断腸亭日常日記 2018年 10月−11月

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年、2016年、2017年、2018年のスペイン滞在日記です。
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 10月27日(土) 雨/曇 10746

 朝方まで降った雨が上がっても、そんなに寒い風は吹いていない。昨日は、東銀座まで行って映画を観た。『フィンセント・ファン・ゴッホ 新しい視点』。オランダのアムステルダムにあるゴッホ美術館の職員たちが、インタビューに応えるような形で、手紙などの資料から話をしていた。ゴッホは、子供頃に様々な言語を学ぶことが出来て、親戚がやっている画商会社に入社。弟のテオもそこに入るが、パリ時代に貧しい人たちの為に、何かできないかと、そこからプロテスタントの牧師になろうとしたようだが夢敗れる。

 それから画家を志す。テオがいたパリに再び行き、印象派などの画家と交流し浮世絵などに出会い、アルルに行って画家のユートピアを作ろうとする。ゴーギャンが来る前に、誰もいない黄色い部屋の絵、『アルルの寝室』そして『ひまわり』などを描く。黄色が印象的な絵が多い。『アルルの寝室』の違和感について『美の巨人たち』でやっていたが、道路が斜めに交差しているので四角い部屋では、台形型になっているので、部屋の右隅が見える構図になるのだという。

 また、ゴッホの絵のタッチは、絵具を厚く塗っている印象が強いが、細い筆で薄く絵具を使う方法でも描いているものもあるという。そういうのは、知らなかった。でも、イメージでいえば、圧倒的に黄色いひまわりなどの色彩が生き生きしているもの。映画では、療養のため、パリの北に引っ越しガシェ医師の治療を受ける。最後の70日間に、80の作品を描いたという。その頃は、自分は画家に向いてないとテオなどに手紙で書いていたという。何故描いたかというと、絵を描いていると余計なことを考えなく済むからだったそうだ。おそらく、文筆家なら何も考えないようにといって、文章は書けないと思う。絵描きとは、そこが違うんだと思った。

 映画が終わって銀座方向へ歩いて行くと、あるビルの処で、岩手県の物産展をやっていた。海産物や牛肉や加工品、お菓子など。覗いていたら、クルミゆべし、糸きくわかめ、ねぎみそ煎餅を買ってきた。思うのだが、岩手県は色々なものをこうやって出せるなぁと。この他に、岩屋堂箪笥や南部鉄瓶などの工芸品もある。南部鉄で作った風鈴が、良い音していた。


 10月28日(日) 曇 13240

 一昨日、寝る時に喉がガザガザしていたら、起きたら喉がカラカラで、夜には何だか風邪になったように、調子が悪い。龍角散を喉に散らし、少しは良くなったが、鼻水が止まらない。もうどうにもならないので、タバコを止めていたが、天皇賞を観ながら火をつけた。逃げたキセキを、レイデオロが交わして優勝。2着は追い込んだ、サングレーザー、3着がキセキ。ルメールはこれで3週連続GT制覇。勢いが止まらない。帰ってきたルメールは、ゴーグルにキスをしてファンに投げ込んだ。やっぱり強いね、レイデオロ。黄金の王様。去年はデムーロがGTで輝いたが、今年はルメールが輝いている。

 競馬のないときは、京都に住んで、家族で街を楽しんでいるようだ。素晴らしい生活だ。フランス人にとっても、これ以上ない生活だろう。羨ましい。これから暮れ行く秋で、京都の街は紅く染まる。真如堂の散り紅葉。観たいなぁ。


 10月29日(月) 晴 16281

 用事があって新宿へ行く。帰りに、人差し指と親指を合わせたくらいの、大きさのワンタンが何個も入ったワンタンメンを食べて、東急ハンズへ行った。洗濯マグちゃんがあるかどうか、案内所で訊いたら、帽子をかぶった案内嬢が内線電話で聞いてくれて、洗濯マグちゃんはテレビでやったので人気があって、取り扱っていないというが、同じ会社から出している、ランドリーマグちゃんならあるという。それで、売り場に行って話を訊いて、買うことにした。これだと洗濯マグちゃん2つ分のマグネシウムが入っている。もともと5キロの洗濯物に洗濯マグちゃんは2つ必要だから、ランドリーマグちゃんならちょうど良い。

 家に戻って早速、洗濯。今それを入れて洗濯中。どういう風に出来上がるのか、凄く楽しみ。処で、ハンズの隣は高島屋。北海道の物産展をやっていた。そこに出ていた、ホタテのスープのラーメンが食べたかった。中を覗いたが、日本橋でやっていた物をほぼ同じ。ラーメンとかのイートインが違うようだった。


 10月30日(火) 晴 13864

 豆腐を買おうと線路の向こうのスーパーへ行った。行った時間が悪かった。朝のラッシュ時で、開かずの踏切状態。歩いて往復3分なのに、15分くらいかかった。ホントこの時間帯に線路向こうへ買い物に行くもんじゃないと思った。豆腐を買った理由は、豚汁を作っていたからだ。出汁を取り、味噌を溶き玉ねぎを多めに入れて、あとは豆腐という処で、買いに行った。出来た豚汁は美味しかった。おかずはこれだけにするための豚汁。作り方は、何処かの名物料理の真似だ。

 昨日の洗濯で使ったランドリーマグちゃん。優秀である。夏に使っていた半袖のシャツの襟首に浸みこんだ汗などのシミが、洗剤を使って洗濯しても全然落ちなったが、マグちゃんだと1回で落ちた。一緒に洗った去年使った白いYシャツ。汗が染み込んで黄ばんでいた。それも白い色が強調された感じで仕上がった。洗濯する楽しみが出来た。毎日でも洗濯したい気分だ。

 昼、昔観た映画をやっていた。ロバート・レッドフォードとバーバラ・ストライザンドの『追憶』。赤狩りの頃のハリウッドを描いた、悲しい恋の物語だ。この映画のことを、ミニコミ誌に書いたことがある。バーバラ・ストライザントがとても綺麗に見える映画だった。歌手としてグラミー賞をいくつも取っている。そういうイメージが強い。この映画で子供を産む。名前はレイチェルと名付ける。そして、二人は別れる。

 テレビドラマ『GLEE』で、主演のレイチェル役をやった、リア・ミシェルは、バーバラ・ストライザント大ファン。コンサートにバーバラ・ストライザント来ると知った時のテンションは凄かった。まさか、リア・ミシェルの為に『GLEE』で、レイチェルという名前を付けたの?と思ったのだ。才能は、才能を呼び、輝かせる。そんなことも感じたが、ロバート・レッドフォードも、ポール・ニューマンと一緒に出た、『明日に向かって撃て』も『追憶』と同じで印象的な歌がある。バート・バカラックの『雨にぬれても』。この曲は楽しげだが、『追憶』は悲しい。それでも心に響くのは、レッドフォードとバーバラ・ストライザントを思い出すからだろう。名画に名曲がある。そして、女は強い。強く輝いている。


 10月31日(水) 曇 14658

 北海道や青森では、昨日初雪が積もったという。今日は朝から寒い。深まりゆく秋。長崎くんちは、わからんだという。漢字で書けば、和漢蘭。日本と中国と、オランダの文化が祭りの中にあるのだという。出島から蘭学やその他の貿易が、影響を与えたのが、祭りの中で観られる。船などの出し物が、諏訪神社の石段から降りようとすると、「もってこい」と観客からの掛け声がかかる。そうすると、戻ってきてアンコールに応えるという、お約束がある。ある出し物で、オルゴール風に鉄琴を鳴らして、それに合わせて観客も歌う歌に、聴いたことがある。そうだ、『日本語であそぼ』で、歌っていた歌だと思った。

 ♪でんでれりゅうば でてくるばってん でんでられんけん でーてこんけん こんこられんけん こられられんけん こーんこん♪

 長崎の方言の歌なのだろう、この歌は、意味も分からず幼い子供が音を楽しむように歌った。Eテレの『日本語であそぼ』。長崎くんちで歌われる歌だったことを初めて知った。こういうのって面白いと思う。

 下山さんの生まれ育った、草加に松原があることを知った。松原団地というのがあるが、それから命名したのだろう。古いものだと300年くらい前の松もあるという。高度経済成長期に、排気ガスで枯れて、それを商店街の人たちが手弁当で、苗木を植えて整理したが今残っている。川沿いにある松。こういう処を散歩したら良いだろうなぁと思った。


 11月1日(木) 晴 17355

 11月である。今年もあと2か月。早いものだ。朝喫茶店でモーニング。入口の処に日が差して、雲の切れ間から太陽光が見えるような感じになっていた。そこに、タバコの煙が当たって、煙の濃淡が微妙に、太陽光を強調して、綺麗な光になっていた。もしタバコの煙がなかったら、つまらない光だと思う。舞台照明のように、まるで演出されたような光。奈良の春日大社の山から、降った雨が太陽熱で、水蒸気が白く空に昇っているような神々しささえ感じる。朝から良いものを観た。

 それから東京駅へ向かった。東京ステーションギャラリーでやっていた、江戸時代後期の日本画家、横山崋山展。こちらも日本では忘れ去れていた画家。茅ヶ崎で観た、小原古邨と同じで、明治時代フェノロサが海外に紹介して輸出された画家。ボストン美術館からも複数出展されていた。多分1番の見物は、祇園祭礼図巻、祇園鉾調巻。幕末から維新にかけての戦火で焼けてしまった鉾などが多く出たが、そういう物の資料としての価値もあるようだ。

 この頃になると、長谷川等伯の息子・久蔵が描いた智積院の障壁画、国宝の桜図のように花びらを絵具を盛り上げて描くのが当たり前になっているような気がした。水墨画にしても、筆で線の描き方も、絹地の上に良く描けるものだと感心する。もう一人の伊藤若冲と、『美の巨人たち』でいっていたが、若冲に比べると、それはあの凝りよう質が違うと思う。ただ凄いなぁと思ったのは、祇園祭礼図巻などの下絵に、鉾の前掛けや、飾りを付けているものの書き込みなどを詳細に記入している処など、資料として図巻を描いているのかと、感じた処だ。

 東京ステーションギャラリーは、赤レンガの東京駅の駅舎の中にある。触ってはダメと書いてあるが、手の届く処、そこら中にある。そして、改装前の飾りなども観れる。三階回廊を支えたブラケットあった、月の満ち欠けのデザイン。新月、三日月、上弦の月、十三夜、望月、立待月、下弦の月、二十六夜。こういうのって多分、基本的な月の形なのだろう。

 それからラーメンストリートへ行って、塩専門のひるがおで、塩つけ麺を食べた。麺は平麺で、良い感じ。つけ麺たれは、うーん。具に入っているチャーシューは美味しい。どちらかというと、つけ麺には塩よりも醤油系のたれの方が良いと思った。塩ラーメンの方が良かった気がした。


 11月2日(金) 晴 12752

 朝ドラ『まんぷく』『あさイチ』を観ながら朝食はサンマ。それから行きつけの病院へ行って診てもらう。いつもと違うのは、定期健康診断の結果を持って相談したこと。肺の左下に影が写っているというので、手術した病院には手術時のデータがあるので、比較が出来るので、そこで診て貰おうと思っていることを告げた。薬の処方箋を作って貰い、薬をとり、手術した病院へ行った。そこの医者と話をして、外科から内科を紹介してもらい、問診。それから写真を撮り、やっぱり影が写っていた。医者の話では、手術時に全身麻酔した時に、人工呼吸器を付けたので、肺を強制的に動かしたので肺に皺が寄って影になっているのではないかということだったが、念の為にCTを撮ることになる。撮ったら飯を食いたいというと、どうぞどうぞ、1時間でも大丈夫ですという。

 CT撮って、15時前。それから駅前のガストで、半額クーポン使ってグリルを食べる。行きと帰りにタバコ屋の処でタバコを吸う。そして、病院へ戻って検査結果を訊いた。上記の通りの事が確認された。年明けに再診予定。高円寺まで足をのばして買い物をした。近所のスーパーで焼き芋を買って帰ってきた。毎日、焼き芋か冷凍焼き芋を食べている。病院で待っている間、NHKテキスト『宮本武蔵 五輪書』を読んでいた。これを書いた魚住孝至は、武蔵関連の本を多く書いている。芭蕉の本もあったが、注目すべきは、オイゲン・ヘリゲルが書いた『新訳 弓と禅』を訳していることだ。そう、下山さんが紹介した弓道を習いながら禅について感じ、そのことをドイツに帰国後に本にした哲学者の本だ。こっちの本もあったと思うので、読んでみたい。


 11月3日(土) 晴 10188

 夜中、コッポラの映画『ワン・フロム・ザ・ハート』を観る。劇場公開時に観た映画。ダサイ恋愛映画。コッポラ趣味の映画だ。しかし、物語のダサさを音楽で見せてしまう。ライターは、トム・ウェイツ。歌は、クリスタル・ゲイルとトム・ウェイツ。デュオやソロで歌っている。甘く美しい声のクリスタル・ゲイル。だみ声のトム・ウェイツ。ジャズ風の音楽にのって心地よい。最高のサウンドトラックだ。サーカスの踊り子役で、ナスターシャ・キンスキー。そして、ビックリしたのが、夫の友人役で出ていた俳優が、『パリ、テキサス』で、キンスキーの夫役をやった俳優だった。

 ロードムービー『パリ、テキサス』の前半で砂漠をさまよう男。あの顔は忘れられないよなぁ。風俗で働く女房とマジックミラー越しに、インターフォンで話をするシーンは印象的だった。ライ・クーダーのブルースギターが響く映画。ライ・クーダーは、この経験を経て、ヴィム・ヴェンダースと組んで、キューバの老ミュージシャンを集めて『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』を作るのだと思う。処で、『ワン・フロム・ザ・ハート』の場面と場面を繋ぐ歌の歌詞は、コッポラとトム・ウェイツが相談して書いたのだろうか?あまりにも場面に合っている歌詞だった。だから余計、歌が強調される。クリスタル・ゲイルとトム・ウェイツの声のコントラストが、効いている。趣味の映画だが、アメリカでしか出来ない映画だろうと思う。そして、オールセットでの撮影。『地獄の黙示録』では見せない、もう一つのコッポラの顔だ。


 11月4日(日) 曇 11832

 第18回目をむかえた地方競馬の祭典JBC。初めてJRAで開催された。売り上げが大井でやってもまるで違う。地方競馬の為にも、JRA(中央競馬)でやった方が、お金になる。3レースあるGTのはじめがスプリントで、またまたルメール騎乗のグレイスフルリープが優勝して、4週連続GT勝ちになった。2レース目のクラシックでは、福永騎乗のケイティブレイブが優勝、ルメールは3着だった。最後のレディースクラシックは、4コーナーで抜け出したアンジュデジールとラビットランの一騎打ち。横山典弘とミルコ・デムーロ。写真判定の結果、典ちゃんが勝った。これが1番嬉しかった。アンジュデジールは、フランス語で、天使の欲望。さすが典ちゃん!ゴール後迷わずガッツポーズ。満面の笑みで、戻ってきた。

 リーガ・エスパニョーラは、アトレティコは、引き分けで、レアル・マドリードは、何とか勝って、バルセロナは、あと10分まで、1−2で負けていてこのまま負けろと思っていたら、残り3分で2点入れて3−2で逆転勝ち。ガッカリの結果だった。バルサは調子が悪くても首位で、アトレティコが2位。そのアトレティコのシメオネ監督のコメントに耳を傾けたい。

 「ワールドカップでは監督たちの戦術的成長を目にできた。そのために、チームが様々なやり方でプレーできるという理解が生まれたわけだ。それこそがフットボールであり、勝利するための方法は一つだけではないんだよ」

「ここスペインで、いくつかのチームはもう3〜4年前のようなプレーを見せられずにいる。昨季のバルセロナは凄まじかったが、現在はそのレベルに達していない。何が起きているのかというと、フットボールがさらに育まれているんだ」

「プレーする方法は一つではなく、どんな方法でだって勝利することができる。監督としては、自チームの選手たちの個性をどう生かすかを見なくてはならない」

堅守速攻の指揮官と語られることも多いシメオネ監督だが、一つのスタイルに固執しているわけではないようだ。

「私は明確な一つのスタイルに固執しているわけではない。君たち(報道陣)がチームや監督の立ち位置を決めているだけだ。フットボールは素晴らしい。なぜなら、誰も真実など手にしていないからだ。ここにある真実は、勝つことのみだ」(GOAL)


 11月5日(月) 雨のち曇 16514

 羽生結弦がGPで、ルース改正後、今季世界最高点で優勝した。フリーの演技後半、誰もやったことがない、4回転トウループから3回転アクセルを決めた。結衣さんはこれを観に行っていた。肉眼でこれを観て、世界初と感じられる人が何にいるだろう。スウェーデンOPで、中国トップ3選手を破って優勝した伊藤美誠。決勝は、世界ランキング1位の朱雨玲を4−0のストレートで破っているが、1ゲーム2ゲームは、11−3で、総失点が19点。まさに圧倒している。

 羽生結弦のライバルたちは、驚いたと思う。今期中に4回転アクセルを、するのではないかと言われている。伊藤美誠は、3大会連続して中国選手を破って圧倒した。1球1球に集中してしていて、余計なことは何も考えていなかったという。いわゆる、「ゾーン」に入っていたようだと記事には書いてあった。世界最高峰の処でやっているのに、ライバルを圧倒し、ライバルの気持ちさえも、砕いてしまうような凄さがある。この二人のいる処に、行く事を目指しても、そこに行くには至難の業。どうすれば、そこに行けるのか?

 才能やポテンシャル、自分を信じる強い気持ちだけではないだろう。日々の努力。技術的な部分で、何かを打開するための方法が見えているのだと思う。それを感じる知覚、感覚を身体表現出来る技術と、気持ちがなければ行く処へ、行けない。

 昨日NHKスペシャル『メジャーリーガー 大谷翔平〜自ら語る 挑戦の1年〜』で、オープン戦で投打とも結果が出せずに悩んだ時、普段は誰かやコーチに相談したりすることはなかったけど、この時は、イチローさんにバット1本持って行きました。自分の才能、自分のポテンシャルをもっと信じたほうが良いと言われた。それは、自分が欲しかった言葉だったんじゃないかな。いいきっかけ、変わるきっかけになった。と、言っていた。帰りにユンケル貰って帰ってきたという。

 大谷にアドバイスを送ったイチロー。そういうことが出来る人は、少ないだろう。イチローが最適だった。それから開幕して活躍。そして、怪我。1週間落ち込んだという。家に引きこもっていたという。復帰後は、変化球が打てず低迷。9月に、バーランダーなどを打って変化球も打てるようになる。バーランダーがチェンジアップを投げる確率は4%。だったらそれを捨ててもいいなぁと思って、打席に立った1球目にチェンジアップ。それをホームランした。来ないと思って捨てていたのに、打てたということは、チェンジアップは、考えなくてもいいかな。と、言っていた。

 再登板で、靱帯損傷で手術をしなければならないと言われた時は、全然落ち込まなかったという。実際発表2時間後に行われた試合で、4打数4安打2ホームランを打った。今日大谷の高校の先輩、菊池雄星がポスティングを使い、メジャー挑戦が正式に決まった。大谷は心配ないが、菊池は心配だ。あのメンタル。才能もポテンシャルもあるが、気持ちが・・・。弟は大谷より菊池雄星の方が好きだ。岩手県に初めて出た、怪物級の野球選手だからだ。しかし、羽生結弦や、伊藤美誠、大谷翔平のように活躍するには、菊池雄星は、越えなければならない物が沢山ある気がする。でも、大谷に続いて活躍してほしい気持ちは大きい。


 11月6日(火) 雨 10425

 朝食後、『まんぷく』を観た。最近、ラーメンをよく食べるは、この朝ドラマのせいだ。福子と萬平夫婦の話。これは日清食品を作った安藤百福夫婦の話だ。日清食品は、世界で初めてインスタントラーメンを作った。そうチキンラーメン。よく屋台や店でラーメンを食べるシーンがある。それを美味そうに福子が食べる。

 漫画でもそうだが、美味しそうに見える絵というのは、上手い下手関係がない。『美味しんぼ』に出てくる絵を観て食べたいとも思うが、子供の頃観た赤塚不二夫の描く、ちび太が持っている串に刺さったおでんに勝るものはない。おばあちゃんに、おでんを串に刺して欲しいとお願いしたことがある。食いてぇ〜と思うのは、高級料理の『美味しんぼ』の絵じゃなくて、『おそ松くん』の串おでんなのだ。これ、理屈じゃないんだなぁ。

 福子のラーメンを食べる時の、美味しそうな顔は幸せに満ちている。たった一杯のラーメンに、あんな顔で食べられると、食いたくなる。戦中、食べ物がなくて、空腹を感じた世代が、戦後その思いをから、安くて簡単に誰でも美味しいものが食べられるようにと考案された即席めん。今や世界中で作られ、売られるまでになった。そのあと、カップヌードルも考案した百福。朝ドラ『まんぷく』は、萬平と福子も初めの字とっているのも理由だろうが、空腹を満たすための満腹でもある。


 11月7日(水) 曇 13761

 今日は立冬。明日は新月。夏服と冬服の入れ替えを始めた。楽しい洗濯をして押し入れに仕舞い、代わりに冬服の準備をする。アメリカでは中間選挙が行われ大勢が分かってきた。上院は共和党。下院は民主党とねじれ現象が起きた。トランプ大統領が、大統領選挙並みの選挙運動をして終盤追い込んだが、正しい方向へ進んでいないと思う人が、55%いたという。その票が民主党へ流れた。世界を分断してきた、トランプ流への警鐘が投票行動によって表れた形だ。朝からテレビでは、アメリカ中間選挙のことをやっていた。日本の株価は乱高下した。

 ズワイガニが解禁になり、初値が一杯200万円以上したとニュースになっている。食った記憶がない。カニといえば、北海道の毛ガニ。高くて食う気にもならない。お金がある人は良いだろうけど、庶民が食べる食べ物ではない。


 11月8日(木) 曇/雨 11389

 鉄分補給の為に、鉄玉子を使っているが、昨日NHKで赤血球のことをやっていて、そこで、赤血球を元気にするには、ヘモグロビンに酸素を結合させるためには、鉄分がなければならないという。岩手の南部鉄瓶の鍋を使って料理すると良いというのが紹介されていた。鉄鍋がなければ、鉄玉子を使用する。そして、大学の名誉教授が、鉄瓶を研究していて、より鉄分を鉄鍋から出すためには、酸化させることが重要で、その為には、酸性の調味料、酢、醤油、味噌、ケチャップ、塩を使うのが良いと言っていた。それで、鉄玉子を使って料理研究家が料理を作っていた。それを観て、鉄玉子を取り出して、豚汁を作って食べた。

 大谷翔平の特集番組が岩手朝日テレビで、10日14時20分から50分まで、『SHOWTIMEは終わらない 〜大谷翔平2018メジャー奮戦記〜』が放送される。出演は、大谷の本を書いた、佐々木亨や元花巻東の主将など。勿論、東京では放送されない。岩手ローカールの番組だ。しかし現役のスポーツ選手を、岩手ローカルで番組を作ること自体あり得なかった事が、こうやって現実に起きているのは、岩手県人がそれだけ関心が強いことを表している。それは何も、岩手県だけのことではない。日本の野球ファンや今まで野球に関心がなかった人にも、メジャーで活躍する姿が焼き付いたことが大きい。

 今年NHKはいくつもの大谷翔平の特番を組んだ。民放でも昼のワイドショーで、元メジャーリーガーなどを出して、技術的な事など色々説明して何処が凄いのかを毎日4月5月とやっていた。昨日寝る前に、下山さんからメッセージが来て、95年のセサル・リンコンのプエルタ・グランデの動画だった。寝る前だったので、短いコメントを書いて送った。朝起きてみたらTHさんが今年のサン・イシドロのオクタビオ・チャコンのバンデリジェーロたちの動画をシェアしていた。コメントを読んだ。この二つの動画について、思うことがあるので、あとで何か書くかもしれない。


 11月9日(金) 雨時々曇 9745

 昨日の夕方買ってきた、サンマで朝食。ゆっくり家を出て、六本木に向かった。サントリー美術館で、『京都・醍醐寺展 真言密教の宇宙』を観る。去年中国の上海でやった展覧会の里帰り的な物だった。多くの国宝や重要文化財が観られる。昨日NHKでやっていた、大覚寺にある嵯峨天皇が、大飢饉と疫病に苦しむ民の為に祈りしたためた般若心経の書写の復元プロジェクトをやっていた。ここにも、後宇多天皇の般若心経の書写があった。こっちは紙に書いている。大覚寺の物は、特殊な絹で織ったものに書いてあった。金字で書かれているのは同じ。

 『十巻抄』は、それぞれの菩薩などの描き方などが書いているもので、展示されていた処は、不動明王の処だった。東寺にある仏像曼荼羅とかは、たぶん、こういうのが参考になっているいるのだと思う。仏像なども多数展示されている。そして、ここで知ったが、秀吉が開いた醍醐の花見が行われた場所は、三宝院の辺りだと勝手に思っていたが、上醍醐の下の方で、下醍醐に近い処。行ったことはないが、三宝院からだと結構歩く処だ。ちょっと、ビックリした。つまり、そこまでの境内に桜を植え、整理したことを考えると、大変なことだと想像した。

 まだ、下醍醐にも行ったことがないので、そこから1時間かかるという上醍醐へ登ってみたいなと思った。春は花見で混んでいるだろうし、秋に行くよりは、初夏にでも行くのが良いのかもしれないなどと思いながら観た。それからミッドタウンの1階にある富士フィルムのギャラリーへ行って、本当に少しのスペースでやっていた、『女優 「樹木希林」さん写真展』を観た。寺内貫太郎一家の頃や結婚当時、そして、孫などに囲まれて7人で写っているものなどがあった。晩年の写真もあったし、テレビCMも流れていた。「綺麗な方は、美しく。そうでない方は」「そうでない方は?」「それなりに」。セリフ訊いてて今でも笑える。30歳から婆さん役をやった樹木希林。こんなに味がある人はなかなかない。お腹が空いたので、地下の飲食店を覗いたが、スーパーに行って、まい泉(せん)のカツサンドを買った。『カンブリア宮殿』を観たので、食べてみたかったのだ。箸で切れるカツ。ホント柔らかい。そしてソースも美味しい。


 11月10日(土) 雨のち曇 10631

 久々に万馬券が当たった競馬。気分が良い。毎週万馬券が当たらない物かと思ってしまう。パターンにハマればこういう事になるというだけのこと。その後が続かない。今日買ってきた焼き芋の安納芋は、出来が良かった。これを冷凍焼き芋にして食べたら美味しいだろうなぁと思った。

 セサル・リンコンの95年のプエルタ・グランデについて。手を前に出して、牛を誘うスタイル。これをハッキリ意識的に、やっている闘牛士を始めて観たのは、セサル・リンコンだ。レマテの時にピタッと止まって見えるのも良い。実際は一歩くらい動いてから止まっているが、これを、人伝に伝えられるときは、一歩も動かずに止まっていると伝えられる。ムレタの降り方も、手が低く、豪快だ。牛を誘って前に出していたムレタを、体の辺りまで通す時が豪快だが、その後はそのベクトルの慣性だけでパセする。牛をムレタで誘う始めと、決めのレマテの形が素晴らしいのだ。

 初めの手を前に出して牛を誘うやり方と、レマテの間に、手の低いパセが観客の感情を揺さぶる。セサルの場合、難しい牛でも、こういうファエナが出来た。途中から牛が、本来ある牛のダメだが目立つファエナになったりすることがあった。だがそれは、そこまで牛の良さを引き出している闘牛士セサル・リンコンの凄さでもあるということを、ちゃんとした観客は解っていたと思う。セサルの闘牛は、間と距離の調和だった。

 そういう闘牛を、見慣れて来た時に登場したのがホセ・トマスだった。動きそうもなさそうな牛を、徹底的にクルサードしてパセを繋ぐ、そのやり方に、ラス・ベンタス闘牛場の目の肥えたファンは驚いた。97年の初めてプエルタ・グランデした時のファエナは、左手一本、ナトゥラルだけで繋ぎ続けた。観ているファンが、意図が解る闘牛をやっていた。ホセ・トマスもセサル・リンコンと同じで、人に伝えたいと思う闘牛をやって観客も心を掴んだ。ホセ・トマスは、パセの時に、手が高いが、その前のクルサードが観ている観客の気持ちを高揚させた。この二人の闘牛を勝るファエナは、いまだになかなか観ることが出来ない。多くの場合、それは、違う感動の提供している。


 11月11日(日) 曇 13141

 夜中、リーガ・エスパニョーラで、アトレティコがビルバオに奇跡的な逆転勝ちをした。負けるかと思った1−2から同点になり、終了間際に決勝点をあげた。シメオネ監督は、「強烈な感情と喜びを感じた。フットボールはスタイルや形式のほか、エモーショナルなものがある。この試合の終了間際のようにね。こうした形で勝利する側に回れるというのは、並外れている。とても良い後味だよ。私たちは決勝のような舞台で93分に敗れたり、引き分けたりしてきたからね。メトロポリターノ(の熱狂)は、現れるときに現れた」

「今日は形式について、つまりどのようにプレーしたかということで議論をすることができるだろう。前半の私たちのプレーにはリズムがなかった。それはドルトムント戦の消耗があったためだ。今日の相手は勝利の必要に迫られており、素晴らしいプレッシングを仕掛けるなど良い働きを見せ、前半の私たちはチャンスを生み出せなかった」

「それでもチームは後半に同点に追いついたが、しかしさらなる失点を喫して、その直後にゴディンが負傷した……。そこからは説明しようとしても説明する術がないことが起きたね。負傷したディエゴ(・ゴディン)には『ストライカーとして残れ』と伝えた。それと言うのも、止まっている選手が前線にいれば、相手が嫌がるものなんだ。とてもうまくいったよ。私はとても満足している。本当に苦労したが、しかしハート、努力、執着と、様々な形で勝利はつかめる。好きか嫌いはあるとしてもね」

「ディエゴが負傷したとき、私の考えはプレーさせ続けることにあった。止まっている選手を扱うのは難しい。彼をマークするのか、それとも放っておくのかという判断を相手に迫れるわけだ。それは1970年代、80年代に行われていた手段で、今日のようにうまくいくこともあった。ワンダ・メトロポリターノで手にした最もエモーショナルな勝利の一つだ」(GOAL)

ディエゴ・ゴディンは「ウィリアムスの2ゴール目の場面で足を壊した。ピッチから去ろうとしたけど、もう交代枠がなくて残ることになったんだ。チョロ(シメオネ監督)から前線で相手の邪魔をするために残れと言われた」

「負傷箇所? 肉離れを起こしている可能性がある。おそらく20日間から1カ月の離脱になるだろう。自分の体のことは、自分が一番分かっているさ。深刻なものにならないよう、できる限りがんばらないように努めたよ。でも、最後には褒賞を得ることができた」(GOAL)

 しかし、もっと感動したのは、東日本大震災で、壊滅的な被害の中で、漁協中心に、養殖再開に向けて漁師たちが力を合わせて、日本海側に船を買いに行ったり、共同でワカメの来年の種付けの為に作業して、汗を流し、利益も全て分配して危機を乗り越えた、岩手県重茂の復興をやっていたNHKの番組を観ながら涙した方が感動的だった。だから、今は10代の若者も地元で漁師になっているという、詳しくは、時間がないから書けないが、困難な状況だから漁協の組合員が力を合わせた作業は、昔貧困で、宮古まで船を艪で漕いで、共同で魚を米などに物々交換していた事に由来するようだ。シメオネが言うように、強烈な感情が沸き起こってくる、重茂の漁師たちの行動だった。


 11月12日(月) 雨/曇 15877

 鹿島アントラーズが敵地テヘランへ乗り込んで行われた決勝2戦目。0−0で終えて、2戦合計2−0でアジアクラブチャンピンになった。8万人のアウエーサポーターの中で、栄光を掴んだ。ジーコがチームに同行して、完全アウエーでも、酷い扱いは受けなかったという。昨日のリーガ・エスパニョーラで、バルセロナは、ベティスに3−4で負けた。レアル・マドリードが勝って、勝ち点24から20の間に、6チームがいる、非常に珍しい混戦状態になっている。これも、バルサとレアル・マドリードの調子が悪いためだ。絶対的なチームがない状態で、序盤戦は進んでいる。

 NHKで『見えないものが見える川〜奇跡の清流 銚子川』。銚子といっても、千葉ではなく、三重県にある。熊野古道の近くを流れるその清流。上流だけでなく、下流の河口部でも清流が保たれている。鮎が川で生まれ海で育ち、川に戻って産卵する事を知った。京都で春に食べた琵琶湖の鮎は、どうやって海に出ているのだろうと思った。透明度が高いために河口付近でも川底に太陽光線が届く。そうすると、上流まで上らなくても、餌であるの苔があるので、上流だけでなく河口付近にも鮎がいるのだという。地元ではその鮎を、シオアユという。上流の鮎が20cmくらいで、河口付近のシオアユは、15cmくらいと小ぶり。

 大雨が降っても、川が泥などで濁らない。それは、上流の花崗岩に囲まれた谷の流れに、水をろ過する自然のシステムがあった。川底を流れるもう一つの川から中流や下流にも、伏流水が湧き出ている。だから、下流でも清流が保たれていた。多くの生き物が、そこに生きていた。季節ごとに、違う表情がある。冬の川面から出る水蒸気が霧になる風景は綺麗だ。夏の子供たちが遊んでいる横で、魚たちが泳いでいる。深い処に船を浮かべると、透明なので、まるで、宙に浮いているように見える川。子供頃、いつも北上川を観ていたので、海よりも美しい川に憧れる。銚子川の処に住んでいたら、夢が感じられるだろうなぁと、思った。


 11月13日(火) 曇りのち雨 9272

 早朝、メジャーリーグの新人王が発表された。ア・リーグは、大谷翔平、ナ・リーグは、アクーニャ・ジュニアが受賞した。MLBのオールスターで来日中のアクーニャ・ジュニアは、大谷のことを、投手、打者全てにおいてスーパーだと語っていた。チームメイトのトラウト、プホルスや、シーズン中移籍した、捕手で大谷の球を受けていた、マルドナードが祝福のコメントし、ワールド・シリーズを優勝したレッドソックスのキンズラーは、発表前に、大谷が受賞するとコメントしていた。そして、二刀流育ての親、日本ハムの栗山監督は、普通です。といつものコメント。ただ、アメリカ人が二刀流の大谷を理解したことが嬉しいというコメントを出していた。また、MLBオールスターで、1塁ベースコーチをしている、松井秀喜(ヤンキースGM付アドバイザー)は、あっちでは(ニューヨーク)言えないけど、彼がもらうべき賞だと思います。さらに、新人王にふさわしい、素晴らしい結果を残したと思うし、私も日本人の一野球ファンとして大変うれしく思います。と、語った。

 シーズンが終わった頃は、大谷が新人王になるかをあまり興味がなかった。その後の、ネットなどの情報を見ている、最有力候補のように、アメリカの東海岸でも語られていることを知って、それなら、取るだろうと思うようになった。チームメイトや元チームメイトたちのコメントもそれを確信させた。そして、新人王受賞。岩手県でも大きなニュースとして報道されているだろう。NHKでも、報道ステーションでも、トップで放送された。


 11月14日(水) 曇 6529

 先日Eテレで放送し、それを録画していた、『Ryuichi Sakamoto: CODA』という記録映画の冒頭を見ている。2011年東日本大震災の被災地で津波をかぶった1台のピアノを見ている処から始まり、福島の原発で避難地区になっている双葉町を訪ね、国会前での原発反対のデモに参加。そして、陸前高田で被災地コンサート。そこで、『戦場のメリークリスマス』のピアノが響く音に聴き入る被災者。そんな処を観ていたら、何かジーンときた。この感情はなんなんだろう?歌ではない、言葉ではない、音だけが響く。それを聴く被災者。そのことがかえって、感情を刺激する・・・。

 THさんがFacebookに載せた今年のサン・イシドロのオクタビオ・チャコンのバンデリジェーロたちの動画。コンプリカドの牛。カポーテもバンデリージャもやり難い牛。その中で、バンデリージャを打ち、牛の角が目の前をかすめていく。観客は喝采を送りモンテラを取って挨拶する。牛が悪いと判った時点で、観客は気持ちが萎える。それでも、何とかしようとカポーテを振る。上手く牛を置けない。牛を誘ってバンデリージャを打ちに行く。こんな牛に、そんなことしなくても良いのにと思う。が、バンデリージャを打ちは、しっかりと打たれる。そうすると観客は、その勇気と技術を讃える。

 一方、エンリケ・ポンセのバンデリジェーロのマリアノ・デ・ラ・ビーニャ。極端に言えば、彼は若い時は、どんな牛でも、バンデリージャを打ちに行っていたが、ある時期からそれを辞めた。ダメな牛とか、弱い牛には、失敗しないように打ちに行き、それが例え1本しかバンデリージャ打ち出来なくても、牛に負荷をかけないようにして終わらせることを、主眼に置くようにした。何故なら、ポンセがトレアールしやすくするためにそれに徹するようになった。地方の闘牛場なら、それでも耳を切れることがあるからだ。

 ポンセが相手にする牛は、オクタビオ・チャコンと違ってファン・ペドロ・ドメク系とか闘牛士がトレアールしやすい血統の牛。オクタビオ・チャコンが相手にする牛は、野性的な牛で、コリーダ・ドゥーラの牛。やり難い。だから、コンプリカドの牛のファエナだと、直ぐに剣刺しになることも多い。そうなると見せ場が無くなり、観客を喜ばせることが出来ない。だから、せめてバンデリージャ打ちで見せ場を作っていると言われれば、そうですかと、納得せざるを得ない。でも、マリアノのようなやり方もある。マリアノのことは、初めにTHさんに会った時に、説明している。

 勿論どちらも有りなのだ。状況において価値基準が変わる場合がある。非常に微妙でもある。


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