台湾日記  2002年10月〜
  
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2002年1月2月3月4月5月6月7−8月9月 

10月28日
楽珍問答2(10月27日から続く)
○ 銀行の収益構造
楽野先生: では、全国銀行の収益構造をみてみましょう。
単位:兆円

年度 95 96 97 98 99 2000
資金運用差益(A) 10.8 10.7 10.0 9.6 9.7 9.4
その他収益(B) 3.3 3.7 3.6 3.1 2.5 3.0
営業経費(C) 7.8 8.0 8.0 7.5 7.3 7.1
 内人件費 4.0 4.0 4.0 3.6 3.5 3.4
粗利益 (D)=(A)+(B)-(C) 6.3 6.4 5.6 5.2 4.9 5.3
償却額 (E) 13.3 7.3 13.5 13.5 6.3 6.6
業務損益(F)=(D)-(E) -7.0 -1.0 -7.9 -8.3 -1.4 -1.3
資産処分損益(G) 4.4 1.2 3.6 1.4 3.8 1.4
最終損益(F)+(G) -2.6 0.2 -4.2 -6.9 2.3 0.1


珍助社長:わしは、こういう単位に¥が入っとる表やと何ぼ見てても飽きひんのや。ええと、まず、不良債権比率は、さがらんぞ。今でも、銀行の担当者は、相当、細かあに調べとるで。今以上に、融資審査の技術が向上するとは思えんな。わしらメーカーでいうとなんの設備投資もせんのに不良率がいきなり半分になるのを期待するようなもんやな。あかん。あかん。人間、ある日突然、お金儲けが上手なったりせえへん。懐が豊かになったから言うて、不良債権の発生比率が下がったりせえへん。

楽野先生:実際、アメリカの例を見ても、不良債権の発生する比率は、日本と変わりません。
単位:%

アメリカ(1991年末) 日本(2000年3月末)
不良債権総額/銀行貸出総額 11.9 12.3
不良債権総額/名目GDP 3.9 11.9
銀行貸出総額/名目GDP 33.2 96.1

(「現代日本経済」田中隆之)

珍助社長:そうすると、打つ手は、決まっとるな。1)人件費削減、2)貸し出し金利アップ。貸し出し金利をもっと高くせなあかん。そら、わしかて、マイクつきつけられたら、「金利が上がるとやっていけん」なんていうけれど、実際は、ちょっとぐらいあがってもええから、安定的に貸して欲しいなあ。

楽野先生:珍助社長の会社は、業績がいいからで、他の中小企業では、金利上昇が、いきなり会社の赤字に直結するところもありますよ。

珍助社長:そうか。よそは、わからん。次は、人件費削減が甘い。この表をみると、公的資金を納入した翌年から、なまぬるい経営をしとるな。失われた10年やなくて、失われた3年や。状況の悪い銀行で人を半分に減らし、ましなところで2/3に減らすしかしょうがないな。(台湾日記2月25日、ココ)それと、給料を減らすんやな。税金を使うんやから、同じ税金で給料もろてる公務員並に下げな道理があわん。わしら民間企業が調子悪るなったら、メインバンクが言うてくることと同じことや。銀行屋は、人に言うてきたことを、自分でもやらんかい。ほんま、昔、わしの会社が苦しなった時に、従業員を解雇したんは、つらかったぞ。わしも血の小便がでるほど必死に金策もしたが、結局、やむなく銀行のいうとおり人も減らした。今、思い出しただけでもつらい。ああ、むなくそが悪なってきた。

楽野先生:機嫌が悪くなってきましたね。銀行業そのものが、今ほどの雇用吸収力のある産業ではなくなってしまったということでしょうね。

珍助社長:そういえば、銀行のやっとる税効果会計(繰り延べ税金資産)。あれは、バツやな。竹中のぼんぼんが言おうが言わまいが、あんなインチキは、やめなあかん。大体、わしらが、経営の苦しいよその会社のバランスシート見たときに、まず、0として修正してする勘定が、無形資産と税効果会計関係の勘定やな。次に、長期貸付、長期投資、在庫が、簿価の何割引か確かめた後に、リース残みたいな簿外の債務をチェックする。こんなん、イロハのイやで。税効果会計みたいなんは、もうかってしゃあない会社が、尚、より一層健全に経理処理する為の方法や。

楽野先生:日本経済全体でいえば、資金の循環を銀行に頼るのは、苦しいですね。資金調達における、間接金融、即ち銀行の融資による調達の比率を減らす必要があります。株式投資がなかなか増えないのが問題です。

珍助社長:ノンバンクはどうや。リースの税制緩めて、リース会社をうまいこと使うたらあかんか。しっかりしたリース屋の方が銀行屋よりよっぽど商売うまそうやからな。
それにしても、これだけ銀行がおかしなっとるのに、銀行の内部から、反乱軍が出てこえへんのが不思議やな。昔の国鉄からJRへの移行のときなんか、そういう元気のええ若いのがおったんやけどな。いや、日本の銀行の組織力は、たいしたもんや。

楽野先生:そういう意味では、皮肉な言い方をすれば、日本の銀行のコーポレイトガバンスは、しっかりしているのかもしれません。

珍助先生:まあ、給料を公務員並にしてみ。きっと、反乱軍がでてくるで。人間なんて、らららーららら。

楽野先生:社長。カラオケは、まだですよ。

○ デフレ対策
楽野先生:デフレ対策として、ノーベル賞学者のスティグリッツ教授などは、円安をすすめています。

珍助社長:うちの会社みたいに輸出のあるところは、円安が一番効くなあ。明日から円安になったら、明日の入金から、キャッシュの実入りが増えるんやからなあ。公共事業みたいに、工事が済んでからみたいにまわりくどないし、金の入る業種も広くて多いで。輸入商社やってる友達に聞いたら、口銭がドル建てやから、輸入やけど、円安歓迎や言うとった。みんなの景況感に一番ひびくんは、円安かもしれんな。

それに、無税償却を広範に認めて欲しいなあ。おかげさんで、うちの会社は、黒字やさかいな。貸し倒れの引当と、設備投資の償却について、大幅に無税償却させてくれたら、大幅減税と同じことや。政府も開発費に関する減税なんかを考えてるようやけれど、細かい特例作ってごちゃごちゃした減税をせんと、すぱっと、「今年と来年のみ、100万円以下の投資及び、償却年数4年以下の設備は、購入年度に一括償却できる。」みたいにしてくれへんかなあ。

楽野先生:具体的な方法はともかく、確かに、減価償却を早める減税をすることは、珍助社長の会社のような、黒字で投資意欲のある会社に対する減税になり、成長分野への重点投資ということにつながりそうですね。それに、無税償却を大幅に認めることは、税の純減でなくて、税金を数年先に払うのと同じことになりますね。技術的に困難といわれた、「先行減税、後に増税、結局、税収一定」というのが、実現できるともいえるかもしれません。

珍助社長:「この機械の償却だけは減税」みたいな、細かあて、やいこしい減税は、あかんで。すぱっと、ざっくり、ようけ、安うしてや。それにしても、ほんまは、投資する先なんかないなあ。いくらモノに投資しても、大した儲けが期待でけへんわ。これが、デフレちゅうことなんやろなあ。

楽野先生:相変わらず、お金のことになると鋭いですね。ヴィクセルによると、実物資本に対する収益率は、即ち自然利益率で、その自然利益率が、市場の実質利子率より低いときデフレが進みます。珍助社長の意見もあながち否定できません。

珍助先生:ヴィクセルかヴィクスドロップか知らんけど、それにしても、理想とするイメージがないなあ。どういう社会になるのか、国民がイメージできるようにして欲しいなあ。それがはっきりせんと、こわあて、じいちゃんばあちゃんもお金使わへんで。将来の絵をみせつつ、手元では、現実的な対策をうたんとあかんな。

楽野先生:珍助社長は、いつも「評論家」のことに批判的ですが、珍助社長も、ここまでいうと、いっぱしの「評論家」ですね。

珍助社長:こりゃ一本とられてしもうたな。先生。ほんまや、ここでは、わしも評論家の立場やから、立場をわきまえるべきやな。すんまへん。
(楽珍問答終わり)

10月27日
楽珍問答1
○ 日本の経済政策について、素人ながら色々思うのですが、正直に言って、自分の考えになかなか確信がもてません。僕の心の中では、勉強会などで聞いたり、本で読んだりして得た理屈っぽい知識と、これまでにお付き合いいただいた中小企業の社長さんならこう言うだろうなあという肌触りのような感覚とが、上手く折り合えません。そこで、その折り合えないままをここに書いておくことにしました。そうした僕の心のままに、僕のペンネーム「らくちん」を二つに分けて、経済評論家の楽野先生と中小企業の珍助社長の会話として書いてみます。

○ 様々なデフレ対策:お金持ちになる法
楽野先生:日本経済も大変な事態です。政府が、すみやかに大胆な経済対策を実行すべき時だと思われます。

珍助社長:そうか?責任がないからすぐやれ、それやれなんて言えるんで、実際に国民のことに責任を持って思っている人なら、ビビルのが当たり前やし、健全やないのか?
今回、銀行の不良債権処理についてもそうや。学者、評論家の言っていることはバラバラやない。「やるべきことは明白だ。」なんて言うて、言うてることが、全然反対のことやったりして、これじゃ、どれをやればええのか分からん。全然明白やない。つい、この前まで、不良債権処理を急がなければならないなんて、大合唱。しかし、実際にやるとなると、株が下がった。株が下がると、「そうやと思とった」とみんなでいいだす。マスメディアの取り上げ方が悪いのか、言論界が悪いのか知らんけれど、当てにでけへんな。少なくとも、「当座は、株がすごい下がるぞ」と事前にいうとらなあかんかった。そうでないやつは、えらそうな口をたたく資格は、ない。

楽野先生:確かにデフレ対策としては、色々な政策が議論されている。昔からある公共事業、減税、今話題の銀行の不良債権処理、それに、最近岩田規久男教授などがいっている日銀による長期国債の買い切りオペ、日銀による株式の購入などがある。(岩田規久男「デフレの経済学」)最近では、アメリカの学者などから、円安誘導策なども挙げられている。

珍助社長:まるで、「お金持ちになる法」のオンパレードやな。あてにできんな。わしら民間企業が、よく考えて、よく働いて、よく投資するしか、不況の克服の方法なんてないんとちゃうんか。どんな政策も、政府が民間企業を邪魔する度合いを減らすのが精一杯という気がするがなあ。

○ インフレターゲット論:桶屋がもうかりゃ風が吹く
楽野先生:そうみもふたも無いことを言わずに、検討してみましょうよ。ポール=クルッグマンが前から言っている、日銀によるインフレターゲット論がよく議論されています。

珍助社長:鐘太鼓を鳴らして「お札刷ります」といいながら、お札刷りなさい、ちゅう話でんな。なんか怪しいなあ。元々、景気が良くなったらお札を刷る必要がでてくる。というのが本筋の話。そこを、お札刷ったら、使い道ができて、景気が良うなる、ちゅう話やな。逆とちゃうやろか。風が吹いたらたまには、桶屋が儲かるかもしれんが、桶屋がもうかりゃ風が吹くというのは、信じがたい。

楽野先生:クルッグマン本人が言っているように、ターゲットを明確に示すというのは、つまるところ「心理的効果」にすぎない面はあります。また、クルッグマンは、政府支出を拡大するように言っているが、一方で、この10年の日本の公共事業費の巨額さに呆れてもいる。GDPの大きな部分を使って、国中をコンクリートで固め尽くそうとしている。(「恐慌の罠」)なんてね。

珍助社長:日銀は、インフレターゲット論なんかのらへんやないやろか。速水総裁の面(つら)を見とると、そんなことやるようにみえへんけどなあ。

楽野先生:日銀は、インフレターゲット論をとんでもないと初めから否定しているのではなく、やれるものなら何でもやるとは、思っているようです。今回の銀行所有株式の買取もその一つの表れかもしれません。しかし、十分検討した上で、設定したインフレ目標を実現に導くだけの手段は、日銀にはないというのが、内部での有力な考え方なのではないでしょうか。

珍助社長:インフレターゲット論というのは、要するに、昔、池田首相の掲げた、「国民所得倍増計画」と似たものでんな。「あなたの給料袋の厚さが倍になる。だから、希望をもって働こう。」という言い方は、全く同じ。一番違うのは、言うてる人が、首相か日銀かということ。それを、政府がやるならともかく、日銀がやるべきものなんやろか。

楽野先生:そうした意見は、インフレターゲット論や日銀にデフレ対策を要望する声に対する有効な反論となっています。日銀が長期国債や株式を買い取ればいいというなら、政府が「長期国債買入機構」でも「公社債株式買取機構」でも作って買えばいいという意見です。(小宮隆太郎教授「金融政策論議の争点」)選挙で国民の信任を得ている政府がそれをできないのに、どうして日銀が、そんなに国民にとってリスキーなことをやっていいのか。日銀が、そういうことをするのは、民主主義の否定ではないか、といわれるとなかなか反論が難しい。

珍助社長:3,4年前かなあ、インフレターゲット論者の伊藤元重教授の話を聞いたことがあるんや。「日本のことだから、明確にいつ政策転換したのか、何故したのか、曖昧なうちに、時間遅れで、しかし、なし崩し的に実現されていくのではないか」と言っていたけれど、そのとおりになりそうやなあ。

○ 不良債権処理:必要だが十分でない
楽野先生:日銀は、このようにデフレ対策に対して自分のできることを真剣に考えている一方で、政府に不良債権処理を急がせている。単に不良債権を処理せよというだけでなく、今の銀行の不良債権に対する引当のとり方を、もう少し、よく考えられた割引現在価値という手法で、計算するべきだとしています。

珍助社長:そうやって、難しい言葉を使って、話をごまかすなといいたいな。何を難しいに言うの。要するに利回りを考慮せいということやろ。金利が分かれば、中学生にでも分かる話。昔、わしの会社のメインバンクの担当銀行員が、IRRや、DCFや、横文字並べて威張った顔しとったけれど、よう聞いたら、簡単な話や。中学生のうちの息子に計算させたら、パソコン使って簡単に表作って計算しよった。方程式や因数分解より簡単やし、下手したら分数の計算よりやいこしない、と、言うとった。うちの息子は、その担当銀行員のことを「IRRおじさん」というてバカにしとったで。

それより、融資先会社の収益計画(予想)に依存して決めるのは危険やないの。問題は、割引現在価値の計算方法ではなくて、融資先の会社の収益がどう推移するか、それをどう読むのかということやろう。利回りで割り引く計算は、それに対して、何も答えへんな。

それに、割引現在価値で使う、予想収益率ていうのは、元々は、国債の利率か、その企業(銀行)の平均収益率を使うのが普通やろ。銀行の平均収益率なんて、今は、実質上マイナスやないのか。それを使うと、割引現在価値を使った方が、引当金額が少なくてすむ。どないする、先生?

楽野先生:その企業に対する融資金利で計算すれば、そうではないだろうが、確かに、考え方次第のところはありますね。方法はともかく、やはり、今は、なにより不良債権処理を一番急がなければならないといわれています。

珍助社長:銀行が取り付け騒ぎになったらあかん。それは、分かる。しかし、それを防ぐだけやないのか。必要だけれど十分じゃない。(台湾日記01年10月17日 ココ参照。らくちんは、この時点で、不良債権処理を行うと中小企業への貸し渋りが起こると書いていたんですね。)

楽野先生:不良債権処理―>融資の余裕―>成長分野への融資―>デフレ克服という、シナリオが、多くの学者によって語られています。

珍助社長:成長分野への融資が増えるというのは、難しいなあ。成長分野で、ちゃんと成長している企業は、トヨタみたいに潤沢に資金があるから、融資を受ける必要ないでえ。古今東西でそうやが、金を確実に返せる人は、金を借りる必要がない。(台湾日記 2月26日 ココ参照)結局、銀行は、危ない先の債権を回収して、他のところへの融資を増やせないということになるで、きっと。不良債権処理は、相当上手くやらんと貸しはがしにつながり、それに終わる。

楽野先生:そうは言っても、公共事業や減税などの景気対策をいくら実施しても、銀行に不良債権があるままでは、底が抜けたバケツで水をかい出しているようなもの。これは、吉冨勝が1998年に「日本経済の真実」で言っている表現です。

珍助社長:それはわかる。しかし、銀行が利益を生み出す体質でないのに、銀行に税金つぎ込むのは、底の抜けたバケツに水を足すようなもの。違うか?(次回に続く)

10月19日
ウームー大学
○ かんべいさんに、台湾での日本人飲み屋街の話題をふられました。(溜池通信 ココ)御指名でもありますので、不案内を省みず、書かせていただきます。(以前に一度台湾日記で書いたことがあります。ココ

○ 日本人の駐在員や出張者を対象にした飲み屋街というのは、アジアの色んな国の首都にあります。僕は、バンコックと台北ぐらいしか行ったことがありませんが、他の人の話も総合すると、一番多いパターンの共通項は、次のようなものです。
− 店に入ると「イラッシャイマセ」等の、日本語で挨拶をうける。
− 照明は暗めで、ふかふかのソファーに座る。
− 座席に座ると横にカタコトの日本語の話せる現地女性が座って、話し相手をしてくれる。
− 地元の人達で運営されている。(日本人がスタッフに入っているのは珍しい)
− 日本語のカラオケがある。(半年以内の最新の曲が入ってることは珍しい)
結局、新橋や、郊外の駅前にある「スナック」と言われるようなものが、何十軒、何百軒とあるようなものです。

○ 一般的には、この程度のサービスが殆どですが、これ以上のサービスの有無とか、料金などは、その国の規制の具合、経済状況によるようです。

○ 台北では、林森北路と言われているところが有名で、300m四方くらいの場所に、300件ほど、上記のような日本人相手の飲み屋があります。出張できて、独力で行くには、「林森北路、南京東路口」(林森北路と南京東路の交差点の意)と書いて見せるのが一番確実です。

○ サービスの内容については、以前にも書きましたが、今の台湾は、規制も厳しく経済的にも豊かになったので、上記のサービス以上の業務は、衰退しております。そちらの向きは、そちらの向きの先進国、日本ですまされることをお勧めします。10年以上前に台湾に来ていたという方は、このナイトライフの様変わりにかなり驚かれるようです。

○ 台湾人の間でも、この林森北路の存在は有名です。僕が台湾人のお客さんから、「どこで、中国語を勉強していますか?」と聞かれて、「ウームー大学(五木大学)です。」と答えると、結構、ウケます。林森の字が木を五つ使っているからで、これなんて、まさに漢字文化圏のジョークですね。

10月15日
ジーコ監督
○ こういうのは、勝負の結果がでる前に言うのが、このサイトの流儀です。僕は、日本代表のジーコ監督が好きです。一年二年は、結果が出なくても支持したい気持ちでいます。

○ 個人の力で、日本のサッカーへどれだけ貢献したかを考えれば、ジーコは、ベスト3に入るのは、間違いないと思います。Jリーグが立ち上がりに成功したのは、ジーコの貢献無しには語れません。日本人にサッカーの魅力を教えてくれた世界的な有名選手を、レベルの高くないJリーグに数多く呼んできたのもジーコです。今、Jリーグを支える鹿島もジーコ抜きでは、チームの存在すら想像できません。日本のサッカーがこの10年に急激に進歩したことに、ジーコは、多大な貢献をしています。

○ 率直に言って、監督としてのジーコは、未知数です。でも、ジーコ無しに今の日本代表の姿が想像できないのだから、いいではないですか。1年、2年、ジーコに預けてみましょうや。また、ジーコなら、前任者と違い、少なくとも日本のサッカーに敬意をもって接してくれると思います。僕は、これは、代表監督の必須条件だと思っています。日本のサッカーの為の日本代表なのですから。

○ ところで、このサイトでスポーツに関してこういうことを書くと、大体皮肉な結果になるのが、ジンクスです。さて、今回はどうなりますやら。

10月12日
中位の台湾
○ 台湾は、面積としては、他の国に比べて小さいが、人口でみると中位だと思う。人口22百万人。ここでは、他の国と比べてこの22百万という数字がどんなものか実感できるように見てみたいと思う。[「世界の国一覧表2000年版」(財団法人世界の動き社)による。数字は、国連統計資料(1998年央推定)によるとのこと。]
単位は、100万人。

○ まず、アジアから。

大韓民国 46.4
北朝鮮 23.4
カンボジア 11.4
マレーシア 22.2

 これでみると、台湾の人口は、北朝鮮、マレーシアと同じくらい。カンボジアの2倍程度です。結構、大きいでしょ。

○ では、大洋州。

オーストラリア 18.8
ニュージーランド 3.8

ということで、オーストアリアとニュージーランドを足して丁度台湾の人口と同じくらいです。なかなか驚きますよね。

○ 次は、最近話題の中東。

アフガニスタン 18.8
イラク 21.8
イスラエル 6.0
サウジアラビア 20.2

サウジアラビア、イラクよりも、台湾は、人口では大きいのです。

○ ヨーロッパをみてみます。
独、仏、伊、英、スペイン、ポーランド以外は、殆ど、台湾より人口の少ない国です。

オランダ 15.7
ベルギー 10.2
スウェーデン 8.9
フィンランド 5.2
ノルウェー 4.4
デンマーク 5.3

オランダとベルギーを足したの凡そ同じです。驚くのは、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークの4カ国の合計が大体台湾の人口と同じことです。ハンガリーとオーストリアを足しても、台湾の人口ほどにはなりません。他に、ギリシャ、スイス、ポルトガル、ユーゴスラビアなどは、台湾の人口の半分以下です。

○ 南米
ブラジル、アルゼンチン、コロンビアは、台湾より随分多いですが、他は例えば、次のようです。

チリ 14.8
ペルー 24.8
ボリビア 8.0
ウルグアイ 3.3
パラグアイ 5.2
ベネズエラ 23.4


○ アフリカ
数字の近いところを挙げてみます。

カメルーン 14.3
ガーナ 19.2
ケニア 29.0

○ 僕自身もこうして見直してみて、台湾が十分中ぐらいの国といえる規模だと、改めて思いました。少なくとも、小国というのは当てはまらないと思います。小国といえないからといって、「中国」なんていうと、話がややこしくなるからいけませんね。

10月10日
海辺のカフカ
○ この4,5日、心が「海辺のカフカ」に出張しており、サイトの更新もメイルの返事もできませんでした。ここでは、この本を読んだ後に僕の頭に浮かんできた言葉を拾い集めて書きとめておこうと思います。

○ もう気付いているかもしれないけれども、僕は、村上春樹が好きだ。かえるが雨を好きなように、RAYを読む女の子が◎を好きなように、僕は、村上春樹が好きだ。そう、コイズミさんが否定形を好むように、僕は、村上春樹を好む。

○ 村上春樹は、80年代にブレークしたとても80年代的な作家だと思う。僕は、80年代に読んだ「ダンスダンスダンス」、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」が一番好きだった。「ノルウェーの森」も嫌いじゃないが、この背表紙の美しい本を今思い出そうとすると、イチロー選手が行列に並んだファンにせっせとサインをし続ける姿が重なって頭に浮かぶ。ファンを大切にする天才。

○ 90年代にでた「ねじまき鳥クロニクル」は、残念ながら僕が最後まで読みとおせなかった初めての村上春樹の本となった。読み通せなったことに僕は、少なからぬショックを受けたものだ。僕が、変わってしまったからなのか、作家のスタイルが変わったからなのかすぐには分からなかった。ただ、この本に対する世間での評判は上々で、作家に対する高い評価も相変わらずだった。要するに、僕は、社会にでて、村上春樹を受けつけられない体になってしまった、と結論付けるのが順当なようだった。その結論は、うすいけれどもしっかりとした傷を僕の心に残したように思う。

○ 今回、「海辺のカフカ」を「心の出張」ともいえる様な状態になるほど、楽しく読めたのは、とても幸せなことだった。僕が、村上春樹を読める体に戻ったからなのか、作家が僕にあうスタイルに戻ってくれたのか、相変わらず、僕には分からない。いずれにしても、僕は、幸せに本を読み、その後に、楽しく読めた自分に対し、幸福な感慨を持つことができた。そう、幸福な自分に対する幸福な感慨。悪くない。

○ 80年代の成功の後、村上春樹は、おそらく創作活動にプラスになるとの意図で、ヨーロッパとアメリカに長期間滞在していたことがある。しかし、この本を読むと、その海外での生活は、直接的には、その影を見つけるのは難しい。もちろん、作品が基礎をおく作家の人間の分厚さともいえるようなものを蓄積することを通じて、作品に貢献しているのだとは思われる。それよりも、この作家が、敢えて深く調べたオウム事件や神戸の震災といった、この10年ほどで起こった日本の事件の方が、この作品に直接的な影響を及ぼしているように見える。海外での暮らしというのは、人生にはプラスかもしれないが、必ずしも職業的なプラスには直接つながるものではないようだ。

○ さて、「海辺のカフカ」である。この作家の相変わらず「冗長で且つ機能的な文体」は、長編小説に向いていると思う。飽きさせず、ゆっくりと、しかし、確実に物語りを紡いでいく。その物語についてここで書くのはよそう。第一、僕は、子供の頃から、読書感想文には、「よかった」とか「とてもよかった」とかと一行程度しか書けなかった。夏目漱石が文庫本一冊かけて語ろうとしたものを、どうして一人の中学生が、原稿用紙5枚に書けるのか不思議でしかたなかった。ここでは、代わりにというのも変だけれども、「海辺のカフカ」を読んでいる間に、心に浮かんだイメージをここに書いておこうと思う。

○ 僕は、雲の上を歩いている。とても高い空の上だ。飛び石をつたって川を渡るように、ぷかり、ぷかりと浮かんでいる雲に足をのせて歩いている。その雲の下は、何千m下に固い地面があるだけだ。本人は、これがふわふわの雲だと気付いていないようだ。地面の上を歩いているかのように、なんの不安もなく平凡にゆっくり歩いている。その雲の一つ一つには、「習慣」とか「家族」とか、「タブー」とかといった名前がそれぞれについている。僕は、相変わらず同じペースで歩いている。歩を進めるほどに、その雲についている名前が、難しい、抽象的なものになっていく。「時間」、「あるもの」、「あるべきもの」、「性」、「存在」、「観念」、「言語」、「シニシエ」......。そして、進め行くほどに、一つ一つの雲は薄くあやふやなものなっていく。そのために、足元はだんだん安定しなくなる。さすがの僕も足元の不確かさに気付いているようだ。それでも僕は、ペースを変えずに歩く。そのうち殆ど、雲というよりも霞にちかいとても不安定なものになっていく。もう、その霞のような雲には、名前すらついていない。さらに、僕は、前に進んでいる。最後に、とても怖いと思いながら、それでもなお勇気をもって、一歩前へ踏み出そうとする。(イメージの終わり)

○ この作家は、芸術的な追求とともに一つ一つの作品に世俗的なミッションを常に負わせているように思える。その意味で、本書は、ノーベル文学賞を狙っているのか、あるいは、それをおちょくっているような気がしないでもない、

10月5日
日本でプチ感2

○ 昨日に引き続き、日本でのちいさな感動=プチ感をしたことを挙げてみます。

○ マックのパンケーキ
実は、僕は、マクドナルドの朝のパンケーキセットが大好きなんです。パンケーキにじくじくに沁みこんだシロップのちょっとチープな甘ったるさが、とても好きです。海外のマックと比べても、日本のマックのパンケーキが一番おいしいと思っています。ところが、東京の郊外の駅前のマックで、うきうき気分で、パンケーキセットを頼んだところ、プチパンケーキとかというやつだったらしく、直径2cmぐらいの、冗談かと思うくらい小さいパンケーキがちょこっとだけ入っています。「おのれ、馬鹿にしやがって!!!」と思いましたが、後の祭りです。しおしおと、つまようじで、そのプチパンケーキをつつきながら食べたのでありました。とほほ。

○ 道を知らないタクシー
東京駅周辺の地理も理解していないようなタクシーが複数いたので困りました。これも不況の影響でしょうか。ちょっと驚きました。

○ でかい携帯電話
日本の携帯電話が、以前よりも却って分厚くて重いものになっているのが意外でした。機能が色々ついているのかもしれませんが、大半の人は、簡単なemailと、通話しか使わないのではないでしょうか。挙句に、夕方には、電池切れなんてしているのをみると、かわいそうになってしまいます。ちょっと驚きです。

○ 女性誌の文体
仕事で少し女性向けファッション誌を見る機会がありましたが、特有の文体に目を見張りました。ここで、ちょっと、文体ものまねに挑戦しましょう。「モノトーンがいさぎよいチビTとのCDで、上品かわいくて◎」これは、「単純な単色の丈の短いティーシャツと組み合わせることによって、上品さとかわいらしさを兼ね備えることができ、非常に良い。」という意味です。貴方は、CDをコーディネーションと読めましたか?「いさぎよい」などという、武士道の精神を語るような無骨な言葉が、いつから、10代の若い女性を対象としたファッション誌に使われだしたのでしょう。驚くばかりです。

○ ここで、拙いながら、おじさんの世界での出来事をこの女性誌風に書いて見ましょう。
「さいふのことを言わなくなったかわいい塩じいと、トレンドに敏感なタケナカとのCDに、差し色にキムラを使い、甘すぎない旬なデフレ対策を狙って○。でも、お金を使うだけでは、NG。いさぎよく一人で決めるところが、JUN流で◎。」

10月3日
日本でプチ感1
● 出張で日本に行っていました。日数をおいて日本を訪れると、小さな感動=プチ感をすることも多いので綴ってみます。

● 東京駅構内の店
東京駅構内、切符を持たないと入れないところに、コンビニは、もちろん、そこそこ大きな本屋もあり、さらには、ユニクロさえもあります。僕のような海外居住者が買いたいのは、本、普段着、食物です。日本に到着した日、とりあえず、成田エクスプレスを降りたその足で、雑誌、普段着の類が、調達できてしまうのは、すごいと思います。JRの他の駅には、牛丼の吉野家もありました。JRの駅って、ちょっと感動です。

●八重洲富士屋ホテル
○ 今回、ちょっとおじさん臭いのですが、八重洲富士屋ホテルに泊まりました。35歳以下の利用客が見当たらないようなホテルですが、実用性は、抜群でした。交通の便は、どこに行くのもとびきりいいです。まず、成田空港との往復が、成田エクスプレスで非常に便利です。新橋あたりで飲んでも、歩いて帰れます。歩いて銀座に買い物に行き、ジャイアンツ優勝セールでシャツも買えました。

○ さらに、八重洲ブックセンターのすぐ近くなのが、本好きには、たまりません。今回は、夜に到着したのですが、閉店直前の八重洲ブックセンターに飛び込み、レファレンスカウンターに予め用意していた本のリストを渡すと、たちどころに10冊くらいの本を、集めてくれました。また、八重洲地下街には、玉の光という食堂で「焼き魚定食」が食べられます。海外に住むものには、絶品です。東京駅にあるおにぎり屋のおにぎりも涙がちょちょぎれるほどおいしく思いました。

○ ところで、ホテルの1Fにコンビニがあり便利なのですが、そこでは、ビールなどのお酒がありません。厚顔無恥にも、近くにお酒を売っているところがないか、コンビニの店員に聞いてみましたが、「ホテルのバーの他にはありません」と、つれないがもっともな返事。意地になって、お酒のあるコンビニを探して周囲を歩きました。何をぬかすか、らくちんは見つけたぞよ。エヘン。歩いて3分のところにあります。見つけたときは、それこそ「プチ感」でした。

● キンキンの髪
日本の女の子の髪が黒髪→茶髪→金髪と、どんどん色が薄くなっていくように思います。聞くところによると、ヘアサロンでは、「もっと明るくしましょう」と言われちゃって、どんどん、キンキンになっていくそうです。そして、一度明るい(薄い)色になると、元に戻せないようです。日本に来る度に、街行く女の子の髪がどんどんキンキンになっていくのをみると、男の旧友の髪が会うごとに薄くなっていくのと同じような感慨がおこってしまいます。これも「プチ感」といえるでしょうか。


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