私の先生 現代創作舞踊家 ママタ・シャンカール について
Kokubo Subha
私の先生 古典舞踊家 タンコ モニクッティ について 私が舞踊を習い始めたのは三歳からだった。フォークダンスと古典舞踊を同時に習い始めた。その時の先生はニルモ二 バッタチャリアといって、十五歳でママタ
シャンカール舞踊団に入るまでお世話になった。ニルモニ先生は九十一年にお亡くなりになられたが、私がママタ シャンカール舞踊団の入団試験に最年少で、ただ一人合格した時、まるで自分のことのように喜んで下さった姿を私はいまも懐かしいカタルシスの中で思い出すのが常である。
十七歳でタンコ モニクッテ先生からバーラタナッティアムを直接指導して頂けるようになった。モニクッティ先生は南インドのケララ州の出身で古典舞踊の世界ではすでにその高名は知れわたっていて、特に若手の育成に定評があった。マンツーマンで教えていただく時のモニクッテ先生の指導はとても厳しく、腕の曲げ具合から手や指の動き、腰の落とし方など細部にいたるまで、少しでも間違えるとその場で容赦なく鞭が飛んで来て訂正された。モニクッティ先生は古典舞踊一筋に打ち込んで来られた方で、私は平行して学んでいた創作舞踊を辞めるよう何度も注意を受けたものだった。私が大学を卒業したその年、イギリスにあるモニクッティ先生の古典舞踊の教室に指導に行かないか、という相談が先生から持ちかけられた。モニクッティ先生が開かれていたインド古典舞踊教室がイギリス国内にいくつかあって、その中の一つを私に任せてくださるというのだった。私より長く学んでおられた諸先輩方の中からの大抜擢で、たいそう心惹かれるお話であったが、私はすでにママタシャンカール舞踊団の団員と教師を兼ねていたため、自分一人の一存で話を決められるものではなかった。悩んだ末にモニクッティ先生の好意をお断りした。イギリスに行くということは創作舞踊を辞めることを意味していたからである。インド古典舞踊の汲めども尽きぬ奥深さは認めていたものの、より以上に創作舞踊の表現力の可能性に一層の魅力を感じていたのであった。それにもまして古典舞踊と創作舞踊がけっして断絶するものではないということを、これまでの自分の経験から私はすでに承知していたことも理由の一つにあげられよう。私が指導している舞踊教室は古典と同時に創作舞踊も併せて教えているが、何の違和感もなく生徒は熱心に学んでいる。(自著「インドの風・日本の風」より抜粋) Kokubo Subha 私の先生 古典舞踊家 Dr.マフア・ムカジー について 私は昨年の十一月初めから十二月末までの約二ヶ月間インドに帰っていました。私の古典舞踊の師であるタンコ・モニクッティ先生との再会をとても楽しみにしていたのですが、しかし、残念なことに先生は時を同じくして公演のためカルカッタを留守にしており、ついに最後まで会う機会は得られませんでした。 今回ここに記す、Dr.マフア・ムカジー はタンコ・モニクッティ師の一番弟子であると同時に私とは15歳余の年齢差があるとはいえ同門の兄弟子にあたり、また時にはタンコ・モニクッティ師に替わる直接の先生でもありました。今回はこのDr.マフア・ムカジー師について語りたいと思います。 名前の前に「Dr.(ドクター)」と付いていることはすでにお気づきのことと思います。カルカッタ大学で植物学の博士号をとり、つい最近まで同大学で教鞭をとられていました。大学も私の大先輩にあたられる方なのです。そして現在、ラビンドラ・バラティ大学に籍を移し、同大学で古典舞踊を教える傍ら、西ベンガルに昔から伝わる古典舞踊「ゴウリオ・ヌリッティア」の研究をしています。インド古典舞踊は「カタカリ」「バーラタ・ナッティヤム」「カタック」「マニプリ」等が昔から有名ですが、最近は「オリィッシー」も古典舞踊の仲間に加えられているようです。インドは歴史が古く文化の層に厚みがあり、インド古典舞踊というものの解釈の仕方次第では幾つもの「インド古典舞踊」がオリィッシーの例を引くまでもなく、これからも発見される可能性を秘めてます。もともと「オリィッシー」は文献やレリーフより復元された古典舞踊ですが、事実は存在しているにもかかわらず広く人口に膾炙されていないためその存在を知られていない、と言った方がより正しいのかもしれません。現在、Dr.マフア・ムカジー師は西ベンガル州に古くから伝わる伝統舞踊を文献を頼りに研究し、あるいは地方の寺院や遺跡に残された塑像や彫刻、レリーフなどを精力的に採取して2200年以上にも遡る事が可能な西ベンガル州に古くから伝わる古典舞踊「ゴウリオ・ヌリッティア」の復活にその学問のすべてを捧げようとしています。近い将来、「ゴウリオ・ヌリッティア」がインド古典舞踊の仲間に加えられることもけっして夢物語ではありません。私もこのページをかりて、Dr.マフア・ムカジーの研究成果を皆さんに少しでも早くお知らせしてゆけたらと思っています。 Kokubo Subha
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