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7月30日(水)

The Quiet American / Phillip Noyce / 2002年米 / 101min. / DVD
これも日本公開するやらしないやら、で輸入盤。
パイルと食事の約束をした店で知り合いの話に相槌を打ちながら気もそぞろな様子、ほんのちょっとした仕草でさえファウラアになりきっている。 ケインは痩せてジャーナリストらしく見え、フウオングとの年齢差(字幕が早くてあまり読めず、映画では何歳の設定だかわからないが、とにかく実年齢では50ほど違う)もいやらしさがなく安心した。 それほど『クイルズ』のヒヒ爺は凄かった。

よく訓練された犬のような生真面目さ、自分の優位性に無自覚なしゃあしゃあとした「フェアプレー」精神があの大柄な四角っぽい体躯に似合うブレンダン・フレーザーのパイルも申しぶんない。 ブレンといえば、この作品の小さなキーワードもあの"Gods & Monsters"と共通する「友達」だが、同じくらいかそれ以上に屈折していて、パイルが生きている間はずっと一方的な友情をファウラアは苦々しく思い続け、警察で死体の身元確認した時に初めて友達「だった」と認めるのだ。恋人を奪われようとヴェトナムで彼のした行為に激しい怒りを覚えようと。

グレアム・グリーンはカトリックで、劇中「誰かに詫びたい」という曖昧な台詞も、原作でははっきりと「神」(無神論者であるファウラアは告解や許しを得る場を自分は持たないことを知っているが)をさしている。 20年後に書かれた『ヒューマン・ファクター』でも主人公カースルが秘密を守り通すことに疲れ、立ち寄った教会の告解室で「(誰でもいいから)聞いて欲しい」と必死で乞うが、牧師カトリックの教会で「牧師」と訳しているのはおかしいがに「宗派が違う」と拒否される。 自分の手に余るものを抱えた時に、支えとなる超越者を心に持つ者なら祈ること、告白すること、許されること罰を受けることでさえ救いになるかもしれないが、持たない者は心の葛藤や孤独と死ぬまで向き合う覚悟がなければ耐えられない。つらいよ。
映画では宗教色は影を潜め、ケイン=ファウラアは(ありがたいっちゃありがたいが)やや英雄仕立ての感もあり作品の方向性は原作とちょっと違うぞ(1950年代に映画化された方は見ていない)。

7月29日(火)

"The Quiet American"DVDが到着。 ファウラアの内面描写は難しそうだが、演じるのがケインだから楽しみ。

7月26日(土)

セーターやスーツ姿のウィリアム王子(21歳の誕生日記念だそうだ)、セシル・ビートンが撮影したエリザベス女王の肖像など、Uさんが今回もおもしろい切手をたくさん貼ってくれた。
サーモクロミック(温度で色が変わる)インクが使われた「お天気切手」は、空の部分をつい何度も指で押さえてしまう。
「ノーベル賞100周年記念切手」はコンピュータによるセキュリティパターンで地球が印刷されている経済学賞、白地にエンボス加工の鳩が浮き出た平和賞、ホウ素分子のホログラムの物理学賞、サーモクロミックインクで炭素とイオンをイメージした化学賞など、その分野にちなんだ技術や図案が使われ、イギリスの切手はなかなかの凝りようだ。 (さらに、ノーベル生理学・医学賞の切手はこすると薬品の匂いがするらしい)

もちろんもっと嬉しいのは送ってくれた本と雑誌で、マイケル・ケインのインタビューが読めるのだ。 彼はあのリメイク版"Get Carter"(シ○○○タ・○○○ーン主演の『○撃者』)についてたった一言こうコメントしていた、
'disaster'だって。

7月25日(金)

リンクフリーということなので:時計じかけのオレンジ第21章翻訳
アントニイ・バージェス自身によるエッセイも紹介されている。そういうことなのか〜(先に見つければよかった)。

7月24日(木)

Andy Partridgeの"Fuzzy Warbles"がらみで、この言葉が登場するため時々取り出してはぱらぱらめくって(←読めない)いる"A Clockwork Orange"だが、背表紙の解説を読んで少し引っかかることがあった。

Stanley Kubrick's controversial film version of the novel has sealed its reputation as one of the most daring works of fiction this century.

キューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』は何度もみているし、ハヤカワ文庫(記憶ではポスターの写真が表紙に使われていた)の邦訳も読んでいるが、原作とキューブリックの映画の違いについて何か書かれていたっけ? そもそも邦訳が原作かノヴェライズかも覚えていないのだが。 今手元には英文のペーパーバックしかなく、舞台となった近未来でアレックスたちが使うロシア語風「新語」につっかえつっかえ読んでも大筋は映画と一緒(「映画が一緒」というのが正しいか)のようだし、面倒だから最後から読んでやれ、とズルをしたら、I was cured all right.で物語が終わってはいなかったのだ、びっくり。
原文はすべてAnthony Burgess "A Clockwork Orange" より。
やんちゃなアレックス君は今18歳、一児の父になって←後ろの文を読んだらまだなってないってば、息子ができたら彼が理解できる年頃になった時に自分のしてきたことを話してやろうと思ったが、彼には決して理解できないし、しようともしない、そして自分と同じことを繰り返すだろうし、息子のまた息子が同じことをするのも止められないだろう、と悟ったのだ。 そして登場するのが「(神の)巨大な掌の上でころころ転がされるオレンジ」。 なんだよう、一番大事なことが最後に書かれていたんじゃないか。
その10行ほど前にもこういうことが書かれているんだけど、なんだかせつなくなってしまったよ。 ハンドルを回すと歩き出すぜんまい仕掛けのブリキ製のおもちゃ、でもまっすぐにしか進めないから前にバンバンぶつかるんだけど、自分ではどうすることもできない……。

Being young is like being like one of these malenky machines.

そしてこれが原作の(ほんとの)結びの言葉。

O my brothers, remember sometimes thy little Alex that was. Amen. And all that cal.

7月22日(火)

テレビ番組もつまらないので、まだ見ていない分の紋次郎さん「木っ端が燃えた上州路」をみる。 殺陣の間中なぜかのんびりした例のテーマが流れているのですが。

Mean & Moody / Chris Spedding / CD (SEECD372)
  1. For What We Are About To Hear
  2. Backwood Progression
  3. The Only Lick I Know
  4. Listen While I Sing My Song
  5. Saw You Yesterday
  6. The Hill
  7. Don't Leave Me
  8. White Lady
  9. She's My Friend
  10. London Town
  11. The Dark End Of The Street
  12. Please Mrs Henery
  13. Never Carry More Than You Can Eat
  14. Words Don't Come
  15. Backwood Theme
1,2,6,9,12,13,14,15 "Backwood Progression"
3,4,5,7,8,10,11 "The Only Lick I Know"

1971年、1972年に出た2枚のソロアルバムをカップリング。 'Don't Leave Me'の可憐な女性コーラスに聞き覚えあり、とクレジットをみると"The Only Lick I Know"の全曲に参加しているリンダ・ルイスだった。
クリス・スペディングのヴォーカルを初めて聴いたが、(ちっともうまくないんだけど)'The Hill'なんか味があっていいのだ。 この人はかつてブライアン・フェリーの来日公演で、てかるリーゼントに革ジャンといういでたちで黙々とギターを弾く姿がフェリーより目立っていたのが強烈に印象に残っていながら、実は単独で出したアルバムを聴くのはこれが初めて。 音色があたたかい。

いやぁ、くつろげるわ、曲いいわ。

7月19日(土)

『おとなしいアメリカ人』読み終える。 (たとえ相手の勝手な論理に基づいた善意だとしても)差し伸べられた手はためらわずに取るしたたかな現実主義の持ち主、それがフウオングという女なんだな。 ヴェトナム人であるフウオングをフランスの鋳型から自分の用意した鋳型に移すことが彼女の幸せと信じ、彼女の国で殺した人々より靴についた血のほうを気にするパイルはアメリカそのものだ。
フウオングを失うことより、孤独のうちに老いていく自分に耐えられなかったファウラアも「ヴェトナムのため」と理由をすりかえてパイルを断罪する。 パイルと同類に成り下がってフウオングを取り戻しても、それと引き換えに(信条をはじめ)大切なものを失ったファウラアの未来はもう単に「死ぬまでの時間」でしかないだろう。 傍目にはなにもかも思い通りになったようで、これほど後味の悪い小説もなぁ。
* 「コレスポンデント(論説記者:通信には記者の意見が入り得る)」ではなく「リポーター(報道記者:意見を立てず事実の報道のみ)」であること。

7月18日(金)

明日The Wicker Man Festival(へぇ〜)にダムドが出るらしい。

きのうの話。
3人揃って仕事が早く片付き、一緒に職場を出た。 16日発売のシングルを当日用事で買いに行けず、「今日はHMV寄って帰るから」と別れ、雑誌コーナーで機嫌よくNMEを立ち読みしていたところ「いたいた」……。
なんでも隣のビルのオープンカフェでお茶でも飲んで帰ろうということになり、(携帯を持たない)わたしをわざわざ誘いに来てくれたんだそうだが、Kings of Leon(5人編成)の目立つ表紙を指し大声で「ビートルズ?」と聞かれ、「違うよ…じゃCDは4階だから」とふたりを追い立てるようにしてその場を離れる。 買ったシングルについても「日本のバンド」と言ったら倉木麻衣や藤井フミヤのライヴには行く彼女たちが真顔で「175Riderみたいな?」
強くかぶりを振っておいた。

沈黙の夏 / ママスタジヲ / CD (PCCA-80021)
CD-EXTRA:沈黙の夏video clip
  1. 沈黙の夏
  2. コメディ
  3. むずかしい愛
ママスタジヲ、今回のシングル収録曲は3曲とも川口智士の作品。
変わった音をかなり紛れ込ませている『コメディ』が特に好きかな。 それも間奏のチャカチャカしたギターに反応してしまうのだな。 隠されたテーマは♪ポケットを叩くとビスケットが、ふ・え・る、気の持ちようひとつだね。
『むずかしい愛』のとんでもない明るさ(眩しさといってもいいくらい)の出所はあのコーラスだ。 レコーディングは楽しかったろうな。

7月17日(木)

映画化の配役を知っているせいで読みながらもオルデン・パイル=ブレンダン・フレーザーが散らついてしまう『おとなしいアメリカ人』、あっという間に半分読み進む。 男たちと比べてフウオング(ヴェトナムのことでもあるのだろう)についての描写が紙のように薄っぺらく、後半ではもっと彼女の存在感が増すのか、なんともとらえどころのない「運命の女」。 優美な熱帯魚のようではあるけれども。

7月16日(水)

グレアム・グリーン『おとなしいアメリカ人(The Quiet American)』(早川書房)を読み始める。 1956年の邦訳だから今ではどこの店頭でもみかけるパンもまだ一般的には浸透していなかったらしく「三日月パン(クロアサン)」と書かれたりしているが、文体はきのうまで読んでいた『ブレストの乱暴者(Querelle de Brest)』(澁澤龍彦/1967)の方がもっと読みやすかったなぁ。

7月12日(土)

『消えた少年たち』読み終えて初めてわかるが、表紙イラストは奥が深い。

Andy Partridge"Fuzzy Warbles" 3と4が届いた。 4集の14曲目'Strawberry Fields Forever'カヴァーだけは(C)Dave Gregory。

7月10日(木)

"Fuzzy Warbles" 3と4がもう店頭に登場したという話だがIdeaで予約した自分はしばらくお預け。 Colin Mouldingの電話インタヴューを読む。 かなり長いので流しただけだが、ファンの要望にいつでも応じられる在庫をストックし、またレーベル(Virginだ)に定期的に発注をかけ廃盤化を防ぐためにもバンド自身のウェブサイトを持つことは重要だ、という話もしていた。 XTCは"Nonsuch"までの著作権をVirginに握られているから廃盤にされては困る。 当然ながら、コリンはVirginリマスター英盤には「すばらしいアートワークが台無し。最低限の金しかかけたくなかったんだろう」とかなり冷ややか。
http://www.optimismsflames.com/Interview1Colin.htm

7月9日(水)

オースン・スコット・カード『消えた少年たち(Lost Boys)』(早川書房)を読み始める。 じわじわと気味悪さを増すプログラミングの天才児の使う二人称が「おたく」……訳者は小尾芙佐さん。

7月7日(月)

マイクル・ムアコック『凍りついた枢機卿』を読んだ。 なぜ地球から6光年も離れた恒星系の惑星(のクレバスの底)に「彼(なのか?)」がいる(ある?)のか、ということはおいといて、目を閉じて想像力をめぐらせたときのおもしろさは最高。 歌う枢機卿(なのか、やっぱり?)思わずつられてしまう「ぼく」の姿も……

7月5日(土)

サイモン・ブレット『殺意のシステム』(ハヤカワ・ポケットミステリ1479)を読んだ。 マイケル・ケイン主演のNYを舞台とした同名映画の原作だが、原作の舞台はロンドンで、主人公がふらりと入った映画館でみたのは『(モンティパイソンの)ライフ・オブ・ブライアン(”宗教的な観点からは容認できるかどうか疑問ですが、次から次へとおもしろい場面がありましたね”(p262))』……著者が大学時代に同窓のテリー・ジョーンズやマイケル・ペイリンと面識があったかどうかは知らないが、もとBBCのラジオ軽演劇担当プロデューサーでありダグラス・アダムスとも縁が深いのだった。

7月4日(金)

職場か客先のそばにタワレコがありたまに寄るらしい摂津守が「今安いらしいぞ」と教えてくれ、帰りがけに行ってみる。 『沈黙の夏』(行けないのが残念だが今日こちらでライヴの筈)まだ出てないなぁ、と思ったら発売日を間違えていて再来週までお預け。 7/7までダブルポイント、しかも初回生産限定特別価格。わかったよわかりましたよ、時給も上がったことだし『LED ZEPPELIN DVD』をとうとう買ってしまう。 全然熱心なファンではなかったが、全曲を(今でも)覚えているバンドが三つくらいしかないわたしにとってはこのバンド、やはり特別な存在なのかもしれない。

7月3日(木)

時給が上がった(上がってない人もいるから誰にも言わないように、と実は全員がそう言われているとしたら喜べない)ので上司に噛みつく(文句を言うという意味ではない、念のため)頻度を下げようかと一瞬思ったが、それはそれ、これはこれ。 異動してきた社員のせいために取り上げられていた自席の端末もめでたく戻ってきたのは返すから黙ってろ、という意味だろうか。

7月2日(水)

6/25に注文したCDがドイツから1週間で到着した。過去の実績から半月はかかると踏んでいたので嬉しい誤算。 1ユーロ切手にはTrierのPorta Nigra(黒い門)、2ユーロのにはBamberger Reiter(バンベルクの騎士)が印刷されて優雅。 ひょっとして世界文化遺産で統一されているのかな。

2002Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec
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