断腸亭日常日記 2019年 7月8月

--バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

por 斎藤祐司


 7月26日(金) 晴 8247

 朝の散歩の時はそれほどでもなかったが、昼前にはもう暑くなっている。南では台風が発生して今日の夕方にから夜にかけて、東海では雨が強くなるという。土曜日には、熱帯低気圧になる模様。予報では、土曜の夕方は雨は降らないようだ。昨日行けなかった、床屋へ行ってきた。スペイン行く前にも床屋に行ったが、その時は、ほぼ坊主。今日も短くといったら、同じ感じになった。ほぼ坊主に毛の生えた程度の違い。床屋に着いてさあという時に、会社から電話。8月から現場が変わるのだが、ついでに休みたいと要望をいった。理由は前回と同じと伝えた。7月中は仕事。8月9月は休んで細雪。

 琳派の江戸後期に、酒井抱一がいる。とにかく、尾形光琳が大好きな人で、弟子の鈴木其一と仲が良くて光琳の研究をしていたようだ。『風神雷神図』は、光琳のオリジナルだと思っていたようだ。もちろん、オリジナルは、俵屋宗達である。おそらく、三十三間堂の両端にある風神雷神像をモデルにして宗達が描いたのが、『風神雷神図』だ。

 抱一の『夏秋草図屏風』。『江戸あばんぎゃるど』の中で、大阪大学、奥平俊六教授は、「彼が雨と風を描いている。非常にしゃれた作品なんです」「これは、こっちから風が吹いているんですよ。こう風が吹き上がっている感じがあります。そこの、要するに、蔦の紅葉したやつが飛びあがっているんですよ。だから風なんです。でこっちは、雨が降って、ずっとその草のそれが、少しずつしな垂れているのは、雨なんですよ。雨も風も目に見えない。でもそれを、描いて見せようとしてるんです」「西洋絵画を、凄く見慣れていて、その世界で物を見ているならば、あの背景がないっていうこと自体に、不安感を抱くんですよね。でも要するに、そっからも自由なんですよね。最初から。だから西洋の考え方、その思い込み、刷り込みみたいなものが、たぶんどっかで捨てないと、ちゃんとは見えてこない」

 何か判ったような、判らないような説明だ。NHKの編集方法に問題があるからなのか?しかし、『奇想の図譜』の中で、辻惟雄が書いている物を読めばすっきりする。『夏秋草図屏風』は、光琳の『風神雷神図』を模写した屏風の裏側に描かれてあったもので、それで、風と雨が描かれているといわれると、腑に落ちるのだ。抱一の意図は、そういう形で表現されている訳かと、解る訳である。ガッテン、ガッテン!

 暑さ増す 汗に染み入る 蝉の声  風吟


 7月27日(土) 雨/晴 10222

 朝の散歩は涼しい。雨も上がって心地よかったが、やっぱり、最後は汗をかく。これが午後とかだと、びっしょりになるだろう。こっちは、散歩だが、走っている人もいる。高校の時のクラブ活動を思い出す。カンカン照りの中を、よく走っていたと思う。今は、そんな気にはならない。その時間に歩くのだって、遠慮したい。

 大変なことになっている。リーガ前のインターナショナル・チャンピオンズ・カップで、アトレティコ・デ・マドリード対レアル・マドリードは、前半だけで5-0と大量リード。ディエゴ・コスタがハットトリック。ジタンのレアルは守備崩壊状態でメロメロ。これでは、リーガに暗雲が立ち込める。アトレティコは、胸を張ってリーガに臨めるだろう。グリーズマンがバルサへ移籍した影響を感じさせない破壊力を発揮した。新加入のジョアン・フェリックスが、完全に噛み合っているようだ。ディエゴ・コスタがチームメイトへのラフプレーに怒り、足に行ったのはご愛敬。仕方ない退場だ。ラフプレーをしたカルバハルも退場。7-3でアトレティコの圧勝。アトレティコは、明るいが、レアルは深刻な状態だ。久保も良いシュートを打っていたが、噛み合っているかどうかは、レアルのチーム状況の悪さと、ダイジェストだけなので判らない。

 これから、馬場でスペイン闘牛ビデオ上映会(斎藤の会)へ行く。突然体調を崩したと、連絡があった人がいる。高齢だとこの時期、辛いものがあるのだと思う。ここ数日気温が高いのも影響しているのだろう。


 7月28日(日) 晴 10283

 昨日のスペイン闘牛ビデオ上映会(斎藤の会)は、少人数で開催した。今年のサン・イシドロから5月22日のロカ・レイ、24日のダビ・デ・ミランダ、6月1日アントニオ・フェレーラのファエナ2つ、2日のディエゴ・ベントゥラ手綱を取った両手打ちのバンデリージャ打ち、8日のパブロ・エルモーソ・デ・メンドーサ、15日のパコ・ウレニャ。ディエゴ・ベントゥラの場面以外は、全てプエルタ・グランデ。アントニオ・フェレーラの初めのファエナがサン・イシドロのメホール・ファエナ。パコ・ウレニャがトゥリウンファドール。

 2部は、6月22日のホセ・トマス3つのファエナ。この落ち着きはなんなんだろうという人がいた。無駄なことをはぶいて牛と対峙する。パセが体の近くを通るのはもちろん、牛が危ない状態になっていても慌てない。怖いはずなのに、体を動かさずムレタの動きで牛を交わす冷静さ。サン・イシドロで、プエルタ・グランデした闘牛士たちの全ての要素が入っている。ないのは、ダビ・デ・ミランダの初々しさだけ。ロカ・レイの斬新さ、ダビ・デ・ミランダのパセの近さ、フェレーラのムレタのなめらさも、インスピレーションも、パコ・ウレニャの感動や歓喜も、全ての要素が入っているし、それを上回るような細部があった。そして、テンプラールも素晴らしかった。牛を良く観ているからだし、牛の動きを把握しているから出来る闘牛だった。

 来た人全員にプリントアウトしたものを渡して、読んだ感想を送って貰うように頼んだ。終わった後少し話をして、あとは、THさんのお父さんと飲みに行った。野間記念館とかいう処があって、明治・大正時代の日本画家に12か月の絵を描いて物を展示しているという。6月で多かったのは、つばめだという。5月が燕子花ではなく、菖蒲。ショウブという音もいいのかもしれない。今の我々の感覚とは違う12か月が、江戸時代をまだ引きずっている戦前までの時期はあるという。そうなのかもしれないと思った。ちょっと観てみたいと思った。季節の花鳥や色というものを、感じて生きるというのは、画家としての感覚もあるのだろうが、日本人としての感覚として染み付いているものがあるのだという事のようだ。そういうものって、馬鹿に出来ない重要なものだと思う。他にも構想なども話した。あとは、調べるのと書くこと。夢が膨らむ。9月ホセ・トマスが出ないことを祈る。出たら行くだろうから、益々時間が足りなくなる。

 大谷翔平は、後半戦初めてホームランを打った。あれでホームランになるのかと、ビックリするようなスイングだった。他の打席も良い振りをしている。最終打席は、敬遠だった。


 7月29日(月) 晴/曇 13053

 東京は梅雨明けした。気象庁は、熱中症に気を付けるように呼び掛けている。来年東京オリンピック記念500円コインの絵柄が、宗達の風神雷神屏風から風神雷神に決まったという。1つのコインに風神と雷神が別々に描かれている。これ一揃えで欲しい。

 「 「飛鳥川」という銘は、春道列樹の「昨日といひ けふとくらしてあすかがは 流れてはやき月日なりけり」という歌からとったものです。飛鳥川は、遠州が少年時代、豊臣秀長について大和郡山に住していたとき近所にあった川で、昔は非常に流れが速いことで有名でした。「世の中は何か常なる飛鳥川 昨日の淵ぞ今日は瀬になる」(古今和歌集 詠み人知らず)という歌に詠まれたほどです。」(小堀遠州 綺麗さびの極み 思いやりの美「綺麗さび」 小堀宗実 より)

 若い時見た時はそんなに良いと思わなかった茶入れを、年を取ってから見ると、以前と印象が違い素晴らしく見えた。それで歌から銘を取って飛鳥川と名付けたという。

 「 「月満つれば則(すなわ)ち欠くる」。完全なる一つ手前のところが、もっとも生命力があって美しい。遠州の美学を貫いているのは、このような思いではないでしょうか。」(小堀宗実)


 7月30日(火) 晴 16832

 職場の休憩室で、コーヒー飲みながらタバコを吸っていたら、ひらめいた。電車の中で浮かんだ言葉を書いていた時だ。なるほどなぁと、自分で納得した。それで、書き替えようと思う。構想の型枠が、大きく変わった。でも、こうすることがいろいろな面で、明確になる点と、進めやすくなる。そして、判りやすくなると思った。

 今日はこれから新宿で用事をすませ、明日から先に進めるだろう。腹が減ったので、夕食を取ってから新宿へ行こう。


 7月31日(水) 晴 10470

 人には、静かな時間が必要だ。録画したものを、観たい気持ちを抑えて、ファミレスへ行き、本と紙と手帳を見て考えていた。これから2か月。実質はおそらく、1か月半くらいだろうが、それまでに目途を立てないと間に合わない。それに合わせて、今最大限に出来ることをしなければならない。それに挑む心構えというか、整理をする時間が必要だと思った。

 朝は遅めに起きて、スーパーへ買い物。弁当でも買おうかと思っていたが、好みの物がなかったので他の物を買って帰ってきた。それでそうめんをゆでて、オクラやイカゲソなどと食べた。それから細雪。洗濯をしに外ヘ出たら、凄い蒸しようで暑い。見直しを慎重にしていると、時間がかかる。夕方寄席に行こうと思っている。


 8月1日(木) 晴 9475

 買い物で外に出たが、そんなでもないと思っていたら、真上から日差しを感じたら、強烈な暑さを感じた。それでも、ストックを両手に持って歩いている爺さんがいた。ジョギングしている人は、見かけなかった相当暑くなってきた。京都は35度とか37度とかいっている。およそ街を歩く気分にはなれない気温だ。

 昨日夕方、末広亭で余一会へ行く。柳家花縁独演会というものの、花縁の落語と上方の桂春雨の『時うどん』、パックンマックンの漫才(パックンはテレビによく出ているアメリカ人)、笑福亭鶴瓶の『青木先生』。中入り後は、鶴瓶と花縁の対談、三味線と歌の俗曲の林家あずみ、花縁の『不動坊火焔』。鶴瓶の『青木先生』が泣けるほど可笑しかった。高校の時の話だが、いたずらする生徒と先生。こういう誰でも経験のある話を、鶴瓶が作って話するから余計を可笑しい。『時うどん』は、『時そば』の元の話。その違いを感じながら訊けたのが良かった。対談では、鶴瓶があの人なやったかな、誰も寄り付かん師匠いたやろ。それが川柳川柳だった。楽屋でも超個性的なんだと思った。花縁の落語もまあまあだったが、ところで、令和最初にして最後の、『ガーコン』と銘打たれた川柳川柳の落語を聞こうと電話したら、もう満席で、20人のキャンセル待ちだという。あー聞きたかった。88歳、米寿。もうYouTubeでしか観れなくなるのかと思うと、寂しい気がする。

 28日は山田風太郎の命日。30日ディープインパクトが急死した。31日はアントニオ・コルバチョの命日。今日は下山さんの誕生日。

 感想を送って来てもらったのは、1通だけ。それでも、誉め言葉が書かれてあったのは嬉しい。ジャンルが全く判らない人が読んでも、伝わることがあるという事は嬉しい。見直し作業を終えて、進みだした。もがきながらやろうと思う。


 8月2日(金) 晴 10701

 朝目覚めて、直ぐに準備してファミレスへ出かけた。途中駅に、出勤通学の人がホームに溢れているのが見えた。こういう世界に、戻りたくないと思った。朝食は、しらす下ろしと味噌汁。炭酸水とコーヒー。朝から快便。そして、細雪。昨日、THさんが写真を送ってきた。誰か判らなかったが、なんとノビジェーロの時の、アントニオ・コルバチョの写真だった。85年だったので20代のようだった。細雪の話も少ししたが、どうもネットの文字だけだと調子が悪い。話なら弾むだろうけど…。

 『京都人の密かな愉しみ Blue 修行中 祇園さんの来はる夏』が17日に放送されることを知る。柚子役の相楽樹が結婚して、役が来ても出れないだろうと思っていた。だから、最新版が出来るとは思っていなかった。柚子役は新たに、吉岡里帆を迎えて撮っていた。柚子のキャラが全然違ってくると思う。あの気の強さは、吉岡里帆では出なくなる。が、京都生まれの京都育ちという利点がある。そういう処を生かしていくんだろうと思う。それと京野菜農家のお婆さん役だった江波杏子が死んだので、代わりに誰が出るのか?そして、今一番興味のある祇園祭が織り込まれているようなので、非常にタイムリー。

 横山崋山が30メートルにも及ぶ、『祇園祭礼図巻』上下巻を描いたのは、天保6年から8年(1835~37)。これほど、祇園祭を詳細に描いているものはないという。この絵から禁門の変で焼けた大船鉾が2・3年前に復活し、鷹山も2年後復活する予定だという。資料的な意味でも非常に重要なもののようだ。横山家は、曽我蕭白のパトロンで、西陣織の横山家の分家に養子で入った崋山。幼いことから、蕭白の絵から影響を受けたようだ。呉春や応挙などからも影響を受けたようだ。京都画壇は実に面白いが、『祇園祭礼図巻』の山鉾には、車輪がある。宝永の大火の頃は、山鉾も素朴で、天明の大火では、京都の8割を焼いた規模の大きさで、山鉾の復興も大変だったようだ。化政文化(1804~1830)の波に乗り山鉾が巨大化したようだ。だからここに描かれている山鉾は、車輪がついた巨大化したものが描かれている。おそらく、天明の大火以前は、車輪がついていなかった可能性が高いようだ。多分、かついだり、持ったりしてものと思われる。


 8月3日(土) 晴 9342

 朝食後、上野へ向かった。こんな暑い中、出掛けないても良いのに。東京藝術大学美術館でやっている、『円山応挙から近代京都画壇へ』を観る。目玉は、兵庫にある大乗寺の襖絵。2度に渡り、応挙が弟子を連れて100枚以上の襖絵を描いた。そのほんの1部が展示されている。呉春の物が、蕪村の弟子時代の描き方を引きずっていた頃から、応挙風の描き方に変わる処が面白いと思った。俳諧から蕪村の弟子になり、文人画を覚える。蕪村死後、応挙の弟子に志願するが、応挙から友人として迎えられ、弟子という事にはならなかった。

 応挙1番弟子の源琦の絵も見れた。長沢芦雪の観たことのない絵も観た。奇想の系譜展の芦雪とは、ちょっと感じが違う。応挙の国宝『雪松図』の雪は、色を塗っていない紙の色そのままの塗り残しとして雪を描いている。その同じ塗り残しの雪を『風雪三顧図』の墨絵でも観れた。同じ題で、呉春と中島来章も塗り残しの雪を描いていた。また、日本ではさして有名ではないが、江戸から明治の頃の、柴田是真も四条・円山派の系譜なのだという。美人画の松園も応挙の美人画を観て憧れていたという。

 大乗寺の襖絵は、金箔に墨の濃淡で松と孔雀を描いたものがあったが、松の枝の部分は、茶色に見え、松の葉や孔雀が緑に見える。墨で描いているのに色が違って見える。そういう工夫というモノを、技法というものにしようとしていたのかもしれないと、思った。ある時期、応挙って「つまんねぇやつだな」と、思っていた。それは感覚として、狩野派のつまらなさを感じたからだが、墨絵で描いた滝を登る鯉の絵を見たとき、ザワッとした。掛け軸に鯉が描かれている。それだけの絵である。それが鯉が滝を登っていることを、表すために、鯉の体を縦に水が流れを描いている。これは単純だが、非常に難しい描き方だと思った。しかも、鯉をただ描くだけでも鱗や体のしなりなどでらしさを写し取るが、応挙は鱗も動きもあるし、それに水の流れが加わる。圧倒された記憶がある。四条円山派の柴田是真は、滝を登る鯉を描いている。掛け軸からはみ出て滝の上の水が描かれ、鯉はちょっと斜めになって口を開けている。その少し先に虫を描いている。しゃれている。こういう処が、アメリカ人にはグッと来るのだろうと思う。


 8月4日(日) 晴 11488

 今日も暑い。今日の『みんなのKEIBA』の中で、死んだディープインパクトの特集をやっていた。三冠最後の菊花賞。京都競馬場の直線で、抜け出すとスタンドの歓声が最高潮に達する。ゴール後は、競馬新聞を放り投げて喜ぶファン。名実況の杉本アナウンサーが定年であとを継いだ馬場アナウンサーが、近代競馬の結晶だと、中継した。嫌いだったんだよな、ディープインパクトって。あの馬を外して馬券を買っていたのを思い出す。当然馬券はワイド馬券で、2着3着を当てていた。巨人とか大鵬が嫌いなのと一緒。流行というモノも嫌いだから、当然の感情。カンニング竹山が、ディープが嫌いだったといっていたが、同じだろう。種牡馬になっても、ダービー馬を5頭出して、7年連続リーディングサイアー。凄い馬であることは判っているけど…。

 全英AIG女子オープン3日目で単独トップになった渋野日向子が、爆笑会見。「終わってから緊張してます」どのくらい緊張してますか?と訊かれ「今日食べたもの全部出そうです」明日に向けてどうプレーしますか?「明日も攻めていかないと優勝はないと思う。しっかりと攻めていきたいですね。吐くくらい緊張するかもしれないですが、頑張ります。センキュー!」.すごいファンのサポートもあったかと思いますが?「すごくうれしかったですね。日本でプレーしているような感じでした。」明日に向けてどう準備しますか?「しっかりとご飯を食べてお菓子食べて寝ます(笑)」明日の作戦を聞かせてください「これまで3日間と変わらずしっかりと攻めてバーディをたくさん獲りたい。」この状況をどれだけ誇りに思いますか?「今まで経験したことのない感情と吐き気です(笑)」

 樋口久子以来42年ぶりのメジャー制覇なるのか。いつも笑っているので、イギリスでは、スマイルシンデレラといわれているという。勝てば、ディープインパクトだよな。最後まで笑顔でいられるか?夢って、夢中で、夢の中にいるような状態で、掴むものかもしれない。今日の札幌でルメールは12レースに騎乗して、8勝、2着1回、3着1回。人気馬に乗っているとはいえ、大爆発状態だ。1日8勝は、JRAタイ記録。

 ちょっとやっぱり、資料あさりに行かないと思った。特に、昨日の応挙を観たのでそう思う。


 8月5日(月) 晴 9752

 気になってテレビ中継がないかと思っていたら、テレビ朝日で中継したので、それを酒を飲みながら終わるまで見ていた。渋野日向子がスタート時には、先にスタートしていた選手がスコアを伸ばしていた。3Hで3パットして、3位に後退した時は、正直やばいなと思っていた。解説が戸張捷と樋口久子。レポーターが村口史子。さすがの、二十歳のスマイルシンデレラも厳しい表情になっていた。それを、戸張捷が、勝負師の顔になってきましたねと、いっていた。

 10Hの、バーディーパットはしびれた。攻めの気持ちが、思い切りの良さに繋がっている。この日イーブンパーに戻す。サラスも決めて、2打差は変わらない。12Hは、3日間刻んで来たが、池越えの1オン狙い。強気で攻める。そして、見事に1オンして2パットでバーディーで1打差。13Hもバーディーを取り、1位に並ぶ。1位に3人が並び、1打差に5人の大混戦。ボギーなしでスコアを伸ばす世界ランキング1位のコジンヨンも不気味だが、今日絶好調のサラスが相手だと思っていた。だが、問題なのは、渋野日向子が自分のプレーに徹することが出来るかなのだ。

 サラスがトップで1打差で向かえた15H。第2打を打った後、コーチでキャディーをする青木の持つキャディーバッグを掴んで、上り坂を引っ張って貰うような感じなる。青木は重いという表情をして、渋野は笑顔。メジャー最終日最終組。何か楽しんでいるのがこういう処でも判る。その前のショットを打つのを待っている時、「タラタラしてんじゃねーよ」(タラで作った駄菓子)を食べているのを、カメラ目線で食べたりしていた。そういうのが、このHのバディーに繋がったのかもしれない。17アンダーで1位に並ぶ。18Hで、コジンヨンのバーディーパットがわずかに短く、16アンダー。サラスが絶好のバディーパットをピンをなめて外し、17アンダーでホールアウト。16H17Hはパーで、17アンダーで迎えた最終18H。中継で、ドキドキしてきたと、いっていた。バディーで優勝、パーでプレーオフ。サラスは、練習グリーンでパット練習。渋野の雰囲気を観ていると、なんかサラッとやってしまいそうな気がしていた。第2打で5.5mくらいの難しい処を残して、グリーンに向かう。大歓声を浴びてグリーンへ。バディーパットを決めて、笑顔。一緒に回っていたブハイと抱擁。入った瞬間ブハイも万歳をしていた。青木コーチも両手を上げて喜んでいた。涙のない笑顔の優勝。

 インタビューの最初で、「鳥肌立ち過ぎて、今はもう凄い緊張して。やあー、言葉に出来ないです」プレーしてる最中はどうでしかた?「そうですね。前半ちょっと緊張してたんですけど、後半は緊張しなくて、最後のパットも、そこまでは緊張してなかったです」最後のパットかなり強めに打ったと思ったんですけど、あれは強めに打とうと思って、打ったんですか?「もうここで決めるか、3パットするかと思って、強気で打ちました」

 実は、このインタビューが始まる前が、観ていて1番緊張した。だって、ゴルフって、自分のスコアーを申告記入して結果が決まる。誤記入だと、罰則規定で、優勝が取り消されることもあるからだ。やきもきしたが、危惧に終わった。


 記者会見。
―おめでとう
今の気持ちは言葉にできないくらいうれしいのと、お腹がすいた

―ウィニングパットを入れて家族とは
お父さんと写真を撮ったくらいで「おめでとう」と言われた記憶がないですね(笑)

―18番の心境は
ずっとボードを見ていたので、自分の位置を把握していた。18番のパット前もこれを入れたら優勝するのは、分かっていた。どういうガッツポーズをするか考えていた

―どうやって祝う
お菓子いっぱい食べます

―コースで何を食べた
『タラタラしてんじゃねーよ』ってお菓子なんですけど、魚を固めたみたいな

―ファンの声援について
バーディパットや厳しいパーパットを決めた後にハイタッチをしてくれる日本人や、日本人じゃない人もすごく応援してくれて、ずっとハイタッチしていました

―18番のティに上がる前も観客とハイタッチ。18番のセカンドもキャディと笑顔で会話。普通は緊張するが
セカンド地点で何を考えていたかというのは、ここでシャンクしたらかっこ悪いなって(笑)

―この優勝でLPGAの会員になる権利がある
やっぱり今はまだ日本のツアーで戦いたいと思っているので、海外で戦いたいと思ったら、また来たいと思います

―もし海外に来るなら、何がさみしくなる
日本の料理とお菓子が食べられないのはストレスになると思う(笑)

―こういう状況を楽しんでいるのは他選手に脅威
きのう終わった時点で単独首位だったので、緊張するとは思っていました。緊張をどう自分のプレーにつなげるというか、良いプレーができるかっていうのを考えていたりしたら、だんだん緊張しなくなった。ここはパーでいいやって思ったところも、バーディが入っていたりしたので、なんでだろう(笑)

―シンデレラはストーリーの後に王子様とつながりますが、トロフィが王子様?
んーーーー(笑)ストーリーはストーリーだから、王子様とは言えないですけど(笑)今までで一番価値のあるものをもらったと思います

―兄弟はいますか
姉と妹です

―優しいですか
姉はすごく優しいですけど、妹は頭が良いので、こんなのも知らないの?って思われちゃっていると思います

―笑顔でいるのはあえて
あえてしているときもありますし、キャディのコーチと本当にしょうもない話とかしていたり。それで笑っていたりとかしていました

―賞金で自分にご褒美を?
ちなみに賞金いくらなんですか(笑)

―すごく良いものを買える額です
何買おうかな。死ぬまでのお菓子を買いたいです

―日本の男女含めて1人しかいなかったメジャー王者。今回の意味は
42年ぶりに優勝って、昨日までネットで見ていたので、なんかすごいことをしてしまったんだなって思いますけど、まだ実感もないですし、なんで私が優勝しちゃったんだろうって思っていて。優勝した理由が分からなくて、なんとも言えないです

―日本にいる家族とファンのリアクションは
初日に結構反響があったので、今までにない反響と、日本中の人に知っていただいたと思うので、静かに生きていきたかったんですけど、うれしいですけど、なんとも言えないです(笑)

―昨日も今日も耐えた。どういう気持ちだった
わたしはどちらかと言うと、追う立場の方がやりやすいとは思っていたので、今日リードを失ったときとか、追う方が実力を発揮できていたと思います

―今週、ファンも選手も渋野選手のおかげで笑顔になれた、渋野さんを笑顔にさせてくれる人は?
ここに来て、ギャラリーさんと目が合ったとき、私がニコッとすると、その方もニコッとしてくれるので、それがうれしくて、目を合わせてニコってしていました

―Youtubeを見ると言っていたけど、昨日は何を見た
わたしの好きな芸能人の動画とか、音楽を聞いたり、ミュージックビデオを見てキャーキャー言いながら

―ゴルフ以外は何をする
お菓子を食べたり、寝たり。本当に…あ、ソフトボール。好きな芸能人のYoutube。そんな感じです

―日本のどんなお菓子が特に好き
一つに絞るのは大変ですけど…んー『よっちゃんイカ』(カットよっちゃん)。あれ?日本にしかないか。あ、昆布

 『タラタラしてんじゃねーよ』を発売しているよっちゃん食品工業には、問い合わせが殺到して朝から大変なことになっているという。ゴルフ関係者も一杯コメントを出している。夢中でつかんだ夢は、彼女の笑顔から始まり、彼女の笑顔とみんなの笑顔で終わった。あらためて、笑顔のパワーを感じた。渋野の通訳をしたのは宮里藍の夫。宮里藍はSNSで、「みんなが笑顔に引き寄せられた」と記入したという。

 午後、国会図書館に行って調べ物をした。年表や文章など読んで、やっていけると確信した。辻つまが合うようにすることが出来る。


 8月6日(火) 晴 10000

 今日も暑い。昨日調べたことは、非常に面白かった。詳しくは書かないが、大雲院で絵を学んだり、アトリエとして使っていたようだ。本法寺などにも行っていたようだが、その隣の宝鏡寺には、びいどろ屋の関係があるようだ。それがあって円満寺時代に入っていく。また、前年の8月に大阪へ医学修行に出て翌年の秋の帰郷している。この間、何をしていたか資料がないという空白がある。これが肝だ。その翌年の5月5日の大阪から翌年の6月の江戸までも、空白期間がある。これも使えるかもしれないと思った。明日から、京都へ行く。

 日向子という名前は「太陽に向かうひまわりのように明るく育ってほしい」という願いを込めて彼女の祖父が名付けました。3姉妹ですけど、一番明るい性格です。(父・渋野悟)

岡本綾子
「本当にうれしいですね。日本中のゴルフファンが万歳したんじゃないでしょうか。18番のバーディーパットが入った瞬間、私は思わず声を上げてしまいました。もう言葉にはなりませんでしたね。

 こんなに眠れない夜を過ごしたのも初めて。この4日間、睡眠時間は毎日2時間ぐらいでした。それぐらい初日から期待感があったのですが、実際にその通りに優勝してくれたんですから。渋野さんより私の方が興奮していたかもしれません。

 渋野さんを特に褒めたい点が二点あります。まずは4日間、バック9をノーボギーで回ったこと。これはゴルフ史上に残りますよ。フロント9でボギーが先行している状況で、バック9で立て直していけたのはたいしたものです。

 あと一つ、12番のパー4で1オンを狙っていったこと。あの時点でトップのサラス選手とは2打差ありました。あそこはドライバーを持たなければいけないし、私なら持ちます。刻んでいってもバーディーは取れるでしょうが、「ここでイーグルを取って並ぶ」という気持ちでいってほしいと期待して見ていました。渋野さんはためらうことなくドライバーを手にし、思い切って攻めていきましたよね。もし失敗していたら周囲から「無謀だ」などと言われたでしょうが、それでも私は狙っていってほしかった。その積極性を最終日、あの場面でやってのけたのは立派です。

 日本勢としては42年ぶりのメジャー制覇ですか。言葉で言い表すのは難しいのですが、樋口さんが約半世紀、ずっと守っていることが“滑稽”に思えてきた時期でもありました。1998年にプロ入り直後の朴セリ選手が全米女子オープンで勝って、それから20年、初優勝がメジャーという韓国選手が次々と出てくるのを見ているとね…。でも、ようやく日本にも光が見えてきました。黄金世代をはじめ、日本の若い選手はみんな「彼女のゴルフがなぜメジャーで勝てるのか」という視線で見てきますし、彼女のゴルフに惹(ひ)かれてプロゴルファーを目指す人もいるでしょう。いい風を運んできてくれました。

 それにしても、あのキャラクターにはビックリします。樋口さんも「新人類」と言われていたようですが、テレビカメラに向かって物を食べるなんて、私が師匠だったら「やめなさい」と言うかも。でもやっぱり「勝ったから許す」といったところかな。

 笑顔でのラウンドが印象的でしたが、実は口角を上げると集中しやすくなるんですよ。私も若手には「への字口でいいゴルフはできないよ。口角を上げてごらん。首から下がスムーズに動くから」って教えているんです。渋野さんは自然体で笑えているところがいい。本当にいい顔をしています、プレーに入って笑っていない時も含めてね。

 ただ、メジャーを勝ったことを振り返っている暇はありません。クラブを置いたときに初めて「私、メジャーに勝ったんだな」と思い返せばいい。今日からまた一プロゴルファー、渋野日向子としてやっていかないと周りにつぶされてしまいます。セルフコントロールをしっかりして次の試合に向かっていってもらいたい。もっとすごいことをやってのけるでは、という期待感がありますから。これからを楽しみにしています。

 これで、東京五輪の代表争いも面白くなりました。ただ世界ランク最上位の畑岡さんは予選落ちが続いて、少し悩んでいるように見受けられます。アスリートにとって悩んでいいことなんて何もない。悩んでいるということは、進歩がないということ。悩むのではなく、考えないといけない。考えるということは、試すということ。だからいろいろな方法が見えてくるし、前を向いて練習することができる。「悩むな。考えろ」ですよ。」


「メンタルの世界で最近よく言われていることがあります。世界ランキングに入っている選手の94%が結果を意識しながらプレーしていると言われます。残りの6%は準備と行動のことを意識しているというのです。準備とはイメージ作りやルーティンで、行動とはショットなどを意味します。驚くべきは世界ランキングのトップ10に入っている選手がこの6%の選手だということです。」(GOETHE:出島正登)

 渋野日向子が帰国した。フィーバーが起こっている。疲れて眠いだろうに、記者会見をしている。「笑顔は国際語」みたいなことをいっていた。明日から北海道へ行って、ツアー参戦するという。


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