−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−
por 斎藤祐司
過去の、断腸亭日常日記。 −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−
太い斜字で書いてある所は99年、2000年のスペイン滞在日記です。
7月17日(月)
イヤー凄いや。ホセ・トマスがバルセロナでの復帰戦を耳5枚切ってプエルタ・グランデをした。歴史的な記録らしい。でも、去年ホセ・トマスは2回、バルセロナで耳4枚を切っている。とにかく呆れるほど凄い。
昨日、TAKEさんと会って話した。色々話したがここでは書かない。それで 『Gallop』 が手に入った。河内の写真も、太と岡部の写真も良い顔してる。良い仕事した男達の顔は見ているものに何かを感じさせてくれる。
スペインから帰ってきてからだけで既に2回新島では震度6の地震があった。三宅島では火山か噴火している。有珠山では噴火活動が沈静化したと判断され洞爺湖温泉街は営業を再開した。
オウム真理教サリン事件実行犯に求刑通り死刑判決が下された。
7月18日(火)
今日より昨日の方が暑かった。
毎日風呂に入っているのにどうして毎日こんなに垢が出るんだろう。これは夏の肌のウンコのようなものだ。
モン・ド・マルサンでホセ・トマスは唯一の耳1枚を切る。ホセリートは2頭目でコヒーダされた。検査が必要だという。アベジャンもそうだし、バレンシアでは、ハビエル・カスターニョが骨折。この時期から闘牛士達は忙しくなるので怪我が増える。
7月19日(水)
眼鏡屋に行って新しく作ったメガネを取ってきた。プラスティック製なのでコーティングがされていて洗剤で洗うと取れてしまうのだそうだ。だから、水で流してテッシュで拭くのが1番良いのだそうだ。「風呂にメガネを掛けて入らないで下さい」と、言われていたのに早速入ってしまった。タダじゃないんだから大事にしないと。
この間、芥川賞を取った、松浦寿輝さんは東大の教授になっていた。今年の年頭に書いた 『口唇論』−−記号と官能のトポス−− の著者である。今日本屋に行って文芸春秋を買おうとしたら未だ芥川賞の発表号は売っていなかった。仕方がないので山田風太郎を買ってきた。
今日モン・ド・マルサンにアベジャンが出る。セサルはこの日を楽しみにしていた。エル・フリはどうでも良いけど、モランテとアベジャンにはプエルタ・グランデをして欲しい。そうセサルの所のエル・トレオンの牛で。
7月20日(木)
今日の暑かった。暑いので昼寝をしていた。太陽がそんなに出ていないのに東京は暑い。蒸し暑い。東京は18日からサミット関連で厳戒態勢だ。これが、25日まで続く。皇太后の葬式があるからだ。
モン・ド・マルサンで、エル・フリがプエルタ・グランデをした。何故か耳2枚切った牛はソブレロでエンリケ・マルティン・アランスの牛だった。アベジャンは耳1枚。モランテは、レシビエンドを試みたが剣が全然決まらず耳が切れなかった。でも、モランテは良いファエナをしたようだ。
それと、セサルの所の牛は、3頭は良くなくて、3頭が良い牛だった。
7月21日(金)
未明に起きた強い地震で目が覚めた。東京は震度4だった。時計を見たら3時40分だった。これは伊豆諸島の地震ではなく福島方面が震源地だった。
ポンセは一体どうしたんだろう。バレンシアで耳さえ切れない。あれだけ凄かったクアドリージャ達は去年までのようにちゃんとした仕事が出来ていない。ポンセは元々そう言うクアドリージャに支えられて良いファエナをやって来た闘牛士だ。それがなくなって、フィグラになってから最悪の年になっている。今年は、セビージャでもマドリードでも全然良くなかった。何にもしなかった。地元バレンシアでさえも何もなし。
ペピン・リリアがモン・ド・マルサンでビクトリーノの牛で怪我をした。12日位の怪我らしい。タトとパディージャがプエルタ・グランデ。
9月のカルテルを未だ書き込んでいない。もうアルバセーテ、ムルシア、サラマンカなど発表になっている。それと、夏休み特集として、「今年何処で誰を見るか」 と言うのを書こうと思っているが、それも未だ書いていない。
7月23日(日)
江川紹子さんは、サリン事件の裁判を傍聴して、事務的な判決と言った。何故かは、東大や早稲田の大学院に行っていた被告が犯行に至るまでの心の軌道が分からなかった、と言う。いわんとしていることは分かるのだが、心の軌道なんて分かるわけがないと思う。たとえ分かったとしてもそれは問題解決には結びつかないだろう。もっと本質的なことを考えた方が良いと思うのだが。
下山さんか三木田さんが言っていた、闘牛士を目指す少女の番組をTBSでやっていた。最後の5分くらいしか見なかったが。名前は、マリア・ロメロ。ティエンタで牛を相手にしていたが、カポーテの後マンソになって向かってこなくなる。ムレタは出来なかった。泣いていたが、その後、カポーテをプレゼントされる。セビージャの、JUSTO
ALGABA と言う店のカポーテだった。ここの店は兄弟でやっていて、セビージャが兄。マドリードが弟。去年日本で闘牛をやったときに、闘牛士に同行して来たエンリケは、マドリード店の店員だ。
21日、バイオンヌの結果。マヌエル・カバジェーロ、耳3枚。プエルタ・グランデ。
22日の結果。サンタンデール、マヌエル・カバジェーロ、耳1枚ともう1枚要求。ブリンディースは、フリオ・イグレシアスに捧げられた。 バレンシア、エル・ソトルコ、耳1枚、耳1枚、耳1枚、プエルタ・グランデ。オスカル・イガレス、耳1枚。ホセ・ルイス・モレノ、耳1枚。ホセ・ルイス・モレノは、右太股15cmの角傷で重傷。オスカル・イガレスは、手の指2本骨折。ガナデロ、ビクトリーノ・マルティン、プエルタ・グランデ。 パルマ・デ・マジョルカ、ホセリート、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。ホセ・トマス、耳1枚。ファン・バウティスタ、耳2枚。プエルタ・グランデ。 ラ・ソロナ、エウヘニオ・デ・モラ、耳1枚が2回。ミゲル・アベジャン、耳1枚が2回。エル・フリ、耳2枚と尻尾1つが2回。3人ともプエルタ・グランデ。
インターネットではホセリートが、22日出ないと書いていたが出場した。こういうのってスペイン的だよな。今日は、バルセロナに出る。ホセ・トマスと共に。
7月24日(月)
女が1番大事な彼氏に会いに行くときの服を、勝負服というのだそうだ。しかし、勝負服とは、そもそも競馬の騎手がレースで着る服のことである。女は勝負服を着て一体何を勝負するのだろう?タイガー・ウッズは、優勝がかかったときに着る服はワインレッドの服だそうだ。その通りワインレッドの服を着て記録ずくめの、メジャー、グランドスラムを達成した。
同じ日、バルセロナでホセ・トマスが耳2枚と尻尾1つ、耳2枚を切ってまたプエルタ・グランデをした。記憶が正しければバルセロナでホセ・トマスは、去年から6回続けてプエルタ・グランデだ。これは恐らく記録だろう。新聞の見出しは、Cada
di`a ma`s idolo 。出る度毎により多く崇拝される、って訳すのかな。いまいちだな。
タイガー・ウッズもそうだが、凄い人は凄い。今のホセ・トマスは次元が違う。プエルタ・グランデしない日の方がおかしいくらいだ。闘牛史上最高の闘牛士がホセ・トマスだ。そして、今年が今までで最高の年になっている。
残業が嫌いなのに復帰後、2日続けて残業した。
7月25日(火)
記憶が常に正しいとは限らない。ホセ・トマスのバルセロナでのプエルタ・グランデは7回連続だった。
今、NHKで竹中直人主演で宮沢賢治の話をドラマ仕立てでやっている。最後に映った岩手山の四季の風景は僕が幼い頃から見てきた風景だった。賢治は生徒達に水分と養分を与えていた。人が当たり前に生きていくときに、そこに個性があると言っている。これを、畑や田んぼの色々な土壌の違い、環境の違いになぞらえて話していた。
「どうすればいいか?それは君が一生掛かって考えていけばいいのだ」と言っていた。
エドゥーから手紙が来た。僕のことを記事にしたジャパン・タイムスが入っていた。写真は、ベンタ・デル・バタンで撮ったものだった。何か自分の写真が新聞に載ってるのを見るのは変な気分だ。犯罪者として新聞に載ったものではない。隣の記事は、ウエルバで去年デビューした日本人闘牛士、濃野平さんの記事。新聞記事は今月の2日付けのものだった。
7月26日(水)
「どんな場合でも僕の希望は捨てない」と、書いたのは、病床で死を待っていた武満徹さんだ。
彼の親友の谷川俊太郎は、武満さんが死んでからこの文章を見せられて、「希望なんて照れくさい言葉を武満は使うんだ。しかも、“僕の”と後から書いてる。僕の中で、希望って言葉のイメージが変わった」と、言った。
癌を宣告され、抗癌剤を投与され食欲がなくなっている頃に、病床で色鉛筆とペンで料理のレシピを50いくつもノートに丁寧に書いた。医者は、こういうのは珍しいと、妻の浅香さんに言ったそうだ。音楽家である武満さんが楽譜ではなく料理のレシピを書くのはこれこそ、生きようとする希望だったのかも知れない。
抗癌剤を投与された人は通常体が怠くなり、吐き気がし、食欲など減退するものだ。それなのに武満さんは、昔作曲でスタジオに詰めていたときに自炊して料理を作っていたそうだ。それを思い出して病床で書いていたのだろう。
「貧しい菜」 と言うタイトルの料理を谷川、小室等、浅香さんが作って食べる。美味いなと、言って食べていた。
9年間少女を監禁した新潟の佐藤は、監禁罪で10年の刑しか法律上科せられないのだそうだ。盗みも自供したのでそれに5年が加算される。それでも求刑は15年。監禁された少女が失ったあの時期の9年間に比べたらあまりにも刑が軽いような気がする。未だ裁判は途中だ。弁護士は、心神耗弱の状態だったので刑事責任がないと、主張しているが、そんなことは許されないような気がする。
坂本堤さん家族殺害実行犯に死刑が求刑された。それを傍聴していたドキュメンタリー作家が声を詰まらせて、「坂本さんが救おうとしていたのはまさに、今日死刑を求刑された彼たちだった。」そう言って声を詰まらせていた。坂本さんの思い。そして死刑を求刑された実行犯の反省と後悔の念を話していた。
25日サンタンデールの結果。ホセリート、耳1枚。ホセ・トマス、耳なし。もう1人はコヒーダされた。
7月27日(木)
うたばんに、小柳ゆきが出ていた。 思い出したが4月に下山さんの所に行ったときにいつも小柳ゆきの、『あなたのキスを数えましょう』 をかけていたら下山さんが気に入って、カセットテープに録音した。次ぎに行ったときに下山さんがこんな話をしてくれた。
そのテープ聴いて下山さんが、♪あなたのキスを数えましょう♪と、歌っていたらまゆみさんが、「何でキスなの?傷でしょう。キス数えてどうするの。傷を数えるから意味があるんでしょう。」と、言って2人で言い争うになったという。
下山さんの方が正しいのだが、まゆみさんの言う、“傷”の方が面白いと思った。また下山さんもまゆみさんの言っていることが正しいような気がすると言っていた。これはまゆみさんのセンス、感性なのだ。まゆみさんは下山さんの傷を数えて生活しているのかも知れない。彼女は多分そう言う人なのだ。
♪あなたの傷を数えましょう♪ ♪あなたの傷を忘れましょう♪ まゆみさんの耳にはそう歌っているように聞こえている。恐らく彼女がそうやって暮らしているからそう聞こえているのだとその時思った。
人には出会いが重要だ。僕が91年サン・イシドロを見に行かなかったらセサル・リンコンに出会わなかったかも知れない。セサルに会わなかったらこんなに闘牛にのめり込むこともなかっただろう。
下山さんも、闘牛を真面目にやっていなかったらジョン・フルトンに出会わなかったろうし、まゆみさんとも夫婦にならなかっただろう。
こないだ買った山田風太郎の本にこんな一節があった。「恋し、恋される美しい女人ひとりもてば、男はそれでよい」 またこんな一節も、 ふれられた乳房のさきまで、よろこびの血が脈うった。 風太郎は上手い。これは、女を良く知っている人間の文章だ。
下山さん達は、「恋し、恋される」関係。そして厳しさのある関係だ。誰にも真似の出来ない自分達の人生がそこにあるように思う。
今日、サンタンデールで、エル・カリファが復帰する。レガネスでは、ホセリートとホセ・トマスのマノ・ア・マノがある。
7月28日(金)
中崎君に頼んだことはやってくれたようだ。27日レガネスでの観戦記を書いて送ってくれた。闘牛の見方を教えていたので、ちゃんと見ている。闘牛士がやっていることが分かる観戦記になっていた。牛のことも教えていたことをちゃんと覚えている。お陰で、ホセリートとホセ・トマスが何をやったのか良く分かった。分からないのは闘牛場の雰囲気だ。
耳か耳じゃないかはまさに闘牛場の雰囲気で決まる。それが慣れないとなかなか判らないみたいだ。でもメモも取ってないのにあれだけ長く見てきたことを書けるのは画家の目でしっかり見ているからだろう。許可取って観戦記に載せよう。
27日の結果。レガネス、ホセリート、耳なし。ホセ・トマス耳なし。こう書くと何もなかったようだけどホセリートは、ダメな牛でクルサードしてパセを繋いだと中崎君が書いていた。ホセ・トマスは剣が決まらず耳を切れなかった。サンタンデール、エル・カリファ、場内一周。
7月29日(土)
自分の子供を2人殺し、実の父親、母親、娘も殺人未遂して捕まっている43歳の女は最近も未だあるテレクラで男あさりをして、別れ話の度にお金を渡していたという。中年の主婦でテレクラが流行っていると言う。男と知り合ってやることはお決まりのホテルに行って・・・。
日常からちょっとの時間離れてホテルに2時間行って違う人生を味わっているという。ちょっと違う人生と味わうのは良いが、それで充実した人生が送れると思っているのだろうか?楽しそうに見えても寂しい人生を送っているからそんなことになっているんだろうか。そういう親の子供の世代が高校生。ガングロなどの女子高生も楽しそうに見えて寂しい生活を送っているのだろうな。
多分昨日だった思うけど、津田恒美のドラマがTVであった。嫁さんが書いた『最後のストライク』のTVドラマ化で見たかったが寝ていた。本は読んだ。出た直後だった。あの本は読みながら涙が止まらなかった。広島カープのストッパー津田恒美は150kmの直球勝負のいさぎよさがあった。
150kmの直球でしか勝負できなかったピッチャーだったが、あの真面目さがプロ野球ファンを感動させた。当時阪神ファンだったが津田には押さえさせてやりたかった。プロなのに投球技術がないところが何故か素敵に思えた。あれは津田の生き方なんだと思った。生き方の素晴らしい奴を僕は応援したくなる。闘牛もそうだけど。
28日サンタンデールの結果。エル・コルドベス、耳1枚が2回。ホセ・トマス、耳1枚が2回。
今日、日本時間23時30分イギリス、ニューマーケットで、キングジョージ&クイーンエリザベス、ステークス(G1)に、日本馬、エアシャカールに武豊が乗って出走。
7月30日(日)
今日は土用の丑の日なのだそうだ。スーパーではパックに入ったウナギが沢山並んでいた。これは江戸時代に平賀源内がコピーライターをして流行らせたことに起因する。夏ばてはビタミンを取るのが良い。
東京は、ヒートランド現象になっている。コンクリートとアスファルトに囲まれて太陽の熱が夜になっても温度が下がらない。川も少なくなり自然のクーラーが利かなくなり、風の通り道もなくなった。おまけに、クーラーが温度を上げる。緑の少ない東京は夏場に突然スコールのような雨が降るのもヒートアイランド現象の1つだという。
スペインでは、街の40%を緑にするように都市計画がされていると聞く。だから、変に蒸し暑くないのだろう。東京ももう少し涼しくなるように緑を増やして欲しいものだ。
エアシャカールは5着に終わった。勝ったのはやっぱりモンジュだった。
7月31日(月)
東京は真夏日はもう28日あったという。暑いのは昼だけじゃなく夜も暑い。今年は何年かぶりの猛暑だという。何処かでは38度を記録した。
下山さんが言っていたが、セビージャでは夏の夜にはグアダルキビール川のカフェテリアに夕涼みに出てくるのだそうだ。あっちは40度以上あるが蒸さないので日陰なら大分良い。大分良いと言っても、50度くらいまで温度が上がると言うからとんでもない。だから、シエスタが必要になるのだ。
俺も、昼はシエスタがしたい。そんな夢のようなことは出来ない。仕事しなきゃスペイン行ってシエスタが取れないもの。
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