台湾日記  2004年1月〜
 
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1月31日
2004年のエレクトロニクス産業
○ 僕は、今年のエレクトロニクス産業の主役は、テレビだと思う。と、まあ、結論にくる前に、他の可能性について、その主役のテレビから遠い順番に考えてみたい。

○ まずは、パソコン。前回書いたが、とにかく去年は、よく売れた。今年も、そこそこ数が出るだろう。2000年問題対応で大量に売れたパソコンが、購入後約3、4年経ち、更新需要が見込まれるのが大きい。しかし、前回書いたように、パソコンの世界市況が、日本のエレクトロニクス産業全体に及ぼす影響は、年々減っているように思える。それでも、非常に大きな要素であるが、昨年からの比較でいうと、驚きのある影響はでないのではないかと思う。

○ 次は、パソコンではないものとして、デジタル家電である。今日は、本題のテレビから遠いものから書いていきたい。デジタル機器で新三種の神器と言われるものの他のでは、IPフォンが、今年、大いに普及するだろう。また、業界地図の変動も起こるだろう。しかし、意外に経済全体への影響は少ないのではないか。技術的には、興味深いが、ユーザーにとっては、「新しい気持ちよさ」を提供するものではない。要は、「安い電話」であって、消費者の財布からでるお金が増えるようには思えない。

○ その次は、よく新3種の神器と言われる、デジカメ、DVDレコーダー、薄型テレビである。これらのデジタル家電といわれる商品は、パソコンと違って、日本メーカーが材料でも、基幹部品でも、組立工程でも、市場でのブランド力でも強い。従って、業界の伸び具合が、日本のエレクトロニクス産業全体に大きく効いてくるのでこの分野を注意して見る必要がある。

○ ところで、このデジタル家電だが、普及が本格化してくるとともに、商品により軽重がでてきた。新三種の神器のなかでも、経済全体へのインパクトや成長率などで、違いが出てきている。

○ それでは、僕が主役と思うテレビから一番遠い、デジカメから述べてみたい。カメラ映像機器工業会の発表によると、2003年のデジタルカメラ世界出荷実績は4341万台(前年比76.8%増)。2004年は、6090万台(03年比40.3%増)になるとの見通しである。デジカメは、3百万画素で十分という認識が広まり、画素数競争よりも、低価格や使いやすさ競争に入ってから、普及が広まった。世界の中で最先端の日本市場では、ほぼ、行き渡ったのではないか。画素数が十分であれば、最新のものとの買い替えペースも鈍化するはずで、従って、市場の成長率も鈍化するだろう。また、携帯電話についているデジタルカメラにもいくらか食われると思われる。

○ それでも、日本以外の世界市場では、普及が進み、まだまだ売れるだろう。仕様が安定してくると、いよいよ台湾メーカーの出番である。モジュール化を進め、日本市場では通じにくいが他の世界市場では通じる程度の仕様で、大量に安く作り始めるに違いない。ただし、パソコン業界と違い、日本の光学関係の業界は、ガラス非球面レンズ、ズームレンズモジュールなどの主要な技術を意地で手放さずに囲い込んでいる。完成品出荷の成長率では、台湾勢にかなわないにしても、部品、部材を台湾メーカーに供給して、収益は、伸びるだろう。

○ 結局、日本のデジカメ業界は、成長はするが、伸び率は低下する。また、テレビに比べれば、日本経済全体への影響も、少ない。再来年以降、台湾勢などの攻勢により、日本メーカーによる完成品生産も勢いが止まる可能性がある。それに備えて、生産量の柔軟な調整をできるようにしつつ、部品供給の道を作り、量から質のビジネスへのソフトランディングの準備をする年にするべきではないだろうか。

○ 新三種の神器のもう一つのレコード機能付DVDプレーヤーだが、今年ものびるだろう。ユーザーの微妙な使い勝手をよくするために色々な工夫をするのは、日本メーカーの得意とするところである。また、それは、システムLSIやアナログICなどの日本の得意分野の大きな需要を産み出す。とはいえ、これはもうテレビ関係機器といえるだろう。

○ こうして、結局、来年の主役は、テレビだということになる。それでは、テレビについて書きたいところだが、丁度、時間となりましたので、次回とさせてくださいませませ。


1月28日
公民投票(住民投票)
○ 陳水扁総統は、1月16日に、テレビで、3月20日に実施する公民投票(住民投票、国民投票とも訳されている。以後は、公民投票とする。)の内容を公表した。(台湾週報 の訳による)

質問1)「台湾人民は、台湾海峡問題の平和的解決の立場を堅持しています。もし中共が台湾に照準を合わせたミサイルを撤去せず、台湾に対する武力使用を放棄しない場合、あなたは政府がミサイル防衛設備を追加購入し、台湾が自主防衛能力を強化することに賛成しますか反対しますか」

質問2)「あなたは、政府が中共と交渉を進め、台湾海峡両岸の平和と安定のための相互連動の構造を確立し、両岸のコンセンサスと人民の福祉を追求することに賛成しますか反対しますか」

○ 陳水扁総統側は、出来る限り穏健にした内容であり、この内容でどこが現状変更を目指したものといえるのか、と主張している。もちろん、(大陸)中国当局は、猛然と反対し、アメリカ政府にも、反対するよう働きかけている。

○ 僕の周囲の台湾人に聞いたところでは、「(大陸)中国のいいなりになるのもいやだ。しかし、公民投票をする意味も良く分からない」という答えが一番多いように思う。いかにも政治家同士の政治的取引の為に、自分たちが投票用紙に記入しに行くのがわずらわしいようである。とはいえ、(大陸)中国が、猛然と抗議するのに屈したかのように思われるのもいやだしなといった感じではないだろうか。

○ 日本の報道によっては、アメリカが容認するのかどうか、どういう態度をするのか出方が注目されるとしている。しかし、陳水扁が、ここまできて公民投票をやめたりすれば、総統選で敗北するのは明白なので、アメリカ政府がどう言おうが、いまから公民投票を中止することはないと思う。もちろん、中国が激しい抗議をやめることもないだろう。そんな中で、アメリカが明白に容認ということもないと思われる。どこまでいっても、なかなか微妙なやりとりが続く。


1月26日
ベトナムを行く
○ 旧正月の休暇にベトナムに行って来ました。ホーチミン(昔のサイゴン)と、田舎のニャチャンという海辺の街で、ぼうと過ごしてきました。

○ ニャチャンでは、道行く自動車が少ないのに驚きました。広い道路に無数のバイクがけたたましく走っており、その中を時々自動車が走っているという状態です。自動車が所狭しと道路を埋めクラクションを鳴らしながら走っている、バンコックやバリとは、全く違う風景です。まだまだ、経済的には、豊かではないことを実感します。

○ ホーチミンでの圧巻は、なんといっても、戦争証跡記念館です。日本の小さな保育園程度の建物と中庭しかなく、簡素な施設です。ベトナム戦争で米軍が使用した戦車や飛行機が屋外に無造作に置かれています。プレハブの建物には、ナパーム弾、地雷などの武器、爆弾、欧米の報道写真家が撮りLIFE誌などに掲載された衝撃的な写真、マクナマラの悔悟のコメントなどが、展示されています。拷問の記録や写真、ホルマリンに入った枯葉剤による奇形の胎児、ソンミ村民504人の殺害の写真などをみると、自分の皮膚と肉の間に気泡が立つかのように、寒々しい怖れに襲われます。アメリカ人と思われる観光客がたくさん来て、真剣に展示物を見ていました。イギリス人か、と思わせるほど、内省的な目をしていました。

○ 街で見る看板は、全てクォックグーというローマ字を基本にべトナム語を表す文字で書かれており、日本人には、全く何屋さんなのか分かりません。1000年の中国の支配から独立した、中国文化圏最南端の国であり、フランス、日本の占領を経験し、アメリカの影響を大きく受けた文化で、非常に多彩で複雑です。フランス植民地の影響でしょうが、パンやパスタは、台湾やアメリカよりも美味しいと思いました。また、ホーチミン市で、米ドルがそのまま通用するのを天国のホーチミンがどう見ているだろうかとも思います。

○ ベトナムとは無関係ですが、ニャチャンの海岸で寝っ転がって次の本を読みました。
「台湾新世代」近藤伸二:最近の台湾の政治を理解するのに便利です。
「自家製文章読本」井上ひさし:告白します。谷崎本、三島本より好きです。
「聖の青春」大崎善生:泣きました。「意思」は、美しく、そして美しさより以上の尊いものですね。
「エコノミストは信用できるか」東谷暁:こういう「評論家の評論」が活発になることを願っています。
「非対称情報の経済学」藪下史郎:ノーベル賞をとったスティグリッツの経済学の説明です。

○ 全く悪気は無かったのですが、ベトナムの海岸で寝そべって、市場経済の失敗について研究し、ノーベル賞をとったアメリカ人経済学者に関する本を読むというのは、知的悪趣味であったかと反省しています。


1月25日
2003年のエレクトロニクス業界
○ 前回に続いて、昨年のエレクトロニクス業界について、03年初めに僕が書いたものをもとに、振り返ってみたい。僕が、次のように書いているのは、概ね正確だったといえると思う。(03年1月20日、ココ

僕は、新3種の神器と言われる、1)デジタルカメラ(DSC)、2)DVDプレイヤー/レコーダー、3)PDPテレビがやはり軸だと思う。これに、今年、急激に普及率が高まるのは、無線LAN製品だと思う。結局、昨年程は、話題の新商品が出てこないと思う。なんといっても昨年(02年)は、異常だったのだ。

○ 無線LANについては、普及率が高まること、殆どが台湾製となること、ノンPCへの応用が模索されるが03年中は、ビジネスとしては、大きくならないことを予想しているが、その通りであった。(03年1月21日、ココ)

○ また、「なかなか難しいが、もしかするとそこそこでるかもしれないアナ馬」として、インターネット電話(IPフォン、VOIP)、ビデオ配信(インターネットテレビ)、VDSLなどを挙げている(03年1月25日、ココ)が、まあ、どの商品も、確かに「そこそこ」であった。

○ ちゃんと書き切れなかったものとして、前回(ココ)書いたパソコンの大量出荷のほかに、もうひとつ意外だったのが、液晶パネルの品不足である。業界内の年初の予想では、韓国と台湾で、新世代の製造ラインが立ち上がるので、03年後半は、供給過多になるといわれていた。しかし、結局、今では、供給不足で、割り当て制を実施しているぐらいである。新規の製造ラインの立ち上げが遅れたのと、液晶テレビの需要が強いこと、そして、前述したノートPCの出荷が予想よりも大幅に大きかったことによる。

○ 僕は、03年始めに、敢えて液晶については、書かなかった。「年後半供給過多」という業界常識は、知っていたが、僕のこの数年の経験では、とにかく、液晶の需給関係は、業界関係者ですら、予想が殆ど当たらない。結局、「分からない」と理解しているのが、一番賢明だと思う。

○ まとめると、デジカメ、薄型テレビ、DVDレコーダーの新三種の神器がより普及したことは、予想通り。ノートPCの安売りは、想定外で且つ、業界にとっては、業界地図が変わるほどインパクトがあった。そして、液晶パネルについては、全く読めないというのがよく分かった。そういう一年だった。

○ こういう予想を年始に書き残して、翌年反省するということを2回やってみて思う。一年先を当てることはできても、2年先は、あてにくい。僕は、2002年最初(1月13日)に、ノンPCデジタル製品の普及を予想した。まだ「デジタル家電」、「新3種の神器」などと言う言葉のないころである。それがあたって気をよくして年始の予想を続けているが、振り返ってみると、この先1年で絶対売れる、というのは、そう大きくはずさない。しかし、「今年は、製品化の年、本格普及は来年。」と思われものについて、普及が来年なのか再来年なのか、数年はだめなのか、これを当てるのが難しい。

○ 近いうちに、2004年について考えてみたい。


1月20日
パソコン業界の利益なき熱狂
○ 昨年のはじめ(1月20日、ココ)に、僕は、03年のエレクトロニクス業界の予想をしている。今日は、その反省を込めて、03年の業界を振り返ってみたい。

○ まず今日は、予想できなかった大きな動きであった、パソコンの低価格、大量出荷の「利益なき熱狂」ともいえる状況について書いてみたい。とにかく去年は、パソコンがよく売れた。03年の世界での出荷数量は前年比11.4%増の1億5千万台。例の2000年問題のあった過去最高の2000年の1億4千万台を越してしまった。

○ これは、北米市場でのノートPCの安売りと、大量販売が原因とされている。事実はよく知らないが、うわさでは、まず、Compaqと合併したHPがDELLに対抗して安売り競争を仕掛けた。そこで、DELLも受けてたった。そこでHP側がちょんぼをしたりした。もともと、普通に値下げ競争すると、直販のDELLの方が強いので、DELLは、HPのちょんぼをみて、一気に反抗にでた。結局、HP側は、敗北した。

○ こうして、昨年のノートPCは、破壊的に安い値段で、大量に北米市場で売られた。セットメーカーも部品、部材メーカーも、生産能力一杯、納期一杯で製造しながら、毎月のように値段を下げさせられた。ものが足らなければ、値段ぐらい維持出来そうなものだが、結局、現場では、値下げ交渉と納期前倒し交渉の二つを同時にするため走り回るという、なんともばかばかしくも珍しい状況になった。まさに「利益なき熱狂」であった。

○ 一番得をしたのは、アメリカの消費者である。お陰で、DELL、HPなどに、ODM/OEMでパソコンを供給している台湾メーカーは、軒並み過去最高の売り上げながら、利益率の低下に苦しんだ。メーカーなのに粗利が10%を切るという事態で、部品メーカーにも強烈な値下げ圧力をかけた。こんな中で、日本のパソコンメーカーでは、赤字がでたりした。

○ 先日、HPのフィオリーナ会長が来日して講演をして、「あの安売り競争は、失敗だった。」というようなことをしゃあしゃあと発言したという。それを聞いて、日本のパソコン及びその部品の業界関係者は、「お前のせいで、おれたちがどんなひどい目にあったと思っているんだ。」と本当に怒っていたという。

○ とはいえ、幸か不幸か、ノートPCで、世界市場で伍している日本のメーカーは、東芝くらいなので、日本でのインパクトは、比較的少なかったようである。当事者の意図は違うだろうが、結局、世界市場でのブランド別販売で、No.1とNO.2のHPとDELLが、一緒になって、No.3の東芝を地獄に落としたような年になった。

○ この昨年の「利益なき熱狂」ともいえる、ノートパソコンの低価格、大量出荷を冷静にみると、ある意味で日本企業の強みと弱みがはっきり出たと思う。

○ まず、第一に、パソコンの完成品の製造では、日本企業は、やはり強くない。ノートパソコンの完成品を製造し、世界で販売している日本メーカーは、大打撃をうけた。これに対し、世界のトップシェアを持つ台湾のQuanta(世界市場シェア25%!)、Compalといったところは、利益率低下に苦しみながらも、利益と業容を拡大した。やはり、日本企業は、パソコンの完成品の製造で、泥試合になると、強くない。

○ 第二に、独自技術をもつ日本の一部の部品メーカーや、材料メーカーは、大幅に利益を増やした。こうした、企業は、物性などのアナログ技術がコアになっている独自の部品・材料をもち、市場支配率も非常に高い。売り手が買い手を選ぶ、割り当て制になった部品すらある。こうした日本の企業は、比較的値下げを少なくしつつ、数量増の恩恵をうけ、利益を大幅に拡大した。

○ 第三に、日本の企業がパソコンの市況によって受けるインパクトが減ったことである。いまや、日本は、パソコンの完成品だけでなく、DRAMやLCDなどの主要な部品でも、パソコンの出荷量の影響をもろにうける分野で、大きなシェアを握っていない。従って、数量が増えた、価格が下がったといったところで、日本経済全体への影響は、まだ大きいものの、以前よりも減った。また、市場シェアを大きく占有している部品や材料は、他に製造できないもので、価格低下圧力を比較的受けていない。

○ と、まあ、こう書くと、威勢良く「利益無き熱狂」と書きだしたが、それはちょっといい過ぎだったかもしれない。量がでることによって、儲かっている会社は、非常に儲かった。また、主として中国の労働者にとって雇用の拡大にもつながっており、結局は、やはり経済には、プラスだったとも思う。とはいえ、「利益薄き熱狂」と書くのもなんとも、切れ味が鈍いので、ここは、知的誠実さを捨てて、ウケ狙いを優先し訂正せずにすまさせてください。

○ 次回は、03年初めに僕が書いたものについて、考えてみたい。
(というものの、旧正月休みで、次回更新は、25日以降にさせてください。)


1月19日
台湾版・悪魔の辞典
○ かんべえさんが「香港版・悪魔の辞典」というのを掲載されていて、とても面白く読みました。(ココ 1月18日分)その最後の挑発にのって、単純な僕は、台湾版・悪魔の辞典を作ってしまいました。昨日の今日ですので、まずは取り急ぎ。

香港人:衰え、今は、同情さえしている、かつてのあこがれの人。

日本人:パクッてもパクッても、新しい画期的な技術を持ち込んでくる奇特な人種。

給料の額:友達になった証に、知り合ってから3分後にお互い公開するべき情報。

上海人:商売でのこずるさでは、絶対かなわない相手

都会に出てきたばかりの田舎の(大陸)中国人:
工場でも飲み屋でも、ほんの少しのお金を弾むだけで、働きもサービスも格段によくなる素朴で愛すべき人々

都会の(大陸)中国人:あからさまに台湾人を軽蔑した態度をとるいやなやつ

都会の飲み屋の(大陸)中国人:店に入ると、横についていた日本人サラリーマンをほっぽりだして、「台湾人ラオバン(社長さん)!」と叫びながら擦り寄ってきて、チップをねだる愛すべき人々。台湾人は、仕方が無いので、封筒に束で入ったドル札を撒くように配ってしまう。

冷房:どんなに寒い冬でも、自分がジャンパーを着ていても、客がいれば、おもてなしの意味でスイッチを入れるべき機械

株:買い物かごに大根をいれた主婦が、証券会社に集まってきて売買する、娯楽の対象。(売買の8割が個人)日本における、駅前のパチンコのようなもの。

SARS:大陸の病気

林森北路:
日本人駐在員には、神聖で、日本人の女人が侵すべからざる仕事場。
そこで働く台湾人女性には、給料はよくないが、過激なサービスを要求されない、ちょろい職場。
台湾人のそこそこのビジネスマンには、貧乏な日本人サラリーマンのいく、美人もいないしサービスもよくない、しけた飲み屋。 

外資系有名ホテル:英語名をタクシーにいっても、決してどこのホテルか理解してもらえないので、漢字名を知らずに街にでると、戻れなくて野垂れ死にする危険な宿泊所

韓国人:昔は嫌いだったが、テレビドラマの女優が綺麗なので、悪くないと思い始めた人種。

ディンタイホンの小龍包:日本人が値段を数倍につりあげた、ジャンクフード

キャディ:あまりの態度の悪さにゴルフ自慢の出張者が、腹を立ててスコア崩す、駐在員にとっての最終兵器。プレイヤーより、もちろん偉い。第二ホールからは、ティショットで「あなたはこれ」といってアイアンを差し出し、キャディ同士でどのプレイヤーが勝つか賭け、ラフに入ったボールの行方を聞くと、自分は動かずクラブで遠くを指し示して「あっちの方!早く走って!」といい、グリーンでは、フックのラインで聞きもしないのに「スライス!」とどなるおばさん。実際は、ゴルフが全くできない。邪魔のしぐあいの少ないものをよいキャディという。職場における、上司のようなもの。

国際社会:どうせ最後は、中国の顔色を気にしていつも台湾にひどいことをするところ。

好きなもの:お金、食べ物、お金の話、食べ物の話。


1月18日
「号泣する準備はできていた」江國香織
○ バイエルを弾いて聴衆を感動させるなら、それは、すばらしいピアニストだろうね。この本を読みながらそんなことを感じていた。

○ カルチャーセンターの小説家講座で、生徒が書いてくる習作のテーマは、男はリストラ、女は不倫が、ほとんどだという。この小説のテーマは、みんな、そうした普通の人の想像の枠を超えない、静かな不倫とか、ソフトな同性愛とか、おとなしい離婚といった、いわば、ありふれた話題になっている。それでいて、読んでいると、うっすらと淡い色が心にしっかり残るのは、すばらしい。

○ あなたは、この12の短編のうち、どれがお好きでしょうか。
僕は、この作者の作品では、詩のような感覚の強いものが、好ましく思えます。そういうわけだからか、強いて言えば、僕は、この短編集のなかでは、「熱帯夜」と「号泣する準備はできていた」と「こまつま」が、好きです。どうでしょう。


1月17日
不思議なもの
カレーうどん。異性の旧友。芸能プロダクション。空に浮かぶ飛行機。


1月14日
自衛隊のイラク派遣
○ 陸上自衛隊の先遣隊に派遣命令がでた。いつものように、素人のアイデアを勝手に書いてみたい。

○ イラクに派遣した自衛隊に犠牲者がでたとしても、即座に派遣をやめることはない。首相が辞任したりもしない。そう今からはっきり公言すべきだと思う。

○ 野党は、派遣反対の立場から、万一犠牲者がでると、首相の責任追及をするという。また、タカ派の人々は、集団的自衛権を認めもっと十分な装備をすべきだという立場から、やはり、万一犠牲者がでると首相の責任追及をするという。結局、そうした事態の時に、左右両派の有力者が、首相に辞任要求をすると公言しているようだ。

○ しかし、「一人でも、犠牲者がでたら直ちに首相の責任追及する。」という人は、テロリストに対し、「他のどの国の軍隊よりも自衛隊を狙うと政治的に効果的ですよ。自衛隊を狙いなさい。」と言って回っているようなものである。テロリストにとって、アメリカの重要な同盟国で、かつ、一人でも殺せば、世論が動揺して首相まで変わりかねないとすれば、こんなに狙いたくなる部隊は、いない。犠牲者がでることを首相の辞任に直結して語る人は、自衛隊員を一層危険にしているのである。「この人を狙え」という看板を隊員の首にぶら下げて、イラクに送り出しているのである。こんなにひどい話はない。

○ たとえ、派遣の是非に関する意見は違っても、派遣が決まってしまえば、今度は、自衛隊の安全の為に、みんながベストを尽くすべきだ。「既成事実化」という手法に抵抗するなら、もっと別な方法でするべきで、自衛隊員の命を質にとってすべきではない。例えば、「派遣は、反対だが、派遣する以上、不幸な事態があっても直ちに撤退すべきではない。」という立場は、とても現実的であって、全然、奇妙なものではない。

○ 身も蓋も無い言い方で、申し訳ないが、僕は、自衛隊の犠牲者は、出ると思う。それでも行くのだ。そういう意思がないなら、却って恐ろしく危険だ。びびりながら、へっぴり腰で出てくる輩ほど、相手にとって狙いやすいものはいない。もちろん、犠牲を一人も出さない為に、細心で十分な準備することは、当然のことである。

○ もう一つ別の話。中国で天安門事件が起こったとき、中国政府関係者がこんな話をしていたそうだ。人民解放軍だって、学生に銃を向けるなんてしたくなかった。しかし、中国には、日本の機動隊が使うような、放水とか、催涙弾などのような、殺しはしないものの強力で暴力的な治安維持の装備がなかった。そこで、銃を撃ってしまった。日本との違いは、道具の違いだけだ。

○ 真偽、是非は、ともかく、この発言から、一つの貴重な示唆を汲み取ることができる。派遣される自衛隊も、人を殺す可能性を少なくしつつ暴力に対抗しなければならない事態に備え、そのための道具・武器を装備し、手法を学んでおくことが、必要ではないだろうか。

○ 軍隊が、「人を殺さない武器」を装備し、準備するというのもちょっと妙な話だが、今回のような、治安の悪い中で復興支援をするというミッションには、重要な準備だと思う。人を殺す兵器は、当然、どうしても使用がためらわれる。ためらっていると自衛隊の方に犠牲者がでる確率が高くなる。一方で、人を殺す武器の早過ぎる使用は、善良な現地住民の犠牲をうみかねない。オランダ部隊が、現地の人を誤射してしまった例などをみると、こうしたソフトな装備というのも必要だと思う。このような装備は、下手をすると、威嚇占領の意思と取られかねないので、周到な準備と説明がいるのは、もちろんである。

○ とにかく、人が死ぬのは、いやだ。その気持ちだけで、恥をしのいで自信の無いことを書いている。でも、その気持ちが、大切であることには、自信がある。(東京にて。)


1月11日
偽物屋
○ 台湾では、WTO加盟後、偽物屋が随分減ったが、まだ残っている。今となっては、殆どが観光客相手で、いささか、その訝しげな雰囲気を味わうテーマパークアトラクションのような風情に、なっている。よくある例を紹介しよう。

○ みかけのつくりは、ウーロン茶の茶葉を売っているお茶屋である。ここに行って、偽物に興味があると伝えると、日本の防衛庁長官と同じくらい目つきの悪い男主人がでてきて、こちらの頭の先から、つま先まで、人物鑑定する。ここで、自分が、善良な一市民であり、偽物捜査官でないことを示さなければならない。この人物鑑定をパスすると、別棟の別室に連れて行かれる。

○ いや、実際は、この人物鑑定、ほとんど100%パスするのだ。ただ、こうしたプロセスを経るとなんだか、自分が選ばれた人で、本当に「貴重な偽物」を見せてもらえるような、奇妙な高揚感がでるものである。売る側にとっても、一つの雰囲気作りになっている。

○ 別室というのがまた怪しい。歩いて3分くらいのところの古ぼけたマンションに行く。エレベーターがぎしぎしと音を立てて昇っていく。いかにも悪いことをしている気がするものである。廊下にゴキブリが一匹走り、気分を盛り上げる。

○ 部屋の入り口は、普通のドアの手前に、牢獄のように鉄のさくでできた扉があり、二重扉になっていて、よけい怪しい。しかし、この鉄柵の扉、台湾では、僕の家も含め、通常の全ての家についているものである。びびるようなものではないが、演出効果にはなっている。

○ 部屋に入ると、バッグのならんだ棚が壁面全てにあり、一角に腕時計の入った小さなショーケースが二つある。棚には、プラダやルイヴィトンが並び、ショーケースには、オメガやロレックスが並ぶ。

○ 台湾では、通常、偽物を、Aクラス:台湾製高級品、Bクラス:台湾製中級品、Cクラス:大陸製廉価品と区分している。そこで、店の主人は、意味ありげにささやき「これは、Aクラスですよ。」と、勧めるのである。ところが、ほぼ全ての店で、全ての商品がAクラスだと言う。一体が、どれが「Aクラスの偽物」の本物かと考え出すと、夜も眠れなくなる。

○ 値段は、結構、高い。一つ1万円や、3万円する。「偽物で3万円か?」と驚いて言うと、「本物は、15万円する。」と教えてくださる。腕時計を手に取ると、「うちは、信頼第一でやっていますから、3年保証です。」と胸をたたいて、安心させてくれる。実際に買うと、保証書は、くれないし、日付の入った書類も発行しない。どうやって、3年を計算するのか分からないが、壊れた時計を持っていくと直してくれる。台湾の商人は、信頼を重んずる。

○ 台湾では、この3年だけでも、こうした店が随分減ってしまった。また、偽物の品質も今では、上海のほうがいいらしい。こうした、ややレトロな悪事もいつまで楽しめることやらと思うと、感慨深い。

○ なお、以上の話は、すべて、知り合いから聞いた話である。


1月9日
商いの話:商人の魂
刀は、武士の魂。
図面は、技術者の魂。
見積書は、商人の魂。


1月6日
靖国
○ 今日は、台湾にこられた溜池通信のかんべいさん(ココ)と飲みましてご機嫌です。この溜池通信というサイトは、1日に2000アクセスもあるそうです。個人のサイトでは信じられない多さで、大抵の会社の公式サイトより多いでしょう。

○ 小泉首相の靖国神社訪問について、日本の各メディアがどう取り上げたか、溜池通信で興味深いコメントがでていました。(1月3日)今日は、かんべいさんにお会いしたこともあり、この機会に台湾についてどう報道されたか、そのまま伝えます。

台湾も抗議声明=小泉首相の靖国神社参拝で
 【台北1日時事】台湾外交部(外務省)は1日夜、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に対して、「歴史を忘れることは許されない」とする抗議声明を発表した。声明は「日本政府が歴史の教訓と真剣に向き合う」ことを求めているが、対日関係を考慮し、厳しい調子でのあからさまな非難は避けている。 (時事通信)
[1月2日1時1分更新]

近隣諸国と友好促進を 靖国参拝で台湾が声明
 【台北2日共同】台湾の外交部(外務省)は1日、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に関し「近隣諸国との友好協力関係を促進し、アジア地域の自由と民主主義、平和と安定、繁栄のためにともに努力することを希望する」との声明を発表した。
 一方で「日本の戦争発動がアジアに苦痛と不幸をもたらした歴史を忘れることは許されず、日本政府が歴史の教訓に忠実に向き合うことを望む」と指摘した。
 台湾当局は現在、陳水扁総統が提起した「台湾に向けたミサイル即時撤去を中国に求める」住民投票について日本政府の理解を得る必要に迫られており
今回の声明も中国や韓国に比べてソフトな内容となっている。(共同通信)
[1月2日18時51分更新]


○ このニュースの核心は、第一に、台湾も反応しているということ。第二に、とはいえ、台湾の反応は中国・韓国と全く違ってソフトなものであることです。この二つの点について、どうバランスをとるかで、メディアの姿勢がきれいに見えてきます。因みに、朝日、読売などからの独自の報道は、無かったようです。

○ 昔、ソ連の政治を分析するとき、共産党の機関紙など公の文書を仔細に検討することによって、党内人事や政治力の変動を調べる「クレムノロジー」なる学問的な分野がありました。日本のメディアの中国に対する報道をみると、こうした手法が成り立つような気がしてきます。


1月5日
ニュースでないニュース
○ 1月2日に挙げた10大ニュース(ココ)を見て思ったのだが、ここに入っていないニュースというのを考えてみるのも興味深い。

○ まず、なんといっても、日本でもアメリカでも大騒ぎだったイラク戦争が入っていない。そりゃそうで、アメリカを助けるために台湾がイラクに軍隊を派遣するといっても、中国が断固反対をするだろうから、アメリカが要請するはずもない。つまり、台湾は、何もしていない。台湾でも、テレビでは、CNNの映像などが、随分報道されたが、結局、全く身につまされるものではなかった。台湾では、イラク戦争が大ニュースでなかった。と言う事実が、ちょっとしたニュースですよね。

○ もう一つは、かつて李登輝前総統の金庫番と言われた劉泰英・中華開発(金融持株会社)会長が、逮捕、起訴された件が、入っていない。前総統の李登輝氏も証人として裁判所に出廷したりして、逮捕・起訴の時は、テレビでも、大きく報道された。しかし、これが例えば、韓国なら、もっと大きなニュースになっていようが、実際は、そうでもない。今となっては、台湾の野球チームのオリンピック出場の方が、大きいニュースだろう。

○ この「新瑞都事件」の端緒は、小さなことであった。新瑞都という経営不振に陥った建設会社の株主が、融資を約束してコミッションを取っておきながら実際には融資を行わなかったとして、劉泰英を告発した。これだけなら大きな事件でもなかったが、その後、劉泰英が多くの会社からコミッションを取っていたことが分かり、それが、フィリピン大統領選挙に対する工作などの、李登輝総統(当時)の秘密工作資金に使われていたという。こうして政治問題化した。

○ 劉泰英は、李登輝前総統の懐刀で、台湾大学、コーネル大学の同窓である。李登輝の訪米、コーネル大学での講演を成功させた影の立役者と言われる。李登輝が政権についたころ、国民党は、世界一金持ちの政党といわれ、人によっては1兆円とも2兆円ともいう、巨額の党営事業を所有・運営していた。大戦直後に日本から接収した資産が基礎である。

○ 李登輝総統(当時)は、信頼する劉泰英を国民党の党営事業を取り仕切る国民党投資事業管理委員会の主任委員に任命し、党営事業の透明化を図ろうとした。劉泰英は、それに応え、当時伸び盛りの台湾経済の成長にのり、党営事業の利益を増やしながら透明化をおこなった。(任期は93年から2000年の7年間)劉泰英が私腹を肥やしたことはないと強く主張しているところをみると、少なくとも、李登輝政権で政治的に必要な資金を捻出していたのは確かなようである。

○ 今では、この国民党の党営事業の規模は、かつてより小さくなったが、それでも、台湾経済の中では財閥的な巨大な存在となっており、影響力も大きい。与党民進党は、本来、国の資産であって党の資産とするのは、間違いだと、国民党を攻撃している。国民党も、世論におされ、それなりの方策を提示している。国民党の党営事業をどうするかというのは、総統選の一つの話題になっている。

○ この事件は、李登輝前総統の裁判所への出廷まですすんでテレビも大きく取り上げたが、その後話題性が少なくなっていった。陳水扁は、政治的支援を受けている李登輝を追い込むわけにもいかない。連戦も騒げば騒ぐほど党営事業に世間の目が向くのがつらくて攻撃の手が緩む。宋楚瑜にいたっては、金の話をすればするほど、いくらでもほこりが出てくるので、こんな攻撃は、やめろといわざるをえない。

○ 世間も、これくらいのことはしていたんだろうよと、サプライズ(驚き)無く、鷹揚に受け止めているように見える。市民の中には、陳水扁から李登輝に対する、「あんまり、自分にいろいろ指図すると、次は、あなたですよ。」という、警告だとする意見もある。こうなると、多くの人は、スキャンダルというより、政治家同士の駆け引きの一こまだと受け止めているようである。だからこそ、メディアによっては、10大ニュースにもいれないのかもしれない。

○ こうしてみると、メディアでも人間でも、「何を話したか」と同じくらい「何を話さなかったか」が、面白いことに改めて気づかされる。さて、日本で不思議にも十大ニュースに取り上げられなかったニュースとは、なんであったろうか。


1月4日
台湾世論調査
○ 昨日(ココ)書いた、台湾の住民投票について、テレビBS(ココ、中国語)が元旦(1月1日)に世論調査をしていました。テレビBSは、野党国民党よりだという人も多いですが、僕には、他のメディアに比べると中立的に見えます。ただし、台湾の世論調査は、いずれにしても、あまり正確ではありませんので、ご留意ください。

○ まずは、調査結果から。

アメリカは、台湾が防御的住民投票をすることに反対していますが、住民投票をするにあたって、アメリカの意見を考慮すべきだと思いますか。
 考慮すべき:37% 考慮する必要がない:46% 分からない:17%

日本も、関心が高いようですが、住民投票するにあたって、日本の意見を考慮すべきだと思いますか。
 考慮すべき:22% 考慮する必要がない:63% 分からない:16%


○ この数字を見た最初は、まあ、こんなものかなあと思いました。しかし、上記の数字を書いていて気づいたのですが、日本の意見を台湾の人にこんなに気にしてもらっているのだなあ、と、話の本筋と違う点で、ありがたく、そして、興味深く思いました。この質問をアメリカについてだけするならともかく、他に、日本も、しかも、アメリカと日本とについてだけしている点が、冷静に考えると、日本にとってすごいことです。さらに、アメリカの意見を考慮すべきという人と日本の意見を考慮すべきという人の比が5:3というのも、日本がとても大きく思われているように思います。今どき、アメリカの意見の6割くらいは、日本の意見も考慮しようと思っている人々がいるというのは、ちょっと、驚きです。

○ どんどん話がそれちゃいます。僕は、台湾に来てから改めて痛切に思ったのですが、日本というのは、紛れも無く大国です。経済力も、人口も、国際政治における発言力も、いくら控えめにしても、いくら下手くそにプレゼンスを示しても、逃れようもなく大国だと思います。日本の目指す方向として「小さくてキラリと光る国」というようなアイデアが昔ありましたが、これは、外国の人にとっては、体重100キロのお相撲さんが、「私、曙関より小さいし、ボディコンのミニスカートスーツが似合うかわいい子になりたいの」と言っているような、奇怪さを感じる話しだと思います。

○ 話を戻します。同時に行われた世論調査結果を示します。

3月20日に総統選と同時に「防御的住民投票」をするのに賛成ですか。
 賛成:30%   不賛成:51%    分からない/意見なし:19%


陳水扁総統は、「防御的住民投票」とは、「大陸が台湾に向けているミサイルを撤去すること」をテーマにするべきとしていますが、3月20日の住民投票がそういう内容になることに賛成しますか。
 賛成:42%  不賛成:40% 分からない/意見なし:18%


○ 今回の住民投票は、台湾の人も複雑に受け止め、戸惑っているようです。陳水扁総統もクリーンヒットというよりも、ひとつの政治的賭けにでたというのが、実態に近いと思います。

○ ついでに、これまでも紹介してきた(12月6日、ココなど)、総統選についての世論調査を追加します。与党民進党の陳水扁総統と呂秀蓮副総統の組み合わせ=「扁蓮ペア」と野党の国民党/連戦総統候補と親民党/宋楚瑜副総統候補の組み合わせ=「連宋」ペアとの支持率の比較です。12月は、11月からそれほど変わっていません。秋からの民進党の猛烈な追い上げの勢いがとまってきたといえるようです。選挙90日前の12月19日の調査でも、その一週間後の12月26日の調査でも、同じ数字で、連宋ぺアが11%リードしています。

「明日総統選挙ならどちらを選びますか」という質問への答えです。
 扁蓮ペア:34%     連宋ペア:45%   未決定:21%


過去の数字も含めて再度あげておきます。

選挙前
11ヶ月
総統就任
3年
選挙前
9ヶ月
選挙前
8ヶ月
選挙前
半年
選挙前
5ヶ月
選挙前
4ヶ月
選挙前
90日
4月
14日
5月
15日
6月
3日
7月
15日
9月
16日
10月
14日
11月
13日
12月
19日
12月
26日
扁蓮ペア 32 31 32 34 31 32 34 34 34
連宋ペア 53 52 53 49 54 47 44 45 45
未決定 16 17 15 18 15 21 22 21 21
支持率の差 21 21 21 15 23 15 10 11 11



1月3日
台湾の住民投票
○ 昨日書いた台湾の10大ニュース(ココ)の補足で、今、米中会談でも重要な議題となっている、台湾の住民投票についてまとめてみました。

○ ブッシュ大統領が、12月9日に中国の温家宝首相と会談した際、台湾が住民投票をすることに反対する意向をしめしたと報道されました。イラクで手一杯のアメリカは、北朝鮮の問題もあり、中台関係において中国寄りになったものと解説されました。内容がここまでの報道を読んだ人は、賛否は別にして、それほど違和感はなかったと思います。

○ ところが、中国が反対し、台湾の陳水扁総統が実施しようとしている住民投票の内容が、「中国の台湾に対する武力行使反対」だと聞くと、頭に「?」が浮かんだ人の方が多いのではないでしょうか。

○ 「台湾が中国へ武力行使することの容認」でもなく、「台湾の独立」でもなく、単に、「中国よ、攻めてこないでね。」というのを台湾で住民投票するというものです。こんなぼんやりした内容について、24百万人の社会でする住民投票などあまり聞いたことがありません。さらに、そのぼんやりはしているけれども、人間の希望としては、ごく普通の内容の住民投票について、ブッシュ大統領が反対すると聞くと、もっとよく分からなくなります。

○ 陳水扁総統は、もともと反体制運動家でしたが、就任直後は、「独立宣言をしない」とし、かなり穏健な路線を示しました。しかし、任期4年目で総統選が近づき支持率があがらないこともあって、2003年になって、かなり独立志向、即ち「本土志向」の強い路線になってきました。

○ 陳水扁総統は、03年9月には、「2006年に新憲法制定の住民投票、08年に新憲法の実施を目指す。」と表明します。これには、中国は、猛然と反対し、野党も嫌がりました。しかし、新憲法制定案が世論の一定の支持を受けると、野党は、同様の案を出して対抗したりしています。

○ そうした中で、野党は、11月に住民投票法を立法院(=立法議会)で可決します。内容は、
1) 台湾全土で実施する住民投票の議題は、法律の再審議などに限る
2) 政府は立法化と関係なく民意を問う住民投票を行ってはならない
3) 行政院は住民投票の発動権を持たない
4) 国家主権が外部勢力によって脅かされる場合、総統が「防御のための住民投票」を行う
というもので、実質上、住民投票の実施権限を立法院がコントロールしようとするものです。この法律をみて、与党民進党の議員からも「これで、住民投票はできない。」というコメントがでた程です。

○ これに対して、陳水扁総統は、ほとんど抜け道を手繰り寄せるように、上記4)の総統権限に基づき、「中国が軍事の拡張をしている現状では、「防御的な住民投票」の発動条件を満たす」としました。そして、04年3月の総統選挙と同時に「中国の台湾への武力行使反対」の住民投票を予定しています。このあたり、陳水扁総統は、行政能力については、疑問符が投げかけられていますが、抵抗運動家としての資質は、十分感じることができます。陳水扁総統は、11月に立法院で可決された「住民投票法」を12月31日に著名しました。この住民投票法についても、中国は、独立につながるものとして、猛然と非難しています。

○ ブッシュ大統領が12月9日に表明したのは、この中台の微妙な駆け引きをうけてされたものです。ブッシュ大統領は、会見で、「中国でも台湾でも現状を変えるための一方的な決定にわれわれは反対する」とした上で、「台湾指導者の言動は、現状を変えるための一方的な決定を意図している兆候であり、われわれは反対する」と述べました。

○ こうして、結局は、台湾の民主的な24百万人の社会が行う「中国よ、攻めてこないでね」という、言葉上はいかにも現状維持的な住民投票を、アメリカの大統領が、「現状を変えるための一方的な決定」とし、反対の意思をにじませるという、ぱっと聞くと妙な構図ができあがってしまったのです。こうなると、なかなか我々一般の日本人には理解し難い微妙なかけひきです。

○ とはいえ、日本政府も動き、12月29日、台湾との大使館的機能を持つ交流協会台北事務所長が、台湾総統府で邱秘書長に対し、住民投票や新憲法制定に関する陳水扁総統の発言が「中台関係をいたずらに緊張させる結果になっており、憂慮する。地域の平和と安定のため、慎重に対処することを望む」との日本政府の立場を伝達しました。

○ アメリカの台湾への厳しい意思は、見えてきましたが、陳水扁総統も、もはや引き下がれません。ここで、「防御的な住民投票」を中止したら、総統選挙は、敗北すると思われます。陳水扁氏は、こういう抵抗運動は、得意とするところのようで、今のところひるむような気配は、ありません。しかし、全くの私見ですが、バランス感覚を重視する有権者が、次のような行動をとることもありえるように思えます。中国には、住民投票で「中国の武力行使反対」と意思表示し、同時に、安心して民進党の陳水扁を不信任として、国民党に票を入れるという行動です。このあたりが民主主義社会で、対外的脅威に対処するのに難しいところです。

○ こうした複雑で珍妙ですらある駆け引きの根底には、複雑な国際環境の中で台湾の住民が示している、バランス感覚に満ちた叡智ともいえる政治姿勢があるように、僕には感じられます。世論調査などでは、現時点では、台湾の大半の人が、「独立宣言」にも「中国との統一」にも反対し、現状を維持することを支持しています。日本人の僕には、丁度、80年代の日本で、「自衛隊は、違憲」というのと、「日米安保維持」のどちらも、国民の8割の支持を受けていた矛盾した状況を、思い起こさずにはおられません。結局、台湾の大方の人は、「現状のあいまいで矛盾した状態」支持です。

○ しかし、ミサイル演習など、中国が台湾に対して強硬な姿勢をとると、とたんに、独立志向の強い陳水扁が率いる民進党の支持率が急伸します。だから、陳水扁は、中国が理不尽な強硬姿勢をとるようにちらちらと挑発しているようにも見えます。中国は、それがいやなので、直接強硬路線もとれず、苦労してアメリカの発言を引き出したりしています。

○ 結局、「平和に暮らそうよ。でも、攻めてきたら、怒っちゃうぞ。」というのが台湾人の姿勢で、これは、「少しくらいの名誉より平和を愛するが、攻めてこられれば、断固抵抗する。」という、実に平和を愛する、しかし気概のある立派な市民の姿勢に他ならないと言い得るように思います。

○ とまあ、ほめておいて言うのもなんですが、それにしても、ここ数年を台湾が悲劇なしに乗り切るのは、市民も政治家も、至芸ともいえる身のこなしをし続けなければならず、果たしてそんなことが、24百万人もの人口があり、人種的にも、文化的にも多元な社会であり、且つ、自由で民主的な社会である台湾にできるのか、僕にも、分からないところです。


1月2日
台湾10大ニュース
○ 台湾では、農暦の旧正月が本当の正月。西暦の新正月は、1月1日だけがお休みで、12月31日も1月2日も、銀行も会社も通常通り営業している。新正月から旧正月までが、「忘年会」シーズンですらある。という訳で、僕のような台湾と日本の生活時間を混ぜこぜで暮らしている人間には、今は、なんだか去年と今年のすきまのような時期だ。そこで、日本では、12月に行う、「今年を振り返る」企画をこのサイトでは、この時期にしてみたい。

○ まずは、台湾10大ニュース。NNAというサイト(ココ)で挙げている10大ニュースを挙げ、僕なりのコメントをつけてみた。ニュースの選択は、少し政治の話題にかたよっている気もする。回復した経済をいれてもよかったと思うが、年末の統計がでていないので挙げにくかったのかもしれない。経済については今日の最後に少しだけ補足を書き加えてみた。

[1位]SARS猛威、37人死亡
一言、大変でした。SARSについては、このサイトでも随分書いたので「ジャンル別バックナンバー」の「SARS関連」(ココ)を御参照。

[2位] 陳水扁総統、新憲法制定方針示す
9月に陳水扁総統が「2006年に、住民投票により新憲法を制定する」という方針を出し、世論の支持を得た。野党も対抗案を出している。

[3位] 住民投票法、成立
11月に議会多数派の野党が可決した。総統が住民投票を実施する権限を制限する内容である。しかし、陳水扁総統は、この法律の抜け道を使い、「中国の台湾に対する武力行使反対」の可否という住民投票を総統選挙と同時に行おうとしている。(ややこしいので、後日詳しく書きます)

[4位] 台湾正名運動、台北で15万人がデモ
李登輝が呼びかけたもので、「中華民国」を「台湾」に改め、企業などの名称につく「中華」や「中国」という名を「台湾」に改めようという運動。台湾日記9月9日「台湾正名運動」を御参照。ココ

[5位] 中台チャーター便、初就航
03年1月26日に上海/台湾間で6社16便が就航した。話題にはなったが民進党の得点になるとみた中国政府が、今は、反対の姿勢であり、04年は、実現しないと思われている。

[6位] 野党風刺VCD「非常報道」が波紋
野党を批判する内容の映像がはいったCDROMが配布された。役者さんを使ってドラマ仕立て、ニュース仕立てにしたものだそうだ。台湾日記 12月6日「総統選挙」御参照。ココ

[7位] 野球五輪予選、韓国破り日本とアテネへ
日本が台湾に勝った翌日、日本が韓国を破ったので、台湾の出場が決定。台湾の人は、「日本負けろ」と叫んだ翌日に、「日本頑張れ」と応援することになった。台湾在住の身としては、日本が韓国にも勝って本当によかった。台湾日記 11月9日「台湾の五輪出場」御参照。ココ

[8位] 台北101モール、オープン
世界最高層の台北国際金融ビル(台北101)の地下1階地上4階のショッピングモールが11月に開業した。ビル全体の完成は、2005年の予定。

[9位] 阿里山鉄道が脱線転覆、17人死亡
僕も乗ったことのある阿里山鉄道です。台湾日記 3月2日 「阿里山鉄道の事故」御参照。ココ

[10位] 宋美齢女史、105歳で死去
故蒋介石総統夫人の宋美齢女史が、アメリカの自宅で10月に死去した。当然、与野党の反応は正反対でした。

○ 経済は順調で、行政院主計処(予算会計統計庁)は、03年のGDPを3.15%と予測している。また、11月の失業率は、最近29ヶ月で最低の4.71%まで下がった。株価も回復した。とはいえ、雇用無き景気回復の傾向やデフレ気味だということもあって、本格回復ではないとする見方もある。


1月1日
月をみる 
仕事で接するある台湾の女性に教えられた。
彼女は、日本にもアメリカにも一人で長く住んだことがある。

 つらいときには、月をみる
 夜の空には、同じ月がいつもある
 満ちたり欠けたりしながら
 同じ月がある

 日本でも、アメリカでも、台湾でも
 同じ月がある
 10年前も、20年前も、子供のときも、
 そして、10年後も
 同じ月がある

 太陽のように元気を授けてくれるでもない
 星のように希望を示すでもない
 森や川のように心を癒すでもない

 月は、じっと、どこでも同じように静かに輝くだけだ
 月は、じっと、いつでも変わらず静かに輝くだけだ
 そういうものが、なにより大切だったんだ
 そういう、変わらないものを
 僕は、見つめ続けていなければいけなかったんだ

 月をみようよ
 台湾でも、神戸でも、那須でも、上海でも、ニューヨークでも、
 東京でも、門司でも、香港でも、サンノゼでも、デュッセルドルフでも

 月をみようよ、変わらないよ
 郵便配達さんもパン屋さんも、出会った人も別れた人も
 お役人さんもあきんどさんも、おまわりさんもどろぼうさんも

 月を見ようよ、同じ月だよ
 イラクの自衛隊の人もイラクの人も、
 イスラエルの人もイランの人も

台湾に来て3年、たくさんの大切なことを学んだ。
中でも一番大切なことは、この「月を見る」ことかもしれない。

少しはいりこみすぎでしたが、新年の挨拶に代えさせてください。
今年もよろしくお願いいたします。


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