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1月31日(木)

読み始めた長編:
  • J・G・バラード「コンクリート・アイランド」

    1月30日(水)

    読んだ短編:
  • フランク・グルーバー「十三階の女 (The Thirteenth Floor)」
    「蒸留器」を買い求めに出かけたのが彼の運命の分かれ道。

  • レイ・ブラッドベリ「泣き叫ぶ女 (The Screaming Woman)」
    「泣き叫ぶ女」を読んでいる途中で結末を思い出したが、子どもの絡んだブラッドベリ作品は本当に怖い。 訳(稲葉由紀=明雄)にひらがなが多いところをみると、原文も小学生らしい文体なのかな。

    1月29日(火)

    月末に退職する上司と後任が引き継ぎをめぐり意地の張り合いをする日々。 今日は二人とも休みなのでやれやれ自分のペースで仕事を進められる、と思いきや彼らの仕事まで降りかかってきて、いやー。 普段は机の横で爪を切ったり金のなる木の鉢植えを眺めたりしている部長だが、哀れに思ったか、訊きに行くたび親切に教えて下さる。 部長の説明のわかりやすさは他の人とは段違い。 そこでひざ掛けにくるまっていないでしばらく私の補佐をしてくれませんか……。

    読んだ短編:
  • スタニスワフ・レム「二人の若者 (Dwoch Mlodych Ludzi)」
    そりゃ難解で全部わかったなんて口が裂けてもいえないが、これこそ私の読みたかった作品たち。 とうとう『すばらしきレムの世界(2)』も読み終えてしまった。さみしい。

    1月28日(月)

    読んだ短編:
  • スタニスワフ・レム「真実」
    ポーランド語はチェコ語などと同じ西スラブ語族とのこと。 原題"Prawda" 、東スラブ語族であるロシアの新聞と同じ言葉ではないかな。 それはおいておき、レムはおもしろい。

    1月27日(日)

    たかじんの「そこまで言って委員会」を観てから帰宅。
    週末から読んでいた短編:
  • スタニスワフ・レム「手記 (Pamietnik)」
    ひたすら考え続けるのはいったい誰の手記かって? それは秘密。
      到着便:
    • アンナ・カヴァン『氷』(サンリオSF文庫)
    • ディディエ・マルタン『飛行する少年』(サンリオSF文庫)
    『氷』は近々復刊予定で古書相場が崩壊したのか、そのおかげで読むことができる。ありがたや。神保町Y書房新着より。 『飛行する少年』は以前もお世話になった方からの落札分。 ミシェル・ジュリで持ち出した分はこれらで取り戻せた。 もう本当に探すほうからシャクシャク読むほうへシフトしなくては……そうはいっても、1日に短編ひとつ読むのもおぼつかないありさまでは情けない。

    1月26日(土)

    実家に息子も合流。 元気そうだが昨日はレポート提出期限で、一昨日は徹夜だったとのこと。 大丈夫かっ。

    1月25日(金)

    退社後そのまま新幹線で帰省。 寄り道した梅田古書倶楽部で本を見ていると、レジカウンターから店番と客の会話が聞こえてきた。 水木しげるの貸本時代の漫画をセット価格78,000円で購入したお客さん恐るべし、桁がちがう。 でも「墓場の鬼太郎」時代の作品は本当におもしろい、とうれしそうに帰っていったお客さん、よかったね。
    「脱走と追跡のサンバ」再読のため買いなおしたかったのだが単行本しか置いてなく、荷物になるので諦める。
      購入した本:
    • 現代恐怖小説集1『十三階の女』(HPB SS4001)

    1月24日(木)

    全集入りしてダブった単行本や、下巻が見つからず後日上下巻セットで買い直し半端になった上巻、積読を把握せずブックオフで買ってしまった本などのうち、まあまあ値段がつきそうなもののリストから古書店に見積もりをとってもらい、退社後持ち込む。 「状態良好」前提での見積もりのため、覚悟はしていたものの実物を見ての査定はかなりシビアだった。 でもそのぶんここでは今まで他の本をずいぶん安く買えたのだから、安く買って高く売りたいという虫のいい考えはいかんですよ。 もちろん惜しい気持ちでいっぱいではあるが。
      購入した本:
    • ミシェル・ジュリ『熱い太陽、深海魚』(サンリオSF文庫)
    フランシス・フォード・コッポラ監督がエリアーデの短編「若さなき若さ (Youth Without Youth)」をティム・ロス主演で映画化していた。 ルーマニアで18ヶ月におよぶロケとのこと。すでに予告編も公開されていたんだなぁ。

    1月22日(火)

    読んだ短編:
  • スタニスワフ・レム「リンファーテルの公式 (Formula Lymphatera)」
    みすぼらしい老人が、書店で声をかけた若い科学者に語る驚愕の事実(使い古された言い回しだけどそう言うしかないもんなぁ)。 神妙な語り口のところどころにちらっと顔を出す自負心、こういう人っていかにもいそうだ。 なぜ毎週書店を張り込んで、科学雑誌を買う人に記事をみせてもらっているのか? 彼が一生と私財を費やしてきた研究とは、そしてその結果彼が選んだ道は……。
      到着便:
    • J・G・バラード『コンクリート・アイランド』(太田出版)
    バラードのテクノロジー三部作で『クラッシュ』『ハイ−ライズ』(既読)の間に発表された作品。 復刊されたばかりだから安心していたのに版元品切れ・重版未定ではないか、ということで700円で古本を購入。

    1月21日(月)

    観た番組:
  • NHKスペシャル「赤ちゃん 成長の不思議な道のり」
    「私たちの一生で、もっとも脳の潜在能力が高いのは、いつの頃か?」―――この問いに最新科学が明らかにした答えは驚くべきものだ。 じつは生後8か月頃から1歳前後だというのだ。脳のなかで神経細胞同士の情報伝達を担うシナプスはその時期ピークに達したのち、早くも減少に転じてしまうのである。 生まれた直後の赤ちゃんの知覚能力がきわめて高いこともはっきりしてきた。たとえば、赤ちゃんは世界中の言語の微妙な発音の違いも区別できる。 つまり私たちは、いったんできたことが成長とともにできなくなるという不思議な道のりをたどっているのである。 いったい、なぜそんな遠回りと思える道のりがあるのか?そこには、人間らしい能力を獲得・発達させるための秘密が隠されている。 赤ちゃんの最新研究からは、自分の環境に最も適した能力を選びとっていく姿が浮かび上がってきた。 番組では、赤ちゃんの1年にわたる成長を実際に追い、最新の測定技術を駆使して画像化した赤ちゃんの不思議な成長のプロセスを探る。(番組紹介より)
    もっとも興味深かったのは両親とも英語だけを話す生後9ヶ月の赤ちゃんに毎日一定時間繰り返し中国語のビデオを見せ、ビデオ学習していない赤ちゃんとの言語習得の違いを調べたところ、まったく差がなかったこと。 研究者自身も驚いていた。 しかし同じプログラムを同じように「赤ちゃんと対面式で実際の中国人女性が演じる」と、赤ちゃんの脳は中国語の発音を区別して聞いていた。 赤ちゃんは相手との関わりのなかで言葉も、また行動も(ハイハイや伝い歩きなど)も確実に学習しているのだった。
    小さい頃から英語環境に親しませましょう、鉄は熱いうちに打てと、大切な時期にわが子をほかの子どもたちから隔離してただ英語ビデオを見せているだけでは逆効果なんだな。

    1月20日(日)

    今夜マリネラへ発ち到着はトランジット含め25時間後というUさんを名古屋駅で見送り(実際はお買物に金魚のフンのようについてまわっただけだが)、ライヴ終演後のTさんをスタバで待ち伏せして感想をお聞きする。
    お借りしたDVDたち(記録しておかないと返却し忘れそうだ):
  • Peter Cook in "The Rise and Rise of Michael Rimmer"
  • Jonathan Miller's "Alice in Wonderland"
  • "The Rutles 2 - Can't Buy Me Lunch"
  • "The Best of Peter Cook & Dudley Moore"
  • Monty Python's Graham Chapman "Looks Like a Brown Trouser Job"
  • "Beyond the Fringe - where British satire was born"
  • "Father Ted"

    "Father Ted"シリーズはアイルランドの教会のおバカな3人の神父たちとお手伝いさんが繰り広げるコメディだそうだ。 神を冒涜した罰が下ったか主演のひとりが亡くなった、という黒い話をお聞きする。
    「空飛ぶモンティ・パイソン」“日本語吹替復活”DVD BOX発売のお話をすると当然予約済みとのこと。この吹替バージョン、東京12チャンネル時代まだ高校生でチャンネル権のなかった私が見逃した回もあるはずだ。 前回のBOX発売時に吹替つけてくれればよかったのに、これでまた場所をとってしまうよなぁ。 雑誌の付録についてきた(当然Uさんは全部購入済みとのことなので)というMichael PalinとLittle BritainのDVDはTさんと山分け、ありがとうUさん。 英語わかるのか自分……

    Rufus Wainwrightのステージは「胸毛にダイヤ!」「ありえないほど足細いんですよあの男」とTさん。 間近でご覧になれただけに、音楽はもちろん(「デコ携帯」とTさんは表現した)ジャケットや凝ったステッチなどヴィジュアルも堪能されたようだ。 大阪・東京公演も行かれるのでまだ楽しみは始まったばかり。 明日は大阪へ移動、お気をつけて。

    1月19日(土)

    観た映画:
  • 『プラダを着た悪魔 (The Devil Wears Prada)』(2006年米)

    観た番組:
  • NHK土曜ドラマ「フルスイング」第一回
    原案/門田隆将『甲子園への遺言〜高畠導宏の生涯』

    1月18日(金)

    観た番組:
  • NHK 私のこだわり人物伝
    澁澤龍彦 ― 眼の宇宙 第一回「人形」
    語り手は四谷シモン。ハンス・ベルメールの球体関節人形との出会い、その記事を訳した澁澤龍彦との出会い。 澁澤氏の没後彼へのオマージュとして天使の人形を製作、その一体は澁澤邸に飾られている。天井近く、見上げればふわりと漂うように。
    人形作家・四谷シモンさんは、10代の頃、自分が人形を作る理由や、人形製作とは何か、悩んでいた。その頃、中古書店で見つけた一枚の記事の中にあったのが「人形とは動くもの。だからポーズは必要ない」という澁澤の文章だった。触発された四谷さんは、独自の世界を築いていく。澁澤本人と深い親交があった四谷シモンが、「思考を探求する者の道程に関所のよう控えている」澁澤を語る。(NHK 講座内容)
    聴いた音楽:
  • Peter Hammill "Over"
    リマスターのうちこれだけHMVで入荷が見込めず、米国密林マーケットプレイスで購入。ひと月かかった…… 去年の来日公演ではこのアルバムから3曲が演奏されたが、"Time Heals"は聴けなかったなぁ。

    1月17日(木)

    読み終えた長編:
  • テッド・ルイス「ゲット・カーター (Jack's Return Home)」
    映画版ではジャック・カーターが兄の死の真相に迫り、犯人を追いつめていくまでのスリリングな展開とカーターの冷徹なかっこよさ、タイトル(Get Carterのほう、といっても間違ってもスタローン版『追撃者』でなくケイン版『狙撃者』のほうだ)の含む意味まで思う存分堪能した。

    いっぽう原作(小説)で重点が置かれているのはカーターと兄フランクとの関係の変質。 自分とは水と油のような兄への見方を変えたできごと、映画でただ一度カーターが涙を流す場面は、 小説で張られた伏線や回想でより大きな説得力をもつ。
      到着便:
    • F・W・クロフツ『黄金の灰』(創元推理文庫)
    • F・W・クロフツ『ホッグズ・バックの怪事件』(創元推理文庫)

    1月16日(水)

    Antony & The Johnsonsのアルバムにも客演しているRufus Wainwright、今度の日曜に名古屋公演である。 ロンドンで3時間のステージを観てきたTさんが名古屋、大阪も行くというので終演後に感想をお聞きする予定。 さらにこの日の夜マリネラへ発つUさんとも欲張ってお会いできれば……と目論み中。
      到着便:
    • 山野浩一『花と機械とゲシタルト』(NW-SF社)

    1月15日(火)

      30円で購入した本が到着、同じ作者の『修道士マウロの地図』とも小笠原豊樹の訳。:
    • ジェイムズ・カウアン『吟遊詩人マルカブリュの恋』(草思社)
    中世の南仏プロヴァンスで活躍した吟遊詩人マルカブリュの幻の作品が発見された。 それはある修道女の死を悼んでまとめられた巻物だという。 そこには、詩人の恋人だった修道女の死にまつわる謎めいた言辞がちりばめられていた。 修道女の死体からは異端の印が発見された。 死の真相を追った詩人は、なぜ完成した巻物を川に投げ捨て、沈黙してしまったのか? 歴史の真実を探る主人公の前に、盲目の女性画家、狂った砂金採り、人の心を読む修道院長が現れて…。 (BOOKSデータベースより)

    1月14日(月)

    NW-SF社主宰、「季刊NW-SF」の発行人でサンリオSF文庫の編集顧問も務めていた山野浩一氏の長編、在庫ありの返信を金沢の古書店よりいただく。 タイトルの魅力と共に、大島弓子にインスパイアされた作品だという話と(松岡正剛夫人とは知らなかった)まりの・るうにいの装幀にも、まだ見ぬうちから私にはポイントが高い。 発売時の定価より安く購入できたことを幸運と呼ばずしてなんといおう。

    観たドラマ:
  • 「家政婦は見た!舞いの名門、華麗な一族の秘密 したたかな女たちの跡目争い…」
    昼下がりの再放送アワーで市原悦子さんを堪能。 今回の派遣先は、日本舞踊の家元。跡目争いをつつきまわし例のごとく啖呵をきって辞めてきたあと、やはりしっぺ返しをくらうのである。 気鋭の振付師役、篠井英介がまだ若かった!この人は(ドラマでは「藤島流」となっていたが)実際に藤間流の名取だそうだ。どうりで、所作がきれいなわけだ。

    1月13日(日)

    読んだ短編:
  • スタニスワフ・レム「アルデバラン星からの侵略」
    『すばらしきレムの世界(1)』フィナーレを飾るのは、触手をもつ腔腸生物(クラゲとかイソギンチャクか)であるアルデバラン人斥候の、地球の二足知的生命体とのファーストコンタクトもの。 人選は慎重にすべきであった。夜道で千鳥足の酔っ払いと会ったが彼らの運のつき。
  • スタニスワフ・レム「闇と黴 (Ciemnosc i Plesn)」
  • スタニスワフ・レム「ハンマー (Mlot)」
      丸善にて:
    • テッド・ルイス『ゲット・カーター』(扶桑社ミステリー)……新刊
    • デーモン・ナイト編『ザ・ベスト・フロム・オービット<上>』(NW-SF社)
    最高気温7度という寒い一日だが、明日はさらに寒くなるらしい。
    丸善では1/11から古書会館出張の即売会開催中で、今回は場所がらか美術書や画集、郷土史など古本でない本当の古書が主だった。 注文カードが挟まれたままの『ザ・ベスト・フロム・オービット<上>』は新刊書店から直接古書店へ流れたものだろうか。 結局<下>未刊行のままNW-SFシリーズは中断したようだ。

    1月12日(土)

    不覚にも気づかなかった。
    IMDB Get Carter (1971)
    マイク・ホッジス監督マイケル・ケイン主演の渋いノワールの原作、テッド・ルイス『ゲット・カーター(Jack's Return Home)』が12月に扶桑社ミステリー文庫から出ていたではないか。"Jack Carter's Law" "Jack Carter and the Mafia Pigeon"の続編たちも出るだろうか、出るだろうか〜!
    ジャック・カーターが、町に帰ってきた。たったひとりの兄が、酒に酔って車で転落死した。 遺された娘に会い、葬儀に参列するのだ。だが、カーターは、ある決意を秘めていた…大都会の暗黒街で生きてきたカーターの帰郷は、地元の裏社会に波乱を巻き起こす。 目的のため、みずからの組織にすら背を向けて突き進むカーター。 その果てに待つ、あまりに冷酷な現実とは―非情な男の孤独な戦いを、鮮烈な文体で描ききるブリティッシュ・ノワールの最高峰。 後世に多大な影響をあたえた、歴史的名作。(BOOKSデータベースより)
    読んだ短編:
  • J・G・バラード「死亡した宇宙飛行士 (The Dead Astronaut)」
    バラードには廃墟がよく似合う(前にもそう書いたっけ)。 またその荒廃した風景に人の心がじつによく映りこんでいるように見えるのだ。
  • 中井英夫「鏡の中への旅」
    主人公が淫夢(じつは夢ではなかったかもしれない)の中で、家族の皆と次々に関係したところで『テオレマ』が引き合いに出されたのには驚いた。
  • スタニスワフ・レム「友人」
    覚醒した人工知能といえば「月は無慈悲な夜の女王」のレム版というか、でも背筋を寒くさせる不安の影はヒッチコック映画ばりだ。 タイトルはハーディン言うところの「友人」をさしていると最初は思ったが、実際は語り手である「ぼく」(後半の「ぼく」のほうではない)とハーディンとの関係もさしていたんだなと、読み終えて感傷ともなんともつかない不思議な余韻の残る作品だった。
    無限の力を持ち……望むことはどんなことでもかなうとしたら……いったいどうします、おたくは? ……(p179)

    1月11日(金)

    読んだ短編:
  • スタニスワフ・レム「侵略」
    ……それは、己の秘密を現実がわれわれに明かしたがらないからだ……(p134)
    「事実は小説より奇なり」なんて幻想をレムは軽く一蹴してくれ、あちこちに仕込まれた小さなくすぐりネタにもまいった。 ドイツ人の打電した微に入り細に入った長たらしいレポートだの(もちろん読み人により省略される)、「白髪・胡麻塩・禿頭が、重なりあうようにつめかけていた」人垣のイメージだの。
      到着便:
    • ミルチャ・エリアーデ『エリアーデ幻想小説全集(1)(2)(3)』(作品社)

    1月10日(木)

    読み終えた長編:
  • ミルチャ・エリアーデ「令嬢クリスティナ」
    これは若くして死んで現世を離れ切れぬ女の幽霊の恋物語だ。 Z村の貴族屋敷の住人たち、モスク未亡人とその娘二人は、令嬢クリスティナの美しい絵姿を生前の寝室に飾り、 さながら聖画像のように渇仰していた。令嬢は未亡人の姉で、ルーマニア全土を震撼させた1907年の大農民一揆に巻き込まれたのだ。 まだはたち前だった。死骸は見つからなかった。 物語の舞台はそれから30年近く経っていて、貴族屋敷を訪れた青年画家と考古学者は、令嬢クリスティナについて村では身の毛もよだつような噂がささやかれていることを知る……。(帯より)
    昨夜からじっくりゴシックホラーを読んだ。 すみれの匂いをまとって現れる不吉な令嬢クリスティナの色香に負けず、彼女に心酔する黒髪・雪肌・紅い唇の三拍子揃った姪の9歳児シミナもまた妖しいこと。

    幽霊といえば青白く弱々しいイメージだがこの令嬢は生前ボードレール「悪の華」や熱血騎士もの「アイヴァンホー」、また「彼方へ」(ユイスマンスの、だろうなぁ)を愛読していた。 もともと読書のベクトルがあっち(指差すとしたら下?)を向いていた上に芳紀二十歳まえの無念の死。 「死んでも死にきれない」とはこのことか性愛への未練もたっぷり、充実したボディを誇り、しかも恋した男に対してたいそう率直で、 へたな小細工をせず堂々と求愛するところがいい。

    しかし異界から御者つき馬車でやってくるほどの力を持つ彼女が、どうしてエゴールのようなどっちつかずの男に恋をしてしまったのか(シミナですら叔母の男を見る目のなさにあきれていた)、面食いの幽霊というのがまた妙に人間らしくて哀れである。 ところでルーマニアのすみれは、かように人を惑わすよい香りがするものなのかのう。

    1月9日(水)

    読み始めた長編:
  • ミルチャ・エリアーデ「令嬢クリスティナ」
    1936年作。 エリアーデの祖国ルーマニアといえば吸血鬼伝説のお膝元だ。
      到着便:
    • F・W・クロフツ『フレンチ油田を掘りあてる』(創元推理文庫)
    • F・W・クロフツ『製材所の秘密』(創元推理文庫)
    • F・W・クロフツ『関税品はありませんか?』(ハヤカワ・ミステリ文庫69-1)

    1月8日(火)

    読んだ短編:
  • スタニスワフ・レム「迷路の鼠」
    通勤の供は『すばらしきレムの世界(1)』、レム自選短編集を一日一編のペースで読んでいる。 「迷路の鼠」こんな気色のわるい迷路(まるでミクロの決死圏)、こんなファーストコンタクトはいやだ!と思うのだが、読み終えて一抹の寂寥感ただよう作品だ。

    1月7日(月)

    読んだ短編:
  • スタニスワフ・レム「ミスター・ジョンズ、きみは存在しているのか?」
    我思う、ゆえに我ありってことかな。でもお兄さんのほうはどうだろう?
      職場そばの古書店&到着便:
    • ブライアン・W・オールディス『解放されたフランケンシュタイン』(早川書房)
    • ロバート・シルヴァーバーグ『内側の世界』(サンリオSF文庫)
    • P・K・ディック『アルファ系衛星の氏族たち』(サンリオSF文庫)

    1月6日(日)

    息子が下宿へ戻った。 後期試験のあと迎えに来るまで、息子の猫はうちで過ごすことになる。

    観た番組:
  • NHKスペシャル「激流中国 小皇帝 5年1組の涙」
    番組の舞台は南部、雲南省。人口500万の省都・昆明の公立小学校5年生のクラスである。貧富の格差拡大、大学生の就職戦線の厳しさの中で、親たちの“よりいい学校へ進学させたい”という学歴崇拝は高まるばかり。1年生から英語を学び、数学は世界で一番難しいといわれるほどの学習レベル、小学校の現場は親の頃とは全く違う。親は子供を叱咤激励し、愛の鞭も惜しまない。学校側も成績のいい子供を多く輩出すれば、評価が上がるため、教育に力を入れる。学校を支配する“成績至上主義”、しかし「それでいいのか?」と葛藤する子供たちが、悩みや苦しみを訴え始めた。番組は、こうした現場を記録。親子それぞれの心のうちに迫る。(NHKオンライン 番組紹介より)
    この子たちの両親にもリストラ経験者がいる。同じ苦労をさせないためにも今頑張らせなければという親心と、期待に押し潰されそうな子供たちの心。 一人っ子政策の結果きょうだいもなく、親の期待を一身に集め、同級生は皆ライバルという日常を黙って耐え、考える暇もなく、終らない宿題にくたくたになり睡眠不足を訴えている子供たち。 「抜き打ちテストの結果が農村部の小学校より悪いとは!」と教師の指導力不足を叱る校長。 そんな環境で、ついてゆけない子供たちやつぶれていく子供たちにまで目を向けるゆとりがあるのだろうか。 自分も同じ立場だったら流されてしまいそうだ。 5年1組の女の子があきらめ顔でこう呟く。
    「テレビで観た共産党大会で子供たちの負担を軽くすると言っていたけど、かばんは重くなるばかり。何も変わらない。」

    読み終えた長編:
  • ミルチャ・エリアーデ『ムントゥリャサ通りで』(法政大学出版局)
    シンプルな表紙に惑わされてはいけない。 濃厚な幻想小説を読んだ。

    1月5日(土)

    読み終えた長編:
  • スタニスワフ・レム「浴槽で発見された手記」(1961年)
    もったいなくてちびちび読んでいたが、とうとう全部読んじゃったよ。 「三重装」「四重装」「五重装」……手記の舞台も五角形の迷宮、まるで≪たまねぎ≫だ。 謎の古代遺跡ペンタゴンの浴槽から発掘されたワンアンドオンリーの貴重な紙媒体が、よりによってこの五里霧中で疑心暗鬼の塊の手記だった! すてき〜。
    でも「プリズナーNo.6」の不条理感が嫌いなら、多分途中で腹が立って投げ出すから無理して読まなくてもいいかもしれない。
      到着便:
    • ドナルド・バーセルミ『口に出せない習慣、奇妙な行為』(サンリオSF文庫)
    • スタニスワフ・レム『天の声』(サンリオSF文庫)
    • スタニスワフ・レム『すばらしきレムの世界(1)(2)』(講談社文庫)

    1月4日(金)

    仕事始め。 通常通りどころか年末に駆け込みで出したらしい郵便物がどっさり届いたためそれ以上の忙しさで、決裁期日の迫っているものだけ入力を済ませあとは月曜まわしとする。 メール室の人たちも今日は大変だったろう。 この業種の特性上個人情報の授受に関しては特に厳しくチェックするのだが、契約書コピー(時に原本)を配達記録付にせずのほほんと普通郵便で送ってくる某銀行の本店営業部と某信金、本当に何度言っても……。
    退社後は家族と合流し、千房でお好み焼きをたらふく食べる。
      到着便&職場そばの古書店にて。ポケミスは400円均一。
    • スタニスワフ・レム『枯草熱』(サンリオSF文庫)
    • ロイ・ヴィカーズ『罪なき者を捜せ』(HPB1008)
    • C・エクスブライヤ『イモジェーヌに不可能なし』(HPB1175)
    • ボアロー、ナルスジャック『島』(HPB1137)
    お互い距離を置いていた猫たちが相撲をとりはじめた。 こうなればあとは仲良しまっしぐら。

    1月3日(木)

      ヤフオクにて。 以前取引させていただいた方とのこと(名前を覚えていてくれたようだ)。 『ギルフォードの犯罪』は珍しい本ではないが、フレンチもの2作品でなじんだ松原正訳でまた読めるのが嬉しい。
    • F・W・クロフツ『ギルフォードの犯罪』(創元推理文庫)
    • F・W・クロフツ『フレンチ警部最大の事件』(創元推理文庫)
    • F・W・クロフツ『海の秘密』(創元推理文庫)
    • 結城昌治『罠の中』(集英社文庫)

    1月2日(水)

    読み終えた長編:
  • A・D・G「病める巨犬たちの夜」
    バッ、バ○ミスだ! しかも第二部から村人やヒッピーたちがドンパチのノワールだし! 読書に関してはとても楽しい年越しだった。

    1月1日(火)

    寒い一日、夕方からは吹雪いていた。
    観た映画:
  • ジョン・ランディス監督『サボテン・ブラザーズ (Three Amigos!)』(1986年米)

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