断腸亭日常日記 2016年 11月

--バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

por 斎藤祐司


過去の、断腸亭日常日記。  --バーチャル・リアリティーとリアリティーの狭間で--

太い斜字で書いてある所は99年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年、2016年のスペイン滞在日記です。
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 11月1日(火) 雨 8162

 朝から雨が降っている。冷たい雨だ。冬を感じさせる寒さだ。

 もう1ヶ月前だろうか、NHKで、宇多田ヒカルの『SONGS』をやっていた。NHK朝ドラ『とと姉ちゃん』の主題歌『花束を君に』を歌ったのが、宇多田ヒカルだ。聞き手に糸井重里が出て、「人間活動宣言」の話などを訊いていた。母・藤圭子。あらゆる事象に、母が見えたと言う。原点が、母。宇多田ヒカルはそういうが、前にも書いたともうが、歌を聴いて初めて震えたのは、藤圭子の歌だった。テレビを観ていて凄いなぁと感覚的に思ったのを覚えている。

 井上陽水が出て、歌詞を解説していた。『Automatic』について、「コンピューターの画面の中で、何か字があってね、それを手でかざすと、「warm」=「温かい」って言うんですよね。まっ大体、「冷たい」とか「無機質」とか「感情がない」とか代表格のコンピューター。そこの文字で温かくなるという表現。多くの人が胸をキュンとしたんじゃないでしょうかね。」と言っていた。糸井は、みんなもそうだったんでしょうが、15歳の子が書いたのか。何してきたらこう書くんだ。一番感心したのはタイトル。Automatic。つまり、かりにドキドキする私って書いたら、それは自動的にそうなちゃう。他人がそうさせちゃんんだよっていう。そのとらえ方は、聞いたことないの。それを、この子はどうしてそんなことを、思いついた。このコンセプトを。けっこう驚いたんですよ。」宇多田は、「偏ってませてた」と言った。

 そして、子供が出来なかったら、またアルバム作ったり、仕事始めようと思ってなかったという。「特に自分が親になると面白いなと思ったのは、自分の子供観てて、生まれた最初の体験や経験で、1番人格の基礎となるものとか世界観とか、形作られていく、形成されていく訳じゃないですか。なのに、その時期のことを完全に忘れているって凄くないですか。つまり、すべて無意識の中にある。闇の中にあるみたいな。で、それをみんな抱えて生きていて、そこからいろんな不安とか悩みとか、苦しみが出てくると思うんですよね。何故私はこうなんだ。なんで、こんなことをしてしまうんだとか。自分が親になって、自分の子供を見ていると、自分の空白の2・3年が見えてくるっていう。あっ、「私、こんなんだったんだ」「こんなことを親にしてもらって」たぶん「こんなことをしてて」「こんな顔してて」というのが見えて、それって結局、親に対する感謝ですとか、「自分がどこにいるか」ふわって見えた瞬間っていう感じで、ずっと苦しんでいた、理由、闇の、解らないって苦しみが、ふわって、なくなった気がして、それこそいろんなものが腑に落ちるっていうか。」

 宇多田ヒカルは、こんなことを感じるんだと、思った。ここが1番面白いと思ったところ。人は無意識で、そっちを選んだり、そっちに行ったりするんだろうか。それは、初めての体験や経験に導かれた結果なのだろうか?考えてしまった。そうでなくても、こういう事を感じる宇多田ヒカルの感性が面白いと思ったのだ。


 11月2日(水) 曇 8776

 「 「図々しいにもほどがあるよ、ぼくを友だち呼ばわりするなんて」。これは、ディランの歌の中でも、ぼくがいちばん好きなフレーズだ。「寂しき4番街」は、この強烈なフレーズで始まる。その後、「ぼくが落ちこんでいた時、きみはそばでにやにや笑って見ていただけじゃないか」(いずれも、中川五郎訳)と続く。初めて聴いたとき、ぼくは凍りついたくらいだ。歌のどちら側にいるのか、ひょっとするとぼくは歌が向けられた矛先のほうにいるようなことはないか、そんな問いと共にこのフレーズはぼくの中にずっといつづけている。

 そう言えば、ジョニ・ミッチェルは、この歌をラジオで聴いてこう語ったという。「神様、ありがとう、アメリカのポップ・ソングがやっと大きく育ちました」と。そして、その彼女は、後にこんな歌の出だしで、ぼくをまた茫然と立ちすくませるのだ。「歌は、刺青(タトゥ)のようなもの」(「ブルー」)と。」  ーーボブ・ディランが教えてくれた、生きるということ、そして音楽の果てしない醍醐味」 天辰保文よりーー

 「図々しいにもほどがあるよ、ぼくを友だち呼ばわりするなんて」。「寂しき4番街」は、シングル・カットされた良い曲で、聴きやすい曲だ。でも、こんな感じで始まることを忘れていた。ディランの様に、こういう風に言いたくなる経験は、人生の中で、そんなに多くないが、必ず経験することだ。天辰さんの文章を読んでいて、ある人を思い出した。思い出したくもないことだが、思い出した、嫌な記憶だ。もうかまわないでくれ、ほうっておいてくれとという気分だ。もうあの人と関わりたくない。それなのに、何故と・・・。考えたくないことなのに、いろいろ考えてしまった。

 ときどき、多分僕は、ディランの『ミスター・ボージャングル』の様になるんじゃないかと思うときがある。そういう寂しさを感じるときがある。だからこそ、秋の計画を進めようとしているのだ。それなのに、滅入るような、あの人を思い出させること。嫌になる。ディランの歌のタイトルを借りていえば、一旦、『嵐からの隠れ場所』へ行って、それから『我が道を行く』ことにしようと思う。

 「神様、ありがとう、アメリカのポップ・ソングがやっと大きく育ちました」という言葉は、判るが、「歌は、刺青(タトゥ)のようなもの」って意味が解らない。向こうの人と、日本人の刺青に対する考え方が根本的に違うからだろうと思う。でも、ジョニー・ミッチェルって良い歌作るんだよなぁ。


 11月3日(木) 晴 8197

 文化の日。いろいろな催しがあるが、競馬ファンにとっては、JBCだろう。今年は、川崎競馬場で行われている。朝から、馬券を買ったが、全然当たらない。メインのGⅠ、3レース。9レースは、9の法則通りの結果で、一気にプラスになった。まだまだ、実験段階だが、ここ数年やってきている、成果がこういう所で、でるのが嬉しい。そういうことなのだと、というときは、流れに乗ること。そして、調子に乗らないこと。お金に負けないこと。肝に銘じて競馬をしよう。


 11月4日(金) 晴 7241

 平成の今、落語ブームなのだという。江戸時代にまさるとも劣らない数の落語家が、東西で800人いるという。そして、年間に、1000を超える高座が開かれているのだという。寄席だけでなく、落語ファンが、企画した高座が、貸し会議室や、CDショップなどいろいろなところで開かれている。熊さん、はっさんに代表される一般庶民のダメ人間のやる、失敗を笑いに変える話。あるいは人情話。古典落語を、現代風に分かり易い言葉や見せ方で、演じている。現代落語もある。

 落語が、大衆芸能であるためには、今の人に判るように、演じなければならないと考える落語家が出てきた。それが、敷居が高いと思われていた、落語に若者や女性が飛びつき、今の落語ブームになっている様だった。落語とは、人間の業を肯定するものという、立川談志の言葉のように、それを語り、泣いたり笑ったり、考えたりする物。

 THさんのお父さんと話したときに、僕は、小三治や古今亭志ん朝が好きだと言ったら、志ん朝の兄の(金原亭)馬生の方が好きだと言っていた。その時、馬生の最後の高座を聞いた話をした。もう話されていない、古典を復活させた人。娘は、女優の池波志乃。粋な女だ。THさんのお父さんは、昔、日曜日に将棋をしながら、落語を聞いていた話をして貰った。そんな、贅沢な時間を子供時代に過ごしていたのか、訊いていて羨ましかった。そんな時間を過ごせるのは、幸せなことだと思った。

 テレビでは、「ぶらぶら美術・博物館」をやっている。東京国立博物館でやっている『禅』展。この前見てきたのを、改めてみるのも面白い物だ。


 11月5日(土) 晴 6774

 朝ドラ『ちりとてちん』で、輪島(これは間違いで若狭塗り)の塗り箸職人が、落語のカセット・テープを聴きながら仕事をしている。平和な日常。その中で、1本1本丁寧に箸を仕上げていく。こういう生活が、豊かな人生だと思って観ていた記憶がある。そういう所から、良い物が出来るのだと思えるシーンだった。

 何かをやるときに、ラジオとか耳で音を聞きながら仕事をするというのは、素晴らしいことだ。手術する医者が、音楽を聴きながらオペをする話も訊いたことがある。漫画家の浦沢直樹が、ボブ・ディランを聴きながら、マンガを描くのは有名な話だ。そういう人生って、素晴らしいと思う。


 11月6日(日) 晴 11198

 晴れているが寒い。男子トイレに、良く張り紙などで、注意書きがされている所がある。一歩前に、とか、小水をこぼさないようにというモノである。昨日も初めて入ったトイレに、いろいろ書いてあった。その中に、短歌のように五七調で書いているモノがあり、ビックリした。こういう書き方もあるのかと思ったのだが、それだと長い。覚えるのが大変だ。今までで1番感動した書き込みは、「一歩前進」。明るい未来が見えてきそうな言葉を、ヒシヒシと噛み締めたモノだ。


 11月7日(月) 晴 8412

 昨日、東京競馬場で、クリストフ・ルメール騎手が、JRAの1つの新記録と1つのタイ記録と、合計2つの記録が出した。1つ目は、騎乗機会10連続連対のJRA新記録。1日8勝のタイ記録。この日、ルメールは、10レースに乗り、8勝2着1回4着1回だった。メインレースでは4着に負けたが、最終の12レースでは、しっかり勝ちきった。ゴール後、観客からは自然発生的に拍手が沸き起こった。

 海外では、8レース中8勝したデットーリがいるが、日本では、武豊が記録した8勝が最高で、その記録に並んだ。また、騎乗機会10連続連対は、今まで、武豊、安藤勝己、岩田康誠、M.デムーロが記録した9連対を上回った新記録になった。ルメールはこの日、9400万円の賞金を稼いだ。騎手が貰えるのは、賞金の5%。それでも、470万円プラス騎乗手当などを稼いだことになる。競馬という物は、このように、その日によって偏りが発生する。その偏りを見極める面白さがある。

 もう少し書けば、その偏りを、どう見ていくのかということが、問題で、その問題を、解決するための方法を見つけつつある。それが今年の秋の主題になっている。非常に面白いことになってきたと思っている。それこそ、一歩前進の土日なっている気がする。

 歯医者に行ってきた。歯石は、そんなに溜まっていないと言われた。ブラッシングについては、5mm程度しか動かさないように、歯科衛生士から言われた。帰りに、今度は半年後。そのころは、私はいないけど。後は、若い子がいるので、よろしくね。と、言われた。僕の担当の人もいなかったし、そういう彼女も辞めるんだと、ビックリした。治療は先生がやるが、クリーニングとかブラッシングの指導は、歯科衛生士が担当。今までいた人たちがいなくなるのは、本当寂しい。


 11月8日(火) 曇 9598

 曇り空で寒い。カセット・テープで音楽を聴くのが、最近はやっているという。カセット・テープ専門店まで、出店する人までいるという。レコード屋でも、CDの他に、レコードやカセット・テープを置くところがあり、それがよく売れるのだという。中・高年そうだけではなく、若者がアナログの音の魅力を感じて買っているという。

 70年代80年代は、世界で1番レコードが売れていたのは、アメリカで、次が日本だった。それから、パソコンが普及して、ネット時代になるとダウンロードが中心になった。去年の統計だったと思うが、CDの売り上げ世界1位は、日本。アメリカは、ネットでダウンロード中心になっているので、1位ではなくなったという。70年代の話だが、まだ、「クィーン」が、イギリスでもほとんど話題になっていない頃に、日本では、10代の少女たちを中心に人気に火がついた。それから、地元のイギリス、アメリカで売れて、世界的なロック・グループになっていく。世界の中でも重要な位置にいるのが、日本だ。こういうマーケットの事情なので、アメリカやイギリスの英語圏のアーティストは、日本で売れると喜ぶ。コンサートも、呼び屋が高い金で呼んでくれる。

 耳の肥えたユーザーが多い日本。それでいて、流行にも敏感で、しかも、昔のアーティストにも執着する。音楽業界にとっては、宝物だ。今は、日本のアーティストが海外に出て、CDを出したり、コンサートをする様になってきた。アメリカでは、まだまだだが、アメリカのアーティストが、日本限定のCDを出すことからも、その重要性が判るだろう。スペインのFnac などには、日本版を売っている。CDに歌詞などライナー・ノートが書かれてあるのも、日本版の特徴だ。

 様々な音楽を聴き、レコードやCDも買った。でも、オーディオに凝ろう思ったことはない。それだったら、レコードやCDを買った方が良いと思っていたからだ。プロゴルファーの尾崎将司が1000万もするオーディオが自宅にあるという記事を読んだことがあったが、全然羨ましいとは思わなかったのは、そういう理由だ。それより、ジャズ評論家の植草甚一のレコード収集の方に、よだれが出た。彼の遺言で、そのレコードは、タモリが譲り受けた。じぇじぇじぇ!


 11月9日(水) 雨のち曇 10043

 クリントンが勝つと思っていた、アメリカ大統領選挙で、トランプが勝利した。アメリカの有権者は、ポピュリズムのトランプのカードを選んだ。しかし、これは民主主義だ。イギリスがEUから脱退すると誰が想像したか?それと、同じような物だ。ヒットラーだって選挙で選ばれた。時代が違っても、同じよなことは起こる。

 あまりにも、今の政治や状況に、不満を抱いている民衆は、解りやすいものに、ヒステリックなまでに飛びつくと、こういう結果になる。低所得層が、経済的な思惑から、大金持ちのトランプを支持した。世界中の株価が軒並み下落した。世界の警察から、アメリカ一国主義に舵を取る。

 「トランプ氏は大統領選勝利宣言のあと、ローリング・ストーンズから使用停止を求められてきた、彼らの代表曲を大音量で流した。「You Can’t Always Get What You Want」。邦題は「無情の世界」。曲の中で、ミック・ジャガーが繰り返し歌うのは、「欲しいものがいつも手に入るとは限らない」というメッセージだ。

 この夜、本当に欲しいものが手に入ったと思うアメリカ国民はどれだけいただろう。4年後も思い続けられる人はどれだけいるだろうか。」 ーーBuzzFeed News 石戸諭よりーー

 暗い気持ちで部屋に帰ってきた。テレビで、『ガッテン』をやっていた。「超濃厚!豆腐ワールド」を観る。そんなに美味い、濃厚な豆腐なら、作って食べたいと思った。それが、気持ちを少し明るくした。でも、何故トランプは、ストーンズの『無情の世界』が好きなのだろうか?映画監督のマイケル・ムーアの、「どんな結末になろうとも、そこから始めるしかないんだ」という言葉は、現実的な捉え方だ。


 11月10日(木) 晴 17140

 立冬になり、グッと寒くなった。アメリカの株式市場は、300ドル弱値上がりした。共和党が上・下院で、過半数を超えたためである。一夜明け、各地でトランプへの抗議デモが起こっているという。為替相場は、ドル高円安に振れている。そして、東京の株式市場も1000円値上がりしている。

 この前、来年の手帳を買ってきた。今年もあと2ヶ月を切った。手帳を買った同じ日に買った、『レコード・コレクターズ』2012年10月号。ボブ・ディランのベスト・ソングズ100という特集が組まれている。つらつら観ていたら、第20位にあった、『ラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット』の記事が目に入った。

「ディランがいつかノーベル文学賞を受賞することがあったら、その受賞理由の片隅にでも、この「ラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット」のいる場所も加えておいてほしいと本気で思っている。  ーー中略ーー  雨上がりの路傍の花のように凛と咲く美しい一曲。シンプルな歌と言葉で、都会をひとりでたくましく生きる女性の姿(のちの妻になるサラであったとも伝えられる)を憧憬と愛情で魅力豊かに描いている。始まりこそシンプルなラブ・ソングと見せて、自身の内面や現実社会の厳しさと彼女の姿を巧みに照らし合わせながら、ディランは世界をぐいぐいと押し広げてみせる。叩き付けるようなプロテストではなく静かに世界をほころばせる手法は、わずか3分足らずの曲の中に一本映画でも適わない大きさを作り出している。ゴタールがアンナ・カリーナと作った何本かの映画に、この曲を強く思い出し時がある。」 ーー『ラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット』松永良平よりーー

 そういえば、この頃からノーベル文学賞のことが語れていたことを思い出した。良い曲だし、ノーベル賞の受賞理由にっていうのが、なかなか良いところを突いていると思った。


 11月11日(金) 雨 3981

 もし、許されるのなら。月を観るなら銀閣寺。向月台の砂の上にあぐらをかいて、日本酒を飲み、タバコが吸いたいと思っている。

 『京都・国宝浪漫』#75「銀閣寺~足利義政 美意識の結晶」をやっていた。そばにある哲学の道は、京都大学の哲学者、西田幾多郎が思索にふけりながら散歩をする道だった。それがいつしか、哲学の道と呼ばれるようになった。そこに今敷かれている敷石は、廃止された市電の軌道敷石を転用された物である。法然院近くには、西田が詠んだ歌「人は人 吾はわれ也 とにかくに 吾行く道を 吾は行くなり」の石碑がある。

 THさんのお父さんの話を訊いていて、濃密な親娘の関係なのだと言うことが良く判った。あれだけ、娘のことを考えて、必要なときに必要なアイディアを出したり、アドバイスを出来ると言うのは、近いからというしかないことだろうと思った。とにかく、いつも娘を観ているような感じだ。こういう濃密な父と娘の関係を観たのは初めてで、羨ましい親子だと思った。幸せな父娘だと思う。

 京都嵯峨芸術大学の大森正夫教授の説では、午後6時月待山から月が出て、観音殿東側一階の縁側から月を見、錦鏡池に映る月を眺める。ひさしに隠れる一時間ほど見。午後7時になると二階に場所を移し、火灯窓から錦鏡池に映る月を眺める。直接月を観るのは無粋と思われていたという。日が変わり、午前2時半には、池の中州に場所を移し、観音殿とその上の月を見る。というモノである。

 我が庵は 月待山の 麓にて かたふく空の 影をしそ思ふ  足利義政

 銀閣(観音殿)は、西芳寺(苔寺)の庭にあった建物を観た義政が、その建物の様な物を建てたいと思い建てたという。確かNHKBSで、学者が出て説明していた。今、西芳寺にはその建物はない。昔焼けたらしい。その焼けた建物は、金閣寺を真似たという話だった。苔寺の庭に行ったことがあれば、あの空間に、そんなに大きな建物が建たないだろうことは、理解できるはずだ。


 11月13日(日) 晴 35155/2

 寒くなって、空調をかけっぱなしにして寝たら、喉がカラカラ。それが、鼻の方まで行って、調子が悪いと思っていたら、風邪になった様だ。のど飴をなめながら、それでもタバコを吸っている。それでも、少し肺が痛い気がする。そう、気がする程度だ。

 「啐啄同時(そったくどうじ)という禅語があります。啐啄同時とは、鶏の雛が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて音をたてます。これを「啐」と言います。そのとき、すかさず親鳥が外から殻をついばんで破る、これを「啄」と言います。そしてこの「啐」と「啄」が同時であってはじめて、殻が破れて雛が産まれるわけです。これを「啐啄同時」と言います。これは鶏に限らず、師匠と弟子。親と子の関係にも学ぶべき大切な言葉です。」  ーー兵庫県 ・常楽寺住職  小川太喜よりーー

 親は子の事を見ていて、タイミングを見計らって行う事が、啐啄同時。師匠が弟子に対して、知りたいと思うことを教えることもまた、啐啄同時というのだろう。

 THさんのお父さんが、THさんへやっていることがそうなのだと思った。ああいうのは、親の鏡みたいな物で、なかなか真似の出来ることではない。話していて、モランテの事を、感じたときに、スペイン人の感性に近くなったと思ったんでしょう。それが、嬉しかった。それは、斎藤さんが、闘牛のことで、知りたいという事を、教えたからだと思いますよ。と、言われた。そういうのがなかったら、スペイン人と同じメンタリティーを、こんなに早く感じる事が出来なかった思います。と、いうような事を言われた。

 そう言われると嬉しかった。初めにあった頃、とにかく闘牛が知りたいと、気持ちが凄く伝わってきて、それなら、知っていることを、機会があれば何でも話そうと思ったのは確かだ。そういう積み重ねが、モランティスタに囲まれるバルセロナの闘牛ファンの集まりで、理解不能状態だった、モランテにドゥエンデを感じる所まで来た。そこまで解ることが出来ようになった、という喜びを感じているという事なのだと思った。その話をお父さんから訊き、やっぱり面白い父娘だと思った。

 闘牛は、メキシコ、南米に舞台が移った。遠い感じになった。それでも、スペインより過激に、ネットで中継をする人たちがいる。それは、スペインにいる闘牛ファンだけではなく、世界中の闘牛ファンに向けて発信している行為だ。91年当時は、ネットなんかない時代で、情報が少なかった。闘牛雑誌や新聞で情報を得る。日本に居ては判らない。下手をすると、怪我をした闘牛士の代わりが誰か、当日闘牛場へ行かないと判らないことさえあった。今は、新聞を買わなくてもネットで判る。闘牛さえ観れる時代だ。滅茶苦茶便利になった。どちらかいうというと、アナログ的な人間にとって、戸惑いを感じつつ・・・。


 11月14日(月) 曇のち雨 8916

 どんよりと曇って寒い。薬を飲んでいなかったら、血圧が高くなったので、夕方医者に行って、処方箋を貰い、調剤に行って、薬を貰ってきた。昨日の大谷の東京ドームの天井に当たる二塁打は、凄かった。

「米国のメジャーリーグ専門チャンネル「MLBネットワーク」が番組の中で大谷を取り上げ、米紙「ニューヨーク・ポスト」の名物コラムニスト、ジョエル・シャーマン記者が二刀流右腕について熱弁を振るった。シャーマン記者は、メジャー球団のスカウトが熱視線を送っていることなども紹介している。

、「彼は非常に魅力的な存在だ。彼を実際に見た複数の人の話をまとめれば、『世界有数の投手』ということだ。7回以降でも98マイル(約158キロ)を投げ、圧倒的な変化球もある。しかし、彼は打者としても素晴らしい。22本塁打を放ち、OPS(出塁率+長打率)は1.000を超えている」と、大谷がいかに素晴らしい選手であるかを説明している。

 そんな二刀流右腕にシャーマン記者は「もちろん、まだミステリーと言える部分はある。ただ、投げて、打って、まさにベーブ・ルース的な数字を残している」と話したが、10勝&20本塁打はベーブ・ルースをも上回る偉業だ。  ーー中略ーー

 解説者のハロルド・レイノルズ氏が「二刀流は可能なのだろうか。アメリカでもそうなるのだろうか」と疑問を投げかけている。

 これに対してシャーマン記者は、大谷がメジャー挑戦を決めた際には、二刀流容認を条件にする可能性があるとの見方を示す。「思うに、彼は交渉時に優位な位置に立つと思う。『もし僕にこれをさせてくれないのならば、違う球団を探します』とね」。さらに、譲渡金の上限が2000万ドル(約21億3000万円)となっている現行のポスティングシステムが、来オフに期限が切れて見直しとなることで、「日本ハムが(大谷の)渡米を遅らせる要因となる」との見方も示している。  ーー中略ーー

日本からスター選手が(メジャー)挑戦することはこれまでにもあった。高いレベルだが、故障への不安がある。ダルビッシュや田中のようにね。その点、大谷はまだ若く彼らほどは投げていない。まだ、22、3歳なんだ」  ーー中略ーー

 「それ(22歳)でいて、100マイル(約161キロ)を投げる才能も兼ね備えている。(カードの)初戦に先発して、2戦目にはクリーンアップを打つ可能性を秘めた存在と知れば、見ていて間違いなく釘付けとなるはずだ。彼は一生に一度お目にかかれるかという、その世代で最高の才能を秘めている。

 スポーツ界の一般的な話として、素晴らしいアスリートがいると目が離せなくなるはずだ。スカウトや球団関係者が大谷を見て語るのは、まさにこれなんだ。あるスカウトは私にこう言ったよ。『彼を見てみろよ、まるでハリウッドだ。目が離せないだろ』」

 これまで多くの才能を発掘してきたスカウトを虜にする圧倒的な能力。メジャー挑戦は来オフと言われているにもかかわらず、二刀流右腕は米球界の話題で中心となりつつある。そして、その評価は天井知らずで上がり続けている。」 ーー Full-Count よりーー

 天井知らずじゃなく、昨日、天井に打球を当て、隠してしまった大谷。試合後、小久保監督は、「あんな打球見たの生まれて初めて」と驚いていた。ちなみに、小久保監督は、現役時代ホームラン400本以上打っている。

 「強化試合前に大谷と面談した権藤投手コーチは、フリー打撃を見て、目を丸くした。「芯で捉えた時も“ブンッ”と(スイングの)音がするのは、(元近鉄の)ブライアント以来だ」。かつて同じ東京ドームで中堅につるされた天井スピーカーを直撃する推定170メートル弾を放った大砲と並び称された。この日もその伝説に並ぶほどの衝撃を残した。」  ーースポニチ 柳原 直之よりーー

 昨日の大谷の打球は、天井がなければ、推定165メートルだという。どんだけ凄いんだろう。長嶋茂雄は、「すごいね、大谷は。セにもパにもあんな選手はいない」と絶賛したという。大谷は、年俸2億円といわれているが、給料は両親の所に振り込まれ、そこから、毎月10万円ほどが、小遣いとして送られるという。使うのは、健康食品などの購入し、毎月お金が余るのだという。外出するには、栗山監督の許可をがなければならないといい、ちょっと、生活面でも規格外の人間だ。


 11月15日(火) 小雨 8614

 昨日は、スーパームーンの日。東京は、雨で観れず。今日なら観れるという事で、スーパー十六夜(いざよい)と呼んでいるらしい。夜中、大谷翔平のYouTubeを観ていた。その中に、栗山監督が日本シリーズ後、荒木大輔に語っていた言葉が残った。初めて大谷翔平に会ったのは東日本大震災直後の被災地を取材に行っているときに偶然会った。バッテリーを組んでる選手の両親が行方不明になっているのを、気遣っている姿だったという。その時、投球を見て、この角度でこのスピードでするっていうのを見たときに、これは絶対世界を取れると思いました。世界ナンバー1のピッチャーになれると可能性があると本当に思ったという。バッターとしては、甲子園で、レフト線のライナーの打球を見て衝撃を受け、絶対両方で世界一になれと思ったという。自分が見た物なので、確信があったという。自分ごときがどっちかを決めるべきではないと思ったという。

 一方大谷は、栗山監督じゃなかった、日本ハムに入っていないし、(ここまで育ててくれた)恩を感じているという。誰も歩んだことない道を、歩むって決めた大谷。大きく羽ばたいて欲しい。ちなみに、翔平という名前は、平泉で最後をとげた源義経の戦うと飛ぶイメージから「翔」の字を用い、平泉から「平」を取って名付けられたという。

 「栗山 シーズン中1回言いました。来年の終わるまでの一年間というのが、大谷翔平にとって、野球人生というか、人生全てにおいて、一番大事な一年になると言うことは、本人に伝えました。何を考え、何をどうトレーニングして行くのか、どういう練習をするのか、どういう技術を身につける様にするか、その道が凄く大事なんだという事を、一回伝えましたけれど・・・。

 荒木 (チームとして)来年どうですか?
 栗山 全くゼロだと思います。
 荒木 また。
 栗山 はい。みんな順調に成長して、このまま山を登ると思うじゃないですか。それが、行かないって事は、13年に痛いほど感じているので、だから、優勝した次の日帰ってきて、ロッカー整理して、みんな別れる時に、ちゃんとやってよって。あんな事いうの可愛そうですけど、一番差の付く、個々に離れていく、この時期、ここしか差が付かないと思っているので。ただ無茶苦茶練習するのでなく、どの方向で、何をするのかっていることを、ちゃんとやってくれないと、折角積み重ねた物が、シーズン中はずっと見ているからいいけど、積み重ねた物が、積み重なっていかなくなっちゃうんで、それが一番怖いっていうか・・・」

 やっぱり栗山監督は、考えている事が凄いなぁと思った。来年は、絶対大谷を観に野球場へ通うぞと思った。来年は、ラス・ベンタス闘牛場に、ホセ・トマスを観に行く事、それと、大谷だ。いつ見るの?今でしょ!


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