断腸亭日常日記 2001年 その7

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、のスペイン滞在日記です。

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6月7日〜6月10日 6月13日〜7月9日 7月11日〜8月8日 8月9日〜9月9日
9月12日〜10月7日 10月10日〜11月10日 11月14日〜11月28日 12月12日〜12月31日
2000年1月1日〜15日 1月16日〜1月31日 2月1日〜2月28日 3月2日〜3月29日
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 6月23日(土)

 家についてネットを繋ぐと下山さんからメールが来ていた。そこには、「今日アリカンテで久しぶりに闘牛士3人とGanaderoがいっしょにPuerta Grandeをしたのをみました。ぜんたいてきにTorreonの牛は、力がなく1頭目2頭目はほとんどInvalido, Ganaderoの病気が影響しているのか。Puerta Grandeをしているときのセサルが頬がこけるぐらいやせていたのが心配です」

 多分、エル・トレオン牧場は良い牛を出すだろうと思っていたが結果はエスパルタコが、耳1枚、耳1枚で場内2周。エウヘニオ・デ・モラが、耳要求で場内1周、耳2枚。エル・フリが、耳2枚、耳1枚だった。ネットの記事には1,2頭目が、Invalido(身体障害)、3頭目から6頭目がパセが繋がる牛と書いてあった。下山さんは全体的に牛に力がなかったと言っていたが、ともあれアリカンテには雨が降った。耳の雨が。

 そして、セサルの顔は笑顔でプエルタ・グランデした。99年9月13日フランスのアルルで闘牛士としてプエルタ・グランデして以来、今度はガナデロとしてプエルタ・グランデ。でも、頬がこけるほど痩せていたという。C型肝炎が悪化しているのだろうか。セサルがガナデロとしてプエルタ・グランデをしたのは非常に嬉しいことだが、近い将来セサルが死ぬのではないかと思った。

 闘牛をやっているときはいつも、非常に危ないことをやっていたのでいつも死ぬんじゃないかとと思って闘牛場に通っていた。そう言う緊張感がいつもセサル闘牛を面白くしていたし、感動的だった。あの頃はとても楽しかった。でも、今は闘牛を止めてしまった。去年会ったときに闘牛はもうしない。今はガナデロとしての喜びを感じている、と言っていた。今週中にセサルにメールを書こう。これからは、悲しいことだがセサルが死んでもそれを受け止めれるように準備をしないとダメだろう。

 帰ってきて録画していた競馬のビデオを見た。オークスのデザーモ、ダービーの角田とジャングルポケットは感動的だった。天皇賞のオペラオーは強い。明日の宝塚記念もオペラオーが勝つだろう。明日は競馬に行く。


 6月24日(日)

 起きたらNHKで河島英五の事を残された家族、友人が証言しているドキュメントをやっていた。最後のコンサートで歌った最後の歌を友人家族が歌をかぶせてレーコーディングしているとき、友人の桂南光が号泣していた。次女、長男も泣いていた。でも、看病に付いていた長女はやっぱり1番冷静だった。しっかりしている。良い家族を持った河島英五は幸せな人生を送っていたのが良く分かった。C型肝炎で死んだが良い歌を作った。須佐君にTELしたくなった。

 宝塚記念はメイショウドトウがついに悲願のG1制覇を成し遂げた。安田康彦騎手のガッツポーズが印象的だった。オペラオーは4コーナーで不利を受けて勝つことが出来なかった。それでも最後の直線で見せた脚は素晴らしかった。和田騎手は、「これで勝てなかったら」と言っていた。しかし競馬に絶対はないと言う言葉通り思いがけない不利を受けて優勝できなかった。これはレースに付き物のアクシデント。安田騎手の優勝インタビューの時、回りの報道関係者から拍手が起きていた。これは非常に珍しい事だ。

 闘牛にも新しい風が吹こうとしている。そして、競馬にも。

 高田渡がCMで、「あー面倒だ」と恐らく四畳半で、歌っている。向かいの部屋の窓から2人が立って高田渡の方を観てギターとハーモニカを吹いている。僕はマニアじゃないから名前が判らない。CMディレクターが高田渡を聞いていた世代なのだろう。年を取っても高田渡節は相変わらずである。

 都議会員選挙はどうやら小泉純一郎人気で自民党が勝ちそうだ。

 23日の結果。 アリカンテ、ペピン・リリア、耳なし怪我。ビクトル・プエルト、耳1枚ともう1枚要求が2回。プエルタ・グランデ。アベジャン、耳なし。 レオン。ポンセ、耳1枚。フィニート、耳1枚が2回。エウヘニオ、耳2枚。3人ともプエルタ・グランデ。 ウティエル、ヘスリン、耳1枚が2回。カバジェーロ、バレラ、耳2枚、耳1枚。3人ともプエルタ・グランデ。 ソリア。アルミジータ、口笛。ルギジャーノ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。イバン・ビセンテ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。


 6月25日(月)

 スペインから帰ってきて乱れている部屋の片づけなどをして、会社に行った。そして帰りに紀伊国屋で風太郎の『ぜんぶ余録』を買ってきた。これは、『コレデオシマイ』 「いまわの際に言うべき一大事はなし。』 の風太郎のインタビュー三部作・完結編だ。未だ読んでいないが、97年9月撮影の風太郎の写真はあまりにも痩せている。風太郎もそろそろお呼びがかかっているようだ。僕が本を出す前に逝ってしまうかも知れない。

 だらだら、やってきたから風太郎は目が見えなくなってしまった。仮に出来たとしてももう読めない体になった。それでも焦るのではなく、良いものを作るためにやらなければならない。

 24日の結果。 マドリード。ラファエル・オルテガ、レオナルド・ベニテス、ルイス・マヌエル、耳なし。 バルセロナ。アルベルト・マヌエル、モリタ、耳なし。アルフォンソ・ロメロ、耳要求で場内1周が2回。 レオン。ホセリート、耳なし。ホセ・トマス、耳2枚が2回。プエルタ・グランデ。モランテ、耳1枚。 トロサ。ヘスリン、耳1枚。エウヘニオ、耳1枚。ファン・バウティスタ、場内1周、耳2枚。プエルタ・グランデ。 セゴビア。マヌエル・ベニティス“エル・コルドベス”耳なし。ビクトル・プエルト、口笛。エル・カリファ、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。 バダホス。ペピン・リリア、耳1枚。パディージャ、耳1枚、耳1枚と場内2周。プエルタ・グランデ。アントニオ・フェレーラ、耳1枚。


 6月26日(火)

 今日も暑かった。日が暮れると涼しい。これも梅雨が明けて本格的な夏が来れば涼しくなくなる。日本に帰ってきてから始めての火曜日。つまり、「プロジェクトX」の日だ。今日は立石電気の自動改札機開発の物語だった。当時小さな部品会社だった立石電気は社長の方針で研究室を作る。大学の研究室から引き抜かれた田中さんと、大手電機メーカーを辞めて来た高校での腕の良い設計士の浅田さんを中心にプロジェクトを作って社運を掛けて自動改札機の開発を始める。

 初めは定期券だけを通すものを作るが切符が詰まって使い物にならなかった。田中さんは行き詰まり家でグレン・ミラーを聴いていた。その時、オープンリールテープをヒントに切符の裏に磁気塗料を塗ったものを考える。製紙会社に行って話すが相手にされない。駅の通勤ラッシュを緩和するためには将来必ず必要になるはずです、と言って説得する。設計をやり直し、水で濡らしたくしゃくしゃの切符を機械に通すとちゃんと通った。しかし、新たな問題が出た。それは、切符が機械の中で詰まったのだ。定期券と切符の大きさは違うことから来ていた。

 今度は、浅田さんの仕事だった。夜遅くまで働いて家に帰ってくると妻が言った。子供がお父さんと遊びたがっているわよ。次の日曜日に釣りに出かけた。子供ははしゃいだ。そんなとき竹の葉が上流から流れてきた。石に当たって葉は縦に流れていった。それをヒントに改札機の入り口付近に独楽を着け切符の向けを変えることに成功してプロジェクトは成功する。そして、今は何処の駅にも自動改札機があるようになった。この開発でカードでお金をおろすATMが銀行などで使われるようになる。

 京都から通勤ラッシュに苦しんで会社を辞めようと思っていた浅田さんは開発の情熱を捧げ定年まで働いて色々は機械の開発をした。技術者たちの夢は形で残った。浅田さんは言う。苦しくなったこと、始めて機械を設置した時、駅に詰めて1日中立ちっぱなしだった新入社員の、「駅にこんなに立っているために会社に入ったんじゃありません。肉体的に限界です」という嘆願書をを見るのだという。それは当時上司だった田中さんを追い込んでしまったら大変だと思い嘆願書を書いて人の了解を取って自分の所で止めていたものだった。彼らのためにも、みんなのためにも良いものを作らなければ、と思ったそうだ。

 さっ、僕も明日から現場復帰。来年のためにも、これからのためにも仕事をしないと。

 25日の結果。 ブルゴス。パディージャ、耳1枚。バレラ、耳1枚。ヘスス・ミジャン、耳なし。 バダホス。エスパルタコ、耳1枚、耳2枚。プエルタ・グランデ。ホセリート、耳1枚。ヘスリン、耳1枚が2回。


 6月27日(水)

 今日は4時半に目が覚めた。そのせいなのか仕事をやって疲れているせいか非常に眠い。楽しみにしていた美味しいシジミの作り方を観れなかった。初日から残業だもんな。風呂に入って汗を流したら気持ちが良い。このまま眠りたい。僕の血を吸って睡眠の邪魔をするなよ。これで今朝起きたんだから。

 昨日の帝王賞はまたデザーモが勝った。あいつは凄い。前日アメリカでG1に騎乗して優勝。翌日地方とは言え日本でG1優勝。アメリカの名騎手は日本でも名騎手。オークスだって勝ったしな。デザーモを呼んだ藤沢調教師は、「彼には最低G1を1勝して欲しい」と言っていたが勝ち鞍も多かったし、内容も凄い。

 26日の結果。 アルヘシラス。エル・タト、耳なし。ミウラ、耳1枚。ヒル・ベルモンテ、耳なし。 バダホス。ポンセ、耳2枚。プエルタ・グランデ。ホセ・トマス、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。モランテ、耳なし。 ブルゴス。エスパルタコ、耳なし。ホセリート、耳2枚。プエルタ・グランデ。ホセ・イグナシオ・ラモス、耳1枚が2回。プエルタ・グランデ。


 6月28日(木)

 今日も暑かった。気象庁はこれだけ天気が続いても梅雨明け宣言をしていない。幼女誘拐殺人をした宮崎勤に第2審でも死刑判決が出た。麻原彰晃や宮崎勤などの世代が起こした事件辺りから日本の猟奇的な訳の分からない事件が増えてきたような気がする。

 バダホスでオルテガ・カノが牛を殺さずアビソ3回を浴びる。確か92年のダックス(フランス)だったと思うがアビソ3回を見たことがある。その時は牛が悪く、ファエナをせずにカジェホンの中で規定の15分が過ぎて観客が怒っていたのを思い出す。でも、ああ言う牛は出来ない。危なすぎるからだ。

 27日の結果。 アルヘシラス。カバジェーロ、エウヘニオ、アベジャン、耳なし。 バダホス。オルテガ・カノ、罵声、アビソ3回で罵声。フィニート、耳1枚。ペドゥリート・デ・ポルトゥガル、耳なし。 ブルゴス。オルドニェス、ホセ・トマス、耳なし。アントニオ・バレア、場内1周。 ソリア。エスパルタコ、耳なし。ポンセ、耳1枚。ビクトル・プエルト、耳なし。 


 6月29日(金)

 今日も暑かった。夜NHKにジュリーが出ていた。1曲目「ダーリング」。何だかダーリングと歌うところが昔と違う。伸びがないというか、音がそう言う風に聞こえないのだ。年だなぁ、と思った。「TOKIO」にしても「時の過ぎゆくままに」にしても「勝手にしやがれ」にしてもそう言う印象を受けた。

 今50いくつ。60になっても70になってもジュリーは歌っていくだろう。でも、いずれ息継ぎがしんどくなることが出てくるだろう。その時、ファンは何を思うのだろう。あれだけ強靱な声帯の持ち主も年にはかなわない。

 掲示板に書いてあった闘牛特集の雑誌を朝ネットで購入の申し込みをした。いつ届くのだろう。

 28日の結果。 アルバセーテ。ポンセ、カバジェーロ、エル・カリファ、耳1枚。 アルヘシラス。パディージャ、場内1周、耳1枚。ホセ・マリア・ソレル、耳なし。エル・ファンディ、場内1周、耳1枚。 ブルゴス。ルギジャーノ、耳なし。ヘスリン、フィニート、耳1枚。


 6月30日(土)

 今政治が面白い。そう思っている日本人が多いだろう。そう思わせているのが今訪米中の小泉純一郎首相だ。今まで構造改革に着手できずにいた自民党の中で危機感、正義感、信念を持って、「聖域なき改革」を断行しようとしている。

 日曜日の都議選では小泉人気で自民党は勝利した。都議選は夏にある参院選に直結すると言われているので自民党は大勝するかも知れない。これも前森首相がダメだったからこれだけの人気になったのだ。森首相は闘牛士で言えば、エル・タトだ。クルサードできず足を止めたパセが出来ない。パセの時腰が揺れ、観客はそれを見て嘲笑する。現実という牛に対して何一つまともに対応しなかった。

 小泉首相は、それとは正反対。クルサードして足を止めたパセをテンプラールで通し、牛をマンダールしている。観客はその闘牛に熱中して喝采を送っている。それは正しい。だが、ファエナは始まったばかりだ。今まで自民党に投票したことがないし、恐らくこれからも投票はしないと思う。が、小泉首相にはこれからもちゃんとした政策を続けて欲しい。

 NHKでは、政府の大臣たちが出て政策を話していた。石原慎太郎も出ていた。彼は小泉首相のことを「純ちゃん」と呼んでいた。小泉政権に期待を持っているが盲信はしない。これは僕の今のスタンスだ。

 29日の結果。 アルヘシラス。ポンセ、フィニート、耳なし。エル・フリ、耳1枚。 ブルゴス。カバジェーロ、耳1枚。モランテ、口笛。エウヘニオ、耳なし。 セゴビア。ホセリート、ホセ・トマス、アベジャン、耳1枚。


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