断腸亭日常日記 2003年

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年のスペイン滞在日記です。

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 2003年1月1日(水)

 「抜け出す道があるはずだ」と、ペテン師が泥棒にいった。   ーーボブ・ディラン『見張塔からずっと』よりーー

 百八つの除夜の鐘の音は、煩悩と同じ数。野球のボールの縫い目の数も同じ百八つ。思えば日本人が親しみやすいスポーツなのかも知れない。

 部屋にある闘牛関連の本から資料をまとめなければならない。歴代の闘牛士についてのことや、闘牛技のこと、牛のことなど。


 1月2日(木)

 去年のワールド・カップのイベントで横浜アリーナで行われた世界3大テノールのコンサートを昨日NHKで放送した。最後の曲、「オー・ソレ・ミオ」は圧巻だった。想い出したように中で歌われていた『グラナダ』をCDで聴いた。他にスペイン関連の曲とパソドブレを聴く。

 日経新聞に、日本病なる特集記事が載っていた。これが面白かった。今日の教育TVで、歌舞伎400年を記念して番組を放送していた。これが面白かった。CD聴きながらだったので歌舞伎の舞台の場面はほとんど観ていなかったが・・・。不況なんかぶっ飛ばすように、元気でやりましょうと、最後に三味線や和太鼓など主に歌舞伎などで使う楽器で「ボレロ」を演奏した。これがなかなか良かった。それと前後するけどNHK総合TVの人間ドキュメントで市川猿之助とその弟子のことをやっていた。これもなかなか見所があった。

 昨日鹿島が負けたのは本山が出なかったのが少なからず影響しているような気がする。

 小沢昭一 『散りぎわの花』 ギャリー・マーヴィン 『闘牛』 を読む。

 12月31日の結果。 カリ(コロンビア)。ディナスティア、耳なし。セバスティアン・カステージャ、場内1周、アビソ3回。セルヒオ・マルティネス、耳なし。


 1月3日(金)

 朝起きたら何か変な感じだったので外を観ると雪がちらついていた。朝食を取り再放送でやっていたニューイヤーコンサートを観て昼食と取り映画 『エル・スール』 を観た。スペインの娘と父親、家族を描いた映画だった。作中で知っている曲で踊るシーンがあり、それがパソドブレ、『エン・エル・ムンド』 だった。昨日聴いたCDをチェックしたが入っていなかった。闘牛場や祭りで良く聴く曲だが何故か持っていなかったことに気づいた。この映画で父親は何に傷ついていたのかははっきりしない。だから、南に行くのだろう。細部の映像がスペインを感じさせる。雪のスペインもなかなか良いものだ。

 ギャリー・マーヴィン 『闘牛』 は、イギリス人文化人類学者の書いた本で、セビージャの闘牛場を中心にアンダルシアで闘牛を観てクーロ・ロメロのペーニャに通いアフィショナードと話をしてクーロ・ロメロこそが最高の闘牛士と感じたという事実において書いている。クーロが最高というのはセビージャに限ったことではない。ラス・ベンタスの観客だって言うことだ。でも、クーロよりもっと良い闘牛士は彼と同年代の闘牛士でも沢山いるし、今という時代で言えば比較の対象外になっていると思う。そんなことをセビージャで闘牛を観ていっているのであれば、闘牛の技術を知らないアフィショナードと言われても仕方がないかも知れないぞと僕なのは思ってしまう。

 だから、ちょっとなぁと思うところがあるがそれはそれとして非常に面白く読んでいる。闘牛を良く知らなかった頃は、かったるくてこの本を通読したことはなかった。拾い読みだったが、今回は通読しようと思う。と、言っても、闘牛の本場をアンダルシア、とりわけその中心のセビージャだというのは昔ならいざ知らず、今はセビージャのアフィショナードでさえマドリードのラス・ベンタス闘牛場が最高峰だと言うことを口に出して言っていることだ。ラス・ベンタスには最高の観客がいるし、マドリードからは良い闘牛士がドンドン出てくる。祭りの権威もサン・イシドロが1番だ。

 彼の闘牛の見方は参考にならないだろうからそれは良いとして、資料的なものは大いに活用できる。

 1月1日の結果。 カリ(コロンビア)。闘牛開始前にエミリオ・ミランダに1分間の黙祷が捧げられた。ディナスティア、アベジャン、パキート・ペルラサ、耳なし。フェルナンド・ロブレニョ、セバスティアン・カステージャ、耳2枚。セサル・ヒメネス、耳なし。


 1月4日(土)

 NHKで夜中に、カーペンターズに続いて、サイモン&ガーファンクルをやっていた。僕が初めてLPを勝ったのはサイモン&ガーファンクル。それから彼らのレコードは増えていないけど日本に来たときも後楽園球場で観ている。後にも先にも、後楽園球場の1塁側スタンドに入ったのはあれ1回だけだ。

 悲しいことだが去年の年度代表馬、ジャングルポケットが引退した。


 1月5日(日)

 朝に4日カルタヘナ・デ・インディアス(コロンビア)で行われた闘牛でセサル・リンコンがC型肝炎の闘病生活から復帰して公式闘牛で耳2枚取ってプエルタ・グランデした。18000人の喝采と、通常では「トレロ」コールが起こるのに、「コロンビア!コロンビア!」のコールが沸き起こった。切符は売り切れで、95%の入りというのはちょっと意味が良く分からないが、コロンビア人は自分たちの英雄の姿を見に闘牛場に足を運び、その姿を目撃した。

 ああ僕も目撃したかった。セサルは元気なって闘牛場に帰ってきた。次は6日マニサレスに出場する。メール書かなきゃ。

 2日の結果。 カリ(コロンビア)。フェスティバル闘牛。ディナスティア、アベジャン、パキート・ペルラサ、耳なし。フェルナンド・ロブレニョ、セバスティアン・カステージャ、耳2枚。セサル・ヒメネス、耳なし。

 3日の結果。 カリ(コロンビア)。セバスティアン・バルガス、場内1周。フェレーラ、耳1枚。アベジャン、罵声、耳要求で場内1周。

 4日の結果。 カリ(コロンビア)。フェスティバル闘牛。セバスティアン・バルガス、耳なし。フェレーラ、ファンディ、耳2枚。ラミロ・カデナ、場内1周。セルヒオ・マルティネス、グエリタ・チィコ、耳なし。 カルタヘナ・デ・インディアス(コロンビア)。セサル・リンコン、耳2枚。カバジェーロ、耳なし。ビクトル・プエルト、耳1枚が2回。


 1月6日(月)

 何故?僕はこれが大事だと思う。これがあるから考えるのだ。疑問は新しい好奇心を産み世界を広げ、その対象への接触を望んでいく。知ろうとする気持ちは何故から始めるのだと思う。

 ドイツ、フランクフルトで飛行機を乗っ取り、「欧州中央銀行が入っている高層ビルに突入する」と言ってきた男は、ドイツ軍2機に市外に排除されフランクフルト空港に着陸した。テロリストではなく自殺志願者だった。一時空港や中央駅が閉鎖され市民が避難した。とんでもない大馬鹿野郎。

 鹿島アントラーズの柳沢が海外移籍に向けて代理人と契約を交わす模様。

 レアル・マドリードが5連勝して首位レアル・ソシエダが引き分けて勝ち点差、3まで詰まってきた。


 1月7日(火)

 6日マニサレス(コロンビア)で行われた闘牛でセサルがマヌエル・カバジェーロとのマノ・ア・マノでまたプエルタ・グランデをした。切符は売り切れだった。復帰して2回闘牛をやって、2回ともプエルタ・グランデした。非常に良いスタートを切ったが5日カリで出したセサルが所有する牧場の牛が悪く、観客から罵声が飛んで、まるでセサルの責任のような記事の書かれ方をしている。勿論責任がないとは言わない。良い牛が出れば、牧場主は賞賛され、悪い牛であれば、罵倒される。闘牛とはそういうものなのだから。

 こういう記事の書かれ方をすると言うこと自体が、セサルの牧場が良い牛を出してきた証拠で、だからこそ、良い牛を出せるじゃないかということだと思う。しかし、競走馬でもそうだが、いくら最高の種牡馬成績を上げているサンデーサイレンスでさえ1勝も上げれない馬を何百頭も出しているのは当たり前の事実だ。G1馬もいれば駄馬もいる。血統とはそういうものなのだ。ましてや闘牛。闘牛場に出てから20分くらいで死んでしまう。調教なしの血統と牛の能力がそのまま問われる世界。仕方がない面もあるのだ。

 ましてやスペインでは無名のパキート・ペルラサと若いセバスティアン・カステージャとセサル・ヒメネスという闘牛士じゃ経験不足と技術不足というのもあるような気がする。だが実際闘牛を観てないのでこれは想像を脱しない。観てりゃ判断できると思うけど。

 5日の結果。 メキシコ。マノロ・メヒア、場内1周。マルシアル・エルセ、口笛。アントン・コルテス、耳なし。 カリ(コロンビア)。パキート・ペルラサ、セバスティアン・カステージャ、セサル・ヒメネス、耳なし。 カルタヘナ・デ・インディアス(コロンビア)。ディナスティア、耳1枚ともう1枚要求。フェレーラ、耳なし。ファンディ、耳1枚、場内1周。

 6日の結果。 マニサレス(コロンビア)。セサル・リンコン、耳1枚、耳2枚。カバジェーロ、耳2枚。


 1月8日(水)

 セサルは19日マラカイ(ベネズエラ)へは行かない模様。

 アメリカは日朝との交渉後、北朝鮮との交渉をしても良いと、核保有を認めた後、始めていった。また、シカゴで大幅な減税策をブッシュ大統領が発表した。

 去年の年度代表馬に、シンボリクリスエスが選ばれた。当然の結果だ。


 1月9日(木)

 今週の闘牛の会ようにビデオを観た。どういう風にすればいいのか。アイディアはいくつかある。今回は闘牛のビデオが中心になる。

 総合格闘技「PRIDE」を主催するイベント会社社長の森下直人氏が首をつって死亡しているのが見つかった。TVで女との別れ話からの自殺のようだ。


 1月10日(金)

 忙しくてちゃんと日記も書けない。掲示板も。本も読めない。明日は闘牛の会。

 高原がドイツに行き、戸田がイギリス、市川がフランスで練習に参加している。評価されれば移籍になるだろう。


 1月12日(日)

 朝の5時まで片山先生と寿美さんと飲んでいた。色々面白い話が聞けて面白かった。その前に闘牛の会があって飲み会から流れてそうなった。寿美さんが日本に帰ってきているとは知らなかった。個人的な事情で帰ってきていた。会の最後に寿美さんに去年の闘牛の話をして貰った。ポンセの2度の大怪我、ホセリートの5月の大怪我と10月サラゴサの復帰戦で物凄いやる気を感じたと言っていた。凄く忙しい時期に会社を辞めても観たいと思ってサラゴサに行ったと言っていた。やーちょっと観たかったな、ホセリート。それからマドリードの治安は非常に悪化していることを聞いた。困ったことだ。気を付けないとやばいことになる。

 土曜日の闘牛の会は、始めに鈴鹿のHamaさんが98年9月13日ラス・ベンタス闘牛場で行われたエル・フリのウニコ・エスパーダのビデオを流した。これはHamaさんが闘牛場で撮ってきたものでTV放送もなかったので非常に貴重なものだ。そして初めて闘牛を観たのに画像が非常に良い。みんなビックリしていた。あの頃の鮮度の高いエル・フリが写っている。

 次はアントニオが、マドリード闘牛学校の生徒に教授になった闘牛士が闘牛技を教えているビデオを流し訳した。今回はカポーテ技。技の名前とやり方、カポーテの振り方を説明。初心者にはこういうビデオで技を覚えて貰う機会を作ることも必要だと思う。アントニオの日本語の補足を荻内先生がやってくれた。あれは非常に良いことだった。あれがあって、より判りやすくなったと思う。その後、荻内先生が今後の予定を9月まで決めた。


 1月13日(月)

 手違いがあって反省させられる日だった。本来なら大変なことになること。ゆっくり遠回りして歩いてタバコを吸った。たまにはこうやってゆっくり歩いて考えることも必要だ。メキシコでフィニートが3アビソ。今日の俺のようだ。

 8日の結果。 マニサレス(コロンビア)。パキート・ペルラサ、耳1枚、場内1周。エル・ファンディ、場内1周、耳1枚ともう1枚要求。セバスティアン・カステージャ、耳1枚、耳2枚。

 9日の結果。 マニサレス(コロンビア)。フェスティバル闘牛。セサル・リンコン、耳1枚。カバジェーロ、耳なし。ペペ・マンリケ、場内1周。ディエゴ・ゴンサレス、耳なし。ビクトル・プエルト、耳1枚。アベジャン、耳なし。

 10日の結果。 マニサレス(コロンビア)。セサル・カマチョ、耳1枚。カバジェーロ、耳1枚が2回。アベジャン、耳1枚。

 11日の結果。 マニサレス(コロンビア)。セサル・リンコン、耳なし。ビクトル・プエルト、耳2枚(牛場内1周)。ラミロ・カデナ、耳なし。

 12日の結果。 メキシコ。ダビ・シルベティ、場内1周。マノロ・メヒア、口笛。フィニート、罵声3アビソ。


 1月14日(火)

 アメリカはイラクへの戦争工程表を、当初予定の2月中旬から2月末か3月上旬へ変更したそうだ。一方査察団は査察には、あと数ヶ月かかる見込みであるといっている。戦争が始まるのは3月頃になるのだろうか?北朝鮮は、アメリカが攻撃してくるなら100倍、1000倍報復すると言った。北朝鮮は頭がパニック寸前になってきた。年が明けて餓死者が相当数出ていることだろう。何てこった。

 中島みゆきのシングル「地上の星/ヘッドライト・テールライト」が、20日付のオリコンチャートで初めて1位になることを13日、オリコンが発表した。初チャートから130週目の首位獲得は史上最長とのこと。紅白出場が決め手になった模様。


 1月15日(水)

 風の強い寒い1日だった。そして眠かった。

 元ちとせはイギリスでレコーディングしている。紅白出場を辞退して世界に進出しようとしている。彼女の声に惚れ込んだミュージシャンがデモテープ制作を企画してそれをレコード会社になどに売り込もうとしているのだろう。自身のコンサートへの出場も決まっているという。去年は女性歌手が豊作だった。夏川りみも好きだ。声が良いし良い歌を歌う。しかし、彼女は世界進出という話は出ないだろう。日本語文化圏でなければ彼女の良さが分かりづらいからだ。

 元ちとせは今まであまり楽曲に恵まれてこなかったように思う。それでもあれだけの個性を聴いている側に感じさせる力を持っている。それは強力だ。『この街』 は彼女に1番会っている曲かも知れない。それと、口語体より文語体の歌詞の方が合っているような気がする。英語になったらそんなことは言ってられないだろうけど、彼女にあった楽曲に出会えれば海外でも売れるだろう。聖女のようなエンヤ、巫女のような元ちとせ、母のような夏川りみ。

 阪神タイガースに憧れていた少年は、ニューヨーク・ヤンキースに入団して大リーガーになる夢を果たした。


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