台湾日記  2004年11月〜
 
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11月30日
ヨン様、リニアカー
● 中国と日本を出張したときの雑感です。

● ヨン様
日本で郊外のユニクロに10分ほど立ち寄った。若者というよりも、結構お歳を召した女性客が多かったのが印象的だった。安いカシミヤのセーターをひとつ買うために、久しぶりに来たといったところだったろうか。その後、日本のテレビを見ていてふと思ったのだが、ヨン様〜と叫んでいる方々が、昼間、ユニクロでお会いした方々と丁度歳恰好が同じだった。

○ なるほど!上質でカジュアルな輸入モノの純愛。あるいは、ユニクロ的心のときめき。どちらも、安くて害がなくて、楽しむのにセンスを必要としない。ふむ、そうであれば、なんと分別のある娯楽なことだろう。

● リニアモーターカー
上海でリニアモーターカーに乗った。市内から空港まで20分おきに運行しており、50人民元。乗り込んで出発時間になると、微かにウィーンと音がして浮いたかのように思った。すると、停止したまま、ガタガタガタガタと激しく揺れた。乗客はお互い顔を見合わせた。そして、何事も無かったように、同じホームの向かい側の車両に乗り変えるように誘導された。

○ 20分後にその車両が出発してから、どんどん加速した。客車についているスピード計によると、3分間で一気に加速し時速430kmに達した。1分ほどその速度で進み、また3分で減速して止まった。走行時間7分で空港に到着した。

○ 停止中とはいえ、あんな揺れがでるようなら、何年か運行しているとそのうち事故があるだろう。しかし、まあ、日本人の皆様、そうせせこましく、ビクビク、カリカリしてはいけません。市内から空港まで爆走するタクシーよりも、きっと事故の確率は、少ないでしょう。大局的に見れば、便利なのです。


11月29日
中台紛争2 (昨日の続き)
○ 「2008年の北京オリンピックまで、中国は、絶対に自分から武力行使はしない。」と日本人が決めてかかるのは、自分達の過剰な精神主義を、日本人とは対照的なほど現実的感覚に鋭い中国の人に期待しているようにみえる。もし、中国が台湾の独立的動きを自らへの安全保障上の脅威と捉えると、オリンピックなど平気で犠牲にしてくるだろう。そればかりでなく、万一、台湾の現状すらも安全保障上の脅威と捉えるなら、先制攻撃的な武力行使の可能性も否定できない。

○ では、その中国の現状認識というのを司るのは、民主主義が定着していない中国の場合、ネットの世論ではなく、政府当局ではないかとも思うかもしれない。政府当局は、サッカーのアジア杯で顕在化したように世論を細かくコントロールする力が落ちているにしても、まだまだ、有無を言わせぬ最終的な強制力を持っている。ネットの世論の民族主義的な傾向も、当局の黙認という消極的支持があって成り立っているともいえよう。

○ しかし、一般的にアジアにおいては、選挙ではなくて大衆世論の支持によって政権が変わることがよくおこる。形式的には、クーデターであったり、国王の裁定であったりするが、内実は、国民世論だったということがよく起こる。これは、アジアの人々が体で知っていることで、アメリカ人がどうしてもよく理解できない感覚であろう。日本人は、安全保障になるとアメリカ人の判断に頼りがちだが、アジアにおけるこの感覚のずれは、よく心得ていたほうがよさそうである。

○ 中国においても政府当局が世論を気にはしていると思う。天安門の例を思い出せば、世論によって共産党政権が倒れるとは思い難いが、地位を失う指導者がでても不思議ではない。中国では地位を失うことは、ときとして命を失うことを意味する。当局者によっては、世論というのは沸騰しだすとなかなか止めにくいということを過剰に恐れているかもしれない。世論の動きはやはり注視すべきだと思う。

○ だからといって、ただただ中国の民族主義的な世論の要求を飲み込めばよいとは思えない。それは、過剰な民族主義が拡大するばかりで、なにより平和を望む中国の一部の当局者を困難に陥れるだろう。日本人は、先の戦争で現実認識を誤った過剰に民族主義的傾向を強める世論が、部分的な成功に酔い、後戻りできない間違った方向に政治を向けさせてしまう悲惨を自ら味わったはずである。大切なのは、世論と現実の乖離、国内世論と海外の世論の違いに関係者が共通認識をもつことだろう。

○ では、中国の世論と現実、中国の世論と日本人の感覚にどんなずれがあるだろうか。まず、台湾の存在を中国本土への安全保障上の脅威と捉えるかどうかである。中国本土への脅威など、先の戦争で中国で戦争をすることのコストの大きさを思い知っている日本では、考えられないことだし、台湾でもいまや皆無だろう。中国でも少数派かもしれない。常識的にはあり得ない。

○ しかし、台湾への米国からの大量の武器供与の計画は、日本人が思うよりも中国の人にずっと強烈なニュースになっているようである。アフガニスタン、イラクの戦争で、日本のインテリ層は、イラクの都市部での米軍の苦戦に目を奪われるが、現実主義的な中国の人には、米軍の圧倒的強さが印象深かったのは間違いない。現在の米軍は、恐らくローマ軍かモンゴル軍に比べられて人類史に残るほどの強さだろう。

○ 中国の中の素朴で過激な人たちが、この米軍、あるいは、それに近い装備をした軍隊が、中国本土の目と鼻の先の台湾にあるのは、恐ろしくて我慢がならないと思うかもしれない。また、一部の中国の軍事的専門家には、台湾が米軍の強い影響下にあることは、中国が永遠に東シナ海に出て行けないことを意味し、それが耐えられないだろう。そうであれば、情報不足により過激化する大衆世論に、正確な情報を与えないまま放置し続けるかもしれない。

○ 一方で、現時点で、中国が台湾に武力行使すれば勝てるかどうかという認識も大きな意味を持つだろう。この点について、今ならば、人数に物を言わせて押し寄せれば中国が勝つのではないかと思っている人が、一般の中国にも、そして、あろうことか台湾にもかなりいるように思われる。これは、豊かになり現時点で十分な装備を持っている台湾の現状について、中国でちゃんと大衆に報道されていないからだろうと思う。また、島国であり、さらに、中国に面している西海岸が遠浅の台湾が、地理的に非常に守りやすいことをあまり考慮していないように思われる。

○ 僕は、ここで、中台の紛争が必ずや起こるという予測をしているのではない。中台で武力紛争が起こる確率は、そう高くはないだろう。しかし、万一起こった時に及ぼす影響の大きさが計り知れないだけに、真剣に自分達で情報を取り、感じ、考え、決断するべきだと思う。

○ とりあえずまず、中台米日の間、それぞれの国における当局者と世論との間に、大きな認識の違いがあること。その認識の違いが、問題をさらに悪化させていること。などを日本人は、よく心得るべきだと思う。そして、次のような点について、関係各国、関係者、世論の認識をできるだけ近づけるように手を打つべきだろう。「2008年のオリンピックまでは、中国の武力行使はない」と決めてかかるのは危険だということ。台湾の動きが、中国本土にとって安全保障上の脅威とならないこと。一方、中国が台湾に武力行使することは、甚大なコストがかかること。そして、日本人が今すぐにできることをしいていえば、まず、12月11日の台湾の立法委員選挙の動向と、それに対する中国の動きを注視するべきだろう。数日後にこれについて述べてみたい。


11月28日
中台紛争1
○ ある人が日本の首相に尋ねた。「中台で戦争が起こった場合、日本は中国を支持しますか。台湾を支持しますか。」ときの日本の首相が答えた。「アメリカを支持します。」

○ これは、僕の作った話だ。この話が余り愉快ではないのは、結果的に、日本は、アメリカと行動を共にするしか選択肢がないのではないかという思いが消えないからだろう。上の作り話がちゃんとしゃれになるように、日本人が自分達で情報をとり、感じ、考え、行動を選択していくべきだと思う。アフガニスタンやイラクの戦争より中台紛争の方が、その過程においても結果においても、日本により重大な影響を及ぼすのは間違いないのだから。

○ 先日、日本に出張した時に、前から知っている日本在住の中国人の女性に偶然会った。政治的話題には距離をおき、反日的でもなく、みんな仲良くすればよいのにといった姿勢の優しい人だ。彼女が、僕の顔を見るなり、駆け込むように近づいてきて「中国と台湾は、きっと戦争になります。すごく怖くて、心配です。」と真剣に言ってきた。

○ 彼女によると、中国の人の間では次のように言われている。陳水扁は、今度の立法院選挙で勝つと、独立への動きを強めるだろう。台湾が独立をするということは、台湾に米軍の基地ができるということだ。それは、中国人には、身の危険を感じることで、耐えられないほど恐ろしい。それを止めるためなら、中国は、オリンピックなんて平気で犠牲にする。

○ 彼女は、民族主義的傾向の強い中国のネットでの情報によっており、少しは割り引くべきかもしれない。しかし、中国のネットの世論というのは、政治的中枢ではないがインターネットに接続できる程度の多数のインテリ層の雰囲気を伝えていると思う。それに、もともと冷静な彼女が割り引いた上で、周囲の比較的醒めた在日中国人との会話に基づいた考えのようである。

○ 台湾の独立への動きが、中国人意識を刺激するとか、中国共産党の正統性の問題になるというレベルなら、オリンピックと台湾との紛争のどちらを優先するかというのは、状況次第の面はあると思う。しかし、もし中国自体への安全保障上の脅威と中国の人が捉えるならば、それは、オリンピックより優先される課題なのは間違いない。お祭りよりも自分達の命の方が大切だとする優先順位の付けかたは、日本以外では、至極当然のもので、グローバルスタンダードに則っている。冷戦時代のソ連だってアメリカだってそうだったのだ。

○ 話はそれるが、日本人というのは、安全保障上の議論に過剰に精神主義を持ち込むことで戦前戦後と一貫しているように見える。「精神を集中すれば弾薬の不足を補える」というのと「平和主義の崇高な精神をもっていれば、軍備が無くても敵が攻めてこない」というのは、過剰な精神主義において寸分たがわない。言わずもがなだが、精神は、戦争に勝つにも平和を守るにも、せいぜい必要条件であって、十分条件ではない。日本代表のサッカー選手の集中力の欠如を批判する評論家を11人集めたチームが、日本代表と10回戦っても10回負ける。実力が同じくらいのときに始めて、精神力の差がでる。当たり前の話だ。
(明日に続く)


11月25日
ただいま
上海、東京を回って昨夜10日振りに台湾に帰ってきました。台湾で毛穴がひらいた身には、上海、東京は寒く、風邪をひいてしまいました。リニアカー、中国、マティス展など色々書きたいのですが、今日は、大事をとって早寝します。これからもよろしくお願いします。


11月14日
千客万来
○ この数週間、仕事というよりこのサイトで知り合った方や大学時代の先輩など、個人的な知り合いがたくさん台湾に来られてお会いし、色んな楽しい話を聞かせていただきました。それぞれ、一日分にして書きたいところですが、忘れてしまいそうですので、へぇと思った話を、一度、簡単に書き留めておこうと思います。

○ <最近、アメリカの政策担当者と会って来た人>
中国の経済の先行きについて、今の米国の専門家は、非常に心配している。3ヶ月前から比べても急に多くの人が悲観的になっているようにみえる。中国の先行き不安説自体は、いつも根強くあるので、どこまで本気に受けとめるべきかは、なんともいえない。しかし、アメリカの政策決定に近い人達の間でそういう認識が広まっているということ自体、一つのニュースだ。中国の引き締めは、日本の制度で言うところの個別窓口規制によりなんとかしようとしているようで、そこそこうまくやっていると日本では報道されている。が、実際は、金融政策は、ほとんど機能していないようだ。多額のドル介入も、日本のかつてのように不胎化をするすべがなかったので、インフレが起こったのかもしれない。

○ <石垣島出身者>
台湾と石垣島では、人々の顔が似ている。台湾の街を歩いている人を見ると、小学生の同級生のKに似ている。Aに似ているとついつい思ってしまう。お墓も似ている。大きいのは、台湾と石垣島で同じ。でもまんなかの墓石は、違っていて、石垣島のは、日本風。他には、人々のなんとなくゆっくりした時間感覚がとても懐かしい。

○ <金融関係者>
グリ−ンスパンに最近会った人がみんな、「ちょっともうろくしているのではないか」と言い始めている。

○ <台湾のイタリア料理屋さん>
数年前まで、ドレッシングをかけてサラダを食べるというのが、台湾ではなかなか浸透していなくて、サラダがよく残されていた。また、ドレッシングというと、甘いものが好まれて酸っぱいものが避けられがちだった。でも、今は、随分酸っぱいドレッシングに慣れてきて、皆さん、好んで食べている。色んな意味で台湾の人の生活の質が急によくなっていると思う。

○ <リンゼイ元米国大統領主席補佐官の話を聞いた人>
リンゼイは、米国大統領選の前に、日本にやってきた時に次にように述べた。
「中国は、戦略的(安全保障面では)には、潜在的脅威で、経済面では、パートナーである。しかし、ケリー陣営の理解では、中国を経済面での競争者、戦略面での協力者ととらえており危険である。」
これは、選挙用の非常に上手い表現である。それよりもむしろ、やめたリンゼイまでも、体育会系ブッシュ組の規律通りに発言していることの方が、興味深い。

○ <半導体、LCD産業関係者>
日本の政府は、パソコン用ではない、テレビ用のLCDの技術を台湾や韓国に流出するのをとめようとしている。ただ、今や、本当にテレビ用のLCDの技術を持っている日本メーカーは、シャープぐらいしかなく、そのシャープは、もともと技術流出を抑えることに熱心だったので、特別な効果がどれほどあるかは、分からない。

○ <役人の行動パターンに詳しい人>
故宮博物館で、清の時代の公文書があった。報告書に対して、乾隆帝が「是」と書いてハンコをおしておきながら、その後ろに詳しくコメントが書いてあった。あれは、いかにも役人的処理だ。役人的処理方法というのは、実に万国共通で、時代と文化を超えて通じるものがある。グリーンスパンの文章も、分かりにくいと人はいうが、役人の文章として読めば、非常によく分かる。役人のスタイルというのは、実にグローバリズムが浸透している。

○ ここまで書いていて、今らくちんが思いだしたのだが、網野善彦が、日本人同質論に厳しく反論しながらも、役人の書いた文書だけは、非常に古い時代から日本全国で共通していたと認めざるを得ないというようなことを書いていた。同質性の強化という意味でグローバリズムの浸透が語られるとき、商業の役割がクローズアップされがちだ。でも、役人的スタイルというのも、グローバリズムを推進する大きな要素と考えるべきかもしれない。

○ <法科大学院教授>
卒業生の7、8割が弁護士になれるなんていうから、妻子がいて会社を辞めて来ている人も多いが、いざふたを開けてみると、合格率は低かった。生徒のほうは、騙されたようなもの。それで死に物狂いなものだから、教えるほうへの要求水準も非常に高い。講義にも無駄は許されず、ものすごい時間をかけて、講義の準備をしている。自分の研究や論文書きなんてほとんどできない。まるで予備校の教師状態。

○ <長年バッファローズファンだった(仮称)ムラヤマさんからのemail>
件名:アイデンティティ崩壊
むBuらffやalまoeでsす。

☆ らくちんは、15日から24日まで、出張で台湾を離れるため恐らく更新できません。そんな風に怠慢にやってますが、これからもよろしくお願いします。


11月13日
日経新聞にトラックバック?
○ 複数の読者の方から、11月8日付け日経新聞に、フォーサイトに載せた拙稿とよく似た内容の記事が掲載されていると教えていただきました。「あれを書いた記者は、らくちんの記事を読んでいると思うよ。」とのことでした。ご指摘ありがたいことです。そして、もし記者の方が僕のサイトや文を読んでいただいているとしたら、それも、ありがたいことです。

○ 「世界のパソコン生産 台湾勢の寡占進む」と題するその記事を読んでみると、パソコン及びその周辺機器において、台湾のOEM生産企業がいかに強力かを述べたもので、確かに、僕が寄稿した文やこのサイトで何度も述べていることです。デル、HPと続く販売シェアの順位と、台湾勢が上位に並ぶ生産シェアは、一致しないという記述などは、僕の文とそっくりです。

○ 駐在や出張などで台湾のエレクトロニクス製品に仕事で関係している人は、台湾のOEM企業の強大さを日本の本社様、参謀本部様に説明するのにいつも苦労されています。この記事や、及ばずながら僕の文などが、少しでも役に立てばいいですね。この日経の記事では、2004年の見通しデータもあり、これは、僕がはっきり書いていなかったものですので、読者の役に立つと思われます。

○ 台湾を知らずして世界の電子産業を語るな、というのが日本の企業で浸透するまで、何度でもこういう記事が出てくれることを純粋に希望しています。


11月11日
おやすみねこのぼうけん

(童話を一つ考えました。声に出して読んでいただければ、おおよろこびです。)

おにいちゃんのゆうくんといもうとのあいちゃんのおうちには、
おやすみねこがいます。
おやすみねこは、いつも、ぐーぐーねています。
いつも、いつも、ねてばかり。
たまにおきてきて、えさをたべて、おしっこをすると、
また、ぐーぐーねてしまいます。
いつでも、どこでも、ねてばかり。

おやすみねこは、いつもねていてうごかないので、
てもあしもちいさくなってしまいました。
まるでだるまさんのようです。

でも、ゆうくんとあいちゃんは、おやすみねこがだいすきです。
というのは、おやすみねこのよこでゆうくんとあいちゃんがねると
みたいな、とおもったゆめをみることができるからです。

いつもねてばかりのおやすみねこは、
いちにちじゅう、ゆめをみています。
だから、おやすみねこは、ゆめをみるのがとくいなのです。
みたいな、とおもうゆめをみさせてくれるのです。

きょうも、ゆうくんとあいちゃんとぱぱは、おやすみねこのよこでねます。
ほんとうは、ゆうくんとあいちゃんは、ねるのがだいきらいです。
いつまでもおきてあそんでいられたらいいのに、とおもっています。
そこで、ねなくて、いつまでもいつまでもあそんでいられるしまにいくゆめを
みたいな、とおもいながらねることにしました。

ぱぱは、いつもごろごろしていて、ねるのがだいすきです。
そこで、ぱぱは、いつもねていられるしまにいくゆめを
みたいな、とおもいながらねることにしました。

ゆうくんとあいちゃんとぱぱは、おやすみねこのよこでねてしまいました。
さあ、ゆめのはじまりです。

ゆめのなかでは、あかるいあかるいじまとくらいくらいじまがありました。

ゆうくんとあいちゃんは、おやすみねことてをつないで、
あかるいあかるいじまにつきました。
あかるいあかるいじまは、ずっとずっと、いつもいつもひるまで、
いちにちじゅうあかるくて、よるがありません。

いっぽう、ぱぱは、くらいくらいじまにつきました。
くらいくらいじまは、ずっとずっと、いつもいつもよるで、
いちにちじゅうくらくて、ひるがありません。

あかるいあかるいじまでは、いつもあかるいので
いちにちじゅう、みんなでわーいとあそんでいられます。
くらいくらいじまでは、いちにちじゅう、ぐーぐーねていられます。

あかるいあかるいじまで、
おやすみねことゆうくんとあいちゃんとは、
おにごっこをしたり、
ボールなげをしたり、
うたをうたったり、
とてもたのしくあそびつづけました。

ゆめのなかでは、おやすみねこは、
とてもすばやくうごく、げんきなねこなのです。
だって、おやすみねこは、ゆめがとくいなのですから。

あかるいあかるいじまでは、いつもいつもひるであかるいので、
すべてがまっしろです。
からすもまっしろ。
すいかのたねもまっしろ。
ごきぶりもまっしろ。

そんなあかるいあかるいじまで、
ゆうくんとあいちゃんとおやすみねこは、あそびつづけました。
しろいからすもいっしょになって、あそびつづけました。
かくれんぼをしたり、
トランプをしたり、
はんかちおとしをしたり、
つみきをしたり、
ずっとずっとあそびつづけました。

あそびすぎて、とうとう、みんなつかれはててしまいました。
どのあそびにもあきてしまいました。
それに、つかれはてても、いつもあかるいので、
ねようとおもってもねられません。
たまには、よるがくるといいなあとおもいはじめてきました。

そこで、おやすみねことゆうくんとあいちゃんは、
あかるいあかるいじまからくらいくらいじまにぼうけんすることにしました。

あかるいあかるいじまからくらいくらいじまにいくために、
すいかのふねにのりました。
すいかのふねが、あかるいあかるいじまをしゅっぱつすると
しろいからすがとんできて、
「ぼくもつれてって」とたのみました。
じぶんがしろいのは、どうもきにくわない、
くらいくらいじまにいってまっくろにもどりたいといいました。

また、じつは、みんなにだまって、
ごきぶりくんもすいかのふねにのりこんでいました。
やはり、じぶんがしろいのは、がまんできなかったようです。

おやすみねことゆうくんとあいちゃんとしろいからすと
だまってのったしろいごきぶりをのせた
すいかのふねは、くらいくらいじまにむけてすすんでいます。
すいかのふねは、すいかのたねを、うしろにむかって、
ぺっとくちからはきだすとすすみます。
みんながんばって、しろいすいかのたねをはきだしました。

からすは、なれないけれど、がんばりました。
ぺっ、ぺっ、ぺっ。ああむつかしい。

あいちゃんも、ちいさなおくちでいっしょうけんめいです。
ぺっ、ぺっ。ぺ、ぺ、ぺ。
ぺっ、ぺっ。ぺ、ぺ、ぺ。

おにいちゃんのゆうくうは、すごいです。
ぺっ、ぺっ、ぺっ、ぺっ、ぺぺぺぺぺ。
ぺぺぺぺ。ぺっ、ぺっ、ぺっ。
ぺぺ、ぺぺ、ぺぺ、ぺっ、ぺっ。

おやすみねこは、ほんとうにげんきです。
ぺぺぺぺぺぺぺ。ぺっ、ぺっ、ぺっ。
ぺぺぺぺぺぺ、ぺぺぺぺぺ。
ぺっ、ぺっ、ぺっ。ぺぺぺぺぺぺぺ。

こうして、みんなががんばったおかげで、
すいかのふねが、くらいくらいじまにちかづくと
まわりがくらくなってきました。
すいかのたねもくろくなりました。
からすもくろくなりました。
ごきぶりも、ままは、いやがるだろうけれども
やっぱり、くろくなりました。

とうとう、くらいくらいじまにつくと
ぱぱがおきてきてまっていました。
ぱぱもずっとねているのにあきてしまって、
もとのひるのあるおうちにもどりたいとおもっていました。

そこで、ゆうくんとあいちゃんとぱぱは、
おやすみねこのよこでねました。
ひるとよるがかわりばんこにくるおうちにもどれたら
いいなと、おもいながらねました。

そして...
ゆうくんとあいちゃんとぱぱがめをさますと
もとどおりにおうちにいました。
ひるとよるがかわりばんこにきたので、
みんなおおよろこびです。

おやすみねこは、まだ、ねています。
でも、くちのまわりにひとつ、
くろいいすいかのたねがついていました。

そのよる、ままは、だいどころで、
しろいごきぶりをみつけたということです。

おしまい。

みなさんは、おやすみねことどんなゆめをみたいですか
おしえてください。

ほんとのおしまい。


11月9日
新潟
○ 神戸の震災を経験している、新潟出身で東京在住の友人のKさんが、仲間うちに宛てたmailをそのまま転載させてください。

○ それにしても今回の大地震は大変でした(です)ね。幸い、私の実家(新潟県見附市で、地震ニュースで良く登場する長岡市に隣接、車で15分の距離で経済的には一体化している)は住んでいる両親と、実家の近くにそれぞれ嫁いだ2人の妹など親族に怪我はありませんでした。しかし、実家は何度も襲ってくる震度5クラスにより、家中のタンス・棚が倒れ、電気・ガスが止まり、電話が通じなくなりました。(今は全て復旧しましたが)

○ ですので、地震から12時間後に両親に連絡がついてから、大量の食糧を買い込み、関越道が止まっているため、東北道から福島県回りで新潟に入り(いつもの倍の時間掛けて)、実家に行ってタンス・棚を立て直して帰ってきました。あちこちの戸が家の自重で(大雪の時みたいに)動かなくなり、外してノコギリで切って動くようにしてきました。ナカナカ大変ですね。

○ ちなみに電話は電話機自体が棚から落ちて壊れていました。(何度かけても掛からないのはこれが原因でした。)

○ この家の中の惨状は9年前に私自身が被災者となった神戸大地震(当時私は兵庫県宝塚市に住んでいて震度6を経験、3週間親戚宅に居候)よりも揺れがひどいという感じです。被害の差は人口密度と、密度に起因する火災の差と、雪国用に丈夫な家の3つだと思いました。

○ 私の実家エリアは避難所暮らしの人も少なく、皆自宅で過ごしていますが、TVに映し出される山古志村や小千谷市の被災者の方々は大変ですよね。その方々が私の母校、長岡高校に避難していて、この週末に天皇・皇后がお見舞いに訪れ、映し出されてました。

○ 7月には実家から500m位にある川の堤防が豪雨で決壊し、洪水となり(これも幸い私の家と反対側にあふれ、私の実家は大丈夫でしたが)、大変でしたが、今回の地震といい、今年は新潟は災難の年ですね。我が地元が物理的に、経済的に、そして精神的に痛んでいくのは見ていてつらいので、何かしなくちゃと思っています。小学生の頃、良く釣りをして多くの子供たち(=今の地元民)にささやかな幸せを与えてくれたその場所が、大きな不幸をもたらしてしまったのです。

○ 新潟県は人口密度が少ないので今回の地震でも「この程度」で済んでいますが、これが東京で起きたら死者の名前すら出ない(わからない)大惨事になること間違いないでしょうから、起こらないことを切に祈るのみです。新潟から横浜への帰路、首都高を走りながら、夜空に浮かぶ都心の高層ビルを見ながら、そう実感してました。


11月8日
自衛隊の災害救助
○ 10月26日に、自衛隊は、今回の災害救助でも活躍しているけれども、周囲を含めみんながその気になって気構えをもてば、もっともっと役に立つことができる。と書きました。(ココ

○ これに対して、奥さんが台湾の方であるKさんより、次のような賛成のemailを頂きました。

災害時の自衛隊の支援、外野で見ていると、もう少し有効に自衛隊を利用できないかと思いますね。
李登輝前総統が何かの時に、
「軍隊の仕事は戦闘のほかに戦場整理があって、戦場の後片付けが大切な仕事だ。だから災害復興には軍隊が一番有効である。また、軍隊は独自の通信手段を持っているので、どんな場所に行っても、通信手段がすぐに確保できる。」
といった意味のことを言っておりました。

私の妻なども災害のテレビを見るたびに「日本の軍隊はなぜ出動しないのか、なぜこんなに遅いのか、これで本当に戦争ができるの?」と言っております。台湾では少々の台風の後片付けなどは、軍隊が1日で終えてしまう、とのこと。もういいかげんに、自衛隊アレルギーは終わりにして、有効活用を考えても良いと思いますがね。政治が悪いのか、国民が悪いのか。


○ いつもくすっと笑える文の上手なKさんですが、最後は、いつになくきつい書き方になっています。僕の文もそうでした。この話は、書いていくうちに、助けられるのに助けていないというのに、ますます腹が立ってきて、とまらなくなるのです。よく分かります。

○ 確かに、台湾の軍隊は、本当に何にでもでてきます。急峻な渓谷が続く東部に大規模な道路を建設したのも軍隊です。昔は、ちょっと度が過ぎることもあって、バナナがとれすぎたからと言って、みんなでバナナを食べるのにまで動員されたとのことです。

○ これは、極端だとしても、自衛隊は、もう少し踏み込んでもいいと思います。役に立つ能力をもちながら、政治的制約と心理的抵抗感によって、最大限の力を発揮できていません。日本の社会が誇る最も良心的で最も優秀な現場の隊長が、助けたいのに助けられないと、歯ぎしりしている音が聞えるようです。


11月6日
ジーコ監督、新潟地震など
○ ワールゴカップ予選のシンガポール戦に、サッカー日本代表監督のジーコが、三浦和、中山などの「功労者」を招集しないことにした。ジーコが三浦和や中山を呼ぼうとしたこと、それを事前に周囲に相談したこと、そして反対の声が強いと自分の気持ちを抑えて断念したこと、その全てを僕は、好もしくみていた。僕は、もともとジーコ監督支持だけれども、今回の騒動で、より一層、ジーコ監督支持の気持ちが強くなった。

○ サッカーの日本代表というのは、勝つためとともに、日本のサッカーの発展の為にあると思う。クラブチームの監督よりも代表の監督は、そういう勝負以上の目的も少しは意識して欲しいと思う。だから、僕は、トルシエが嫌いで、ジーコが好きだ。え?いつになく浪花節じゃないかって?歳ですかねえ..

○ 全然違う話で、新潟地震の話。先週、新潟のお客さんが台湾に出張で来られたので、一緒に食事をした。随分揺れて、機械設備がのこのこ歩いたものですよ、と話されていた。それにしても神戸のときと比べて人的被害が少なかった理由は、なんだろうかという話になると、二人のお客さんから異口同音に同じ答えが返ってきた。新潟の家は、積雪に耐える為に、柱も太くて、丈夫に作ってあるからですよ。と。なるほど。

○ 確かに、新潟での被害の報道で、タイルが落ちてぐちゃぐちゃになってしまった民家の浴室などをみていると、震災直後の明石の実家での浴室の様子と同じだった。つまり、揺れようは、おなじようなものだったのかもしれない。また、神戸では、倒壊の有無は、家の作りよりも地盤の良し悪しによるというのが常識として語られている。それでも、新潟では、倒壊した家屋が明石や神戸より少ないのは、平均すれば、丈夫な家が多かったからだろう。倒壊が少ないから火事による被害も少なかったのだろう。

○ だからといって、誰の、なんのなぐさめにもならない。けれども、自分の行く末この方についても、色々考えさせられる話でした。


11月4日
フォーサイト
○ フォーサイトに「日本がデジタル家電で勝ちきるために」と題する拙文を掲載したのですが、それに対して個人的にいただいたコメントをここにあげさせてください。誉めていただいているのばかりですが、みんな知り合いですので、どうしてもこうなります。割り引いて見ていただいて、許していただくこととしましょう。

○ コメントでは、エレクトロニクス業界で現場に近い人程、「いつも思っていたことが言葉になった感じ」とか、「なかなか現場のことを分かってくれない本社に送りつけてやりましたよ」など、共感したというものでした。なかには、「こんなことは、業界の常識で、なにをいまさら」というようなコメントもありました。そして、業界に遠い人程、「ほんとうか」、「お前、ウソ言ってないよな」というコメントになりました。これは、書いていて狙ったとおりの反応で、非常に満足しています。

○ 台湾駐在ビジネスマン>(一般的に非常に多かった意見です)
本社に対して、台湾の重要性や、OEMが馬鹿に出来ない立派なビジネスであることを何度説明しても分かってもらえないので、この記事を本社の色んな部署に送りつけてやりました。

○ 画像処理/信号処理研究の大学助教授>
私の分野(信号処理)では、多くの台湾出身の人たちが活躍しています。IEEEの専門誌では、時には半分以上の論文が台湾からか、あるいは台湾からアメリカ移民の人のものである場合があります。
ご存知のように、日本ではインドのIT技術力はマスコミでもよく取り上げられますが、記事に書いておられるような台湾の電子技術力については、あまり多くの人は知らないのではないでしょうか。
レファレンス用のマザーボードについて聞いたことがあります。インテルが結構いい加減にレファレンスマザーボードを作っていても、台湾の技術者はあっという間に(例えば2,3日で)、CPUとチップセットの実力を十分に発揮できるボードを設計してしまうそうです。しかも、このようなことをできる会社が沢山あるとのことですが、すごい国だと思いました。

○ シリコンバレー駐在のビジネスマン>
中身も説得力があり、特に選択と集中という言葉のトリックを指摘しているあたり、どこの会社の幹部にもしっかりと読んで欲しいと思いました。選択と集中は3年前くらいならインパクトが有りましたが、未だそんな事を言っているとダサ過ぎと感じています。集中と実行とか、とりあえず何でもやってみるとかの方が未だ斬新だと思います。
台湾+米国で世界のHi End家電業界は動いていると言っても過言ではなく、如何に台湾と仕事をするかがかぎになります。

○ 日本のビジネスマン>
それにしても、「アナログvs.デジタル」の本質は、やはり民族性の問題に行き着くのでしょうか?

○ エレクトロニクス産業エンジニア>
デジタル景気(日本の強み)の源泉はアナログ技術であるという視点は新鮮で的を得ていると思います。

○ ニューヨーク在住ビジネスマン(先端技術担当)>
うんうん、と大きく頷くことしきり、の記事でした。特に日本製品の過剰品質と、中品質の製品を標準化で大量に頒布するモデルのところでは、我が意を得たりという感じで、感動してしまいました。

○ エレクトロニクス産業ビジネスマン>
見方も独特というか、逆説から入るあたりがらくちんさんっぽくて感動しました。
日本が標準部品化がなかなかできないところは、日本人の履歴書下手に通じるものがあると思います。自分自身を客観的に見て、その能力を列挙して、何が世間一般で評価される部分で何がそうでもないのかを正しく把握する能力が、アメリカ人と日本人とで決定的に違って、日本人は謙遜みたいなものもあって自分はすごいと言わないという側面もあるでしょうが、そもそもそういう考え方に慣れてないんだと思います。
標準部品化も、DLPみたいにどこから見ても他には無いものは別にして、自分たちの技術の何が評価されているのかをきちんと把握しないと仕様化できませんよね。それができない、あるいは自信がないから、みんなカスタム品になっちゃうんでしょうね。

○ 公務員>
らくちん節、炸裂!

○ ドイツ駐在ビジネスマン>
欧州では、日本メーカーは、技術力、小型化設計技術については今でも評価されていますが、一方Entry levelを志向するメーカーからは、超高級品(嫌味です。)かつ過剰スペックの代表として敬遠される存在です。欧州では、高級品というのはあまりなく(LoeweやVang&Olsenくらい)、やや上等のイメージがあるのがGrundigやPhilipsという感じですが、彼らとて、高級すぎる日本メーカー品については敬遠しがちです。結局、完成品市場は消費者により適正販売価格が決定されるのであり、価格下げ圧力は台湾、中国辺りのNo brand品が関与しています。らくちんさんのレポートにある通り、セグメントを正しく認識してそれに対応した製品戦略を日本企業は採るべきと強く感じます。

○ 最後に、これは結構笑っちゃいました。
公務員>
冒頭の「デジタル景気を支えているのはアナログ技術である」といういきなり核心をつく記述、「まだ序盤
戦」という冷静な現状認識、「つながれた競争」というオリジナルな表現、「香港、シンガポールよりもモノづくりが出来て、日本よりも商売が上手い」というニクい比喩など、いろんな部分にしびれました。さすが!!


11月3日
アメリカ大統領選挙
○ アメリカの大統領選挙は、現時点で、「ブッシュのほぼ勝ち。でも確定は一週間後」とのことである。勝ち負けはさておき、今回のアメリカの大統領選挙では、このサイトで過去に述べたことに照らして、二つの点に注目している。一つは、「メディアの発達した現代の民主主義下の大きな選挙では、大接戦になる。」というらくちんの仮説が、あてはまるか。もう一つは、「イラクについて、アメリカが出過ぎることよりも、むしろ急にひっこむ方が世界政治にとってリスクが大きい」という、らくちんが昨年5月に述べた心配があてはまるかということである。

○ まず、「メディアの発達した現代の民主主義下の大きな選挙では、大接戦になる。」という仮説について、らくちんが、今年7月に「バランス投票」(04年7月6日)と題して、こう書いている。

日本でも、アメリカでも、台湾でも、最近の民主主義社会の選挙では、世論調査とメディアの報道が充実しているので、有権者にとって選挙の結果が予測しやすくなっている。精度の高い最終世論調査結果とその後の世論の動きを伝える大量の報道により、かなりの有権者が勢力の強弱を肌で感じ取ることができ、選挙直前に結果がどうなりそうか分かりやすくなっている。その予測に応じて、バランス感覚で投票行動を変える人が多くなっている。その結果、重要な選挙での僅差の接戦が増えているようにみえる。アメリカの大統領選が歴史的な接戦となり、台湾の総統選がギネスものの僅差(0.228%)になったりしているのは、実は、単なる偶然ではないのかもしれない。

○ この一文を書いた昨年7月時点では、大方が、ブッシュ現職の圧勝を予想していた。それが、いざ選挙当日になって大接戦になっているのをみると、ここで述べている仮説を再検討してみてもいいと思う。そして、それに続く論点として、次のものを挙げている。(7月7日 ココ
・ 「政治的関心の強い無党派層」の存在
・ 大勝を阻止するバランス投票
・ バランス投票の重要性の増加
・ 世論が一つの統合された意思を持っているかのような巧妙な選挙結果
・ バランス投票は、現状維持的に動くか


○ また、ここで、もう少しこの仮設の議論を拡充してみると、このようなバランス投票による大接戦の選挙が成り立つ前提というのは、次のようなものだろう。
・ 民主主義が成立し、表現の自由が確立している。
・ マスメディアが発達し、精度の高い世論調査が行われ、それが、すぐに選挙民に伝わる。
・ 同じ選挙制度で、長期間、何度も選挙をして、有権者が慣れている。
・ 勝敗ラインが、有権者にとってはっきり分かっている。(日本の参議院選挙は、これがあてはまらなかった。)
・ メディアが、選挙のニュース性を高めようとして、リードしている方により批判的になり、接戦に持ち込もうとする傾向がある。 
これらの論点について、今回のアメリカ大統領選挙の結果をみていきたいと思っている。

○ もうひとつの「イラクについて、アメリカが出過ぎることよりも、むしろ、急にひっこむ方が世界政治にとってリスクが大きい」という心配について、らくちんは、昨年の5月2日にこう書いている。(アメリカがゆれ戻るとき 03年5月2日

ブッシュが、「戦争ほぼ勝利宣言」をした。そして、みんなは、アメリカが占領後のイラクを一人で取り仕切ることに、不満顔だ。しかし、僕は、アメリカが「やーめた」といってほっぽり出す方が、余程心配だ。

結局、長くても5年以内に、今よりは、外交的に消極的になると思う。それを越してまで、今の路線のまま一本調子で行くとは、僕には、どうも思えないのである。

次にアメリカが「やーめた」と言ったときの影響は、どうだろう。(中略)つまり、アメリカが領土的野心をもつなど、これまでの歴史からは考えられない行動にでも出ない限り、大局的には、行き過ぎることよりも、ゆれ戻したときのリスクの方が大きいと思う。


○ 選挙結果が確定した後、この心配があたるかどうかは、今の時点では、まだ明確にはなっていない。それだけに、この点を注意深く見ていきたい。


11月2日
現場の工夫アプローチ
○ 前回は、「週刊誌の見出し的戦略アプローチ」として、自分の頭でよく考えずに、メディアに出ている言葉を鵜呑みにして、人がやっているからと導入した失敗例を挙げた。今日は、地に足のついた「現場の工夫アプローチ」として、成功例を挙げてみたい。

○ 地に足のついた現場の工夫アプローチ
1) 古い設備、人力、簡単な新規設備を組み合わせて、コストの低い生産ラインを作った。結果として、世間で最近騒いでいるセル生産方式に似たものになっている。
2) 以前から小量ながら継続してビジネスがあり、相互に信頼感のあった台湾企業と組んで中国に進出し、大きく成功している。
3) 8年前に取り組み始めて、資金をそれほどかけずにこつこつと続けてきた技術開発や、新規ビジネスが最近花ひらいて、成功した。
4) BRICSと言われているのを気にせず、中東向けにまじめに売っていたら、今は、ばかにできない収益源になっている。
5) 前回の「週刊誌の見出し的戦略アプローチ」のいくつかを採用し、上手くいかないので幾つかは、やめた。それでも、残った制度は、よく機能しており、なにもせずに旧態然としているよりもよほどよかった。

○ 確かに、浅薄な理解で、自分の頭で考えず新しい制度や方策をとるのは、まずい。ビジネスに誰にでも効く薬なんてない。しかし、だからといって、何もしないのは、もっと悪い。ビジネスでは、成さざるの罪が一番重い。なかなか、むつかしいもんですなあ。


11月1日
週刊誌の見出し的戦略アプローチ
○ ビジネスの場で、戦略、戦略とよくいう人の話の中味をよく聞いていると、自分自身で咀嚼せずに、「日経ビジネス」、「東洋経済」、「エコノミスト」などの雑誌の見出しをつなぎ合わせたような、言葉の羅列をもって、戦略を語っている気になっていることが多い。こうした週刊誌の見出し的戦略アプローチの代表例を10個挙げてみた。こういうのは、プロジェクトXならぬ、プロジェクトA(あほう)と言いたくもなる。あなたの会社は何個あてはまるだろうか。

○ 週刊誌見出し的戦略アプローチ
1) 「.com」タスクフォースができた。上手くいっていないのに未だに継続している。
2) 「社内カンパニー制」が導入された。結局、社長までのレイヤーが一つ増えただけだった。
3) トップダウンで、「中国進出」が決まった。トップ同士の乾杯で決まった現地パートナーといまだに上手くいっていない。
4) 「選択と集中」の名のもとに、組織変更を繰り返した。客先との関係及び技術開発の継続性を維持できず、ビジネスを失っていった。組織変更の失敗をさらなる組織変更で挽回しようとして、後退的組織変更の繰り返しをとめられなくなっている。
5) 「能力主義」が導入された。結局、ゴマスリが横行、誠実で優秀な人がたくさん辞めた。
6) 「多機能で柔軟」、「省力化」の高額の生産設備が導入された。償却負担が重いので、信じられないほど莫大な量を生産しないと採算に合わない。その割に、多機能故にスピードが遅く、処理能力があがらない。
7) 「ダウンサイジング」、「BPR」と、数年毎に新しいキャッチフレーズとともに新しい「ITシステム投資」がされた。新システムの導入毎にある長時間の研修で、ルーティンの事務作業が滞り、残業が増えた。システムの償却負担が重くて苦しんでいる。
8) 「キャシュフロー経営」、「投資収益」、「IRR」と財務系の用語がちりばめられた複雑な業務目標が設定された。目標設定と目標達成度評価に関する事務作業に時間が取られ、目標遂行の為の業務が停滞している。細かな目標を設定させられるが、実際のビジネスなんてどうなるか正確に分かるはずもなく、結局、いろいろな点で乖離する。目標と乖離すると、また、細かな説明をつけなければならず、社内の説明資料作りに時間がかかっている。社内向けの数字管理の事務量が多すぎて、営業は、客と会う時間が減り、生産は、生産に従事する時間が減ってしまった。
9) 「ISO取得」の手続きのため、膨大な書類を作る作業に忙しく、実際に起こった品質問題にちゃんとした対応ができなかった。今は、そのリコールに追われている。
10) 「VMI(Vendor Managed Inventory)」や、「ジャストインタイム」といって、部品供給メーカーに在庫管理と即納体制の構築を要求した。両者の連絡の不備もあり部品メーカー側で在庫管理コストがかさみ、結局、製品コストを上げる要因になってしまった。また、新規の部品供給メーカーへの乗換えが難しいので、既存の部品メーカーが値下げ要求に応じてくれず、高い値段で部品を買っている。

○ あなたの会社は、何個あてはまっただろうか。「らくちんのやつ、オレの会社の批判をしているな。」と怒らないでいただきたい。日本の上場企業のほとんどは、上の10個のうち5個以上あてはまると思う。つまり、これは個々の企業の問題というよりも、日本の企業が全体で患った病と考えた方がよさそうである。

○ また、上記のそれぞれの方法論が悪いわけでもないし、それを紹介した週刊誌が悪いわけではない。上記のハイカラな名前の方法論でも、それに適合した状況下で採用すれば、上手く機能している例も多いだろう。週刊誌も、見出しに続く記事では、詳しく事例を説明しており、よく読めばどういう環境下でその方策が有効か考える示唆を与えてくれている。

○ 問題は、その記事の内容をよく読んで自分の頭で考えることなく、見出しだけを張り合わせたような「戦略」をとるからである。また、会社の置かれている内部及び外部の環境変化をまっとうな感受性で、いわば自分自身の肌で感じ取っていないから、状況にあった方策を採用できないのである。概していえば、週刊誌にでている成功事例は、真実であったとしても、記事として出てくる頃に後追いで実行しても、もう遅きに失していることも多かろう。

○ 自分で感じ、自分の頭で考え、自分の言葉で語れば、自ずと結果が違ってきたと思う。
次回は、そういう成功例を挙げてみたい。


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