台湾日記  2004年9月〜
 
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9月30日
台風
○ 台風21号が、日本列島を縦断し、大変な被害をだした。この台風、一度台湾に近づいてから日本列島に向かったため、僕にとっては、覚えのある豪雨で、テレビで日本各地を荒らしている映像をみると、人ごととは思えなかった。

○ この台風は、沖縄あたりをうろうろした後、23日頃には、台湾の北方に向かって進み始め、24日、25日などは、台北でも強い雨をずっと降らせていた。あまりに雨足が強いので、僕などは、また、週明けの27日あたりに会社が休みになるかしらんと、不謹慎な考えがよぎったり、それでも、また台北近郊各地に洪水の被害が出たらたまらんなあと不安を覚えたりで、テレビの天気図を食い入るように見ていた。

○ テレビのニュースでは、中秋節のお月見は無理でしょうなんて、天気予報官も述べていた。また、前回、地下鉄の工事で、排水口から川の水を逆流させてしまって、町中、大変な浸水被害をだした現場で、担当の人が、「今回は大丈夫」と胸を張ってテレビにでてきたりしていた。

○ こんな風に待ち構えていると27日頃、台風は、90度方向転換し、日本列島に向かい始めた。NHKのテレビでみると、日本は、大変な被害がでている。台湾と日本というのは、本当にお隣なんだなあ、と改めて身にしみて思い知らされた。

○ 一方、台湾では、おかげで中秋節の28日に晴天となり、大通りの歩道でみんなバーベキューをしていた。(ココ参照)お隣といっても、沖縄のも一つむこうで、天気は違っており、やはり遠いのは遠い。おかげで、台湾と日本の距離を実感する日々でした。


9月29日
似て非なるビジネス
○ 以前に(ココ)、TDLと他のテーマパークとは、似て非なるビジネスだと書きました。これから、素人目にみて、似て非なるビジネスと思えるものを書いてみます。

○ 今日は、まず、台湾のテレビ番組です。日本のテレビドラマは、台湾で人気が高いですが、これを台湾で売っても、大もうけはできません。テレビの収入というのは、広告代で成り立っており、広告代は、[視聴者数]x[一視聴者辺りの効果(費用)]を基礎に計算します。その視聴者数は、[人口]x[視聴率]に比例するでしょう。そこで、台湾と日本を比べると次のようになります。

1)人口は、24百万人で日本の1/5です。
2)一つの番組の視聴率が大変低い。CATVが普及していて、一般家庭で100チャンネルほど見られるので、人気番組でも視聴率5%もなかなかいきません。日本の人気ドラマの1/5程度でしょうか。
3)物価水準は、難しいですが、80%(=4/5)としましょう。
そうすると、1/5x1/5x4/5=4/125で 
期待できる収入規模が、ざっと考えても日本の3%ほどでしかありません。

○ これはなかなか難しい。日本と同じような考えかたでビジネスをしても無理でしょう。日本でプラスだった同じことを台湾でしてもマイナスになります。似て非なるビジネスです。


9月28日
経済・経営の本
● 最近読んだ本です。

● 「論争日本の経済危機」浜田宏一・堀内昭義
1990年代以降の10年以上の日本経済の不調について
@ 供給側の構造問題か、需要不足か
A 財政支出政策は、有効だったか
B 金融政策は適切だったか
C 不良債権問題、銀行機能不全問題が経済全体に影響したか
という論点について、討論しているもの。真面目な議論で面白い。とはいえ、読み終わると、これだけ多くの深刻な問題が起こった中、これだけ多くの失敗対策をすれば、どれがどれだけ効いたかはともかく、停滞するわなあと、嘆息します。

○ それとエコノミストは、長期・供給側・構造問題vs. 短期・需要側・循環問題という組み合わせで議論をします。しかし、素人の言葉でいうと、需要側の長期の構造問題も深刻だとの思いが消えず、言葉の定義の問題と知りつつも頭が混乱します。

● 「イノベーションの本質」野中郁次郎 勝見明
サントリーDAKARAの商品開発で、「飲料の中味について、不足分を補充する以上に、余分なものの排出に重点を置くという、過去に無い商品づくり」というセリフが気にいりました。「吸収ではなく、排出のお手伝い」という考え方は、他のサービスや、商品開発でも使えそうです。

● 「中国 未完の経済改革」ファン ガン
こういう人がちゃんとしたポジションで発言を続けられているうちは、中国経済は、小さな停滞はあっても大きく崩壊しないのではないかと思いました。

● 「ビームス戦略」川島蓉子
セレクトショップという考え方に興味あり。音楽でも、言論でもあてはまるのではないかしらん。

● 「アジア経済の真実」吉富勝
実は、吉富勝、結構好きなんです。竹中大臣より、エコノミストとしては、ずっとレベルの高い人です。しかし、90年代にふさわしいポジションにいながら有効な経済政策を実施できず、経済の回復をできなかったという結果でみれば、竹中氏に軍配を挙げざるを得ないのかもしれません。

○ 台湾に関する抜書きを一つ。
「よく、台湾は、どうして1997〜98年のアジアの危機に陥らなかったのか、と問われる。答えの一つは、この国際金利差がほとんどなかったことにある。台湾の国内金利は7%だったから、米ドル金利との差は、2%にすぎなかった。」

○ ところで、ミスプリントが、僕の持つ03年9月の初版にあります。(29ページ)「1995年は、強い円高の年だった(一時的に1ドル=89円にさえ達した..)」とあるが、79円の間違い。僕は、当時、少ないとはいえポジションをもっていて胃の痛い思いをしただけに、70円代突入を表示しているモニター画面が忘れられません。こういうのって、実務で働いている人にとって、100年の恋も醒めるミスプリントです。これが言いたくて一年ほど前に読んだ本なのに敢えて挙げました。もう訂正されているかしらん。


9月27日
内閣改造
○ ちょっとした裏話です。
次期内閣で、古田選手を現役選手のまま大臣に起用することを小泉首相が検討し、本人に直接電話したそうです。兼務は可能だと説得したそうですが、当たり前だけれども、古田選手は、固辞。最後は、「赤い絨毯よりも、緑の芝生が僕の働く場所です。」と、言って電話を切ったとのこと。いずれがたぬきかきつねかという話ですね。

○ もう一つ。ナベツネは、この土日とも居場所を明らかにして待機していたとのこと。

○ なんてね。以上二つの話は、ジョークですよ。真に受けて怒ったりしないでくださいね。
悪乗りして、民間人による内閣を考えてみました。今回小泉改造内閣で決まった大臣とどちらがいいでしょうか。皆さんも大臣の一人や二人を決めて、酒のつまみにでもしてくださいな。

総務・郵政民営化:川淵三郎(日本サッカー協会キャプテン)。日本一の制度設計の名手に郵政民営化を委ねる。地方の活性化にも見識あり。
法務:浅田次郎。塀の中にも、裏の世界にも詳しい。人情の機微も心得ている。
外務:金原ひとみ。二枚舌で頑張れ。
財務:中内巧(元ダイエー社長) 巨額の借金の方法に知悉し、その怖さを骨身にしみて知っている。
文部科学:小関智弘(旋盤工、「大森界隈職人往来」著者)。ものづくりの喜びと大切さを教える。
厚生労働:土屋宏明(暗算チャンピオン)。年金の計算早そう。官僚にだまされなさそう。
農水:安部修仁(吉野家社長)。BSEのスペシャリスト。日本の農政を、「早い安いうまい」の消費者を向いたものに変える。
経済産業:中島みゆき。歌で産業界を鼓舞する。しょせん、政府にできるのは、その程度か?
国土交通:松永真里(「iモード事件」)ハードを作るのは終わった。後は、利用法であり、コンテンツである。サードパーティを活用して、道路や施設の利用率を高める。
環境・沖縄北方:高倉健。イメージそうでしょう。このポストは、イメージですから。 
官房:古田敦也(ヤクルト)。自分の言葉で誠実に話されると、なかなか批判しにくい。
国家公安委員長:岩下志麻。アネサンには、逆らえまい。本人も年季が明ければ、ハクがつく?
   あ、間違った。この組織は、警察を管理するのですね。ま、似たようなもんか。
防衛:羽生善治(将棋王座)。香車と銀使いの名人に、ミサイルとイージス艦を委ねる。
担当相については、省略。
首相:小泉純一郎
こうして並べると、最後の行も芝居がかって同じようにウソに見えますね。
*28日、台湾は、中秋節でお休みです。


9月26日
歴史あれこれ

○ 21日分の「海外駐在を始める人に」という拙文(ココ)に、emailを頂いたので紹介します。

 Iさん
指摘された海外理解のアドバイス三点に、基本的な自国文化、歴史の知識を付け加えさせてください。


いや、ごもっとも。その通りです。例えば、英語のスラングよりも、日本の歴史文化に詳しいほうが、アメリカ人と意義深い交流ができるのは間違いありません。

○ Uさん
アメリカの歴史は短いが、アメリカの近代史は、世界一長い、という言葉を聞いたことがあります。


いい言葉ですね。アメリカは、歴史をちゃんと教え、みんながそれに想いをめぐらしている、というのが、日本だけでなく他の国に比べても際立っているところだと思います。

○ それにしても、日本は、昭和史を教えなさ過ぎますね。もう5年以上も前かと思いますが、東大の政治学の先生が、「今の学生は、「55年体制」という言葉だけでなく、自民党が長期政権だったことすら知らないことがある。理系の学生ならまだしも、法学部の学生がそうなのは、驚きを通り越して本当に心配になる」と、嘆いておられました。

○ 話を戻しまして、アメリカをみていると、歴史の価値は、長さではなく、現代に生きて受け止める側の姿勢によっているのだと思います。個人の人間も経験の多さ、長さを威張るのではなく、そこから何を汲み取り、身につけたかの方が大切なのだろうと、最近、個人的にちょっと反省しています。


9月25日
尊敬する人
尊敬する人:イチロー、古田...

せいぜい、そんなもんかい、と思うと、ちと寂しくもある。


9月23日
日本人は怠惰か?
○ 今日は、また休みですか?日本は!祝祭日が多いですね。ココによると、日本の年間の祝祭日は、15日。アメリカ10日、ドイツ11日、イタリア9日。台湾は、なんと6日だけ。日本人は、怠惰じゃないですか。

○ 日本の祝祭日が多いのは、国際的な仕事をしている外国人によく知られています。今は、色んな国の企業が分業をして、電子メイルと電話会議でどんどん新製品の開発と生産を進めていきます。そこで、電話会議や製品出荷のスケジュールを決めるときに、台湾人とアメリカ人の間で、「なんだ、この日もまた、日本は、休みかよ。」なんて会話がされています。世界一、休みが多いのは、日本とブラジルだなんて冗談も聞きました。(結構、その場は、まに受けて頷いたのですが、実際は、スリランカの27日に負けていますね。)

○ ヨーロッパなどでは、担当者が長い夏休みを取りますが、会社は業務をしているので、ルーティンワークで急ぐ仕事が滞ることはありません。しかし、日本の祝祭日では、どの会社も役所も一斉に休むので、納期を1日単位で削って管理しているこの御時世に、出荷当日も翌日の通関も祭日にできず、対応に困ることもしばしばです。

○ ところが、日本の祭日に、明日見てもらえたらいいやと思って、台湾から日本の担当者に電子メイルをうつと、自宅でメイルチェックしていて、返事を送ってきてくれたりします。会社は休みなのに、個人は、働いている。これって、あまり健全じゃないですよね。「個人は休んでいるが、会社は動いている。」方が、よほどまっとうな社会に違いありません。

○ それに、外国人に説明し難い休日が多いのも、海外にいる日本人には、頭痛の種です。5月5日は、子供の日で休みだというと、相手は驚いて、「じゃ、年寄りの日があるのか?」と冗談まじりに言ってきます。胸を張って「あるよ、9月に敬老の日が」と切り返すと、もっと驚きます。しかし、「緑の日」となると、説明に窮します。「じゃ、なにかい、青の日、赤の日、黄色の日があるのか」と言われると、返す言葉も思いつきません。もっといえば、「海の日」なんてのも、全く説明不可能で、「山の立場は、どうなる?え?川の立場は?空にも立場っつうものがあるだろうが」と迫られると反論の余地もないでしょう。

○ しかし、日本にいれば、平日に午前中半休をとって、ゴルフに行くこともないでしょうからね。あまり猛々しくは、文句を言いません。ですから、穏便にすませましょうね。穏便に...


9月21日
海外駐在を始める人に
○ 最近、僕の周囲で海外転勤になった人が多いので、ちょっと説教臭いけれども、10年程前に、僕がアメリカに行くときに読んだ、入江昭ハーバード大学教授のアドバイスを受け売りで伝えたいと思います。(どの本に書いてあったか、忘れました。記憶で書いているので、詳細は違うかもしれません。)

○ 入江昭教授は、海外文化の理解の為に3つのアドバイスをしています。
1) その国の歴史を知る。
2) 自分の専門分野を通じてその国の文化を見る。
3) 日本とその国以外の第三国の視点からも見てみる。

○ まず、歴史ですが、歴史の長短と重要性は、関係ないと思います。日本人の目には、アメリカの歴史などは、とても短く見え、どうも軽視しがちです。でも、アメリカ社会は、侵略統治されたこともなく、断絶していない故に、歴史的経緯の重要性を社会のあちこちに見ることができます。何より、アメリカ人自身が、歴史を非常に大切にし、意思決定の参考にするので、歴史を知らずしてアメリカ社会の行く末を語ることはできません。台湾も大きな動きのある歴史は、短い期間ですが、20世紀の台湾の歴史は、そのまま世界政治の動きを拡大して反映したようなダイナミックな歴史で、とても重要です。海外駐在が決まったら、その日のうちに、その国の歴史の本をまず買いに行きましょう。

○ 次に自分の専門分野ですが、音楽家なら音楽、技術者ならその専門の技術を通して、その国の文化を理解するのがいいという意味です。自分の専門分野だと、文化によるアプローチの仕方の微妙な違いを鮮明に感じることができ、その文化と他の文化を分けるものを嗅ぎ分けやすいと思います。その国のユニークな風俗や習慣を理解しようとするのもいいですが、このように足許のしっかりした自分の得意分野の視点からみるというのが、まず、大切だと思います。僕のようなサラーマンビジネスマンなら、やはり、担当している業界のサラリーマンビジネスの社会を見ることになるのでしょう。

○ 三番目に、日本とその国以外の第三国の視点から見るということですが、アメリカなら、ヨーロッパや南米の視点なども考えてみるといいと思います。例えば、日本人がアメリカに行くとその社会の多様性にばかり目がいきますが、ヨーロッパの人からは、アメリカは、単一で同質性の高い社会に見える面があります。古くは、アメリカ研究の古典である「アメリカの民主主義」を著した、フランス人のトクヴィルも「アメリカ人は、広い国土のどこに行っても同じように挨拶をする。」と驚きを記しています。僕の場合、この三番目の視点というのが欲しくて台湾に来たと言えなくもありません。

○ 海外に住んでいると、その国の文化を理解しようとするのは、生きるために必要であるとともに、最大の楽しみでもあります。僕がアメリカに行こうとする時に、当時のアメリカ経済がガタガタだったこともあり、「どの海外駐在でもいえることだが、サラリーマンとしては、プラスかマイナスか分からんが、人生にとってプラスなのは、間違いない。」とアドバイスしてくれた先輩がいました。いまだに、言いえて至極と思っています。


9月19日
江沢民の辞職
○ 今入ったニュースによると、江沢民が共産党中央軍事委員会主席を辞職し、胡錦涛が後任につくことが、19日に閉会した党の第16期中央委員会第四回総会(四中総会)で決まったという。これは、なかなか影響の大きなニュースだと思う。

○ 僕は、丁度、江沢民が四中総会で辞任する可能性があるとするタイムリーな記事を2本(「フォーサイト」10月号)を読んだばかりだったので、ほおと感心していた。この号が、読者の手に渡るのは、四中総会が閉会する頃だけに、結果を知らずに江沢民の辞任について、次のような記事を書くのは、勇気のいったことだろうと思う。
1)「合法性」を盾に上海グループを追う胡錦濤の凄み
2)江沢民「引退」に引かれた筋道

○ 2)の記事によると、8月後半の党中央軍事委拡大会議で、江沢民が、慰留されるのを当然の前提として自らの辞任を持ち出したところ、曹剛川副主席が辞任に賛成、郭伯雄副主席が反対、胡錦涛副主席が態度を留保する中、結果として辞任が内定した。子飼いと信じていた曹の裏切りに怒り、江は思わず涙した。とある。

○ なんともリアルな話である。ただ、厳しい内部政治を行っている中国にしては、ある意味で「のどか」とも言え、そのまま信じていいのか、らくちんには、判定する能力がないと告白しておこう。

○ ニュース記事以外、なんの知見もないが、今ここで思ったことを自分の記録の為にも書いておきたい。結果として、江沢民の影響力が落ちるのは間違いないが、胡錦涛がリーダーシップをどの程度発揮できるかは、注視が必要だろう。アメリカの新大統領就任後100日とまではいかないにしても、かなり果敢に新政策を実施するか、あるいは、江沢民の実権掌握のように時間をかけてゆっくり行うのか。

○ 最大の論点は、経済政策で、いけいけどんどんで伸びるところから伸してしまえという従来の政策から、少しスピード調整しつつ地域間格差と貧富の差を埋めながら成長する方向にどれだけ舵をきるのか。そして、外交問題でありながら、国内政治の正統性(レジティマシー)に係わる対台湾政策、対日政策などにも大きな影響が出るだろう。国際社会での位置付けでは、「平和的台頭」が、より熱く論じられるのではないだろうか。


9月17日
泣きバー
○ 昨日のエッセイ(ココ)について、読者から、中国には、「泣きバー」 があるというコラムを紹介してもらいました。ココです。
南京市のホテルの一室にあって、一時間50元(750円)ととんでもなく高いのに、一日十数人来客があるそうです。泣きやすい様に、唐辛子を溶かした水やニンニクが置かれてあるそうです。このコラムでは、絶好調の経済の影で中国の人も厳しい競争とストレスにさらされていると説明しています。

そうですか、とても驚き、そして、なんだか中国の人に人間味と共感を覚える話です。

○ それに、このコラムを紹介してくださったmailには、こう書かれています。

ラクチンサン、
大いに泣いてください、最近の若者もよく泣きますよ。


○ こんな気の利いたmailを頂くと、ホームページをやっている喜びが、また、お腹の底から沸きあがってきます......
いえいえ、泣いていませんって。泣いていませんって。泣いていませんって...


9月16日
おじさんの涙
○ 小泉首相が、ブラジルで日系移民の苦労に思いをはせ、感極まって涙を流したという。パフォーマンスの要素もあるだろうが、40歳を越すと涙腺が妙にゆるくなるのは、らくちんもおじさんとして共感できるところである。

○ アテネオリンピックのときに、単身赴任で駐在している人から聞いた話がある。一人暮らしのせいか、歳のせいか、最近、涙腺がゆるくなってねえ。アテネオリンピックなんて、(台湾では、日本選手の放送をしていないので)ほとんどテレビで見られないのに、新聞読んで感動しちゃってねえ。日経新聞のスポーツ欄に書いてある、選手の苦労話に涙しちゃったよ。日経新聞読んで、涙する自分を見つけて、いっそう驚いたよ。日経新聞だよ。

○ この話、らくちんにもよく分かるのである。お涙頂戴のドラマで仕掛けがみえみえなのに、厚くなった面の皮に水滴がつたわるのは、我ながら情けない。さらに、らくちんの場合、他のおじさんもそうだか知らないが、妙なタイミングで急に涙がぼろっとでるので困っている。なんでもない平凡な場面で、ぐっと胸に来る。

○ 例えば、高校野球で、9回表8対0で負けているチームのピッチャーが、一、ニ塁にランナーを背負い、炎天下で汗をぬぐいながらキャッチャーのサインを覗き込む。そんな図が、アップで映るような場面である。勝負も決しているし、普通、さして感動もしないシーンなのに、急にその打ち込まれているピッチャーに感情移入しちゃって、ぼろぼろっとくる。したたる自分の汗の匂い、集中するほどに遠くに聞こえる周りの音、また打たれるのだろうなという悪い予感などが、自分の高校時代に不真面目ながらやっていたスポーツの経験からよみがえるのかもしれない。とにかく、理由が分からぬまま不意打ちをされて困るのである。

○ こんな図を、近頃の若いもんにでも見られようものなら、だせい、ばかみたい、へん、とののしられるのであろうからして、舌をかんでも見せるわけには、いかない。でも誰も見ていないなら、いいか。とも思い、抵抗を諦めたりする。

○ よろしいか、若いもん。おじさんはっているのも、涙ぐましくも、大変なのである。


9月15日
TDLとテーマパーク
○ テーマパークなどの集客ビジネスの話をしていると、見習うべき話としてよく東京ディズニーランド(TDL)がでてきます。でも、TDLと他のテーマパークとは、似て非なる、全然別のビジネスだと思います。

○ TDLは、ディズニーシーと合わせて集客数が年間約30百万人、客単価が、約9千円とも言われています。一方、日本国内のテーマパークで、入場料ありで百万人以上の集客を得て、3千円以上の客単価が取れているところは、全国で20施設もないと思います。集客数で30倍、客単価で3倍違えば、ざっと100倍の収入の違いで、これは、もう全く別のビジネスです。精神論はともかく、実際の運営では、なんの参考にもなりません。

○ 僕の勝手な指標ですが、想定する収入の規模が一桁違うと、もうそれは、同じ業界でも似て非なるビジネスで、一方で経営にプラスになった同じことを、もう一方ですると、経営にマイナスになるといえます。

○ ディズニーランドというのは、建物や施設への投資額も巨大ですが、その背後に、ディズニーが何十年もミッキーマウスのアニメやグッズにかけてきた何兆円、何十兆円にもあたる投資がります。その投資があって始めて、知名度とイメージがあり、あれだけの集客ができるのです。ユニバーサルスタジオだって、大作映画への投資額をあわせたところで、このディズニーの累積する投資額に比べると、一桁二桁少ないかもしれません。ならば、USJですら、ディズニーと似て非なるビジネスです。

○ ところで、話が飛んじゃいますが、怪しげなテーマパークコンサルタントの話です。テーマパークというのは、そればかりたくさんやっている企業は、少ないので、規模が大きくなるほど異業種からの参入が多くなります。「TDLの立ち上げに協力しました。」というちょっと怪しげなコンサルタントが、地方自治体や異業種のオーナーなどに取り入っている例をよくみかけます。

○ こういう人が、とくとくと「TDLでは、客の足が痛くならないように、クッション性のある柔らかい舗装を道に使っています。こういう気配りが大切なんです。」なんて得意げに説明して、クライアントを感心させたりしています。しかし、実際は、客単価3千円、集客数百万人の施設で、ディズニーランド並みのサービスをしていると、大赤字になります。

○ また、よく「ディズニーで3千万人来ていますので、低くみていくらなんでも、その10分の一の3百万人は集客できるでしょう。」なんて説明を聞きますが、どっこい3百万人なんてなかなか集まりません。集客施設で100万人集めれば、ひとまず成功で、それでも赤字なら、もともとのプランが過剰投資、経費過多です。

○ 昔からこの業界にいる人がそっと教えてくれたのですが、「TDLは、従来の日本の施設に比べ桁違いに大規模な施設だったので、立ち上げるときは、日本中の業界関係者がなんらかの形で係わりました。全く無関係だったらそれこそ業界のモグリです。ですから、まっとうな業界関係者なら恥ずかしくてTDLの立ち上げに係わりましたなんていいません。」とのことでした。

○ 僕は、ほんの5年程しか、このアミューズメントの業界には、係わっていませんでしたが、とにかく色んな勉強をさせてもらいました。そういう意味では、似て非なるビジネスからも、間接的には、多くのことを学べるものだといえるかもしれません。


9月13日
一言:結論
「結論を言え、結論を!」とおっしゃいますが、だんな。
目的地しか書いていない地図なんて、役に立ちませんぜ。


9月12日
プロ野球のスト
○ 日本のプロ野球がストだへちまだともめているそうですね。あれは、ナベツネさんの、選手を使用人であるかのように扱う態度が、問題を最悪の状況にしたのです。それに尽きます。オリックスの宮内さんがいう「雇用を確保するといっているのに、どうしてストライキになるのか」というのは、筋の通った理屈です。しかし、問題の本質は、こういう労務管理の問題ではなくて、「選手を馬鹿にするな」という選手とファンが共有した感覚的反発なのです。それだけです。

○ 以前、松竹の演劇部門のスタッフの方から聞いたのですが、歌舞伎の伝統もあり、松竹の経営側のスタッフは、廊下の端を歩くべしとされているそうです。廊下の真ん中は、役者が通るのだと。プロ野球も歌舞伎も同じ興行ビジネスです。客は選手が好きで集まります。経営側がその選手を馬鹿にしたような態度をすると、客にとっては、自分が馬鹿にされているように感じます。それでは、客が離れてしまい、興行ビジネスは、成り立ちません。

○ 娯楽系のビジネスというのは、実に繊細なもので、一般消費者のちょっとした「いい気分」に、収益が依存しています。客は、運営側が一生懸命か馬鹿にしているかというのを実に如実に感じ取ります。運営側が少し手を抜くと、何が嫌かと明確に問題を自覚していなくとも、「なんとなく、また行きたいとは思わない」という印象が残り、結局は、客数の減少となって、明確に収益に反映します。興行ビジネスに係わる人間は、それで、掃除だとか、挨拶など細かい点にこだわるのです。

○ ドライなビジネスの視点で見るならば、「選手は、使用人」というナベツネさんの理解は全くの間違いで、「選手は、商品」でもあります。経営者たるもの、商品は、できるだけ立派にみえるように磨き上げ、丁寧に扱わねばなりません。八百屋が蹴っ飛ばしながらもってきたキャベツなど、どこのおばちゃんでも買いますまい。

○ 今となっては、世間に尊大に見えていたオーナーの人々が青い顔をして右往左往してみせて、選手とファンに誠意を見せる、少なくとも、その振りをしなければ、解決できないのではないでしょうか。一度感情的にこじれたら大変だ。ということばかりは、使用人である我々サラリーマン相手の労務管理でも通じることでしょう。


9月11日
大雨
○ 昨夜からまた大雨が続いています。台北への通勤圏の、南港、新荘、三重などでは、ひざの高さまで水に浸かっています。汐止では、一階がまるまる水没しているところもあるようです。我家は、たいした問題はありませんが、それでも、昨夜に停電がありましたし、今日は、断続的に、水がでなくなりました。

○ 台北国際空港(中正国際空港)の近くの桃園では、一週間前の台風の影響が長引き、断水が続きました。先週、桃園の上場企業の客を訪問しましたが、便所では、水が出ず、バケツからひしゃくで水をすくって、手を洗いました。

○ 東京でいうと、川崎、船橋、松戸で、膝まで浸水していて、千葉で断水しているような状況です。なかなか気が晴れません。それにしても、台湾は、災害に弱いですね。今年は、とりわけ台風が多いのですが、でも同じくらい台風の来襲を受けている沖縄は、台湾ほどは、ひどい状況ではないですものねえ。

○ そういえば、内湖という、市内で開発中の地域では、浸水のために道路で魚がいっぱいとれたそうです。おじさんや子供が満面の笑顔で魚を手づかみしにしていました。このあたりが台湾のいいところです。


9月7日
BSアンテナ事件
○ 先日、土曜日の昼過ぎに家に戻ろうとすると、クレーン車が我がアパートに横付けしています。どうやら僕の部屋の高さあたりについている看板の付け替えをしているようです。いやな予感がしました。

○ その後居間でテレビを見ていると、ベランダにのそっと人影が現れます。窓を開けてのぞくと、看板屋が平気で我がアパートのベランダに立って作業しています。日本なら住居侵害で110番ものでしょう。でもここは、台湾。看板屋もわるびれた様子も無く、「こんにちは」と挨拶して、道からアパートに横付けされたクレーン車と共同作業を続けていました。「気をつけてね。」と僕も一言あいさつして、戻りました。

○ とはいえ、一つ気になることがありました。看板屋が作業しているところとは、離れているのですが、同じベランダにBS用のパラボラアンテナがあるのです。それで、万一何かあるとすぐ分かるように、BS放送の映像を流しながら他のことをしていました。

○ そうしてしばらくすると、突然、ブチっとBS放送が全く映らなくなりました。ほらみろ!と叫びながらベランダに駆けつけてのぞくと、ロープでつるして取替え中の看板の枠の鉄骨が、パラボラアンテナの真ん中にある集波器のところにもろに当たっています。「ほら!ほら!」と僕は、アンテナを指さして、もう日本語でわーわー言うと、看板屋の作業員は、「下、下、下にボスがいるから」と下を指さします。それで、一階におりて、管理人に話し、看板屋に話し、大家さんに話しました。大家さんと管理人さんは、なんとかするから待ってくれとのことでした。

○ 3時間ほどすると、大家さんがにこにこやってきて、「看板屋が、アンテナは、直したと言って帰りましたが、直りましたか」といいます。直っているはずがなく、テレビをつけるとやはり映りません。どうせ、看板屋が手できゅきゅと曲げ直して、直したと言っていたのでしょう。結局、週明けに仲介の不動産屋さん(ココ)が丁寧にさばいてくれ、看板屋の費用負担で専門業者を呼んで修理してくれました。

○ この話を、台湾駐在の人に、「台湾らしいでしょ」と話すと、みんな「台湾だなあ」と言います。「何かしでかすと思ったときは、必ずしでかす。どうしでかすかは、予想がつかないんだけれどもなあ。」と一同納得です。台湾生活の長い人には、「あんた、そりゃ、現場を押さえたのがよかった。翌日に言っても、大抵、費用はもってくれないよ。」とのことでした。いやいや、これぞ、台湾生活の醍醐味でしょう。

○ すべてことがすんで、BSテレビを見ていると、大家さんがやってきて、迷惑かけてすいませんでしたと言って、りんごを持ってきてくれました。これも、また、台湾らしくていい話です。


9月5日
台湾駐在アドバイス
○ 台湾駐在10分アドバイスというのを、このサイトに加えました。(ココ)駐在の方で、修正や追加すべき点に気付かれましたらemailください。

○ 書いていて改めて確認したのですが、台湾というのは、日本人にとって最も住みやすい外国の一つだと。その最大の理由は、対日感情の良さでしょう。

○ 僕は、アメリカで、コロラド、テキサス、シリコンバレー、シアトルと転々として、色んな場所に、合計2年ほど住んでいたことがあります。その時に思ったのは、住みやすいかどうかを決めるおそらく一番大きな要素は、対日感情の良し悪しでしょう。いやな事を少しだけどいつもされるのと、少し親しげにいつもされるのとでは、住んで暮らすときの緊張感と疲労感が全く違います。そういう意味でいうと、日本にいる時に、どの外国の人にも住みやすいようにしてあげたいですね。

○ では、台湾駐在以外の方が読んでも興味深そうな部分を紹介させてください

○ 物価
安いものは安く、高いものは、日本と同じくらい高い。タクシー、昼の弁当など安いものは、日本の1/3くらい。(昼の弁当でNTD60くらい)普通のもので80%くらい。ブランド物や日本の食材などは、日本と同じ値段か少し高いくらいです。

○ 食事
スターバックス、マクドナルドはもちろん、モスバーガー、吉野家、養老の滝、ローヤルホストまであります。(アメリカ人と違い?)台湾人の味覚はしっかりしているので、お客がたくさん入っている中華レストランに行けば、麺だろうが、四川料理だろうが、大体、安くておいしい店で、はずれがありません。

○ CATV
100チャンネルくらい見られるCATVがほとんどの家庭に普及しています。CATVの利用料金は、月NTD500〜600程度。NHKワールドプレミアムなど日本語放送4局、Disney、HBO、CNNなども全てこの料金に含まれています。
 
○ 日本語放送
日本語放送は、NHKワールドプレミアムが入ります。他に日本語専門放送の、緯来日本台、JET TV、国興衛視3つのチャンネルがあり、そこでは、日本語の放送に中国語の字幕で放映されています。一般チャンネルでも、日本のテレビドラマが半年から数年遅れて、日本語の音声に中国語字幕付で放映されています。日本のアニメは、たくさん放映されていますが、子供は字幕が読めないからでしょう、ほとんど中国語に吹き返られているため、言葉が分からないと難しいです。

○ 住居選び
中国や他のアジアの国のように、外国人専用の住居というのは、ほとんどありません。台湾は、既に豊かで階級社会でもないので、日本人駐在員が住んでいるマンションに、普通に他の台湾人も住んでいます。

○ 建築技術
建築技術は、低いです。そこそこ高いマンションでも隙間風が吹いたり、蛇口をひねってしばらくは赤水がでるなんて当たり前です。雨の日が続くと壁から水がしみ出したりします。たてつけも悪く、全ての窓がちゃんと開け閉めできて、鍵がちゃんとかかるなんて、珍しいほうかもしれません。



9月2日
インドの茶色のジュース
○ サッカーの日本代表が、インドに遠征して9月8日にワールドカップ予選を戦いますが、体調管理のために友人の貴重な体験談を紹介させてください。

○ 彼が、1996年にインドに出張したときのことです。インドは、口にいれるものには要注意で、生水はもちろん、一流ホテルでコーラを頼むときでも、「氷抜き」を強く要求しないと、氷がばい菌をもっているので、大変な下痢になると言われています。もっというと、コップが危ないことも多く、できればビンから直接飲んだ方がいいとのことです。友人氏は、本人の胃腸が強いこともあるでしょうが、これらの点をよく注意していたので、長い出張期間中、一度も下痢にもならず、快調に過ごしていました。

○ 最終日に、ボンベイ(今は、ムンバイ)市内の一流ホテルに泊まりました。朝食で、バフェスタイルだったので、自分で飲み物のコーナーに行ったところ、3つのジューサーにジュースが入っていました。1つは赤でトマトジュース、もうひとつは黄色でオレンジジュースだと思いました。最後のが茶色で、てっきりリンゴジュースかと思って、それをコップにいれてテーブルに持ち帰り、飲みました。一流ホテルだったので、少し油断があったのかもしれません。

○ 同行して案内してくれていたインド人スタッフが、テーブルに戻ってきたときに、茶色のジュースが少し飲み残っているコップを見るなり、ぎょっと驚いた様子で青い顔をして「飲んだのか?」と聞いたそうです。「飲んだ」と答えると、「大変なことになるぞ」と言われました。なんでも、この茶色のジュースは、ただの生水に、くさい匂いを消すためにカレー粉を混ぜただけのものだそうです。要するに生水です。

○ その後、案の定、帰国途中よりおなかの調子が悪くなり、帰国当日の夜は七転八倒。一晩で体重が3kg落ち、日石病院に飛んでいきました。医者に診察ベッドの上で四つんばいにされ、綿棒をおしりの穴に突っ込まれ、結果、とりあえず、赤痢では無いとしたものの、一週間は、ベッドで苦しみもがき、この世の地獄を見たそうです。もちろん、サッカーなんてやれる状態ではないでしょう。

○ とにかく、日本代表の選手に申し上げたいのは、「インドの茶色のジュースを飲まないで」ということです。日本代表は、万全の準備で、このようなことは起こり得ない体制だとも思いますが、念のために、伝わるといいのですが...


9月1日
猫よけ
○ 野良猫のおしっこを防ぐユニークな方法を聞きました。

○ 野良猫のおしっこに困っている人は、多いようです。住宅街を歩いていると、ペットボトルに水を入れて塀の横に置いていたりしますよね。飲み屋の玄関脇にも似たような猫よけがあったりします。でも、なかなか防ぎきれないようです。

○ トウガラシの鷹の爪ってありますよね。あれは、家庭でも育つそうです。食卓に出すほどきれいなものを育てるのは、なかなか難しいようですが、形の悪いものならたくさん出来ます。食卓に出せないその形の悪い鷹の爪を粉々にして、野良猫の来て欲しくない塀際の地面に撒きます。風に飛ばないように、くつで地面にきゅきゅとこすり付けてくださいね。

○ 鷹の爪って、人間でも素肌にあたると、ぴりっぴりっとしますよね。猫は、くつなんてはいてなくて素足ですから、きっと足がぴりっぴりっとするのでしょう。そりゃあ近づけません。ものの見事に野良猫が寄ってこなくなるそうです。

○ くつできゅっきゅっと鷹の爪の粉を地面にこすりつけていると、ちょっと自分が意地悪ばあさんになった気がするかもしれませんが、その呵責には耐えましょう。なお、動物愛護協会にしかられても当方は、一切責任をもちません。あしからず。

○ でも、この方法が日本中に流行ってしまうとどうなるのかとも思いますね。野良猫さんも大変でしょう。野良猫さんが対策をたてて、どの猫さんも靴をはいて街を徘徊している絵を想像すると、面白いですね。安西水丸さんのイラストが似合いそうな風景です。

**29日分と31日分は、どうも失敗作のような気がしてきました。近いうちに差し替えるかもしれません。(^^;


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