台湾日記 2001年8月1日〜
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8月1日
台風
○ 強烈な台風であった。8月1日22:00の時点で、台湾全体で死亡75人、行方不明133人。らくちんの住んでいる台北は、月曜日に全市で学校・会社が休みとなったが、コースから微妙にズレていて、殆んど被害が無かった。しかし、被害にあった方のことを思うと、これ以上コメントできない。
○ 話題をかえ、知人のサイトを紹介したい。なおきんネットである。
http://www.naokin.net/
ちょっと見た目は写真がふんだんで、見やすい。しかし、内容的には、とても真剣なもので、僕には、ちょっとできないつっ込み方だ。「ネットアイドル中年男」(ごめん!なおきんさん)にもなりうる程ハンサムな人なのだが、サイトに出ている写真は、知っている人がなんとか彼と分かるという微妙なアングルで、チラリズムのにおいもある。
○ それにしても、昨年の12月にらくちんが赴任して以来の7ヶ月間で、36時間の断水、いきなりの停電、地震、高層ビルの火事、台風と、この短期間の間によくも色んなことが起こるものである。
8月3日
子曰く
○ 同年代の台湾の知人に、「孔子って、勉強しましたか?」と聞くと、いかにも子供の時の苦手科目を思い出すかのような微苦笑で、「ああ、あの「子曰く」ってやつね。論語は、授業でやりましたよ。殆んど忘れましたが。」との返事だった。中国語を話す人にとってもあの「子曰く」というのは、強烈な印象だと聞いて、面白く思った。今の若い人は、あまり知らないのじゃないかなとのことだ。
○ 台湾の実社会では、宗教としての儒教の影響は殆んど無い。道教の方が影響力もあり生活に根付いている。韓国、台湾、日本、(時には中国の北部)を含めて東アジア儒教文化圏などという論があるが、この論は、台湾の宗教の実体からは、離れている。(「台湾入門」酒井亨)ただし、日本統治時代、国民党政権時代と結局100年くらいの儒学教育の歴史があり、知識人の教養としては、定着していると思われる。
○ 僕の知っている限り中国大陸の人は、一部の少数者を除き、文革もあったりで、孔子の言葉なんか知っている人は、余りいなかった。台湾の知人とそんな話をしていると、「最近流行の韓国のテレビドラマを見ていると、韓国で儒教の影響が強いのが印象的だ。」と言っていた。儒教の影響は、韓国が一番、その次が台湾と日本。そして、発祥の地である中国には、今は、余り影響力が無い。面白い。
○ ところで、影響力という点では、上記の話で、改めてテレビドラマの影響力の大きさを痛感する。従来、台湾では、韓国人の人気はそれ程高くなかったが、最近は、テレビドラマの影響もあり、「哈韓族」(韓国好き族)も出現している。お互いの文化社会の違いと共通点を知り合い、好印象を持つのは、とてもいいことだと思う。
○ それにしても、と、台湾の知人は、曰く、「韓国の女性は、きれいだ」。
これも、亦楽しからずや。(^。^)
(らくちんは、10日間程日本に帰っているため、その間、更新しませんでした。)
8月18日
ドッグイヤーは、本当か?
○ IT業界では、変化のスピードがやたら早い。そこで、犬の成長が人間に比べて3倍程度速いことに由来して、IT業界は、ドッグイヤーとよく言う。しかし、本当にそうだろうか。
○ 2年ほど前、そう、ITバブルの頃で、メディアがIT業界の変化の速さを報じていた時、僕がパソコンの先生と呼ぶ仲間と、3人で飲んだことを思い出す。ビジネスに携わる僕がこのドッグイヤーの件を持ち出すと、ベテランのフリーのシステムエンジニアIさんは、「本当にそんなに変化しているですかねえ」といつも通り、年下の僕達にも敬語で丁寧に話し始めた。CPUのスピードや、メモリーの容量は確かにどんどん進歩しているけれど、ユーザーにとっての便利さは、この5年程変化していないのではないか、と彼は言う。確かに、インターネットで簡単にメールとWEBが使えるようになった時から、これといってパソコンは便利にはなっていない。
○ そこで、それぞれが、最後にこいつは便利なものが出てきたと思ったのは、いつかという話になった。Iさんは、WindowsNT3.5が出てきたときだという。1994年のことだ。確かに、NT3.5ができてようやく、企業がパソコンベースで業務用ソフトを使えるようになった。当時Iさんが、しきりに言っていた台詞を思い出す。「NTはね、メインフレームを使っていた時代だと、一本数億円はしてもおかしくないソフトですよ。これが数万円なんですからね。便利な時代です。」その時以来、パソコンの世界でそんなに感動することは無いというのだ。一番若いUさんは、企業のMIS(情報システム)担当だったので、マイクロソフトアクセスが出てきたときだという。アクセスが出てきて、パソコンがそのまま大きなシステムの端末になりえるようになった。それも、今から5年以上前だ。個人ユーザ−の僕は、Windows95が出てきて、LAN(ネットワーク)を素人でも簡単に張れるようになったときを挙げた。WIN95が出てから僕のような素人でも家の中でLANが張れるようになった。もちろん1995年のことだ。つまり、敢えて挑発的に言うと、この5年ほどは、パソコンの世界で、ユーザーの視点から見ると、たいした変化は、無いともいえるのだ。
○ ドッグイヤーと言っているのは、こうした単体のパソコンの進歩ことではなくて、インターネットの普及によって起こる新しいビジネスの動きの速さを指していたともいえるかもしれない。しかし、日々メディアで報じられる激しい動きに目をとられ、こうした、重要で動かぬものへの目配りを忘れると、大きな判断ミスをする。いわゆるITバブルの崩壊も、こうした土台が動いていないことをちゃんと見据えていた人は、大きな失敗を余りしなかったのだろうね。
8月20日
烏来(ウーライ)に行く
○ 烏来に行った。率直に言って、トロッコを除いてはイマイチではあった。タイヤル族の踊りとショーをやるという劇場も、日曜日というのに人が少ないので、公演回数を減らしてしまっており、ショーを見られなかった。
○ ただ、トロッコだけは、度肝を抜く。観光ガイドなどでは、「おもちゃのような小さなトロッコで7分程トコトコ行くと..」などと書かれているが、ところがどっこい、そんなに生易しいものではない。幅が50cm程の、どう見ても整備の悪そうながたがたの線路の上を、隣に座った人と会話もできないほどのものすごい機械音を響かせながら、能力一杯の猛スピードで、飛び跳ねるように走っていく。カーブがくると、思わず鉄の枠を握り締めてしまう。いつ脱線してもおかしくない状況なので、実際のスピードは、それ程でなくとも心底おそろしい。考えようによっては、高さやスピードがあっても安全の保障されているジェットコースターのフジヤマなどよりは怖い。無事下車したあとも、「やってくれるなあ。全く」と、何度もつぶやいてしまった。
○ 台湾というのは、こういう、「予想もできないスゴサ」を「期待通り」に見せてくれるのがすごいのだ。
8月25日
七夕情人節(Chinese Valentine Day)
○今日は、情人節。男の子が、愛する女性に花を贈り、二人で食事を楽しむ日....おいらには、水槽の中の魚の所作のようなものだ。覗いては見たいが、全く別の世界。TVのニュースでも、朝から、花屋さんの風景などを映していたし、コンビニでもチョコレート付きの花を売っていました。
○ あれれ、確か、2月14日にも情人節(Valentine Day)をやってましたよね?と色々聞いてみると、これがなかなか面白い。今回のは、旧暦の7月7日、七夕に因んで、Chinese Valentine Day としているとのこと。みんな、オリヒメとヒコボシの話をしてくれます。いや、オリヒメとヒコボシの話は、日本にもあって知っていますが、日本では、贈り物をする日ではありません。昔から七夕に恋人への贈り物をしていたのですかと聞くと、どうやら、この4,5年の風習とのこと。たまたま香港からの出張者がいたので聞いてみると、香港でも、そんな風習はないという。台湾の誰か頭のいい花屋さんが広めたのでしょう。いかにも、台湾らしい、いろんな文化のいいとこどりの習慣です。Chinese Valentine Dayとは、考えましたね。いいコピーです。
○ 日本の花屋さん、キャラクターグッズの会社の方、見習って、一つ7月7日に、花やプレゼントを贈る習慣のプロモーションかけてみたらどうでしょう。名前は、何がいいでしょうか。「七夕節」とすると、七夕ブシと読まれて、浪曲みたいですし、「七夕記念」は、まるでホースレースです。「七夕愛」なる言葉を、つんく先生に頼んで流行らせてもらうのでしょうか。やはり、水槽に入らないといい案はでないようですね。
8月27日
経済の不調
○ 今日は、ちょっと小難しい話に挑戦。(オチはありません。)
○ 今の日本の経済がこれだけ長期間良くならない理由は、幾つかの時間のスパンの違う大きな潮流が重なったものと見た方がよさそうだ。幾つか重なっているから、理解しづらいし、対策が分からない。どの対策も、当座何かしらの不都合を生む。僕は、この10年くらいずっと次の理由と見ている。
1) 一時的な不況。バブルのはじけたこと及びその後処理による不況。
2) 日本が先進国に追いついてしまった為に、従来の追いつき型経済発展の手法では上手くいかないことによる不調。成功体験が大きかっただけに、なかなか手法を変えられない。
3) 先進国のさらにフロントランナーとしての、「ポスト産業社会」の苦悩。例えば、「豊か」になった後も活力を維持できるのか。何を目標に社会をまとめるのか。どうやって個人も社会も目標設定をするのか。といった問題。
○ 例えば、今の銀行の不良債権の半分以上は、バブルの後に発生したものだという。それは、1)の一時的な失敗や波によるものではなく、2)や3)のもう少し、制度的な、長期間変わらぬものが大きいことを端的に示している。
○ このような指摘は、いつか、なんとか首相の所信表明演説でも聞いたことがあるし、それ程目新しいものでもない。しかし、最近の、「ハウツー不況脱出」風の表面的なツルツルした議論を見ていると、もう少しことは、重層的で、ある意味で人類にとっても意義深いものだと再確認してやり直した方がいいと思う。
○ 特に、3)の意義は、今、忘れられているようだけれどもとても重要な視点だと強調したい。もはや、日本の社会は、先を行く人がいなくて、何が正しいか分からない闇の向こうを、目を凝らしおずおずと、しかし、勇気をもって一歩踏み出す、そういうことの繰り返しの作業をずっと続けなければならないのだ。
○ 台湾でも、経済の停滞脱出の対策について大変な議論が起こっている。特に、台湾は、十分に成長したこともあり、一時的な不況に目を奪われずに、2)や3)といった長期的な視野を忘れずにいて欲しいと思う。不況の先輩国のビジネスマンからのつたないコメントである。
(この話の続きは、気の向いた時に、折々書かせてください)
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