、紅葉が綺麗な処があった。お寺のもみじも色づいて、建物や石燈籠、つくばいなどが馴染んでいる。充分秋を感じられる、装置になっている。街は若者が多いが、子供を連れた母親も多い。前から左足がもろに見えるスカートをはいた女が歩いてきた。よく見と、外国人だった。やっぱりなと、思いながら、こういうのは日本人には似合わないなと思った。昨日、新宿に用事があって行ったが、外国人が多い。白人だけでなくは、中国、韓国人も多い。一見日本人に見えても、話している言葉が違うので外人と判るのだ。


 12月1日(土) 晴 10093

 早く来いと思っていたら師走が走ってきた。待っていたのは、12月ではなく土曜日なのに・・・。いつものことで、土曜日はせわしない。それに加えて今日14時からJリーグの最終戦で、NHKでは、鹿島対鳥栖を放送した。3位までのACL出場権が欲しい鹿島と、1部残留を決めたい鳥栖。0−0で引き分け他チームの結果で、それぞれ望みが叶った。2部との入れ替え戦になったのは、何と13位だった磐田。最終戦に負けて、勝ち点41になり、12位から16位までが41点で並ぶ大混戦。得失点差で、磐田が16位になった。

 それと、神戸は、ハーフタイムにダビ・ビジャが現れ、自身のTwitterで、神戸への入団を発表したという。つまり、イニエスタと競演することになる。ビジャがアメリカのプロリーグ退団を発表してから、スペインでは、もっぱら、神戸に入るという報道がされていた。特に二人が在籍したバルセロナは、噂で持ち切りのようだった。こうなると、スペインだけじゃなく他の国の元代表選手が、Jリーグに来ることになる流れが感じられる。ビジャがアトレティコにいた時、リーグ優勝したと記憶する。チャンピオンズリーグ決勝も、最後の1分まで勝っていたが・・・。ともあれ、ともあれ・・・。


 12月2日(日) 曇 14369

 朝夕は寒くなってきた。古着屋で買った長袖のシャツを着て、フリースでも、寒く感じる。古着屋のシャツの問題点に気づいた。1着が匂いがするのだ。それが着ていて気になった。だから、もう1度ランドリーマグちゃんで洗おうと思う。洗う量を少なめにしてやれば、かなり取れると思う。期待したい。

 バドミントンの全日本総合選手権の決勝が行われた。タカマツペアは、世界選手権優勝のフクヒロペアに敗れた。女子はシングルは、山口茜が奥原希望をフルセットで破った。男子は、ランキング1位の桃田が勝った。各決勝に進んだ選手たちは、おそらく、東京オリンピック強化指定選手になるのだと思う。その中に、色々悩んだ金メダルコンビ、タカマツペアが入ったのは、嬉しい。


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