ブバネシュワルの郊外に谷をへだてた向かい合う二つの丘にジャイナ教石窟寺院がある。寺院というより現在では遺跡となっている。まるごと丘の岩をくりぬいた遺跡で紀元前200頃のものだといわれている。ジャイナ教は仏教とほぼ同時代に開かれた教義的にもよく似た宗教であり、仏教はインドの地では根付くことなく次第に廃れていったが(反対にインド以外の国々ひろまり世界宗教の地位を占めている)、ジャイナ教は少数派でありながらも、現在もインドの地に確乎とした地位を占めている。 |
寺院をとりまく高い塀に隣接して、一ヶ所だけ異教徒のための見晴台が造られている。見晴台に登るには料金が徴収される。しかしそれは正規のものではなく、徴収者も正規の人々ではない。本来、払う必要のないものなのだ。しかも彼らは寺院とはなんの関係もない人たちである。だが観光客はそれを知らない。また、インドの人々の多くもそのことを知る人はいたって少ない。しかし寺院のお坊さんにわけを話し、掛け合って貰えば当然支払わなくてすむ(勿論、それだけの気力、精力を注ぎ込むだけの時間と労力が必要だが)。料金徴収者は堂々としているせいか、まるで役人のようで、その威風の前に、異国の観光客はごく当然のようにお金を払っている。料金も一定ではなく、喜捨という名目で、これまで登った観光客の国名、名前、住所、支払った金額までが記名されているノートが渡される。なかには800ルピーも払っていた観光客もいた。この一事で、あらかじめ払う必要がないという予備知識を持って訪れる観光客も動揺し、惑わされ、本来支払わなくてもよい料金を支払わされることになる。 |