断腸亭日常日記 2002年 その15

−−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  −−バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で−−

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年のスペイン滞在日記です。

99年1月13日〜2月16日 2月19日〜4月14日 4月15日〜5月11日 5月12日〜6月4日
6月7日〜6月10日 6月13日〜7月9日 7月11日〜8月8日 8月9日〜9月9日
9月12日〜10月7日 10月10日〜11月10日 11月14日〜11月28日 12月12日〜12月31日
2000年1月1日〜15日 1月16日〜1月31日 2月1日〜2月28日 3月2日〜3月29日
4月2日〜4月19日 4月20日〜4月29日 5月1日〜5月14日 5月15日〜5月31日
6月1日〜6月15日 6月16日〜6月29日 6月30日〜7月15日 7月17日〜7月31日
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4月16日から4月30日 5月1日〜5月15日 5月16〜5月31日 6月1日〜6月13日
6月15日〜6月30日 7月1日〜7月15日 7月16日〜7月31日 8月1日〜8月15日
8月16日〜8月31日 9月1日〜9月15日 9月16日〜9月30日 10月1日〜10月15日

 10月16日(水)

 闘牛の会のことは、また後で書くことにする。北朝鮮に拉致された人たちが15日日本に帰ってきた。ニュースはそればっかりだ。色々な疑問が出てきてるようだ。北朝鮮政府や赤軍派などが複雑に絡んで話をややこしくしているのだろう。

 黄金の中盤を中心に日本はジャマイカと戦った。2日間の練習でトルシエややっていたサッカーと全然違った。楽しいサッカー。高原はアシストを決めたが目立たなかった。鈴木はボールと良く絡んで良いパスも出していたが、フィニッシュがダメだ。柳沢が入って雰囲気が変わったのは良かった。中田、中村、小野、稲本の中盤は初戦にしてはまあまあだったが、これからに期待を持たせるものだった。試合を経験すれば中盤のプレス、ディフェンスとフォワードとの連携がもっと機能していくだろう。満足ではないがこんなものだろう。次回アルゼンチン戦には黄金の中盤は出場できないだろう。その時、小笠原、三都主、中田浩二、名波、福西がどういうプレーを出来るか、それも楽しみだ。

 最近買った本を読んでいない。少しずつ読んでいかないとまた注文を出した本が来るのでドンドンたまっていくことになる。

 山田風太郎 『戦中派焼け跡日記』 を読む。

 明日、ビエント・オトニャールのイベントのお知らせを開こうと思う。

 フリ、カバジェーロ、ホセリートのクアドリージャが替わるようだ。

 15日の結果。 アビラ。イガレス、エンカボ、耳1枚。セラフィン・マリン、耳なし。


 10月17日(木)

 家からキムチ3種類とイカのキムチ漬け、塩ウニが送られてきた。それを中心に食べている。「今夜のご注文はどっち」 は、ユッケジャンクッパだった。美味いキムチは甘さがある。辛いだけならその辺にある。口の中が辛くなってきて、美味いキムチを食べると甘みが口に広がりさわやかな気分になる。盛岡は冷麺で有名だが、韓国、朝鮮人が市場で美味しいキムチを売っている。そして、ヨーグルトにジャムを入れて食べ、アイスクリームもデザートして食べ、最後にキムチと一緒に送ってきたマンコを食べる。これがまた美味い。

 マンコ。これは方言でこう言うが、漢字で書けば、満紅(まんこう)である。東京では紅玉というリンゴのことだ。向こうは寒いので口を開けないで喋るので満紅がマンコになった。東京でこんな事言ったらいやらしく思われるが、方言でマンコはリンゴの代名詞にもなっている。家族団欒で、「マンコ食か」 「食(く)」と、マンコという言葉が日常の中になじんで使われるのだ。だからマンコという言葉の響きには、いやらしさは一切感じない。美味しいと感じるだけだ。これが僕の、マンコに対する言語感覚というやつだ。それじゃ、東京で言うマンコを意味する言葉は何というかと言えば、寺山修司も言っているが、ヘッペ と言う。この言葉は、音の響きもそうだがいやらしさを感じる。

 北朝鮮の核開発をやっていることを認めた。拉致被害者が帰国している時期にこのニュースが発表されたのはどう言うことなのだろうか。

 16日、ハエン、アビラの闘牛は雨で中止になった。


 10月18日(金)

 「寺山が最後に公の場に姿を現したのは、(昭和)58年4月18日だった。前日、中山競馬場に皐月賞を見に行き、夜ドイツ映画祭の公演を行う。翌日は横浜での公演の記者会見を行った。19日から発熱、22日に意識を失い、そのまま1度も目覚めることなく、5月4日に河北総合病院で息をひきとった。」 ーー『知識人99人の死に方』 監修 荒俣宏 角川文庫 寺山修司の章よりーー

 中山競馬場に行ったのは、大好きだった吉永正人騎手がミスターシービーに騎乗して牡馬3冠レース第1弾にのぞんだからだった。寡黙な吉永を寺山は愛した。妻としに別れ、後妻には競馬記者をやっていたみちこを貰って、少しは明るくなっていた。逃げ馬の両親(父、トーショーボーイ。母、シービークィーン。)から生まれた、後方一気に直線牛蒡抜きするミスターシービーと鞍上、吉永正人。寺山修司の予想は、その両親の思い出を語り、勝のはミスターシービー。と、語った。

 ミスターシービーは、皐月賞、ダービーを勝って、3冠最後のレース、菊花賞のトライアルで負けた。それでも本番、菊花賞では1番人気になって、いっては行けないコーナーの坂でスパートして3冠を手に入れた。ミスターシービーと吉永正人の勇姿を寺山は天国からしか観ることが出来なかったのだ。

 今年の菊花賞の枠順が発表になった。ダービー馬は故障で引退して皐月賞馬がおそらく1番人気になるだろう。ノーリーズンと武豊。何の思い入れもないけどノーリーズンとローエングリンしか頭に浮かばない。しかし、寺山みたいに競馬場とか闘牛場とかに出かけてからでないと死んでも死にきれないような気がする。

 『知識人99人の死に方』 監修 荒俣宏 角川文庫 の様な本が出るのも、山田風太郎の、『人間臨終図巻』 があるからなんだろうなぁ。余談だが、ネット、オークションで山田風太郎 『忍法相伝73』 が、2万5百円で落札された。異常な値段だ。今年の秋競馬は、強い馬が勝つ。

 17日の結果。 ハエン。フィニート、耳1枚、耳要求。モランテ、耳1枚が2回。アレハンドロ・アマジャ、耳要求で場内1周。


 10月19日(土)

 遂に念願だった、『別冊新評 山田風太郎の世界』 を買うことが出きる。古本屋から連絡があって後は入金をすればいいのだ。高い買いものになるがコピーするより大事にするだろう。風太郎の資料としては非常に重要なものだ。TAKEさんに貸していた、『紙上で夢見る』 上野昂志著 をTAKEさんは面白いと言っていた。僕が今読み進めようとしているのは、太平洋戦争前後だ。風太郎の日記やその他のものを読んでいくと、日本の何かかが判ってくるような気がしている。

 『知識人99人の死に方』 を読む。

 18日の結果。 ハエン。ファン・モラ、耳なし。ポンセ、耳2枚(ニーニョ・デ・ラ・カペア牧場の牛、場内1周)、耳1枚。フィニート、耳2枚。


 10月20日(日)

 京大の霊長類研究所、日本モンキーセンターのいわゆるサル学研究の基礎を作った今西錦司が同性愛者であったことが、『知識人99人の死に方』 に載っていた。しかしその進化論鋭さは、観察者としても凄さに裏打ちされたものだったことが書かれてあった。この人がいなかったら、いわゆる個体識別の方法など日本独特の方法が生まれなかったし、サル学がこれほど発達しなかった。感動的な学者だった。

 ヨーロッパに帰った小野は先発フル出場したが引き分け。アジアUー20でインドを2−1で下し決勝トーナメント進出を決めた。

 19日の結果。 ハエン。ポンセ、耳1枚が2回。コルドベス、耳2枚、耳1枚。ファンディ、耳2枚。


 10月21日(月)

 熟した柿が道に落ちる季節になった。雨が夕方まで降りその中を古本屋まで出かけて、『別冊新評 山田風太郎の世界』 を買い求む。上野昂志が、前田愛と対談をやっていた。写真が載っていて、上野さんの顔を久しぶりに観た。上野さんは上野さんだった。この本は本当に凄い。1979年の時点で出来うる最良最高の風太郎研究の資料だ。昭和22年の風太郎の日記を、「わが推理小説零年」と題して載っているし、伊藤昭がインタビューをした、「今度は明石大佐が主人公ですぞ!」。風太郎のエッセイ集の中には、「自分用年表」などあり。

 風太郎との付き合いのあった人たちが記したものでは、「教師生活十ヶ月と山田君」奈良本辰也、「三軒茶屋の頃」色川武大(阿佐田哲也)。「鬼才に望む」高木彬光。「爽快な敗北感」種村季弘。「異形の人」中島貞夫。風太郎論の出筆者は松山俊太郎、中島河太郎、笠原伸夫、保坂正康、松岡正剛、橋本治、草森紳一、平岡正明、宅和宏、高取英、岸田理生、早川芳子。小辞典として伊藤昭が、「忍者人名録」 「明治年代記」 を書いている。この人がいわゆる、“山風”の名付け親なのか、山風 と書いている。

 他資料として、中島河太郎編で、「年譜・作品目録」 「著書目録」 「参考文献目録」 が載ってある。この本を熟読した風太郎ファンの少年が後に中島河太郎編の、「年譜・作品目録」 「著書目録」 を調べ直し、書き換えて光文社文庫などから多くの埋もれていた風太郎作品を出版させる名編集者、日下三蔵氏である。

 ベンタスは見習い闘牛で最後、ハエンは騎馬闘牛で最後だった。スペインの闘牛シーズンはこれで終わり来年まで待たなければならない。

 20日の結果。 ウエスカル・オベラ。パディージャ、耳1枚、耳2枚。エンカボ、耳2枚。ファンディ、耳1枚、耳2枚と尻尾1つ。


 10月22日(火)

 朝夕、秋という季節が体に浸みるようになってきた。今週は天皇賞。武の落馬は頭に来た。岡部も乗り方が悪かった。今度は勝てると思うけど。データも調べて天皇賞に望もう。


 10月23日(水)

 人の死とは色々なものがあるものだ。山田風太郎の、『人間臨終図巻』 を読んだときもそう思ったが、『知識人99人の死に方』 の中に書いてある印象的な死もまた、面白い。石川淳は、毎日600gの牛肉を食べ、1日200本の煙草を吸っていた。肺ガンによる呼吸不全で死ぬのだが、「死の瞬間、石川の手はタバコを吸うかたちで唇に添えられていたという。したいことはすべてし尽くして、もし残る思いがあるとするなら、最後の一服ができなかったことくらいかもしれない。」

 好きなことをやって、死ぬときに好きな煙草をする仕草をしたというのは尊敬に値する死に方だ。偉い!いやー、こうありたいものだ人間。ここまでして国家のことを考えていたのだ。何故って煙草買うと税金払うからさ。

 そして、白眉は稲垣足穂。これは笑える。読んでいてくすくす笑いが爆笑になってしまった。

 「 『少年愛の美学』 で足穂は昭和44年、第1回日本文学大賞を受賞して一気にメジャーな存在になるのだが、その時のコメントが、
「選考委員に感謝の念なんておきませんよ。アイツらもよくここまできたなァという感じですな。まあ、川端を選んだノーベル賞委員よりイナガキタルホを選んだ日本の委員の方がエライ!ノーベル賞もメーテルリンクのころはよかったけどチャーチル以降は信用せんね」
 とまずぶちかましたあと、
「小林秀雄なんてのはニセ者だ。いうなりゃテキ屋、夜店のアセチレンのニオイがしてます。川端は千代紙細工、石川淳なんてコワもてしてるけどなにいっているかサッパリわからん。漱石、鴎外は書生文学、露伴は学者、荷風は三味線ひきだよ。スネもんでね。そこが少し面白い。三島?ヤリ手だナ。アバれるところはなかなかいいよ。ケンランたる作品が多いけどドキッとするものがないや。新しいところでは吉行、安岡なんてのはもたれ合いでマスかいているようなもんだ。吉行は才能あるけどネ。小松左京ってのはオモロイやっちゃ。ボクのことタルガキホタルなんて書きよって、大江健三郎、あいつはゲイみたいなところがある。一種の知的ゲイだ。裏門あけっぱなし、自分のものはなんにもない。」(週刊文春S44・4・14)
 もう文壇バーの泥酔ジジイ状態である。最高だね。当たってるところもあるし。「がんばって生きてきた甲斐がありました、みなさんありがとう」なんて口が裂けてもいわないとこが、実に偉い!ヘソが曲がってるどころか、背中かお尻にあるんじゃないかというくらい、堂々たるヘンコぶりである。受賞をいちばん強く推した選考委員は三島由紀夫なのにね。
 芸術はダダ以降でなければ問題にならないと口癖のように言うから、折目博子が「シュールレアリズムというと、アンドレ・ブルトンなんかからですか」
 と問えば、
「アンドレ・ブルトンなんて駄目だ。オブジェということが解っていない。アンヌさん(折目氏の愛称)、僕はライプニッツとか、カントとか、ショーペンハウエルなんか好きですよ。レオナルド・ダ・ヴィンチなんていうのは偉い。芸術は人を救わなければ嘘ですよ。しかし、ピカソなんか、ぼくに云わせりゃ三文人情派だ。チャップリンと同じで甘い」
 と来るし、昭和47年に伏見桃山の家が火事になったときには、避難したとなりの家でウイスキーを呷(あお)りながら、お見舞いに駆けつけた人たちに「家は焼けるもの、人間は死ぬものと決まっている」と怒鳴りつけたりする。
 ほんと、やなヤツだ。
   (中略)
 書肆(しょし)ユリイカの創始者伊達得夫に「五十人の不良少女の面倒を見るより稲垣足穂の世話をしたほうが、日本のためになりますよ」と言われて、なるほど結婚してしまった京都の児童福祉司、篠崎志代さんに大亭主関白よろしく世話をさせたあげく、ほかの女は平気で家に上げるわ、何日も女の家に泊まったあげくからだ中に口紅の跡をつけて帰ってくるわ、志代さんが子宮ガンの後遺症でおなかが痛いと顔をしかめればメシがまずくなるからほかの部屋へ行けと言うし、入院しても一度も見舞いに来なければ、死んでお棺が帰ってきたその横で、
「あれは人の心の少しも解らぬ、外面的なことだけしか興味のない女だった。男が黙ってじっと一人でいるような気持ちを少しも理解しなかった。自分はこの結婚は失敗だったと思っている。三ヶ月も入院し、家には小さい子供二人、猫二匹残して先に死んで、やかましくてたまらなぬ」
 などと、周囲のものがいたたまれなくなる調子で罵倒するのである。自分のために尽くして、尽くし疲れて死んでいった妻に、普通そこまで言うか?
 稲垣足穂でなかったら、単なるファックオフじじいである。

 これだけやなヤツに、どうしてあんなに美しい文章が書けたのだろう。彼はいったい、自分がこんなに“人から嫌われる”タイプの人間だと、はたして自覚していただろうか。それとも純真無垢なアーティスト神話の例にならって、そんな形而下(けいじか)の瑣末(さまつ)事は気にもとめず、創作に没入していたのだろうか。  」  ーー『知識人99人の死に方』 稲垣足穂より 文、都筑響一 ーー

 この都筑響一の文章で爆笑した。こんな話は笑うしかない。小説にしたら面白いだろうなぁ。実際にはとんでもなく嫌なヤツ。文中に出てくる折目博子。彼女が書いた、『虚空 稲垣足穂』 (昭和55年、六興出版)は今、絶版になっている。読んでみたくなる本だ。

 拉致被害者の蓮池さんを友人が永住帰国するように進め、この際に5時間に及ぶ口論になった。蓮池さんは、「おれの24年を無駄にしろと言うのか」と、言ったそうだ。友人たちは良かれと思って話をしたようだが、好きな人と結婚して幸せに暮らしている人に対して余計なお世話だと思う。蓮池さんの心情を踏みにじる言い方だと思う。そうやって、蓮池さんを苦しめようとしている友人をどうしようもない奴らだを思ってしまう。


 10月24日(木)

 昼食を片山先生と共に取る。まあ面白かった。何を話したいというテーマがいくつかあったが、聞いてみたかったことが最低2つか3つあった。2人とも煙草1箱以上吸い食事を挟んで長い間話をした。僕の闘牛は、肉体をテーマにしている。これは今まで観ていた闘牛がそうだから変えようがない。が、最後の部分で解らなくなってきたというか、迷っていたことがある。それを自分の中でどう処理すればいいのか、考えていたのだ。その答えのヒントのようなものを、片山先生から今日貰ったような気がする。イヤそれが答えなのかも知れない。

 それはメンタルのことだ。スポーツ選手がよく、みんなの気持ちがゴールに結びついた。とか、サヨナラヒットに繋がった。というような言い方をする。僕の根本的な疑問は、何度となく、何時間となく、長い間肉体を鍛え、練習してきて、気持ちだとか、精神力だけを強調するようなコメントの真意も解らなければ、意味も理解できないし、そういう解釈は、肉体に反すると思うから容認できないと思い続けてきた。

 先生は言った。同じように肉体の訓練をして技を修得した者同士の対決は、それを越えるものが必要とされる。呼吸法や少ない動きでかわす、自然体を身に着けているか。型(かた)に血を入れる。血を入れるから形(かたち)になる。気に血を入れるから、気持ちになる。息という言葉は、昔は、い気(い、という漢字は、命に繋がっていたから生きるという字を書いたような気がしたと、言っていた)と書いた。意識と体を繋げるものが、“血”なのだと。

 先生が読んだ武道の本にそんなことが書いてあったと言っていた。肉体は、あくまでも肉体で完結して貰わないことには駄目である。そういう肉体の宿命を書きたいのだ。


 10月25日(金)

 突然、政府は拉致被害者を北朝鮮に帰さないと発表した。家族から要請を考慮したためだという。この問題はどうなるのだろう。片山先生風に言えば、個人的な問題から政治的な問題になって拉致被害者の意志が反映されないことも出てくる状況になってきたようだ。

 闘牛ニュースもメデジンのカルテルなど発表になっている。ラス・ベンタスも入札をやっているようだし、色々載せた方がいいものがあるが時間とその気がない。


 10月26日(土)

 モスクワの劇場で800人以上人質を取って立てこもっていた、チェチェンの独立派武装グループが人質を殺し始めると、ロシア政府は特殊部隊を突入させ制圧した。人質67人が死亡、独立派武装グループ30人以上を殺害し、人質を解放した。突入の際に睡眠ガスが使用された。プーチン大統領は、独立派武装グループとアル・カーイダとの関連を指摘してテロを非難していた。

 一方、石井紘基、衆議院議員刺殺事件が起き、議員事務所に出入りしていた右翼の男を捜索していたが、事件翌日の今日の朝、警視庁に出頭逮捕された。右翼といっても思想的なもので暗殺ではなく、金銭に関することで刺殺だったようだ。あまりに動機が馬鹿馬鹿しい。ダメな男の逆恨み的な殺人事件だったようだ。犯人は、3年間家賃を滞納しそれで金を貸せ、または、金をくれと言う要求を拒否されたための犯行の模様。しかし、右翼を名のる男が、そんなことで国会議員を殺すか。イヤ、人を殺すか。

 スワンSは、1番人気のモノポライザーが負け、勝ったのは、なんとなんとあのショウナンカンプだった。ゼンノエルシドもゴッドオブチャンスもダメ。惚れていた馬が復活すると嬉しい。こうなりゃーマイルチャンピオンに出てくるのか?今日の雨は、明日の天皇賞への影響は少ないだろう。


 10月27日(日)

 何が勝か?6頭のG1馬が出走する。ただし、屈腱炎で1年7ヶ月明けアグネスフライト。調子を崩して休養、鉄砲で向かえるエアシャカール。前走の復帰戦マイナス18キロで馬体が涸れたダンツフレーム。この3頭はそれなりに人気になるだろうがお客さん。心情的に、素質を買って本命は、シンボリクリスエス。前走の神戸新聞杯のレースぶりにスピード競馬にも対応できる可能性を観た。心配は、3歳馬で古馬と対戦していないこと。未だ、G1を勝っていないこと。それらの不利を素質で補ってくれそうな気がする。

 対抗は、唯一の牝馬、テイエムオーシャン。古馬になって大きくなった。落ち着きも出てレースがしやすくなった。何よりスピードがある。この馬が勝つかもしれない。その次が、エイシンプレストン。距離もコース適性も良いだろう。馬は良いが騎手がちょっと心配。そして、最内枠を引いたナリタトップロード。例年東京開催の天皇賞・秋が、中山開催。それが、どう出るか。スタートして直線が続くコースだから、東京のようにごちゃつく心配がない。1コーナーまでに馬群が形成され、3,4コーナーでどう動くか。最後の直線でどの馬が踏ん張りが効くのか。

 人気が割れて馬連の最低配当が14倍以上。これは当てたいレースだ。

 フェルナンド・ロブレニョがウニコで耳3枚を切った。


 10月28日(月)

 第126回天皇賞(秋)は、中山競馬場で行われ 1分58.5秒 のレコードタイで3歳馬、シンボリクリスエスが優勝。2着が6歳馬、ナリタトップロード、3着サンライズペガサス。優勝馬の藤沢調教師は、バブルガムフェロー以来2頭目の3歳の天皇賞馬を出した。鞍上の岡部幸雄は53歳11ヶ月(今月30日が誕生日)でG1最年長記録を更新しG1、31勝目を記録した。岡部、藤沢、シンボリ牧場のシンボリルドルフ以来続くラインが3歳馬、対古馬初挑戦で天皇賞の栄冠を獲得した。

 新聞は絶賛している。当然である。レースは、上手くスタートを切ったクリスエスが好位の内で折り合う。鼻を切ったのはゴーステディ。1000m 59.3秒で通過。このメンバーなら遅いくらいのペースだった。それぞれの騎手の騎乗について少し書く。向正面で追走する各馬の上でエイシンの福永はタズナ位置は良いが肘から先を動かしている。武豊のタズナの位置は高すぎる。もう少し低い方が理想。それと肘から先を動かし過ぎ。特に非道いと思ったのは手首を動かしていることだ。向正面で追走する時は、馬を楽に走らせなければならないのにこれじゃ馬が行く気になる。藤田もいまいち。

 その点岡部は、タズナの位置も完璧に近いし肘もタズナも動かしていない。横山典弘も良い。ペリエも同じ。馬の動きにタズナの動きに併せているだけだ。3コーナーで他の馬が動き出してもジッと我慢。直線で壁が出来開くまで待って追い出して抜け出してくる。4コーナーを廻るとき武豊は岡部の馬の後ろに着けた。岡部の後ろに着ければ抜け出せることを知っているのだ。

 シンボリクリスエスは坂下から壁が開くと抜けてくる。鞭が入るとちょっとよれていたが、これは通称“イタイタ”という口向き矯正馬具を着けているからそういうこともあるのだろう。それと、体が本当の意味で未だ出来ていないのかも知れない。それでも、歴戦の古馬を相手に完勝したのだから物凄い。JCも楽しみだ。

 フジTVの解説、井崎修五郎は、「G1を勝っていない3歳馬で古馬に挑戦することは無謀。見極めたことが凄いね。藤沢調教師にとってはこの馬はG1だったんだね」というようなコメントを発した。ゲストで来ていた小島太調教師は、「こうれあもう調教師の考えも当たりましたし、何と言ってもこの馬自身も凄いですけれども、やっぱりジョッキーですね。岡部ジョッキーに脱帽ですね。もう本当に震えが来る感じだったですね。3コーナー4コーナーでみんなが仕掛けて動いていくときに彼だけがジッと動かないで辛抱していた。あーと思ったですね。」と大絶賛。

 サンケイスポーツで柴田政人調教師は、「中山の2000メートルは折り合いに心配がなく好位を進めるのが理想。秋の天皇賞でそうした競馬が最もしやすい馬はシンボリクリスエスだろうと思っていたら、岡部幸雄がまさに理想の競馬をそのままやってのけた。見ていて、「さすが岡部!」と感嘆したほどだ。前に壁を作って好位のインで折り合わせたこと、みんなが外から動き出したときも我慢したこと、直線で前が開くのを待って抜け出したこと、すべてが理想的だった。直線に向いても岡部の手が動かなかったのは、必ず前が開くと信じていたから。我慢できたのは、それまでの過程に無駄がなく、一瞬でも前が開けば抜け出せると決め手を温存していると岡部が信じていたからにほかならない。中山二千に最も適した馬による勝利といえる。」と、書いていた。

 政人のコメントに対しての補足。政人は、「一瞬でも前が開けば抜け出せると決め手を温存していると岡部が信じていたから」と言っているが、岡部のコメントは、直線に向いても追い出さなかったことについて、「手応えがあった」と証言している。この肉体感覚が重要だ。信じるという信仰ではなく、手応えがあったと言う、現実感覚、肉体感覚が重要なのだ。

 改めて思うことだが岡部幸雄は超1流だ。理想的な競馬が出来る偉大な騎手だ。競馬界のホセ・トマスだ。解らないヤツは武豊で良い。

 日曜日の楽しみは、競馬の他に新聞の書評。今週は毎日新聞に島森路子がノーム・チョムスキー著、『チョムスキー、世界を語る』と、『ノーム・チョムスキー』(映画公式カタログ)を紹介していた。2001年9月11日以降アメリカはテロに対して全面戦争宣言をしてアメリカ国民の圧倒的な支持を得る。復讐に燃えるアメリカ。そんな中でノーム・チョムスキーは異議を唱える。紀伊国屋で買ってきたのは島森女史推薦の本ではなく、『9.11』(アメリカに報復する資格はない!)。

 目次を書いておく。第1章 真珠湾と対比するのは誤り 第2章 ブッシュ政権が取るべき方法 第3章 なぜ、世界貿易センタービルか 第4章 アメリカは「テロ国家の親玉」だ 第5章 ビンラディンの「罠」 第6章 これは「文明の衝突」ではない 第7章 世界に「明日」はあるか

 ノーム・チョムスキーの考え方にある重要なものは、世論や時代の気分に身を任せるな。自分自身のものの見方を身に着けなさいと言うことだろう。彼は反体制と言われているらしい。が、アメリカ知識人の良心と言った方が良いのかも知れない。間違っていると思ったときには、周りが何と言おうと、違うのではないかと異議を唱える。正義とは何なのかを語りかける。そう言う人だ。

 俺は気分として反体制。だから巨人が嫌いだし、人気の面から言って武豊は体制。フリも同じ(ただし技術的には落ちる)。だから嫌いだ。ホセ・トマスの闘牛は、正しいことを危険を省みずやる。だから正義の闘牛なのだ。その意味では、岡部幸雄とホセ・トマスは似ている。そして、このノーム・チョムスキーもまた、アメリカ知識人のホセ・トマスなのだ。因みに、競馬や闘牛を観ると言うことは、自分の物の見方を養い身に着けると言うことなのだと、思っている。


 10月29日(火)

 モスクワの劇場で人質を解放したときに使用した特殊ガスで、人質が多数死亡した模様だ。これは条約に明記されている使用してはいけない化学兵器だった可能性が出てきたようだ。

 今日盛岡では雪が降った模様。これからドンドン寒くなっていくのだろう。

 日本、アメリカ、韓国の首脳が交渉をした。また、日本と北朝鮮も交渉をする。国連の機関が、今後1年間で北朝鮮の食料が55万トン不足すると調査を発表した。


 10月30日(水)

 「クローズアップ現代」で、ヨーグルトのことをやっていた。僕はある番組を見て殆ど毎日ヨーグルトを食べるようにしているから興味がそそられた。冒頭であったカスピ海ヨーグルトというものを食べてみたいと思った。食品会社は、乳酸菌の研究をして体に良いと言われる効能を探し、それを前面に押し出して販促計画を立てているのだそうだ。一時期はヨーグルトの売り上げは低迷して今は1100億円市場になったのだという。それは、乳酸菌の効果をパッケージに印刷したりいた事もあるらしいが、健康ブームや、病気やアトピー性皮膚炎などの人がヨーグルトを食べて治った記事を雑誌で特集記事に組んで貰って口コミで広がっていったのがこのヨーグルトブームになったのだそうだ。

 色々なヨーグルトから自分の体にあったヨーグルトを食べるのが良い。物によっては下痢したりする物がある。それは自分の体に合わないからだ。

 『9.11』(アメリカに報復する資格はない!)ノーム・チョムスキー著を読む。


 10月31日(木)

 イスラエルのシャロン政権が崩壊の危機になるのだそうだ。連立を組んでいた労働党が離脱して、議会で過半数を割ってしまった。とんでもないことばかりやっているからこう言うことになったのか知らない。来週には、議会がシャロン政権不信任案を提出するという。イスラエルは少しはおとなしくなるのかな。「戦争の親玉」=アメリカがバックに付いている、ゴロツキのように好きかってしてきたイスラエル。そろそろ、我が儘ばかり言っていられなくなるだろう。因みにノーム・チョムスキーはユダヤ人だが、中東のことについてもイスラエルよりな考え方は一切していない。徹底しているのだ。

 東京青山にある同潤会アパートを取り壊し再開発をするのだそうだ。設計は安藤忠夫。江戸川乱歩の時代の産物だ。97年、「水の波紋」展の会場にもなった。あの辺は良い雰囲気があるんだけどなぁ。


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