7月31日(月)長編を続けて読んだので気分をかえて、ディヴィッド・H・ケラー『アンダーウッドの怪』(国書刊行会)精神分析医としての臨床例に基づく鬼気せまる異常心理小説、文明をコミカルに諷刺したSF好篇、ヒューマンな残酷味をたたえたファンタジー…… ロバート・ブロックにも通じるサイコ・ホラーの先駆者の傑作怪異幻想譚全18篇を精選!(解説より)そのサイコ・ホラーの一篇「リノリウムの敷物」を読む。 夫のためといいつつ、実は自分の思い通りに夫の調教を重ねる妻のお話。 上等な絨毯を汚しかねないから、と台所から居間から寝室から、 夫の足もとに(彼の楽しみをひとつひとつ取り上げて節約した金で買い足した)リノリウムの敷物を次々と敷き詰めていくのだ。どうだ怖いだろう。 これから結婚しようという男性には、この話お勧めしないなぁ。 そして電車の中で、こちらはこれから結婚しようという女性にはお勧めできない「死んだ女」など4篇を読む。 7月30日(日)ニコラス・ブレイク『章の終り』読了。本と出版に関する話で、ミステリだが小見出しが「原稿が印刷所に入り、本になる過程(巻末解説より)」の校正用語。第一章「組み始め」終章「校了」まで凝っている。 ニコラス・ブレイクは桂冠詩人セシル・デイ=ルイスが小説を書く時に使った筆名だそうだが、 まだ他の作品を読んだことがないので俳優である息子ダニエルの方が、私にはなじみが深いのだ。 詩人・詩作に関する厳しい考察から、(もちろん主人公である探偵ナイジェル・ストレンジウェイズに代弁させているわけだが)作者の詩人としての顔が垣間見える。 優れた才能の発露と枯渇という、苦い後味を残す作品だけど。 偶然か、翻訳した小笠原豊樹氏も詩人「岩田宏」の顔をもつ人だ。
7月29日(土)
英語圏のSNS、myspace内を散策するとJoy DivisionありVdGGありCaptain SensibleありXTCあり、 御大の娘Hollyと思しき「スウィンドンのスモッグを愛する」21歳のシンガーあり。「XTCのお友達」にあのTodd Rundgrenが連なっているのもなかなか愉快。 7月28日(金)"Return To The Dark Side Of The Moon (A Tribute To Pink Floyd)" V.A. の2曲にColin Mouldingが参加、彼の参加曲でAndy Partridgeがエンジニアリング担当……なのだが未聴。 Uさんに教えてもらった英国密林の試聴コーナーでちょろっと聴けたが、「なんだこれは」のオープンング。 ええっ、マルコム・マクダウェル?
来週やっぱり洋書買って帰ろうか…… 7月27日(木)ヘンリイ・セシル『法廷外裁判』1959年作品、読了。主人公は「嘘アレルギー」の特異体質をもつロンズデイル・ウォルシ。 生まれつき嘘がつけず、また人が嘘をついているのがわかると顔が真っ赤になってしまうのだ。 殺人罪で有罪判決を受けたウォルシが脱獄し、事件の関係者を誘拐同然に集め、法廷外の再審を要求するというお話。 死んだ証人の未亡人ミセス・メドウズへの尋問とその受け答えを電車の中で読んでいて、笑いを堪えるのが大変。 大団円、と思わせておいて最後にもうひとひねりある結末にほろり。 映像化したものがあれば、ぜひ観てみたい作品だ。 7月26日(水)夕方から風来坊で軽く食事。 西日を避けつつ待ち合わせ場所(旭屋書店と思い込んでいたが勘違いで、丸善だった)まで地下鉄ふた駅分歩く。 途中の古書店に寄り道。
童謡の「ロンドン橋落ちた」を踏まえたもの。 作者はガーシュインのバラード"A Foggy Day"の一句「大英博物館は魅力を失った (British museum, had lost it's charm) 」を題名にしようと決めていたが、 版権の関係でこうなったのだとか。 作者の名前も何も知らず、店頭で「タイトル買い」した一冊。なんだかおもしろそうだ。 中央公論社『ザ・スクープ』所収のリレー小説「屏風のかげに」を読む。 BBCで1930年に放送されたラジオ合作小説。 BBCはまずヒュー・ウォルポールに企画を説明して第一章執筆を依頼。 完成原稿はアガサ・クリスティーの手元に送られ第二章を執筆、第三章をドロシー・セイヤーズ、ここまで一切の事前協議なし。 その後はアントニイ・バークリー、E・C・ベントリー、ロナルド・ノックスが協議して解決方法を見つけ出し、四〜六章を分担して完成させ、 ラジオで毎週一章ずつ朗読されたというもの。 リスナーもラジオの前でひとつの手がかりも聞き逃すまいと集中して、放送の後は各自推理を働かせて次の放送を心待ちにしていたんだろうなぁ。 現在ではなかなかできない贅沢な企画だと思う。 7月24日(月)アントニイ・バークリー『トライアル&エラー』読了。中盤からとにかく続きが読みたくて、今朝も電車内でも降りるぎりぎりまで粘る。 昼休みには同僚の誘いもぶっちぎりで喫茶店で読みふけり、さめかけたコーヒーを前に余韻に浸っていた。 「キャラが立つ」これにつきる。 主人公から死刑執行人まで本当に魅力的。 かならず死が訪れるという考えは、あまりにも長く心の中にあったので、もう準備はすまして、本当の死が実現するのが、何となくほっとするような気分だった。(p496)こんな作品読んじゃって、次に何を読めって……。 今日中に読みきってしまうだろうと思い、予備として鞄に忍ばせていた(酸っぱい匂いのする)古いポケミスの『黄金の十二』から同じバークリーの短編『偶然は審く』を…… と思ったら、この作品は『毒入りチョコレート事件』の短編ヴァージョン(短編の発表が先なのね)だった。 『毒入りチョコレート事件』未読なのに! それでも帰りの電車で誘惑に抗えず読んでしまった、雨の夕方。
7月23日(日)古書店で読んだ本など15冊を処分。
7月22日(土)
7月21日(金)『ハンドフル・オブ・ダスト(A Handful of Dust)』(1988)は映画がウォーの原作を裏切らなかった作品。 間抜けな若当主をジェイムズ・ウィルビーが好演していた。 週末にでも、家のレーザーディスクで再見したいが…。 後半の舞台であるアマゾン奥地を思わせる、パンパイプとケーナによるメインテーマもお気に入りで、サントラCDは今でもたまに聴いている。 物語の結末のイヤラシサはイーリイ、カーシュ並。
7月19日(水)今夜の「世界の車窓から」は世界遺産のヴィース教会(ドイツ)。 BGMに『天国への階段』が流れ思わずTVに見入ってしまった。アントニイ・バークリー『トライアル&エラー』 1938年発表。P・G・ウッドハウスに献じた小説だけあってとぼけた味わいが楽しい。 事件が起こりそうで起こらない、それは根は善良な主人公トッドハンター氏が「公益の殺人」を思い立つも、 殺す相手を(また手段を)定めるのにさまざまな逡巡があるからで…… 彼の背後では、運命の女神がそのにせの金塊を片づけ、偽造証券をしまい込んで、いかさまの貸借対照表をふたたびポケットにおさめた。 お人よしは、まんまとだまされたのだ。(p92) 7月18日(火)
7月17日(月)7/14の退社後そのまま新幹線で帰省し今朝まで滞在。 実家に3泊以上したのは10年ぶり。 必ず立ち寄る梅田の古書店と実家近くのブックオフで腕がちぎれんばかりにたくさんの本を見つけた上に、今日の帰りがけにさらに2冊。
筒井康隆『愛のひだりがわ』はジュヴナイルだが筒井作品のファンであるTさん(ギターのTさんとは別の人)から奨められ、たまたま実家近くのブックオフで見つけたもの。 一般的な良識でしか価値判断をしない人はこの本が中学生向け、と聞いて眉をひそめるかもしれないが、 読んだ子供たちが「強いおとなになるためには何を身につけまた何を捨てなくてはいけないか」ということにきちんと向き合える作品だと思う。 7月13日(木)今日の短編:ディヴィッド・イーリイ『緑色の男 (The Marked Man)』ああまたヤな話を読んでしまった。 『世界ベスト・ミステリー50選(下)』所収。 7月12日(水)
豚ちゃんや。以前読んだ柴田元幸共訳のアンソロジー『いまどきの老人』がたいへん楽しかったので、老人もの(というジャンルがあるなら)に特化して読んでみるのもおもしろそうだ。 が決してフケ専じゃございません。 7月11日(火)家では短編中心。 京極夏彦『どすこい。』所収『四十七人の力士』を読む。 「○○○○○連れてくれば良かった!」(ネタバレしないよう伏字)ああ後悔先に立たず。以前書いた、XTCを流していた古書店の店頭100円コーナーに光文社EQが1978年創刊号(これだけ300円)から数十冊入荷。 昼休みに取り置きをお願いしジョイス・ポーター、イーリイ、エリンあたりの短編収録号を持てるだけ(バカ)提げて帰る。 ゴミ袋のような真っ黒いビニール袋に詰め込まれた黄ばんだ古雑誌を嬉々として提げる奴…… 店頭では気が動転して奇数月の号ばかりなのに気づかなかったが、EQは隔月刊だったんだな。 7月10日(月)『ゴールデン・フリース』の次にはクリスピン『お楽しみの埋葬』を読み始める。月曜に埋めれば、達者になれる土日に埋め、じゃなかった持ち込まれた本が棚におさまる頃……と期待して昼休みに古書店へ。
7月9日(日)「“スペイン異端審問なんかまっぴらだ!”」 とイギリス英語のアクセントに苦労しながら話に割り込む人工知能イアソン。『ゴールデン・フリース』読了。アルゴ=「○○の○○」という壮大なオチに唸る。 ○○が○○したのではないか、というところまではうすうす勘づいていたのだが……。 作中出てくる「星虹(スターボウ)」のイメージで吉田美奈子を連想してしまったり。 7月8日(土)急逝した洗濯機、愛妻号(1989-2006)の後添いは消臭・除菌・花粉除去機能つき白い約束に決まった。数日間のヤモメ生活はもう不便で不便で……。
今読んでいるのはロバート・J・ソウヤー『ゴールデン・フリース』、 なかなか人間くさい人工知能イアソン(殺した女性の元夫に見つめられ、 気がとがめてか?思わず目をそらせてしまったり)が語り部で、今のところ正気のようにみえるが、 どこぞのハルさんのように「デイジーデイジー」など歌いだしてしまったらどうしましょう。 7月6日(木)Mac不調というギター職人Tさんが携帯からメール。 去年のダムドの来日公演でCaptain Sensibleが弾いたのはTさん作のギターで、そのギターも今月満一歳。 自分のギターを「うちの子」と呼ぶTさんには子供も同じだろう。 わたしは「もう一年」という感覚だったがTさんには「まだ一年」らしい。 今度は新店舗でTさんと、Tさんの職人らしいところをうまくフォローしている奥様にもまたお会いしたいものだ。7月5日(水)オンライン古書店に注文した本がそろそろ届く頃なので、待機をかねて今日はお休み。 きのう再配達に間に合わなかった荷物のひとつ 羽山博『Windows XP できる大事典』(インプレス)も到着。 マニュアルを読むのにまずカタチから入るので、昔やっていたICQや今使っている携帯電話の取説にはインデックス(ダンナからのお下がり)にけし粒のような字を書き入れ嬉々としてつけたものだった。 数日前にME→XPにアップグレードしたばかりで、もちろんこの「できる大事典」にもインデックスを……、 おっとこの本には項目が印刷されたオリジナルインデックスつき、かゆいところに手が届く親切設計だった。 内容はわかりやすく、あくまで言葉はやさしく。ええお父さんや(お父さんぶりは見てないが)。7月4日(火)
今日読んだ短編は『宇宙恐怖物語』から。どれも怖すぎ。 7月3日(月)
7月2日(日)
7月1日(土)今月でサポート打切りのWindows Meよさようなら。即売会で入手した『宇宙恐怖物語』より、 わたしは、読者が、そのうちのあるものをたとえ以前に読んだことがあるとしても、またあらためて、初めてのときと全く同じように、 冷たい汗をながすことができると思うのです。 (グロフ・コンクリン/ 宇宙恐怖物語 編者まえがき)
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