断腸亭日常日記 2000年、その13

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年のスペイン滞在日記です。

99年1月13日〜2月16日 2月19日〜4月14日 4月15日〜5月11日 5月12日〜6月4日
6月7日〜6月10日 6月13日〜7月9日 7月11日〜8月8日 8月9日〜9月9日
9月12日〜10月7日 10月10日〜11月10日 11月14日〜11月28日 12月12日〜12月31日
2000年1月1日〜15日 1月16日〜1月31日 2月1日〜2月28日 3月2日〜3月29日
4月2日〜4月19日 4月20日〜4月29日 5月1日〜5月14日 5月15日〜5月31日
6月1日〜6月15日 6月16日〜6月29日 6月30日〜7月15日 7月17日〜7月31日

 8月1日(火)

 東京は蝉が鳴き出している。1,2週間のするとうるさいくらいに鳴いて夏の暑さを耳から演出するようになる。

 この猛暑は、消費活動を活発にしているという。クーラー、ビール、飲料水などが売れているのだろうか。

 ホセ・トマスのオフィシャルHPが出来た。3日位前にネット上に登場したが、昨日見たときは、コンテンツが増えていた。エル・フリのHPより作りがまだまだだし、作りを真似している。HPが重いのも難。これからどう変わっていくか楽しみだ。リンクからは、via digital 、burladero.com 、ビクトル・プエルトのHP、にも行ける。

 ポンセの、モソ・デ・エスパーダがカジェホンに入ってきた牛に2カ所刺されて大怪我をした。傷は、15cm、20cm。フランキーは元ホセリートのモソ・デ・エスパーダをしていたが喧嘩をしたようでポンセの所に行った。コロンビア人だという。復帰には10日位かかるようだ。牛から目を離しているといつの間にかタブラを飛んでいたのだろう。


 8月3日(木)

 ねぶたが開幕したようだ。ラッセラッセラッセラの掛け声と共にハネトが飛び上がる。津軽の夏を踊り狂って1年をやり過ごす。夏に汗を流して過ごすのは基本的なこと。そうやって肉体に暑さを刻んでいくことによって、“生”が生々しくなるのだ。

 この間、FD、CDなどの自然劣化についてやっていた。よく使用するFDは1年でデータが消えるそうだ。CDも20〜30年が寿命らしい。デジタルデータは半永久的だがそれを納めている器には寿命がある、というのはショックだった。

 CDが30年後にデジタルデータを読みとれなくなり、音楽が聞こえなくなるなんてCDが出た頃には想像が出来なかったことだ。これなら針が飛んでもレコードの方が寿命が長いって事だよな。

 日本に来る前に飛行機の墜落事故で足首を骨折したヨーロッパの最高の騎手、天才ジョッキーのランフランコ・デットーリがイギリスで復帰するそうだ。

 千葉すずのオリンピック出場はならなかった。日本にいなかった頃の話なので良く判らない部分があるが優勝したのにオリンピックに行けないのは可哀想だ。


 8月4日(金)

 イジメで自殺した子供のお爺さんが、「学校の対応は納得できない」と言った。校長は、「私は、昨日も遅くて、今日は朝早くから起きて・・・。」と、言うと、お爺さんは、「雪印の社長みたいな事、言わないでくれ」と、言っていた。

 佐高信は、雪印の社長を表して、「ごく普通の社長」と言っていた。この校長も、「ごく普通の校長」なのかも知れない。つまり、トラブル処理能力の全くない学歴のある人達が、ごく普通の社長であり、ごく普通の校長と言うことなのか?

 トラブルは生きていく上で必ず発生するもの。彼等にとってトラブルは、ただ単に面倒くさいものでしかないようだ。その対応の仕方は、驚きでしかない。他人の気持ちを逆なでしているのにそんなことは全く判っていない。

 彼等にとってトラブルは、人生の汚点なのだ。判ってないよな。何年生きてきたんだろう。どういう生き方をしてきたかあの対応で判るような気がする。血友病の輸入血液製剤でエイズをまき散らした安部英と基本的には変わらない。

 「私は何も悪いことはしていない」と全く反省をしない。自分のやったことを1つも理解していない。

 ウエルバで、ポンセ、ホセ・トマス、エル・フリがプエルタ・グランデをした。


 8月5日(土)

 肩、尻の上にどうやら汗疹が出来たようだ。手で触ると日焼けしたときのような肌触りだ。

 金属バットで16歳の少年が母親を殺した事件は、母親の1000万円の借金を問いつめて無言で何も言わなかったのに対して、カッとして殴り殺したのだそうだ。少年は年上の女と付き合っていて、妊娠中で女と2人で一緒に生活をすることを約束した矢先だったそうだ。

 彼女との生活を不意にしてまで少年は何故母親を殴り殺さなければならなかったのだろう。接見に来た弁護士に、「弁護士は要らない。何故ならもうどうなっても良いから」と、言ったそうだ。今、年上の彼女は何をしてどういう気持ちなのだろうか。産まれてくる子供はどうなるのだろうか。

 僕には少年の気持ちが分からない。好きな女とこれから一緒に暮らせるのなら・・・と、思うのだが。

 人生なんて自分の思うようにいかないもの。「人生が思った通りにいかないのは、競馬をやれば身にしみて判るはずだ」と、言ったのは清水成駿だ。上手く行かないからこそ、飽きることなく生きていけるんだろう。

 明日は、久しぶりに競馬に行って来よう。藤沢厩舎が3歳新馬、2頭を久々に札幌でデビューさせるからだ。内国産なので来年のクラシックに出てくるかも知れない。TVのモニターというのが残念だけど。やっぱりパドックで生で見ないと馬が良く判らないものな。

 4日ラ・コルーニャの結果。マンサナレス、耳1枚。ホセリート、耳2枚。ホセ・トマス、耳1枚。


 8月6日(日)

 55回目の原爆記念日。8時15分、原爆投下時間に会わせて1分間の黙祷が捧げられた。闘牛場で良く黙祷が捧げられるが、スペインでは、目はつぶらずに黙祷する。日本では目をつぶる。改めて自分の生まれた国のやり方を知った。

 原爆投下直後、血だらけ、傷だらけになりながら、家族を捜した記録が爆心地から500m離れた小学校の廊下や教室の壁にチョークで書かれていたのだそうだ。55年目の今年、校舎を新築するので解体中に見つかりそれを記録し、書いた人の肉親を訪ねて話を聞く番組をNHKでやっていた。

 死と背中合わせになりながら必死だった人達に記録だ。食い物がなく、両親が死んでも幼い兄弟で生きていくことは大変だっただろう。現在の日本では自殺者が年間3万人を越える。人はどんなに絶望的な状況でも逞しく生きていけるのだ。投げやりになって人を殺したり、自殺したりする今、命のことを考えさせることが広島、長崎、沖縄にはあるような気がする。

 5日の結果。サンタンデール。ダビ・ルギジャーノ、耳1枚要求で場内一周。マヌエル・カバジェーロ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。ミゲル・アベジャン、耳1枚ともう1枚要求、場内二周。アリカンテ。エスプラ、耳なし。パコ・セルバンテス、場内一周。エル・カリファ、耳1枚、場内一周。


 8月7日(月)

 朝から雨が降り、夜も19時から22時くらいまで東京では雨が降った。少し涼しくなった。が、蚊が部屋に入ってきた刺された。

 デットーリが復帰戦を勝利で飾った。二鞍のって2勝。天才はあくまで天才である。彼は非常に喜んでいた。飛行機事故から奇跡的に生還しての勝利。朝、NHKでVTRを流していたが、ゴール前に直線で馬の頭を押すような騎乗スタイルは健在だった。日本の天才横山典弘はライバルは豊(武豊)じゃなく、デットーリと言う。

 えっ、天才は、武豊じゃない、と思っている人もいるだろうけどこれはマスコミが作った図式だ。天才とは、凄さを感じさせる奴のことだ。豊は天才じゃなく、日本人好みの秀才だ。そつがないだけだ。典弘は、鋭い。田原成貴もそうだったけど騎乗に鋭さがある。常人では考えられない騎乗でファンも他の騎手も驚かされる。

 その典が、昨日の12Rで斜行して6日間の騎乗停止ををくらった。馬鹿たれが。天才はムラがあるものだが、デットーリのようにムラを少なくしないと世界では通用しないぞ。お前は日本にだけに留まっていてはダメだ。世界に行っても通用できる騎手の1人なんだから、もっとしっかりしろ。

 ホセ・トマスは又しても耳4枚。凄すぎる。

 6日の結果。エル・プエルト・デ・サンタ・マリア。ホセリート、2頭とも剣が決まったが、耳なし。ホセ・トマス、耳4枚。プエルタ・グランデ。新聞の見出しは、Inmenso Jose Tomas つまり、計り知れないホセ・トマス だってよ。2頭目の剣は、グラン・エスパーダと書かれている。モランテ・デ・ラ・プエブラ、耳1枚、場内一周。1頭目、2頭目共にピンチャソ1回。2頭目はレシビエンドと記されている。牛はハンディージャだった。

 ホセリート曰く、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアで闘牛を見なかったら闘牛を見たことにならない。うーん。俺は未だ見てないんだよな。なかなか夏に行く機会がない。97年は骨折で見に行けなかったし。

 他は、プエルタ・グランデだけを記す。 ラ・コルーニャ、エル・ファンディ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。 タラゴナ、ルギジャーノ、耳1枚が3回。プエルタ・グランデ。 ポンテベドゥラ、エル・フリ、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。 ソト・デル・レアル、ハビエル・バスケス、耳2枚。プエルタ・グランデ。ヘスス・ミジャン、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。 サンティアゴ・デ・ラ・リベラ。アントニオ・モンデハル、耳1枚、耳2枚と尻尾1つ。プエルタ・グランデ。ペピン・リリア、耳4枚と尻尾2つ。プエルタ・グランデ。 エステージャ。ファン・モラ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。エル・コルドベス、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。ウセダ・レアル、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。 ロス・コラレス。ファン・ペドロ・ガラン、耳2枚と尻尾1つ。プエルタ・グランデ。マリ・パス・ベガ、耳1枚、耳2枚と尻尾1つ。プエルタ・グランデ。


 8月8日(火)

 企業における信じられない事件が続けて起きている。今日のNHK、プロジェクトXは、本田技研の低公害車開発についてだった。従来の1/10の排気ガス量にする車の開発中、社長の本田宗一郎は、「これが出来たらアメリカのビッグ3を抜ける。会社のためにがんばれ」と、言って若手技術者に葉っぱをかけた。

 それを聞いていた若手技術者の1人が、専務に、「親爺はいつも社会のために、お客様のためにと、言っているのに、会社のために仕事しろとは、普段言っていることと違う。親爺にあんな事、言わせないでくれ」と噛みついた。社内で専務は社長に偶然会ったときにその事を話す。それから開発をしている部署に本田宗一郎は顔を出さなくなる。

 エンジンが出来て、アメリカで試験を受け、合格した。マスキー法(だったかな。排気ガス規制法)の基準を世界で初めてクリアしたのだった。直ぐにビッグ3の内2社が技術提携を申し込んできた。本田技研は、盛り返して大企業になっていく。

 試験合格から8ヶ月後、本田宗一郎は社長を辞任する。「私は普段社会のために仕事をしなさいと言ってきた。それが、低公害車開発の時、会社のためにと言った。でも、その時、若い人は、社会のためにと、反撥された。いつの間にか私は会社のことを考えていた。若いということは素晴らしいことだ」と、言って育ってきた後輩に社長を任せる。

 常々息子は社長にしない、と言ってきたがその通りになった。同じ事を言っていたダイエーの中内社長は息子を取締役にしている。借金抱えて。

 「社会のため、お客様のため」に仕事しなかったらダメだ。会社のために何か仕事するなよ!雪印をはじめ他の企業が基本的、根本的な衛生管理などないがしろにして、死者まで出している。本田技研の元社長、本田宗一郎が普段言っていた言葉を、噛みしめて欲しいものだ。

 余談として。アイルトン・セナがF1で勝つと、本田宗一郎が嬉しそうな顔をしてやって来て、「良くやった、良くやった」と、言ってセナの手を握ったそうだ。セナは、「本田さんの顔を見ると優勝できて本当に良かった。あんなに喜んでくれる人はいない。」と、思ったそうだ。そして、「本田さんのために勝ちたい」と、思うようになったという。

 9月14日から17日までガラパガールでノビジェーロ闘牛が発表されたが出てくる牛が良い。14日は各地の闘牛学校の生徒がやるが、15日、アドルフォ・マルティン。16日、バルタサル・イバン。17日がエル・トレオン。これは、ノビジェーロなのでカルテルには入れない。

 7日の結果。ビトリア、マヌエル・カバジェーロ、耳なし。エル・カリファ、耳1枚、場内一周。ミゲル・アベジャン、耳なし。


 8月9日(水)

 降水確率が午後50%以上あったがパラッとだけ降って後はなし。23区に大雨洪水警報が出ていたが局地的に降ったところがあっただけだった。

 フェリア・デ・オトーニョのカルテルが発表になった。サン・イシドロで耳を取った闘牛士が殆ど出場する。ハイライトは、エル・カリファとミゲル・アベジャンのマノ・ア・マノ。観に行きたいなぁ。未だ、闘牛士が1人決まっていないが、マヌエル・カバジェーロが出ない。エウヘニオも・・・。カサ・デ・ロサノの闘牛士が出ないようだ。自分の所なのに。概ね、サン・イシドロで活躍した闘牛士が出るのは良いカルテルって事だろう。 アップしたので観て欲しい。

 8日ビトリアの結果。騎馬闘牛士、パブロ・エルモソ・デ・メンドーサ、場内一周、耳1枚。モランテ・デ・ラ・プエブラ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。エル・フリ、耳1枚ともう1枚要求。


 8月10日(水)

 思った通り横山ノックは実刑ではなく、執行猶予付きの有罪だった。新聞などで関連記事が載っていたが、元最高裁判事のコメントは、1000万円を被害者に支払ったり、知事を辞めたり社会的な制裁を充分受けているので7:3の割合で執行猶予付きの有罪になるだろう、と言っていた。

 民意が後任知事に女性を選び、ノックに芸能活動復帰を望んでいない以上今後TVに出てくる機会は殆どないだろう。被害者の女性は重度のトラウマに悩んでいるらしい。福祉を目指していた彼女は他人に触れられると、事件のことがフラッシュバックするらしい。

 新潟で9年間監禁させられていた19歳の女性は未だに歩行できないそうだ。トラウマは、心の傷と肉体的な傷があるが、こっちの方が重症だ。女は感情的な所で生きている部分が大きいように思う。恋愛などもそう言うものだと思うが、トラウマは非常に個人的なものなので一概にどっちが重いと言えないが、肉体に刻まれた傷の方が辛いように思うのだが。

 長崎に原爆が投下されて55年と1日が経った。金がなくても、親が死んでも、食い物がなくても、人間は生きていけるのだ。投下後、孤児になった子供達は今60代の老人だろう。孫がいる人も多いだろう。後遺症が肉体に刻まれていても、どんなに絶望的な気持ちになっても生きていけるのだ。

 怒りの広島。祈りの長崎。と俗に言われる。隠れ切支丹がいた地だからだろうか。被爆者が高齢化してきて体験談を話していく人が減っているという。語り部はお婆ちゃん達だ。今の日本でこれからも被爆体験を地道に話していくことは非常に重要なことと思うのだが。

 9日ビトリアの結果。ホセリート、耳なし。ポンセ、耳1枚。エル・カリファ、耳1枚。


 8月11日(金)

 3大プロバイダーが、9月から接続料金が安くなり、接続時間が無制限になる。非常に良い条件のように思うが実はそうではない。日本のインター・ネット事情は僕がHPを開設してから大幅に変わった。今頃、接続時間が無制限になったなんて自慢して貰っても困る。世界はもっと急激に動いているのだ。

 遅れていたスペインでさえ、今年は、テレフォニカを始めプロバイダー接続料金は無料になっているのだ。それと電話回線を利用した日本で言うテレホーダイの時間は、18時から翌朝の8時まで、1ヶ月60時間までで、3500ptsだ。それに帰る頃には、アンテナ3が、インター・ネットでTV中継を見れるようにしていた。TVEだったら闘牛中継が見れるのにと思ったものだ。

 これだけの違いは、アメリカに比べたらもっと凄いだろう。HPだって、タダで作らせてくれよな。2MBで月200円。最大で5MB。それが9月から最大55MB。でも、金がかかる。55MBまでタダで作れるならいくらでも闘牛の写真を出したって良いのに・・・。これでインター・ネット時代なんて言って、予算を増やしている“森のおそまつ”も、おかしいよな。日本だけ世界から取り残されて行くんだろうなぁ。

 また、ホセ・トマスがプエルタ・グランデをした。ネットではマノレティーナの良い写真が載っていた。

 10日の結果。エル・エスコリアル。クーロ・バスケス、耳なし。ホセリート、耳なし。ホセ・トマス、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。 ウエスカ。エスパルタコ、耳1枚。ポンセ、耳2枚、耳1枚。プエルタ・グランデ。リベラ・オルドニェス、耳1枚。 ソクエジャモス。マヌエル・カバジェーロ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。エル・コルドベス、耳2枚、耳2枚と尻尾1つ。プエルタ・グランデ。ビクトル・プエルト、耳1枚、耳2枚と尻尾1つ。プエルタ・グランデ。


 8月12日(土)

 遠くの空でドンドンと音が鳴っている。台風が近づいているので雷かと思ったら、隅田川の花火だ。

 「 日本中が平和な夏の行楽にゆれる一日が暮れかかった昭和六十年八月十二日午後六時十二分、乗員乗客五百二十四人を満載して羽田から大阪へ飛び立った日航ジャンボ機は、離陸後まもなく垂直尾翼の一部が相模湾に脱落するという信じられない事故を起こし、方向ちがいの中部山岳地帯へ不可抗の迷走を行い、六時五十四分ごろ群馬県多野郡上野村御巣鷹山の山中に墜落した。

 奇跡的に四人の女性の生存者を出したほかは全て凄惨な死をとげたが、その死亡者の中に、昭和三十年代後半、「上を向いて歩こう」や「幸せなら手をたたこう」など、国民的愛唱歌を生んだ歌手坂本九ちゃんがいた。

 彼の元マネージャーが大阪の羽曳野市で市議選に立つというので、その選挙応援に西下する途中遭難したもので、お守り用の笠間稲荷のペンダントと歯形だけで遺体が確認された。 」   山田風太郎、『人間臨終記』 より

 15年前の今日、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落し520人が死んだ。坂本九の他に当時の阪神タイガース社長が乗っていて死んだ。阪神は社長の命と引き替えに21年降りの優勝をする。その他多くの無名の人達がそれぞれの家族と自身の人生に別れを告げざるを得なかった。

 事故の1ヶ月後に、日本人の事故で死んだ父と、イギリス人の母との間に女の子が産まれる。ダイアナ湯川。彼女は今、イギリスで注目を受けているバイオリニストだ。昨日、ニュース23に出て520人の人達を思いバイオリンを弾いていた。14歳と11ヶ月。美しい音色は彼女の才能だけではなく感性の素晴らしさを物語っている。

 未だ幼いのに、人の痛みが判る子だ。芸術はそう言う感性の上に立って存在するのだろうと思った。彼女は今日上野村で去年と同じく520人の慰霊にバイオリンを奏でたはずだ。

 10日の結果。パルマ・デ・マジョルカ。フィニート・デ・コルドバ、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。ミゲル・アベジャン、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。エル・フリ、耳2枚。プエルタ・グランデ。

 昨日また、ホセ・トマスがプエルタ・グランデをした。

 11日の結果。 ヒホン。マンサナレス、耳なし。ホセリート、耳1枚。ホセ・トマス、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。 ベニドルム。エル・タト、耳1枚。エル・レンコ、場内一周。エル・ファンディ、耳1枚。 ウエスカ。モランテ・デ・ラ・プエブラ、耳なし。エル・フリ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。ヘスス・ミジャン、耳1枚。 マラガ。エスプラ、耳なし。リカルド・オルティス、場内一周。エル・カリファ、耳1枚。 バルデルド・デル・カミノ。マリ・パス・ベガ、場内一周。ビクトル・ハネイロ、耳1枚。マヌエル・ベニティス、耳1枚。 ビジャカナス。ホセ・ルイス・モレノ、耳1枚。ウセダ・レアル、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。イグナシオ・ガリバイ、コヒーダ。左腿を刺され重傷。


 8月13日(日)

 台風の影響で朝から雨が降っていたが午後になって上がった。今日はTVが面白かった。フジTVの、「隣の国は好きですか?」は、江川紹子さんが韓国でレポートした番組で、20代の若者の意識の差が改めて判った。徴兵制のある韓国と、日本では当然違う。こんな事を書くと、怒る人がいるかも知れないが、僕は日本にも徴兵制を導入すべきではないかと思っている。

 1年ないし1年半、軍隊生活をして日本を意識させ、共同生活の大事さを正しく教えるべきだと思うからだ。特に町中や電車の中での他人に全く配慮のない態度には世界は自分のためだけあるとしか思ってない節を感じるからだ。人間の生活は他者と共にしか成立しないことを徹底的に判らせる必要がある。

 だからといって、今の自衛隊が行っている旧日本軍的なやり方では人間をダメにするだけだ。例えば、スペインで行っているように、新兵イジメについての懲罰を科することなどの配慮が必要だ。それを調査する外部機関。また、新兵教育をする教育担当官の教育も必要だろう。

 徴兵拒否者に対しては、徴兵者と同じ期間の社会活動を義務づける。これもまたスペインと同じやり方だが。そんなことをやらないと日本人はダメになっていくのかも知れないと思った。

 NHKでやっていた、「戦争日記」はユーゴに住む22歳の女性が高校時代にホームステイしたアメリカ人に宛てたEメールから始まった。空爆開始前から空爆終了までの日記だった。ユーゴから送られてくるメールに共感したアメリカ人達がHPを立ち上げて、インター・ネットを通じて世界に発信していった。

 コソボ自治州における民族浄化によって虐殺される人々。空爆の賛否両論。メールを書くセルビア人女性に対する批判や共感。インター・ネットを通じてマスメディアを通した情報ではない身近な、戦争体験を発信することによって、それぞれの立場での意見の交流があった。批判に耳を傾けてその事に向き合おうとする彼女はメールを送ることによって国家、政治、生活、家族、他者、人生を深く考えていった時期だったようだ。

 インター・ネットでは、色々なことが出来る。その人間の生き方も変えることが出来るのだ。

 最後は、教育TVで再放送された、『日本のことば』 「青森県」だった。青森は廃藩置県によって津軽藩と南部藩の一部がくっついた。原発などの施設があるのは旧南部藩の地区だ。これは余計なことだが・・・。ダメだ、と言う言葉は、津軽弁では、「まいね」 南部弁では、「わがね」となる。

 僕は、南部弁で育ったので懐かしく聞くことが出来た。ふるさとの訛りは直接的に肉体に響いてくる。女の言葉には男よりそれが特に強く感じる。お祖母ちゃんが言って言葉なんかそうだものなぁ。今日は、僕が使ってきた言葉で締めたい。 「へば」 標準語では、それじゃまた、となるのだろうか? 「へば、へば」

 掲示板にも書いたがホセ・トマスがまたプエルタ・グランデをした。

 12日の結果。 ベジエ。ポンセ、耳なし。ホセ・トマス、耳2枚。プエルタ・グランデ。アルテルナティーバのセバスティアン・カステージャ、耳1枚が2回。 ダックス。マヌエル・カバジェーロ、モランテ・デ・ラ・プエブラ、エル・フリ、耳なし。 エル・エスコリアル。エル・カリファ、耳1枚。ダビラ・ミウラ、耳なし。ファン・バウティスタ、耳2枚。プエルタ・グランデ。 エル・プエルト・デ・サンタ・マリア。マンサナレス、フィニート、アベジャン、耳なし。 ヒホン。エスプラ、ペピン・リリア、耳なし。ウセダ・レアル、耳1枚。 ウエスカ。ファン・モラ、耳なし。パディージャ、耳1枚。ヘスス・ミジャン、耳1枚、場内一周。 マラガ。エル・ソトルコ、ルギジャーノ、耳なし。ホセ・ルイス・モレノ、場内二周。 


 8月14日(月)

 14日未明に大分県で16歳の高校生が一家6人をナイフで襲い3人刺殺し、3人が怪我をする事件が起きた。理由は、風呂を覗いていないのに、「風呂を覗かないように」と注意され一家を殺そうと思ったという。こういう事件を理解しようと思っても無理なことだ。おかしいと言うより、壊れている。

 日銀がゼロ金利政策を止めて、市場の反応は、株価には出ていないない。夜になり、ヨーロッパ、アメリカの為替相場は少しだけ円安になっている。

 甲子園の高校野球が始まっているが、1番始めに代表を決めた沖縄の那覇高校(先月の日記に書いた)が福原朝悦が監督をやって以来の甲子園出場(夏の大会は初出場)で、左利きのキャッチャー、三塁手と言う布陣で甲子園初勝利を飾った。始めてみた左利きのキャッチャー三塁手は不利を克服してポジションをこなしていたようだ。

 またホセ・トマスがプエルタ・グランデをした。エル・フリがインドゥルト。

 13日の結果。 エル・プエルト・デ・サンタ・マリア。エスパルタコ、ホセリート、耳なし。ホセ・トマス、耳2枚。プエルタ・グランデ。 バエサ。マンサネレス、耳なし。フリオ・アパリシオ、耳2枚尻尾1つ。プエルタ・グランデ。ミゲル・アベジャン、耳2枚。プエルタ・グランデ。 バルセロナ。エル・ソトルコ、耳なし。ミゲル・ロドリゲス、耳1枚。ペドゥリート・デ・ポルトゥガル、耳なし。 ブリビエスカ。エル・フンディ、耳1枚。ホセ・イグナシオ・ラモス、耳2枚が2回。プエルタ・グランデ。パコ・トゥルヒージョ、耳1枚。 ヒホン。ファン・モラ、カナレス・リベラ、耳なし。エル・ファンディ、耳1枚。 ウエスカ。マヌエル・カバジェーロ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。エル・コルドベス、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。エウヘニオ・デ・モラ、耳2枚。プエルタ・グランデ。 マラガ。ビクトル・プエルト、耳1枚。エル・カリファ、耳1枚。ダビ・ビラリノ、耳なし。 ポンテベドゥラ。エスプラ、耳なし。フィニート、耳1枚。ダビラ・ミウラ、耳1枚。 マルベージャ。エル・フリ、ウニコ・エスパーダ。耳2枚が3回。耳2枚と尻尾1つ。イ ンドゥルト(トレアルタ牧場)。


 8月15日(火)

 55回目の敗戦記念日。甲子園ではサイレンが鳴って戦没者に黙祷が捧げられた。

 僕が小学生の時に、甲子園大会でサイレンを鳴らして試合が始まるのを見て、同じ事がしたいと思った。友達の家の横は田んぼでいつもそこで野球をやっていたが、友達の家は消防団でサイレンがあった。それを回して、ウーーーーーとサイレンを鳴らして野球を始めた。サイレンを鳴らすと二階の窓から消防団員が顔を出して、「バカヤロウー」と怒鳴られて逃げたことがあった。甲子園のサイレンを聞くとそんなことを思い出す。

 芥川賞作品を読もうと思って買った、『文芸春秋』に、非常に面白い対談が載っている。それは、30年間多くの犯罪者の精神鑑定をしてきた、上智大学教授、福島章氏と、『唯脳論』の著者で解剖学者、養老孟氏の対談で、「子どもの「脳」に異変が起きた」だ。これは、昨日起きた大分の刺殺事件を考える上でも参考になる。

 冒頭、福島氏は、 「今、数々の少年犯罪が社会を騒がせています。子どもたちの性格やふるまいも一時代前とはとは変わってきているのではないか、と感じている人も多い。こうした原因を親のしつけや学校などの問題に求めるのはやさしいことですが、それだけでは何の解決にもならないと思うんです。この問題を解く鍵は、脳にあるのではないか−−−そう私は考えています。  ー中略ー  

 犯罪や非行を犯す人々の脳の多くが<完全>ではないという事実です。重大な犯罪非行を犯した人の脳を精密に調べてみると、それだけでは正常といえない潜在的な異常所見が発見されることが多いのです。今までの精神医学は、あまりにもこうした生物学的観点からの研究をおろそかにしてきたのではないか。その観点から私は『子どもの脳が危ない』と言う本を書きました。」

 養老  「脳の構造や機能の変化と行動には関係があるというのは、当然の常識です。」

 この対談では色々な脳の異常所見を事例を上げて話している。また統計上の話も、 

 福島  「形態学的異常と脳波学的異常をあわせた比率がどれくらいあったか。2人以上の人を殺した大量殺人者では17人中の15人、88%。強姦殺人、強盗殺人などでは10人中8人。80%でした。別の統計では、殺人者42人中の有所見率は21人、50%でした。脳の健康診断といわれる脳ドックでの有所見率はおおむね1%と言われています。その数字を比較すると、殺人者中の有所見率は、一般人口中の50倍にも達していることになります。

 養老  「最近では、心理的トラウマで海馬の萎縮が起こるという有名なレポートがありました。後天的な原因でも脳の機能に変化が起こることがMRIやPETでわかるようになってきている。」  注(海馬とは、長期的な記憶を覚えている場所。幼児虐待を受けると嫌な記憶を忘れようとするので海馬にある記憶がなくなったりする。多重人格者の80%が幼児虐待という統計がある) 注(MRIやPETは、簡単に言えばCTスキャンの様なもの) 注は、僕が書いたもの。

 統計的なことだけではないことが語られる。 福島  「一つ言えることは、少年Eの場合には育ち方の部分で大きなトラウマがあったということです。生活環境や学校がみんなマイナスに作用してしまった。私は、いつもトランプのポーカーに譬えていうんです。スペードの絵札が5枚揃わないと大事件にはならないと。」

 養老  「それはまったく賛成です。要するに、極端な重大犯罪というのはロイヤルストレートフラッシュだということでしょう。」

 福島  「脳に問題があっても、不幸な幼児期を過ごしても、別のカードを1枚引っくり返せばいいんです。たとえば、Eのことを理解し、彼の自尊感情を引き出してくれる教師が1人でもいたら、こんな悲惨な事件は起こらなかったのではないか。もしくは、適切な薬物療法で衝動コントロールしていたら、また違う人生が開けていたのではないか」

 また個性について養老氏は 「今の人すぐに自分の個性がどうのこうのと言うでしょう。でも、自分の個性だとか自分だけの感性なんてものを誇りにしてもしょうがない。本当に自分だけのものだったら、人の感情なんて理解できないんです。人間の心は共通性の上に成り立っているのであって、その共通性の方が本当はすごいんです。それをあまりにも無視しすぎている。

 「個性尊重」とよく言うけど、そんなもの要らない、と私は思っている。よく稽古事で、理屈抜きで師匠がやる通りやれといいますね。でも、これほど個性が出てくることはないんです。なぜかというと、徹底的に真似しようとしても真似できない瞬間が必ずある。それが師匠の個性であり、自分の個性なんですよ。」

 世界の殺人を犯す殺人率を年代別に調べると20代前半がピークに来る。日本も1950年代までそうだったが、ドンドン高齢化して、今は50代がピークだという。ここでも日本の異常性が現れているような気がする。最後の部分で養老氏は言う。

 「私は、社会は基本的に脳の機能で出来ていると思っています。それは、虫だって同じ。アリの脳味噌なんて本当に小さいけど、ちょっといじっただけで、行動に影響が出て巣に戻れなくなってしまう。脳は21世紀の社会の中心的な問題になってくるはずです。脳とヒトの行動は密接な関係があるということを、もっと一般の常識にしたほうがいいのではないか。

 心とか感情とか曖昧な言葉で表現していることを、客観的な基準に置き換える癖をつけることも私は大切だと思います。」

 昨日、壊れていると書いたが、脳のことなのかも知れない。福島氏、養老氏が言うように、ロイヤルストレートフラッシュのカードを1枚引っくり返せればこんな聞きたくもない事件は少なくなるのだろう。こういう話を僕は“肉体”の話だと思う。

 ホセ・トマスがまたプエルタ・グランデした。ヒホンでのビクトル・プエルトは非常に変わったパセをした。それは、彼の2頭目の牛で、椅子に座って2回か3回ムレタでパセをして見せた、と書いてあった。ネットには写真も載っていた。椅子に座ってやるのは、引退してしまったセルヒオ・サンチェスがバンデリージャを刺していた。彼は、去年日本に来たときにそれをやって見せた。

 14日の結果。サン・セバスティアン。ホセリート、口笛。ホセ・トマス、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。ミゲル・アベジャン、耳1枚、場内一周。 ヒホン。マヌエル・カバジェーロ、耳2枚。プエルタ・グランデ。ビクトル・プエルト、耳2枚、耳1枚。プエルタ・グランデ。エル・フリ、耳2枚。プエルタ・グランデ。


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