断腸亭日常日記 2001年 その19

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、のスペイン滞在日記です。

99年1月13日〜2月16日 2月19日〜4月14日 4月15日〜5月11日 5月12日〜6月4日
6月7日〜6月10日 6月13日〜7月9日 7月11日〜8月8日 8月9日〜9月9日
9月12日〜10月7日 10月10日〜11月10日 11月14日〜11月28日 12月12日〜12月31日
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 12月16日(日)

 この前の闘牛の会に初めて参加した人が何人かいてその中にスペイン語を勉強をしていて文化という側面から今まで知らなかった闘牛に興味を持ってきたのだそうだ。そう言う人がドンドン来るようになれば凄いんだろうけどなかなかそうはならないのが現状。闘牛に興味がなくても会員に会いに来るような人もいるし人それぞれだ。本当は闘牛そのものに興味がある人がドンドン来ることが1番良いがそんなことは無理なことなのでどういう動機でも良いから、ビデオを見に来るだけでも良いから来てみて欲しい物だ。

 添乗員をやっているという二人は、96年のメホール・ファエナのビデオを観ていたら、エル・フリを流さないんですか?と聞いてきたので持ってきたエル・フリのビデオを流した。99年のセビージャのもの。彼女たちはいつの間にか添乗員をやっていて闘牛が好きになったと言っていた。こう言うのが1番良い。俺みたいに始めっから最後まで闘牛というのは疲れると思う。牧ちゃんが自己紹介で、「今までは清く正しくなく闘牛を観てきましたが、これからは清く正しく闘牛を観ていきたい」と言っていたので、「今までは清く正しくない闘牛を観てきたって、どういうこと」と聞いたら「正しくなかったの」と言っていたので直ぐに判った。つまり、リトリだけだったと言うことだろう。リトリ引退で良い闘牛を観ようと言う意識が強くなったのだろう。

 カルロス・アビラの他にも、リベラ・オルドニェスのバンデリジェーロだったクーロ・モリーナもフィニートのバンデリジェーロに変わった。クーロのように実力のあるバンデリジェーロが、有力闘牛士を渡り歩くのは当然のこと。またクーロとも闘牛場で会いたい。

 ADSL用のモデムが来た。他に必要なのがケーブル2本、ノートパソコン用のPCカード、ウイルスソフト。18日から使用できる予定だ。

 香港シャンティン競馬場を行われた国際G1レース3つとG2レース1つ、香港ヴァーズ、2400mG1で、ステイゴールドが悲願のG1制覇。スローペースを最後方から追い込んで差しきったレースだったそうだ。50戦目引退レースでのG1制覇には驚きを覚える。香港マイル、1600mG1でエイシンプレストン優勝。福永がガッツポーズ。3馬身差の会心の勝利。天才と言われた父、福永洋一も出来なかった海外G1制覇をやったのだから嬉しかっただろう。1番人気、ゼンノエルシドは理解不能の最下位惨敗に終わった。香港カップ、2000m、G1でアグネスデジタルが優勝し、G1では全勝した。四位騎手も海外G1初制覇。G2、1000m香港スプリントは団子状態になり、メジロダーリン、ダイタクヤマトは新潟のようなばらけたレースにならず惨敗した。G2ではダメだったが、G1を全勝したことは期待以上の結果だ。日本馬の実力が世界水準にあることを証明した。エイシンプレストン、アグネスデジタルは来年海外遠征してG1を狙って欲しい。

 山田風太郎 『不知火軍記』 石川賢 『魔界転生』 読了。山田風太郎 『自来也忍法帖』 を読む。

 15日、セサル・リンコンが、コロンビアのパイパのフェスティバル闘牛で闘牛士として復帰した。マリア・テレサ・ラミレス・デ・リンコンという、セサルの母親の名前が付いた闘牛場で、コロンビアに所有するラス・ベンタス・デル・エスピリトゥ・サント牧場の牛も出し、観客の喝采を浴びたが耳は取れなかった。

 8日の結果。 ケレタロ(メキシコ)。騎馬闘牛士、ゴンサレス・ポラス、耳1枚。闘牛士、エロイ・カバソス、ホルヘ・グティエレス、耳なし。エル・フリ、耳1枚。 サン・ルイス・ポトシ(メキシコ)。ソトルコ、耳1枚、ホセ・トマス、口笛。イグナシオ・ガリバイ、耳1枚。

 9日の結果。 メキシコ。騎馬闘牛士、パブロ・エルモソ・デ・メンドーサ、耳1枚。闘牛士、フィニート、罵声。ヘロニモ、耳なし。フェルミン・スピノラ、耳1枚。

 12日の結果。 レオン(メキシコ)。アントニオ・バレラ、耳2枚。イグナシオ・ガリバイ、耳なし。エル・ミンゴ、耳1枚。 ケレタロ(メキシコ)。ソトルコ、耳1枚。ホセ・トマス、フェルナンド・オチョア、場内1周。 


 12月17日(月)

 昨日の競馬で2歳レコードで勝ったアメリカ産馬、サーガノヴェルは相当な馬かも知れない。デビュー2戦目、中1週、初芝の条件でスピードの違いを見せつけた。デビュー戦がダート1200mで1.11.9で6馬身差の圧勝。こんな馬が出て来るんだなぁ、今の日本の競馬は。1Rで勝ったココモキングはダート1200mを1.10秒代で駆け抜けたそうだ。これもアメリカ産馬。こんなタイムは、古馬オープンでもなかなか出ない。デビュー戦は負けたけど、1.11.7で走っているのでこの馬も短距離じゃ相当良いところを行くのかも知れない。どちら美浦の関東馬。ようやく全体的に良い調教で良い馬の仕上げが出来るようになってきたようだ。

 今度はいよいよ有馬記念。こっちは関東馬はダメだろう。関西馬が上位を独占しそうな雲行きだ。オペラオー、ドトウ、トップロードの古馬3強と3歳菊花賞馬。井崎修五郎の本命はトウカイテイオーの弟、トウカイオーザ。今週は競馬雑誌をちゃんと買ってしっかり検討して馬券を買おう。大分JRAには貯金しているのでおろさないとなぁ。オペラオー、ドトウの引退レース。どの馬が勝つのか。1年の総決算有馬記念で年が暮れる。

 山田風太郎 『不知火軍記』 は、天草の乱の時の天草四郎じゃない反乱軍の戦いを描いたもの。こういう題材の取り方は独特だ。風太郎のベクトルはこういう方向を向く志向がある。風太郎の切支丹ものは面白い。勿論、他のものも面白いのだが、こう言うところに聖母像が描かれるとグッと来る。敗戦・聖母小説が原型となっているのだろう。風太郎はこういう中編も非常に上手い。

 石川賢 『魔界転生』 を風太郎が読んで、「これは原作より面白い」と言ったそうだが、全然そうは思えない。風太郎は褒めるのが上手い。石川賢がこれを書くに当たって何の制約も出さなかったというのは、実に風太郎らしい逸話だ。漫画は、つまらなくはないけれど、風太郎の面白さに比べるまでもない。ただ漫画というのは絵というものが具体的なイメージになるので良く表現できていていれば、面白いが小説に比べれば限界がある。絵の構成の仕方が上手いとは思えない。それでも、こういう難しい作品を良くここまで形にしたなとは思った。作者はあとがきで楽しんで書くことが出来、以降作品を書く自信になったという言葉には納得した。

 今年は後何冊本が読めるのだろう。多分、『吾輩は猫である』 は来年になるだろう。

 ラファエル・デ・フリアのバンデリジェーロを首になった、ファン・マヌエル・モントリウがフランス人闘牛士、ファン・バウティスタのバンデリジェーロになるようだ。


 12月19日(水)

 楽しみにしていたADSLの接続に苦労している。コンピュータが2台。これをモデムからハブで繋いで接続をするがこれの設定が上手く行かない。困ったことに時間がない。TELの接続と併用して取りあえずやって行くしかない。ホントコンピューターって気の利かない奴だ。マニュアル通りにやっているつもりなのに上手く行かない。多分何処かかおかしいところがあるんだろう。1台だけなら繋げるんだけどなぁ。

 そんなわけで時間が掛かったので書きたいことも時間がなくて書けなくなった。


 12月20日(木)

 ADSLの接続は直ぐに出来たが、設定をちゃんとやっていないなかったことと、ハブの接続が上手く行かず手間取った。あのイライラは何なんだろう。何とかしようと焦る気持ちと、マニュアル通りにやっているつもりなのに上手くできない事実の中で何でこんなくだらないことで時間を掛けなきゃならないのかという怒りのような気持ちと、でもこれを接続しなきゃどうするんだと言う気持ちが混ざり合って、実に不思議な訳の分からない感情が高ぶってきた。異様に肩が凝ってトイレが近くなった。ハブは未だに繋がっていない。何故なら未だ試みていないからだ。

 本を読むのを中止してつまらないADSL接続マニュアルを読み、ハブのマニュアル、ウィルスソフトのマニュアルを読んでいた。何がつまらないと言って、マニュアルを読むことほどつまらないものはない。だけど、基本的にこれを読まなきゃ接続できないのだから仕方がないけど、マニュアルを読むと言うことはインター・ネット接続という結果があって初めて読んだという意味が発生する。本を読むことは、そう言う意味が発生しないのに何故面白いのだろう。それは、マニュアルが人生のためにほとんど役にも立たないのに比べて、読書の方は色々な意味で人生に役だとからだろう。

 取りあえずADSLで接続が出来る状態になったが問題もある。アクセス状態が悪い。モデムが、マウスをクリックしたときのような音を何度も出して接続が途切れるのだ。これはおそらく外的なことが原因だろう。まさか、ISDNの干渉を受けているわけじゃないだろうな。1.5Mじゃなく8Mでの接続なのにそんなに早いとは思わない。これはアクセスするサイトの状況にもよるのだろうから一概には言えないだろうけど、写真などが一杯張り付いているHPを見れば判るだろう。


 12月21日(金)

 有馬記念の枠順が発表された。逃げると思われるトゥザヴィクトリーが2枠2番。テイエムオーシャンが6枠8番。マンハッタンカフェが4枠4番。ナリタトップロードが4枠5番。シンコウカリドが6枠9番。トウカイオーザが7枠10番。そして注目の2頭、テイエムオペラオーが8枠12番。メイショウドトウが8枠13番になった。大外になったが大丈夫だろう。大事な大事な有馬記念を前のADSLトラブルで落ち着かなかったがこれからゆっくり検討に入ろう。有馬が来ないと年が暮れない。

 上野昂志 『紙上で夢見る』 は11人の作家論を書いているがその中の、「錯乱する距離」は、江戸川乱歩論だ。つくづく鋭いその論に感動するがこれを読んでいて、あの当時のセサル・リンコンのことを思い出した。91年頃の闘牛は牛と闘牛士の距離が退屈でつまらなかった。当時NO1のエスパルタコや、過去にNO1になったマンサナレスなどが象徴する距離の取り方が安全そのものだった。そこにセサルが登場して圧倒的な輝きを放ったのはその距離の取り方が死に近い危険さを、理屈抜きに観客に伝えたからだ。

 上野さん風に言えばそれは、エロスを感じさせた。死を感じさせるのに、エロスとは何だ、と言うかも知れないが、それはバタイユが死とエロスを結びつけて語っている。『眼球譚』 は訳の分からない部分が多いがようはそう言うことだ。例えば、女は出産という命懸けの行為をその存在として象徴するから、と言うことも言えるのだ。乱歩の距離は時にグロテスクなまでに登場するが、セサルの、「錯乱する距離」は、観客が錯乱してしまうほど魅惑的で、今まで味わったことのない感動を観客にもたらした。

 乱歩は文章で、「錯乱する距離」 を語り、セサルは肉体で、「錯乱する距離」 を表現した。静と動を繰り返し移動する肉体によって。

 もっとも、あの当時は、そう言うことを説明できる言葉を持っていなかった。モーニング娘のように、「チョー凄い。チョーチョー、チョー凄い」と、言っていたのかも知れないけど。


 12月22日(土)

 有馬記念予想の口上。

 ここでは有馬記念を念頭に置いているので距離は中長距離に限定する。

 その1:古馬(4歳以上)の最強馬は何か。2000mなら天皇賞秋などを勝った、アグネスデジタル、宝塚記念を勝ったメイショウドトウ、テイエムオペラオーなどだろう。2400mなら、メイショウドトウ、テイエムオペラオーが強いだろう。もう少し長くなると、ナリタトップロードが本来は強いはずだ。トゥザヴィクトリーは、1600m〜2400m位のダートなら世界でもトップクラスだろう。

 その2:3歳馬の最強馬は何か。“最強の3歳世代”と言われているこの3歳勢は明確だ。引退した、アグネスタキオン、ジャングルポケット、クロフネが3強を形成する。相撲で言えば横綱だ。次のクラスが、エアエミネム、マンハッタンカフェで、その次くらいに牝馬、テイエムオーシャンなどが来るだろう。シンコウカリドは前走、セントライト記念でマンハッタンカフェに勝っているが実力から言っても距離を考えても、あのカリカリした気性からもマンハッタンよりも勝るものではない。気性から、レガシーワールドのようにパドックであれだけチャカついていてジャパン・カップを勝つ馬もいるが、それはレガシーの個性だからだ。常識から言って距離が長くなるとああ言う気性はマイナス要因として大きい。ダートは、1600m〜2200m位までならクロフネは世界のトップクラスだろう。

 これが世代内での比較だが、世代間の比較をすれば1番分かり易いのがジャパン・カップのレース結果を検討の入り口が良いだろう。東京2400mのジャパン・カップで優勝したのは、3歳馬、ジャングルポケット。僅少さで2着が、テイエムオペラオーだった。3歳馬でジャパン・カップ優勝したのは、エルコンドルパサー以来だ。エルコンドルパサーは翌年ヨーロッパ遠征をしてG1を勝ち、最高峰、凱旋門賞でも、2着にもなった馬で、同世代に、有馬記念を連覇したグラスワンダーや、天皇賞秋、ジャパン・カップ、有馬記念の秋の中長距離G1全てを引退の年に勝った、スペシャルウィークがいる、最も強い世代だった。

 今年のジャパン・カップでテイエムオペラオーがジャングルポケットに負けたのは、ペリエ騎手が乗っていたからだ。ペリエじゃなかったらジャングルは勝てなかっただろう。逆に言えばオペラオーはそれだけ強いのだ。だから3歳3強馬が出てこない今年の有馬記念の主役は、古馬になるのではないかと思う。中心は、テイエムオペラオー。東京の馬場より中山の方がコース適性がある。普通にやれば勝てるだろう。対抗は、メイショウドトウ。鞍上、安田騎手が、「どの馬が1番強いか判るレースをする」と強気な発言をしているのも心強い。調教も良かったし去年の状態よりも良いと言っている。次がナリタトップロード。自力があるのとジャパン・カップで見せた最後の脚も復調を感じさせる。調教も体調も良い。オペラオー、ドトウを逆転できる可能性がある馬はこの馬だけだろう。

 おそらくレースは、オペラオー、ドトウ、トップロード、マンハッタンカフェの順番になるだろう。今年は仕事で有馬記念に行けないのが非常に残念だ。本来ならこの予想の後に、パドックで馬を確認して馬券を買うのが競馬ファンの王道。それが今年は出来ない。追記として書けば、何が勝てば1番嬉しいか、感動するかと言えばそれは勿論、トップロードだ。オペラオー、ドトウの引退レースでライバルの意地を見せてくれたらこんなに嬉しいことはない。が、馬券はあくまで馬券。オペラオーからドトウとトップロードの2点を買った。レース後は馬券と同じでオペラオーが勝って、「ああ、やっぱりこの馬が強いんだ」と思うだろう。

 有馬記念の前夜は1年で1番美しく神聖な夜だ。今日は良い眠りにつきたい。


 12月23日(日)

 競馬だから何が起こるか判らない。しかし、今年は強い馬が勝ってきた。結果は自然と出るだろう。

 昨日の夕方から奄美大島沖で発見された不審船に発砲して停止命令を出したが逃走を続け火災で一時停止したが、再び逃走し海上保安庁の巡視船に囲まれ再び停止した。それから、海上保安庁が不審船に乗り込んで行こうとしたとき、発砲され二人が怪我をした為、正当防衛で攻撃すると不審船が沈没し乗員15人が海に投げ出された。救助に当たろうとしたが反撃の危険があるため救助できず行方不明になったそうだ。

 一連の報道から、不審船への発砲は正当性があるように思われる。救助できなかったことも海のしけもあり仕方なかったのかも知れない。しかし、そこまで抵抗した不審船の行動自体が不可解だ。

 アメリカでのテロ以来、パレスチナでの自爆テロが頻発したり、こういう事件が起きたり世界情勢はある方向にベクトルが向いているように思う。嫌な気分だ。


 12月24日(月)

 有馬記念結果口上。

 競馬とは残酷な現実を突きつけるものだ。誰がこんな結果を想像しただろうか。

 異様な大歓声の中でスタートした有馬記念。1周目のスタンド前でまさかオペラオーがかかり気味で通過するなんて想像しなかった。和田騎手は、「馬を前に置いておけば・・・」と悔やんでいたが後の祭り。観衆が11万人と少ない割には物凄い歓声だった。誰かここでオペラオーがかかると想像しただろう。これが誤算その1。

 逃げ馬がいないのに、良いタイムでの決着がささやかれていたのがレース前の誤算。レースは、武のトゥザヴィクトリーがスロー・ペースで逃げた。こうなれば最後の直線での叩き合いは目に見えている。しかし、スローなのに割と縦長で流れ、団子状態になってきたのはようやく3コーナー手前。それまでが離され過ぎだったのだろうか。4コーナーでは、オペラオーは外に膨れるように進路を取らざるを得なかったのが誤算のその2。もうこのコーナーを廻った勢いが悪かった。直線で全然伸びないのは、手前を替えないから。これが誤算3。坂の途中でようやく手前を替えた。これじゃ届かない。オペラオーの不可解なレースぶりはG1の激戦の疲れとしか考えられない。

 オペラオーの後ろから来て直線で抜けたマンハッタンカフェに比べればその違いが判るだろう。そして、スローだから残った、アメリカンボスとトゥザヴィクトリー。特に、アメリカンボスは3コーナーからずっと追い通しで良くもまあ2着に残ったものだ。この馬の出走すら疑問に思っていたのに・・・。

 それにしても3歳馬は強い。“史上最強の3歳世代”の呼び声は伊達じゃない。このレースの上がり3F、最速の33.9のタイムを出して優勝したマンハッタンカフェ。菊花賞がフロック視されていたがとんでもない。この馬は3歳の横綱だった。これじゃ来年の天皇賞・春を始めこの馬が中心になっていくだろう。ジャングルは苦しいぞ。そして3歳牝馬として出走したテイエムオーシャンも上がり3F、2番目に早い34.1のタイムで6着になったのも相当強い証拠だろう。来年の古馬戦線はこの3歳世代、つまり、明け4歳馬総なめするような競馬になっていくだろう。とにかく強い。

 こんな大波乱の結果だったので馬券ははずれ。そして、こんなレースは取れないのだ。一部の人たちは、「今年はアメリカでテロ事件があったから、マンハッタンとアメリカンで決まった」と言っているらしいがそれなら始めからそう言う馬券を買えばいいだろう。こういう暗号馬券は大嫌いだ。自分の競馬の見方を放棄してまで馬券を買いたくはない。こう言うときは、『一馬』 の石井進吾のように、「今日は競馬が悪かった」と呟くしかないのだ。

 山田風太郎 『読淫術』 『伊賀の聴恋器』 芥川龍之介 『おしの』 『さまよえる猶太(ユダヤ)人』 読了。山田風太郎 『自来也忍法帖』 『海鳴り忍法帖』 を読む。

 掲示板に書き込みをしようしたら、書き込みが出来ない。原因が判らず。


 12月25日(火)

 読唇術は、唇の動きを観て何を言っているかを解読する技を言う。音は一緒だが独身術とは大分違う。『読淫術』 は、山田風太郎が作った忍法帖シリーズ短編。その中で伊賀、甲賀の首領、服部百蔵(小説の設定では70歳以上)の言葉が晩年の風太郎が発した言葉と同じなの驚いた。

 「は、何もすることがない? 人間、何もしないですめば、それに越したことはない。・・・・・・およそ人間のやることで、世に対して有害無益でないことは何もない。・・・・・・ただ子孫を残すということのほかは」

 『読淫術』 は昭和45年作。風太郎が自身の墓を用意した頃なのだろうか。

 不審船との銃撃戦で負傷者が2人出たことの方が嫌な気分です。対戦車ロケット砲まで不審船は発砲していて、それに対してのほとんど無防備な船体。そう言う状況で任務を遂行しようとしている海上保安庁の隊員が死んでもおかしくない任務です。もっと他のやり方で対応しないと死人が出るでしょう。政府の対応は、現場サイドのことを、何も考えていないようで、あれでは仕事など出来ない。ああ言う不審船に対しては、ちゃんとした装備をした船で対抗しないと・・・。


 12月26日(水)

 そろそろ来年のカルテルを開かないと拙いのに全然作業をしていない。本来なら今年のカルテルもとっくに完成させていなきゃ行けないのにそれすらやっていないのだから我ながら呆れてしまう。今年中に何とかしようとは思っているがどうなるか。ADSLに替えてからHPのカウンターが観れなくなった。カウンターの数字が全部8に表示されるからだ。他のHPを見てもそう言う風にしか観れないところがあるのでどうやら原因はADSLによるアクセスによるもののようだ。ただ、カウンター分析を付けたのでそこから大体の事が判る。

 北朝鮮が不審船のことについて、日本の謀略だと言っているようだがそう言うことは国際的に常識的に言って通用するのだろうか?これは政治的な発言だと思う。かつて水俣病の症例が学会で発表されたとき、チッソ、及び、日本政府は工場排水との因果関係はないと言い張っていた。高度成長時代、まるで公害などで日本経済がダメになってたまるかという意識がそう言う政治的発言をさせたように。

 山田風太郎 『海鳴り忍法帖』 を読む。


 12月27日(木)

 定期をなくした。改札で定期を取った後にいつも入れているとこじゃないところに仕舞ったのでそれが原因だ。いつもやっている仕草、それがそう言うことを予防しているのだ。ガッカリする出来事だ。

 大学の教員になる専門の所を出ても、実際に教師として採用される割合は13%に過ぎないと言う。これは過去最低だそうだ。大学で専門課程を卒業しても就職は非常に厳しい。こんな社会状況はここ何年か続いているし、これから後何年も続くことだろう。ゼネコンもこれからドンドン倒産していくだろうし、製造業を始めその他でもリストラで大量の失業者が出るだろう。贅沢を言ってられない時代は定着しつつある。

 山田風太郎 『自来也忍法帖』 は途中で読むのを止めた。何故なら、この小説を読んでいると色々な小説を思い出して不思議な気分になるからだ。これなら、何か書きながら読まないと勿体ない気がするからだ。


 12月28日(金)

 ソニーがニフティを1000億円で買収へ動いている。双方が合意で、これで富士通は一般ユーザーへのプロバイダー業務から撤退することになる。IBMと同じで企業向けのサービスで企業体質の改善を図るようだ。ソニーの方は映画、音楽と言ったソフト戦略で、BIGLOBEを抜いて一気にプロバイダーのシェアー1位になることになる。ADSLなどの導入、低価格等でプロバイダー業務は殆どが赤字だという。いよいよ淘汰の時代に入って行くようだ。

 ついでに書くと11月末頃からウイルス付きのメールが頻繁に送られてくる。今は、ウイルス対策ソフトを導入したので、ソフトがウイルスに感染したメールを教えてくれる。検疫、駆除、削除もソフトがやってくれる。トロイの木馬の攻撃に対しても防御してくれる。こういう攻撃はテロと一緒だ。非道いのになるとHPを見ただけで感染するという。今年一時、マイクロソフトのHPがそれに感染したらしい。ウイルスソフトを導入しないと言うことは、どうぞ感染して下さいと言っているようなもののようだ。

 年末だというのに部屋の片づけに手が伸びない。

 山田風太郎 『海鳴り忍法帖』 を読む。

 遅くなったが闘牛の結果。 15日の結果。 オリサバ(メキシコ)。ホセ・マリア・ルエバノ、重傷より軽い怪我。カルロス・ロンデロ、耳なし。パコ・ゴンサレス、場内1周。イグナシオ・ガリバイ、耳なし。 ケレタロ(メキシコ)。ソトルコ、耳1枚。ホセ・トマス、フェルナンド・オチョア、場内1周。 パイパ(コロンビア)。フェスティバル闘牛。セサル・リンコン、耳1枚。ハイロ・アントニオ・カストロ、耳1枚。アルベルト・メサ、耳2枚。セアル・カマチョ、耳1枚。ディエゴ・ゴンサレス、耳2枚。

 16日の結果。 メキシコ。騎馬闘牛士、マルティン・ゴンサレス・ポレス、耳なし。闘牛士、エロイ・カバソス、耳1枚、耳2枚。ホルヘ・グティエレス、耳2枚、耳2枚と尻尾1つ。牛、インドゥルト(フリオ・デルガド牧場)。ソトルコ、場内1周。

 22日の結果。 ヒキルパン(メキシコ)。騎馬闘牛士、パブロ・エルモソ・デ・メンドーサ、耳4枚。闘牛士、アルミジータ、ミゲル・ラオス、耳なし。 ジョパル(コロンビア)。ネルソン・セグラ、耳1枚。リマ・デ・エステパナ、耳2枚、耳1枚。エル・ヒノ、耳1枚。

 23日の結果。 メキシコ。アリミジータ・チコ。口笛。アルフレド・グティエレス、耳1枚が2回。アントニオ・バレラ、場内1周、耳1枚。 カデレイタ(メキシコ)。チロロ、耳1枚。マリ・パス・ベガ、耳2枚。

 25日の結果。 プルアンディロ(メキシコ)。騎馬闘牛士、アントニオ・オルテガ、耳なし。闘牛士、アントニオ・ロメリン、チロロ、マリ・パス・ベガ、耳なし。


 12月29日(土)

 昨日の夜NHKで、ロシオの巡礼を放送していた。これのスペイン。髪飾りにロメロ(ローズマリー)を飾るのは巡礼者の印だという。クーロ・ロメロファンが闘牛場にロメロを持ってきてブエルタの時にアレナに投げ入れるのは言葉をかけているからだ。果たして巡礼者と言うこともかけているのかどうかは判らない。しかし、ああ言う風に祭りが地域に昔から根付いていると、生活や文化が家族という方を向いていることが良く分かる。そして、家族との生活が最も大切な人間の根本になるような気がしてくる。スペインはそう言うことを教えてくれる。

 途中から放送を観たので後半だけだったが始めから観りゃよかった。何やってたかと言えば、ネットで風太郎の本を検索して注文していたのだ。風太郎ファンのサイトの著作リストと、『文藝別冊』 山田風太郎特集の著作リストを比べてみていたらふと、検索してみたくなりためしたら、『笑う肉仮面』 と言う著書が出てきたので注文した。本当にあるのかとも思うがネットにあるんだからあるんだろうと思う。でも、信じられないことだ。これは思わぬ発見だ。本は近くのセブンイレブンに届けて貰うと代金引換で送料無料になるのが良い。

 それにしても、風太郎ファンはマニアックな人が多い。著作リストを書いているサイトは複数あるし、日下三蔵氏から連絡があるサイトまであるからビックリする。

 『牢の忍法帖』 は禁制の切支丹として投獄された2人の姉妹、カタリナお芹とモニカお文。牢内の女囚全員が切支丹になったと江戸町奉行跡部肥前守が報告を受けた所から話が始まる。それを転ばせようとする江戸町奉行。しかし、切支丹の妖術かそれは阻止される。それを観た女囚は、「ホ、ホ、わたしにゃわかっている。いえ、笑いごとじゃない。だれがやったっか、それァわたしにゃわかっているんだ。  天にまします天帝(ゼウス)さま。ーーー」 と言う。が、実は・・・。風太郎の切支丹ものもやっぱり面白い。忍法帖だか聖母小説の一種だ。

 山田風太郎 『牢の忍法帖』 読了。

 ペレス・プラードというキューバ出身のマンボキングと言われた音楽家がアメリカに亡命しそこで62年発表したアルバム、『アメリカ組曲』 の中に入っていた、『二つの世界』 (1年前にアメリカに亡命しているキューバ人がハバナに空爆した日に因んで録音は62年4月18日。)と言うバラードがチェ・ゲバラを追悼したキューバ政府主催の集会でかけられ、キューバでは、チェ・ゲバラのテーマ曲みたいになっているそうだ。

 HPのアクセス分析で闘牛写真館より東京闘牛の会の方がアクセスが多いことが判った。写真は全然更新していないからと言うのもあるのかも知れないがちょっと驚いた。また、闘牛士紹介を参考にしている人が多いと言うことも知った。これについてはコンテンツの記事が古いので書き足しが必要だし、新たに闘牛士を書き加えなければならないと思う闘牛士があるのでそれもこれからの作業としようと思う。


 12月30日(日)

 今年の10大ニュースが色々発表されているが、個人的には山田風太郎が死亡したことが最大のニュースだった。死亡ニュースが発表された7月30日以来、風太郎の本を読んできた。自分では近年稀にみる読書量だと思っているが、風太郎の本全部を読んだ分けではない。特に初期のミステリーは殆ど手を着けていない状態だ。忍法帖さえ全部読んではいない。

 風太郎 『笑う肉仮面』 は、光文社文庫から出ている山田風太郎ミステリー傑作選全10巻の9巻目として明け1月1日に刊行されるようだ。これも全て編集を行った大の風太郎ファン、日下三蔵氏のおかげだ。あなたが仕掛けた近年の風太郎の復刊本は一体何十冊になるのだろう。今まで単行本にもなっていない著書の刊行にも手も染めていただければこんな幸せなことはありません。

 山田風太郎 長編 『海鳴り忍法帖』 中編 『乞食八万騎』 短編 『幻妖桐の葉おとし』 読了。

 28日、カリ(コロンビア)で、インドゥルトがあった。ラス・ベンタス・デル・エスピリトゥ・サント(セサル・リンコン)牧場(血統は、マルケス・デ・ドメク)の“スブディト”という名前の牛だった。相手にした闘牛士は、スペイン、バジャドリード出身のダビ・ルギジャーノ。セサル・リンコンと共に肩車でプエルタ・グランデした。良いニュースだなぁ。

 27日の結果。 カリ(コロンビア)。エル・カリファ、場内1周。ラファエル・デ・フリア、耳1枚。ゲリタ・チィコ、耳1枚、場内1周。

 28日の結果。 カリ(コロンビア)。ダビ・ルギジャーノ、耳1枚、耳2枚と尻尾1つ。牛、インドゥルト。場内3周。エル・ヒノ、口笛、罵声。セルヒオ・マルティネス、耳1枚。

 29日の結果。 カリ(コロンビア)。ダビ・ルギジャーノ、口笛2回、罵声。フェレーラ、耳1枚。ラミロ・カデナ、鼠径部(腿の付け根)に12cmの怪我。4頭目の牛に、バンデリージャス・ネグラスが使用された。これは牛がとんでもなく悪いときに打たれる銛の部分が通常のものより大きなバンデリージャをバンデリージャ・ネグロという。


 12月31日(月)

 昨夜、NHKで 『アラビアン・ナイト』 をやっていた。夜寝室で、王様に犯されそうになる女が、エロ話を語って聞かせてその難を逃れるのが本当の話だが、これも面白かった。とにかく、物語の面白さから王様が引き込まれて、次の晩を楽しみにする。堪えきれず何故今続きを聞かせないのだと激怒したり、教訓として聞き、それを実践したりする。物語は、老若男女、古今東西を問わず引き込まれる力がある。おそらく、今売れに売れている、『ハリー・ポッター』 もそう言う魔力を持った小説だろう。風太郎もそう言う物語を数多く書いている。

 山田風太郎 『乞食八万騎』 は、感動的な涙を流させる大傑作だ。こんな作品がよくも長い間、眠っていたものだ。72年、『オール讀物』 に載って 75年、『南無殺生三万人』 (東京文芸社刊ではタイトルが替わり、『非人八万騎』になっていたものを再び、『乞食八万騎』 に直している) で刊行されて以来、久々に本に収められたようだ。ハルキ文庫、『幻妖桐の葉おとし』 に収録。人間の行動原理は、お金や権力による強制力ではなく、感情にあると言うことを美しく描いている。いや、美しいかどうかは判らない。何しろ乞食だから。でも、そう言う感情にさせるのは人との信頼だ。それは、正しいことを認め意気に感じて行動を実行させる。美しい生の謳歌とは、こういう一瞬のことも言うのだ。

 これを読んでいて、黒テントがやったブレヒトの、『三文オペラ』 を思い出した。あの芝居の設定は明治時代の日本に置き換えて、警視庁長官、乞食の集団、泥棒の集団が入り乱れて進む話だ。曲は全てクスト・ワイルが作曲。ジャズやポップスとしても有名になった、『マック・ザ・ナイフ』 などがこの、『三文オペラ』 から出た。黒テントを観て1番観客が多かった芝居で、なおかつ1番面白かった芝居だ。この中で乞食の親分の言葉などは、『乞食八万騎』 を読んで思い出したり芝居のシーンなども浮かんだ。

 大晦日が来た。この一年何をやってきたのだろう。反省する時間もなく今日も風太郎を読んでいるだろう。それで良いのだ。除夜の鐘を聞きながら、「あーこの物語は一体どうなるんだ。早く続きが読みたい」 と、思って寝ることだろう。日下三蔵氏と同じで、山田風太郎中毒患者である。入院はしていないが。


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