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10月31日(金)

ハローワークで求人検索の後ブクオフへ。 がきデカの文庫を見つけ、連載時リアルタイムで読んでいたので懐かしさのあまり読みふけり、結局買ってしまう。 この下品さ、先の読めない展開がすばらしい。
  • 山上たつひこ『がきデカ(1)(2)』(秋田文庫)各¥105

10月30日(木)

ゆっくり朝食をとり実家を出る。 大阪で乗車券を分割購入し上りの新快速に乗るも、朝の人身事故の影響か部分的に徐行運転中で鈍行とそれほど変わらない感じ。 往路寄らなかった京都で下車。今まで阪急や京阪ばかり利用していて、JRの京都駅は初めてかも。 駅前には京都タワー。新幹線からも見えているおなじみのタワー。 いつ見てもロウソクそっくり。

市バスで10/18〜12/7までの特別展覧会「japan蒔絵〜宮殿を飾る東洋の煌めき〜」開催中の京都国立博物館へ。 さすが平日昼間、人も少なく、じっくり読めたし気に入った展示に引き返しては何度も見返すことができたし、内容にも満足した。 マリー・アントワネットをはじめ海外にこれほど日本の工芸品のファンがいたとはね。 そういう所蔵品にお目にかかるチャンスも滅多にないしね……
西洋で唐子の絵を模して描かせたものが、連れている犬だけ洋犬の姿になっているのもたいそうおもしろい。 この展示に関しては、Uさんにその場でいろいろ教えてもらいたかったなぁ。 常設展示の「阿弥陀二十五菩薩来迎図」、スピード感といい構図といい大好きな作品だったのでやっと見られた〜。

京都駅でお子の好きな生八橋(聖護院)と漬物をお土産に買い、またまた在来線の旅で帰宅。
♪夕方がったん電車が通るよ、夕間暮れの空を(たま「電車かもしれない」)
うちの猫は迎えには出てこず、代わりに息子の猫が玄関までお出迎え。 おまえはほんに愛い奴じゃのう。
    10/27〜10/30到着便:
  • ユリイカ平成19年1月号−特集*松本大洋(高野文子との対談掲載)
  • 友部正人&たま『けらいのひとりもいない王様』CD (AXCR-4)¥1,150
  • 柳原陽一郎『ふたたび』CD (TKCA-72935)¥1,800

10月29日(水)

一度も着ていない私の振袖一式が実家に眠っている。 今回お子が「もったいないから自分が着る」と言い出したので、おそるおそる母に切り出したところ案の定かなり不機嫌になった。 というのもこの振袖、父方の伯母が勝手につくって送ってきたものだからだ。 伯母一家は気のいい人たちだが、さすがにそれはいかがなものかと。 私は着物の色柄が好みでなく着る気になれなかっただけだが、娘の振袖づくりの楽しみを奪われた当時の母の怒りたるや30年後も衰えず。

そのいきさつを連れ合いとお子に話し「おばあちゃんの前では、振袖の話はできるだけ避けよう」という暗黙の了解がなされた。 モノに罪はないが、レンタルしたほうがどれだけ気が楽か。

10月28日(火)

夕方から弟の家へ。 午前中甥の七五三参りと写真撮影があり、疲れているだろうから長居はしないつもりだったのだが、 みんなでやったすごろくが意外と進まないもので結局21時ごろまで遊んでいた。 4月に生まれた姪にも全然泣かれず(人見知りを始めたと聞きひそかに心配していた)、あやしても抱いても機嫌よく笑ってくれるので、 そりゃもう泣かれるよりずっとかわいく感じられるものだ。

栗の季節になると名古屋でも販売されるすやの栗きんとんを手土産に持参し、あわよくばひとつ味見できるかともくろんでいたのだが食べる時間がなく残念でした。

10月27日(月)

実家へ。 働いている時は職場から直接新幹線か近鉄特急で帰ることが多かったが、今は時間に余裕があるので在来線乗り継ぎで移動してみる。 JR東海ツアーズで「名古屋−岐阜」「岐阜−京都」「京都−大阪」3枚の乗車券を分割購入。 特定区間で区切ると「名古屋−大阪」一括購入より380円安いからだ。 ちなみにみどりの窓口では、当然ながら一括購入しかできないとけんもほろろ。 ホームに来ていた新快速に乗り2回乗り継げば、関ヶ原や瀬田川の景色を楽しみながら待ち時間込みでも3時間くらいで大阪着。 梅田古書倶楽部は残念ながら月曜定休で寄れず、数年?十数年?ぶりの揚子江で懐かしの塩ラーメンを食べてから古書のまちのワゴンで本を一冊購入。
    梅田にて:
  • S=A・ステーマン『殺人者は21番地に住む』(創元推理文庫)¥100
    誰かのミステリ書評本でネタバレ済みだが、それでもおもしろければ拾いものだ。

10月25日(土)

CDとレーザーディスクを80点ほど処分。 いつも持ち込む中古盤専門店では状態がよくないため引き取ってもらえなかったCDがブクオフで売れた。 査定が甘いのかな。
  • クリストファー・ムーア『悪魔を飼っていた男』(東京創元社)¥105
  • チャールズ・L・グランド『死者たちの刻』(創元ノヴェルズ)¥105
  • 土曜プレミアム『我はゴッホになる! ―愛を彫った男・棟方志功とその妻―

    10月23日(木)

  • 松本大洋「鉄コン筋クリート」
    一気に読んだ。

    10月22日(水)

    美輪明宏特集「SONGS」第二夜に備えてチャンネルを変えるとたまたま「熱中時間 忙中趣味あり」142回の再放送中。 15分の短縮版だが、とりあげられていたのはなんと元たまの知久さん。 先週の放送を知っていれば、録画予約して出かけたのにな〜! たまのアルバム『さんだる』ジャケットのイラストにも描くほど虫が好きな知久さんが、小さなツノゼミに熱中しその産卵を観察するために根気づよく三回も八ヶ岳を訪れている。三度目の正直。コブシの木に卵を産みつける母ツノゼミをじーっと見つめ、とても嬉しそうにバンザイをしてみせた。

    番組で少しだけ知久さんのライヴ場面も流れ、そこで「月がみてたよ」を歌っていた。 この番組制作スタッフの選曲センスが嬉しいね。 ファンなのかもしれない。
    -名前もついてない小さな虫たちも
    -こっそり草のかげ
    -うつむいた花たちも
    -誰も気づかない
    -そんなものたちを

    -月がみてた 月がみてた 月がみてたよ(知久寿焼「月がみてたよ」)
    「月がみてたよ」は名古屋の鶴舞のライヴハウスK.D.Japonで上演されたお芝居の主題歌。 ちく商会で購入したCD-R『ひとだま音頭』に収録されていて、つい最近初めて聴いたところ。 真っ白なCD-Rのレーベル面には、印刷でなく知久さん直筆でタイトルと名前が書いてある。

    10月20日(月)

    観た番組:
  • NHK-BS1 犠牲の先に夢がある〜ロシア国立ペルミバレエ学校〜
    15歳の少女オクサナを紹介する。 5歳から親元を離れ全寮制のバレエ学校で朝9時から夜9時までバレエ漬けの英才教育を受け、洗濯も自分で手洗い、掃除も雑巾がけ。 第一線で活躍中のプリマでもある教授によると「バレリーナはマゾヒストなのです」 また自分に厳しいから、そのぶん人にも厳しいと。

    もっと食べなくてはだめ、と注意されても「自分はまだ太っている」と頑なに自己流の食事制限を続ける少女は、 泣きべそをかきながらも自分を磨き続け、2年後まるで別人のようにたおやかな蝶に変身していた。 拒食症を受けいれ克服したんだね。もう顔の表情がちがう!

    継続は力なり、とか自己研鑽とか切磋琢磨とか、そういう言葉と無縁な日々を送っていた自分を反省である。 ましてはわが子をや。 「獅子はわが子を千尋の谷に突き落と」……うわぁぁ、そんな厳しい愛情、理想だけど私にはとんでもない、とてもできませんぜ。

    10月19日(日)

    地区の公民館・自治会・各種団体合同で開催の運動会。 着順に並んだ旗のところで待機し、競技終了後に退場門まで選手を誘導する係なので、ずっとグラウンドで日に当たっていたせいで首、というか喉からTシャツの襟ぐりまで真っ赤に焼けてしまった。 顔には日焼けどめを塗っていたのになぁ。頭隠して尻ならぬ首隠さずである。

    10月18日(土)

    来年の手帳を購入。 見開きで1か月分の「日曜日から」始まるカレンダーがついていれば、どこのものでもかまわない。 表紙がいまひとつならカバーかけてしまうし。
      新刊書店にて:
    • 小林信彦編『横溝正史読本』(角川文庫)

    10月17日(金)

    バスで武蔵が辻下車→近江町市場→金沢駅→高速バスで名古屋
    近江町市場ではのどぐろの一夜干しとイカの黒作りなどを買い込み、バスで再び4時間の旅で名古屋へ。 車内で食べたタコの炊き込みご飯弁当もおいしかった。 まあよく食べた三日間でした。 不在中ちく商会に注文したCD-Rなどが届いていた。
      到着便:
    • 知久寿焼『たまははき居酒屋ライヴ』DVD (CHIKU D01)
    • 知久寿焼『ひとだま音頭』CD-R
    • 知久寿焼『いつでもいつまでも』CD-R
    • Pascal Comelade 『Ragazzin' the Blues』CD (eva wwcx2029) ¥1,500

    10月16日(木)

    和倉温泉→金沢→市立安江金箔工芸館→兼六園→伝統産業工芸館(休館日)→県立歴史博物館→成巽閣
    早起きして朝風呂。 先客が二人のんびりと湯に浸かっている。 温泉は何度入ってもいいねぇ。 朝食の膳は自分で焼くハタハタとふぐの一夜干し、アカニシ(貝?)の佃煮、イカの自家製こうじ漬けに「かじめ」という海草の味噌汁がいかにも海の温泉らしい。 それにもちろん温泉卵、とろろと湯豆腐とサラダに果物。 仲居さんが「たっぷり食べてって下さいね」とおかわりをよそってくれる頃には、すでに朝食の域を超えた量を食べている。 チェックアウトして駅まで送ってもらい、サンダーバードで金沢へ。

    金沢市立安江金箔工芸館は金箔打ち立て師の安江孝明氏(故人)が私財を投じた工芸館を、米寿の記念に金沢市に収蔵品ごと寄贈したため現在は市の所有となっている。 金箔入りのお茶とお菓子をいただいた後、金箔を竹製の枠で一定の寸法に切り取り専用の箸でつまんで箔合紙に移す「箔移し」の実演を見せていただいた。 手でつまむと潰れて消えてしまうほどの薄さの金箔ですよ。 呼気を吹きかけるとたちどころにくしゃくしゃになってしまう金箔ですよ。 それをいともたやすく扱える長年の経験に培われた職人の技は本当にすごい。 コツは「息をかけず風を送ること」とのこと。

    安江家の息子は大学生になっても夏休みには必ず箔打ち紙の仕込みをして、それでようやく洋服1枚買ってもらえるほど職人の家の清貧を叩き込まれたそうだ。 そんなご長男はのち岩波書店の社長となった安江良介氏。 お土産は10年以上箔打ちに使った和紙を利用した金箔製造の副産物「ふるや紙」である。 使うのがもったいないね。

    バスで兼六園へ向かい、中心の霞ヶ池からの高低差による水圧を利用した日本最古の噴水を見て、歴史博物館のDVDで辰巳用水のなりたちを知り、 ダイナミックな欄間や鴬張りの縁側、腰板にギヤマンをあしらった障子、群青を使った天井の意匠がすばらしい前田家12代奥方の御殿成巽閣を見学。

    夜は赤玉本店でおでん盛り合わせとのどぐろの塩焼き、白エビの唐揚、牛すじの煮込みを注文。 前日の魚づくしよりも満足度が高かった! 近くなら通いたいくらい。

    10月15日(水)

    名古屋→高速バスで金沢→和倉温泉
    名古屋駅前よりバスで4時間の快適な旅、金沢へ。 名神の米原から北陸自動車道に。進行方向左側の席からは途中で若狭湾が見えるよ。 金沢観光は翌日まわしにしたので、和倉温泉への乗り換えの待ち時間に評判のよい駅ビルの回転寿司屋で腹ごしらえをする。 おまかせの握り盛り合わせの分厚いネタとぱりぱりの海苔に舌鼓をうち、具の切り身からとてもいいだしが出ている味噌汁を飲み干し、ウニだけ追加で握ってもらうともう満腹。 特急で終点の和倉温泉駅へ。車窓からの景色、玄関に温室のような囲いがしてある家がとても多いことに気づく。 冬の雪に備えての防風室(玄関フード)らしい。

    「総湯」という共同浴場の玄関先では誰でも足湯に浸かれ、卵を持参すれば温泉卵を作れるようになっている。 湯音は89度とかなり高い。 昔は温泉にはこういうところがあちこちにあって湯治客と地域の人たちがふれあっていたかもしれない。 海沿いを散歩するとひときわ高くそびえているのは、皇族御用達旅館「K賀屋」の20階建て新館である。 ちょうど観光バスが到着して、大勢の仲居さんたちがてきぱきと宿泊客をさばいていた。 シースルーの展望エレベーター4基がせわしなく昇降する様子を自分の泊まる宿の窓辺から眺め、 「あれだけの団体さんと一緒に入浴したらさぞ賑やかだろう」と思った。

    夕食の前にひと風呂。時間ぎめで貸切なので源泉かけ流しの湯を堪能。 作務衣も貸してもらえ岩盤浴でじゅうぶん汗をかき、熱い湯でざばっと流し。 泉質は無色透明で塩分が強く、飲用も可だが舐めるとかなり塩からかった。

    山の宿の山菜づくしも味わいがあっていいのだが、やっぱり海の幸がふんだんに食べられるほうがありがたい。 というわけで肝をタレ代わりにいただく鮑にサザエ、白エビ、アマダイなどの刺身とのどぐろ(赤ムツ)の煮つけ、身のいっぱい詰まったカニに魚の鍋に魚好きはもういうことなし。 仲居さんがころあいをみて炊いてくれる釜飯も、おかずで満腹の胃には完食するのもやっとやっと(でも食べた)。 ひたすら2時間くらい食べ続けていたんじゃなかろうか……

    10月14日(火)

    ハローワークで失業認定。
      ブックオフにて:
    • 別冊美術手帖4月号・季刊コミッカーズ1999年春号(美術出版社)¥300
      多田由美の未発表原稿「ニュートラル」掲載誌ではありませんか〜。
    • 松本大洋『鉄コン筋クリート all in one』(小学館)¥700

    10月12日(日)

      密林マーケットプレイス到着便:
    • Pascal Comelade『Back to Schizo(1975-1983)』CD (GA8679.AR)¥2,980
    • UA 『Dorobon』CD ¥99

    10月11日(土)

  • NHK BS-2「破獄」
    緒形拳追悼番組。1985年芸術作品賞受賞ドラマ、原作吉村昭。観る時間がなくて録画のみ。

  • NHK「Family History」ルー大柴
    自分のアイデンティティと関わる「家族の歴史」。 果たして、どこまで知っているのだろうか。 番組では、ゲストに代わって徹底的に調査。そこには、初めて知る祖父母や父母の素顔、さらには、明治、大正、昭和といった激動の時代が浮かびあがる。 (NHKオンラインより)
    ルーさんは番組スタッフが取材したVTRを見て目を真っ赤にしていた。 大陸で築いた財のすべてを失い引揚げてきた祖父と、(法事には日本からハルビンまでチャーター機で僧侶を呼び寄せたほどの)何不自由ない子ども時代と楽しい東京の大学生活を送り、親友の特攻を知り召集を待たず志願して大陸で敗戦、過酷なシベリア抑留体験をほとんど語らなかったという優しい父への思いを深めていたのか。

    シベリアより帰国後に結婚した妻の実家の印刷所を手伝っていた父親を振り返ると、夫婦仲はよかったという。 「(いろいろなことに)なじめなかったんでしょうね……」とルーさんが自分自身に言い聞かせるように言う。 18歳の時ご両親が離婚してからはほとんど会っていなかったそうだ。

    生別した家族とは、たとえ居所を知っていてもよほどの理由か口実がない限り連絡をとることが(でき)ない。 自分の生活が忙しい時には、思い出すことすら少なくなる。 「去るもの日々に疎し」という言葉のとおり。 私はそうだったな。

    亡くなるまで療養生活を送っていた病院の父の枕元には、シベリア抑留特集記事の載った週刊誌と、収容所でもよく吹いていたハーモニカが置かれていたという。 ルーさんがぽろぽろと涙をこぼした。

    当時の世相や戦争体験を知る人たちへの取材も丁寧だったし、時代の記憶を風化させないためにも(取材と編集が本当に大変そうなので)半年に一度くらいでもいいからまた制作してもらいたい。
    「マイ・サンが いつかテレビジョンにでるからね」

    10月10日(金)

  • NHK広島放送局開局80年記念ドラマ「帽子」
  • 「名優・緒形拳さん逝く」
    緒形幹太・直人兄弟と津川雅彦、「帽子」も手がけた脚本家の池端俊策を交え故人を偲ぶ追悼番組。
    • Pascal Comelade 『Danses et Chants de Syldavie』CD (DELABEL DE394272)¥2,500
    • Pascal Comelade 『El Cabaret Galactic』CD (MA33001)¥1,800
    • Kimmo Pohjonen 『Kielo』CD (ZENCD 2060)¥1,200

    10月9日(木)

  • 緒形拳追悼企画・古畑任三郎スペシャル「黒岩博士の恐怖」
    もちろん緒形拳は煮ても焼いても食えない監察医、黒岩博士の役。 “おみくじ殺人事件”の犯人を追う古畑のしつこさに手を焼きつつ知恵比べを楽しんでいるふう。 博士が実験室で焼いて食べているアタリメがうまそう。 狐と狸のような「やらねえよ」「要りません」の掛け合いも楽しい。
      到着便:
    • ユーロ・ロック・プレス vol.38
      心待ちにしていたVdGG巻頭インタビュー。 70年代と現在のVdGGの違いは「ずっと歳を取り、賢くなった」んですと。 でもバンドの音は決して小さくまとまっていなかったものね。

    10月8日(水)

  • 「徹子の部屋」追悼・緒形拳
    新国劇時代の失敗談や亡くなった両親の思い出、自宅で愛猫「オーイ」(メス・当時推定10歳)と一緒のホームビデオなど。

    子供たちをよく落語に連れて行ってくれ、突拍子もないものを買ってきて家族を驚かしたり自宅を「歌舞伎湯」という風呂屋に改造してすぐ潰れたり、粋な遊び人だったお父さんの話はとても楽しい。徹子さんの大ファンだった父に「あんな立派な番組になぜ出ないんだ」となじられ、「台詞のない番組には出ないんだよ」と言いながら、新国劇の先輩である当時の番組プロデューサーに自ら「徹子の部屋」の出演交渉をしたという親孝行な打ち明け話に、徹子さんはとても嬉しそうだった。
    「おいビワを買ってきたぞ」と子供たちを呼ぶので喜んで父のところへ行くと、大きな風呂敷包みの中から琵琶が出てきて、おかげで今でもあの「平家物語」は大嫌いと笑わせてくれる。

    ちょっとだるいと言うので医者に診てもらった時すでに全身に癌が転移していたにもかかわらず、ひと言も痛いとも苦しいとも言わず「シンジ(緒形拳のすぐ上の兄。俳優座の養成所で勉強し19歳で夭折)のところへ行くからね」と亡くなった信心深い母を「いい、母でした」と語る口調も淡々と穏やかで、放送された2005年にはもうご自身も闘病中だったというから、この人の生きざまを手本にと、ある程度覚悟していたのかもしれない。
    トーク番組は苦手という緒形拳が例外的に6回も出演した中からの抜粋編集。

    10月7日(火)

    再見した映画:
  • ポール・シュレイダー監督『mishima:a life in four chapters』(1985)
    緒形拳さんの訃報を知り、出演作で唯一持っているDVDで再見。
    “Art into action”
    昭和43年2月26日三島由紀夫はじめ後日楯の会一期生となる11名で「我々ハ皇国ノ礎ニナランコトヲココニ誓ウ」と書いた紙に自分の指を切りその血で署名する。 その場面で、三島を演じた緒形拳は著書やブログ題字でなじみの深い味のある四角い字で「平岡公威」と書いていた。
    『楢山節考』『砂の器』『火宅の人』『八甲田山』 出演作にずらりと傑作の並ぶ中、一番強烈に焼きついているのは、『鬼畜』の小心な印刷屋の親父。 ご冥福を心よりお祈りいたします。 緒形さんも愛猫家だったんだ……

    追悼特番として10/9に緒形拳が犯人役で出た古畑任三郎、10/11にNHK BS-2で『破獄』、10/12にWOWOWで『復讐するは我にあり』を放送するらしい。 これは逃せない。

    10月5日(日)

    再読した短編:
  • ジャック・フィニイ「ゲイルズバーグの春を愛す」
    I Love Galesburg in the Springtime
    gale's burgは「そよ風の街」、 ゲイルズバーグの街を愛してやまない人たち同様、ゲイルズバーグの街を愛してやまない過去がいる。 物語の結びは目にも鮮やかな赤い車体。ビュイック1916年型ロードスターが読者の心を捉えていつまでも離さない。

    10月3日(金)

    仕事を辞めてからめっきり歩かなくなり運動不足を自覚しているので、久しぶりに駅まで歩き電車で栄まで出る。 NHK裏手のビル2階のarch recordsは2006年にテレビ塔の向い側に移転したそうで、中古盤専門店に変わっていて驚いた。 そういえば数年前に職場が移転して、このあたりに足を向ける機会がなかったな。 店内は前の店と同じように清潔で居心地がいい。 私の他にお客さんがひとり、CDの試聴をしている。 パスカルズの心の師匠Pascal Comeladeは仏盤かアヴァン・ポップのコーナーだろうか? 店員さんは商品をしっかり把握していて「今日入ってきたばかりです」とすぐ新着コーナーから探してきてくれた。
    • Pascal Comelade『Musiques pour Films, Vol.2』CD (evva 33010) ¥1,400
      《映画音楽集 第二巻》解説によると「存在しない映画の存在する音楽集の第一巻の存在しない第二巻」、とまるで スタニスワフ・レムの架空の書評本『完全な空』のようでおもしろい。 「爪楊枝の大聖堂」「スキゾに帰れ」そそる曲名である。 パスカル・コムラード(1955-)はアコースティックやおもちゃの楽器(トイピアノなど)主体の音楽で知られたフランス−カタロニア系アーティスト。
    しばらく栄をうろうろ歩き回り、中日ビル地下の山本屋で久しぶりに味噌煮込みうどんを食べ、電車の中で『幼年期の終わり』を読み帰途につく。 今日もいい一日。

    帰るとギタリストである友人が制作したCD2枚が届いていた。 今年の夏もロシアに数週間滞在し、モスクワやサンクトペテルブルグにいる友人たちとのセッションを楽しんできたようだ。 いつも届けてくれるロシアの空の美しい絵葉書は楽しみのひとつ。 ジャケット写真もロシアの友によるものらしい。 彼の音楽もギターの音色もその空と同じように澄みわたり美しい。
    • 定兼正俊『Keep Goin'』CD
    • 定兼正俊『Masatoshi Sadakane 1997-2005』CD

    10月2日(木)

    Andy Partridgeによる「Into the Atom Age」曲解説で触れていた美術史家Bevis Hillierの著書『Austerity / Binge: The Decorative Arts of the Forties and Fifties』というのがおもしろそうだ。
    御大幼少時のエピソードで、台所の窓のカーテンの片方がずっと上下逆さまにかかっていて(エッフェル塔やプードルなどのプリント柄が)逆さまだといくら言っても母親にとりあってもらえず、それを見るたびに気が狂いそうになったとか。 ああ、私もきっとそれはヤですね。

    10月1日(水)

    猫を病院に連れて行く。 今週いっぱいでエリザベスカラーをはずしていいそうだ。 ただいま5キロ。 ちょっと太めか。

    聴いた音楽:
  • たま『東京フルーツ』CD (CHIKYU-008)
    石川さんのシュールな世界をたっぷり味わえる「小象の…」も、♪ぼくの未来は火葬場の灰……と歌うみもふたもない名曲「安心」(知久)、いい声をしてるなと聴きほれる「いわしのこもりうた」(知久)、日本語としてどうなのよと思いながら水まきのシャワーにかかった虹のような美しさがやっぱり好きな「夏ですと1回言った」(滝本)も他のバンドでは再現できない音楽だ。

    解散ライヴDVD『たまの最期!!』で凝ったライティングと弾けた演奏を楽しめる「へっぽこぴー」も「ハッピーマン」も大好きなのだが、石川曲でひときわぶっ飛んでいるのが『いなくていい人』の「健さん」。
    鳶職の健さんが妊娠した!できちまった!おなかの子のため禁酒禁煙、足場の上でつわりにクラッとする健さんはでも少し幸せそう……という内容である。とんでもないシチュエーションながら明確な映像が(カフカの、目覚めたら毒虫になっていた)ザムザ並みに不思議な説得力をもつ。
    たまをコミックバンドの一発屋と思っている人は多いかもしれないけれど、彼らの音楽はもともと言葉どおりの意味で「プロブレッシヴ」だった。歯切れがよく、無駄な音はひとつもない。「かにばる」などイメージは鮮烈だ。 自分の音楽を誰に妥協することなく演奏して、なおかつ商業ベースに乗せられる人たちを私は単純に尊敬し、応援している。けちって中古盤でなく、新譜で買う程度の、ほ、ほ、ほんとにビリョクながら。

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