台湾日記  2005年5月〜
 
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5月22日
誕生日
○ そうそう、そういえば、2週間ほど前に誕生日だった。子供の頃、誕生日はとても楽しかった。20代後半からは、嫌がって見せたりした。30代後半からは、何の感慨もなくなった。40を越してからは、ああまた一年生き延びることができてありがたいことだ。と思うようになってきた。めでたいことである。

○ 話は違って、朝日新聞の読者からの川柳に面白いのがあった。どうしてこれが、最優秀作とならないのか不思議だ。今、サイトで探して見つからないので、記憶だけで書いてみる。
 頭下げ 社長になって 頭下げ


5月15日
連氏の訪中
○ 台湾の最大野党国民党の連戦主席が中国を訪問した。台湾側では、民意は、この訪中を肯定的に見ており、訪中直後のテレビBSの世論調査で、53%が「成功」、21%が「不成功」としている。

○ 一方、中国側では、連戦主席や続いて訪問した宋楚瑜・親民党主席の演説を中国内のテレビでそのまま放映したことが外国の専門家の間で話題になっている。連氏の北京大学での35分の講演では、少なくとも14回「自由」という言葉を使っており(産経新聞)、それをそのまま中国当局が許容したことは、それもまた、一つのニュースである。

○ こうした中国側の動きを見ていると、「反国家分裂法」について、実は、対台湾強硬路線だけの意味ではなくて、「台湾が無期限に統一交渉を拒めば武力行使」という江沢民の強硬路線を消そうとしたという、以前に紹介した説(3月28日に紹介)をかなり信じたくなってくる。

○ 最近、その説とかなり近いところから、別の仮説を聞いた。今回の連氏の訪中では、平和的に済むようにアメリカが相当な勢いで割って入った。台湾の陳水扁総統にも、静かにしていないと、アメリカは台湾に厳しい内容のコメントを出すぞと言った。また両者には、50年は、現状維持ということで了承しろ、とまで、言ってきている。と、こういう仮説である。さすがに、僕も、そのまま鵜呑みにするものではないが、なかなか無視できない仮説として、頭の中においておきたいと思う。

○ 特に、昨年の立法委員選前に行った陳水扁総統の正名運動などの本土志向の動きには、アメリカは、「いい加減にしろ」と、相当カチンときていたらしい。そういえば、パウエルが訪中してかなり中国よりの発言をしたり、前後して妙な動きもあったように思う。

○ と、こんなことを書いていると、台湾の国民大会代表選挙では、民進党の得票率は42.52%で最大野党・国民党(同38.92%)に勝利した。連氏の訪中は、支持するが、直後の選挙では、民進党に勝たせる。台湾の人達もバランスをとろうと難しい舵取りをしているようにみえる。

○ 全く別件。佐藤優「国家の罠」を読む。ときに、本をおき、嘆息し、苦笑し、驚き、そして、他のことに手がつかなくなって一気に読み通した。


5月12日
言葉を失っていく
○ テレビショッピングで化粧品を売っている人の話は、面白かった。化粧品というのは、薬ではないので、テレビで効果効能をうたうことができない。皮膚の状態を全く変えることなく、表面に塗ったり剥がしたりするというのが、化粧品なのである。「しみがとれる」とか「しわがのびる」などというのは、もってのほかである。

○ この方面でのテレビでの規制は、年々厳しくなっていて、今では、「アンチ・エイジング」なんてのも、効果効能をうたうので使用禁止とされているらしい。昔よくあった皮膚の断面図を模した漫画での説明で、化粧品が皮膚に浸みてしわが伸びたり、細胞が活性化したりするのも、御法度である。今できるのは、皮膚に浸みていくところまでの説明に限られるという。そういうことなので、文字通り「言葉を失っている」説明による番組ができあがる。

○ では、実際のショッピング番組では、どうしているのか。一つは、視聴者との暗黙の了解に基づいて説明をする。コラーゲンが肌にいいなどというのは、視聴者が常識として知っているのを前提として、コラーゲンの効能を一切言わず、とにかく、コラーゲンが含まれていることを連呼するのである。僕は、浅学で知らないが、どの成分が何にいいというのは、女性の間では常識があるらしく、とにかくややこしい成分の名と量とその浸透のしやすさをアピールすれば、視聴者は、分かってくれるという。要するに、テレビと視聴者がヤマといえばカワと答える合言葉で会話をしているようなもので、僕なんかは「お前は、忍者か?」と言いたくなる。面白い。

○ 次に、最近増えているように思えるのが、しわやしみが増えてかわいそうな例を番組の最初に強烈に見せる方法である。僕などには、ややグロテスクにみえるけれども、販売への効果は、いいらしい。お手入れをおこたっているとこうなっちゃいますよ。という脅しになっているけれども、その商品がそれに効くということを説明していなかったりする。この方法の方が、むしろ、視聴者に対して失礼な気もするが、ルール上は、問題ないらしい。実は、視聴者も、自分は、あれよりもマシだと少し優越感を感じられる面もあるのかもしれない。

○ 筒井康隆の実験的な小説で、言葉を少しずつ失っていく小説というのがあったけれども、テレビショッピングの世界では、それが現実に起こっているかと思うと、興味深い。


5月9日
納期
○ 「メーカーの現場にとって、一番大切のものは、何やと思う。」上場メーカーの役員さんから、こう聞かれた。以前に一緒に仕事をして以来、仕事への姿勢などについても色々と教えていただいている方である。価格、品質、納期、客の信頼、ブランドなど、いろんな言葉が浮かんだけれども、結局、僕は、口をつぐんでしまった。役員さんが言うには、「私は、納期やと思う。中途採用で中堅幹部を採用するときに、この質問に「納期」と答えた人は、即採用や。ほかの事は、何も言わんでもええ。納期が一番大事やと分かってる人は、現場を分かってる人や。」 

○ 僕は、この言葉を先月に聞いてから、つくづく考えていた。その役員さんは、銀行出身だけれども、自ら希望して工場勤務を何年もされるなど、現場の感覚も良く分かっている尊敬できる方である。とても知的な人で、本や週刊誌の記事を真に受けただけの、その場の思いつきの言葉とは思えなかった。そうはいっても「品質第一」じゃないのだろうか。価格だって大切だと、僕なりに、色々考えてきた。

○ 今のところの僕の結論は、こうである。品質は、製造プロセスを確定させ、ちゃんとした検査を実行していけば、後は、それほど緊張しなくても、規格内のものはできあがる。価格も、部品材料メーカーと交渉がすめば、毎日、コストが大きく変わることはない。納期だけは、毎日のできごとによってすぐに影響を受ける。部品が届くのが遅れても、作業員の休みが増えても、製造装置の調子が悪くても、交通が混乱しても、たちまち納期に影響するので、即座に対策を立てなければならない。

○ もちろん、品質も価格も、日々の地道な改善の努力は必要だ。しかし、現場に毎日毎時間プレッシャーを与えているのは、納期なのだと思う。また、一品ものを作る業種、例えば、建設業、造船、重機械メーカー、システムやプログラムの構築などは、納期が遅れることはそれだけ人手がかかったことになり、コスト増に直結する。

○ 特に、今の日本は、納期のプレッシャーがますます強くなっている。最後の消費の場では、コンビニに時間通り一日何度も配送したり、宅配便で指定された時間に家庭へ送ったりしている。そのためには、製品メーカーや輸送業から素材や製造装置メーカーに至るまで、納期を守る強いプレッシャーを日々感じながら、対応せざるを得ない。今の日本の現場で働く人にとって、工場長からアルバイトにいたるまで「納期が一番大切」というのは、理念というよりも、偽らざる本音といったところなのだと思う。こういう感覚は、学者、先生や、メディアの人に、なんとか理解していただきたいと思う。

○ そんなことをつらつら思っていると、JR福知山線の事故が起こった。事故の原因は、一分半の遅れを挽回しようとしてパニックにいたった運転手のミスのようである。もちろん、運転手やJRの責任を甘くみるものでも、納期の大切さ否定するものでもないが、納期のプレッシャーを受ける日本の社会の現場の恐ろしさを見せつけているといえなくもない。他人の失敗による他人の不幸ではなく、自分たちの問題による自分たちの不幸と少しでも捉えたほうがいいのではないか。それが犠牲になった方々へのせめてもの弔いではないかと思う。


5月7日
反日デモ2
○ 5月4日に目立った反日デモは、起こらず、一旦は、収まったようである。過激な反日デモがあって週が明けた4月18日に、僕は、知り合いに「潜在的には、長期。顕在化するのは、短期。」とメイルを打った。このホームページでも4月20日に述べたとおり(ココ)である。結果は、そのとおりとなった。

○ 普通の日本人は、反日デモにも驚いたが、中国の政府が収めようとすると、見事に収まることにも、より一層驚いたようである。そういう人への中国に詳しい人からの言葉は、「中国共産党は、まだまだ強力。なめたらいかんぜよ。」というところだろう。同じ言葉が、30歳以上の中国の人から20歳台の中国の人に言われたかもしれない。中国当局に対しては、「少々、おいたが過ぎましたね。」といったところだろうか。

○ 日本政府は、「謝罪と補償」を中国政府に要求しているという。中国当局側は、これを拒否しているが、内々日本料理屋などに修理費を払う準備をしているという。「謝らないけれども、金は払う。」とは、これもどこかの国のコピーのつもりだろうか。


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