台湾日記  2001年12月1日〜
  
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12月16日
狂牛病
○ 台湾のお客さんと共に日本に出張していました。(更新が滞っていてすいません。)日本で食事の際にレストランを覗くと、狂牛病のせいか、そう思って見るせいか、焼肉屋さんは、人が少なくて、かわいそうな気がしました。

○ 日頃の業務態度が悪いからなのかどうか、らくちんは、仕事で、後処理のようなことを担当するケースが多く、狂牛病のような事件がおこると、きっとこの事件でてんてこまいしている担当者がいるに違いないと思い、見たこともないその人に対していらずの同情がほのかに出てきます。かといって、そこは小市民、この御時世に焼肉屋に客を連れて行くのもなんだかで、結局、お好み焼き/鉄板焼きの店に行ってきました。そこで、ビーフを注文して、少し気持ちが落ち着いた自分を見つけ、いかにも小市民だと、おかしくなってしまいました。

○ 雪印の事件の時も、コンビニで、2本牛乳パックを買うと、どうしても一本は雪印にしてしまったものです。2本雪印じゃないところが、いかにも、でしょ。

12月17日
わたしには、夢がある?
○ 台湾のお客と日本で食事中、話題が途切れた時、「あなたには、夢がありますか?」と聞いてみた。日本人の友人同士でこんなストレートな話題のフリはしにくいが、片言の外国語(英語)のコミュニケーションならば丁度いい。相手は40歳過ぎの技術者で、「夢ねえ。ないですね。強いていえばお金もちになりたい。」と真面目なこたえ。「で、あなたは?」と聞かれたので、らくちんは、「南の小さな無人島に一人で行って暮らしたい。バナナの木を一本植えて、その実を食べて生きるんだ。」と答えた。その答えを聞いて、真面目でいるのをやめたようで、この台湾人技術者氏、にやっと笑って、「洗濯はどうするの?」とすごい、つっこみ、というかボケ。僕が、たじろいで、「あなた、奥さんいないと自分で洗濯できないの?」とかとさえないコメントをしながら、もごもごしていると。もう一人が、「他に誰もいないなら、裸でいいじゃん」と一刀両断。確かに、りんごを食べる前のアダムとイブの世界に戻る訳ですね。その後は、話し相手にサルを連れて行こうかとか、その場合、やはり下着はいるかとか(超難問!)、ひとしきりその話題でもりあがった。

○ 閑話休題。昔、らくちんがアメリカの西海岸にいた頃、あるホームパーティに行った。気さくな会で、ジーンズで集まって、ピザをほうばるようなやつだ。その日、街中が少し騒がしいように思えたのでアメリカ人の友人に理由を聞くと、ホモセクシュアリティのデモ、パレードがあるとのこと。らくちんが、驚いてそしてにっこりと「彼らの夢についてなにか大きな演説でもあるのですか?」と聞くと、さすがは、機転の利くアメリカ人。ちゃんと、答えてくれて、「そうそう、ホモセクシュアリティのリーダーがね..」そして、おなかの底からソウルフルな声を出して、「I have a dream. I have a dream…..」と有名なキング牧師の演説の一説を諳んじてくれた。アメリカの人種差別反対運動(公民権運動)で活躍したキング牧師のこの有名な「私には夢がある」という演説風景は、60年代のアメリカを象徴する映像として今でもテレビに出てくる。

○ ひるがえって、今、00年代の日本人の夢はなんだろう。卑近な例で申し訳ないが、日本にいるとき、サマージャンボ宝くじをみんなで買って、お決まりのごとくあたったら何に使うかと話したが、思ったほど盛り上がらなかった。らくちんの場合、「最新鋭のパソコンとその周辺機器を買って、それでは、100万円もいかないか。ええとええと、あと9千9百万円は、思いつかない。」と情けないコメントであった。何を買うにしても、買った物をおくスペースがない。だからといって家を買うとそれだけで無くなってしまうし、その後値段が下がるかもしれない。結局、貯金しかないなあなんて言っていたら、最近では、MMFでも危ないらしい。今の日本の根本的な問題は、「豊かな夢の喪失」なのだろう。

○ 日本では、忘年会シーズンとのこと。ちょっとベタですが、状況により「夢」について話題をふってみたらどうでしょう?ちょっと気の利いた「ボケ案」を用意しておくと盛り上がると思うのですが、どうでしょう。いいのがあったららくちんにも教えてください。

12月25日
回復
○ エレクトロニクス産業では、総じて景気が悪いには悪いのだが、最近、個別の明るいニュースをよく聞く。LCD大型パネルの値段が、数ヶ月前から値上がりし始めていたが、今度は、半導体も需給がしまってきたようだ。LCDは、台湾の上位の会社では、フル稼働が続いている。半導体も、台湾の大手の工場の稼働率があがり、また、メモリーなどは、下手をすると買い手であるパソコンメーカーが、来年前半に安定供給を受けられる目処がつけにくくなっている。

○ そうはいっても、需要の増加というよりも、供給の調整の結果という色彩が強く、手放しで喜べるような状況でもない。LCDでは、来年、韓国で大型のラインが立ち上がるので、みんな戦々恐々としている。半導体は、これまで掟破りのカミカゼ価格を出していた韓国のハイネックス(旧現代)をアメリカのマイクロンが買収もしくは業務提携する話があり、その影響で、値段が落ち着いてきた。しかし、供給不足気味といっても、値段さえあがれば、供給余力はたんとある。パソコンメーカーが来年のモデルについて、かつての安い値段の予算通りメモリーの供給を受けようとすると、供給者がいないといったレベルのことである。しかし、これは、パソコンメーカーには、深刻だ。

○ なんてのをみていると、悪い状況は、かなりましになっているというのを生産、販売の現場は、感じていると思う。少し不安に思いながらそれに対処しているのが現状のようだ。来年のノートブックパソコンの値段は、そんなに下がらないかもしれない。

○ 日本のメーカーが、LCDとメモリーの生産を一斉にやめた途端にこういう状況だ。しかも円安。円安になっても、もう輸出するものが残っていないかもしれない。もういい加減に、一斉に乗り出し、一斉に撤退する習慣を止めたほうがいいと思うのだが...

12月29日
VCD事件
○ 台湾で話題騒然の色モノ系事件が起こっている。元立法委員(国会議員)のX嬢が様々の男性と交わっている様を隠し撮りした動画像がCDの形で雑誌に同梱されて流布した。アジアでは、映画やテレビドラマの動画像をVCDというフォーマットでCDの形で見る形態が普及している。日本でいうFridayのような雑誌が、X嬢という個人の交わりを撮った、裏ビデオもびっくりのボカシもモザイクもないあからさまな本番映像をこのVCDに詰めて、雑誌の付録につけたのである。

○ このX嬢、35歳で独身、元ニュースキャスター、新党に所属し、立法委員、新竹市文化局長を務めたことがあり、この12月に行われた立法委員の選挙では落選したものの、若いながら政治家の一人である。撮影された場所は、マンションの一室のようだ。映像は、固定アングルながら昼間撮影しており、明るい中で彼女の美しい肢体をきっちりとらえている。魅力的な女性なのだろう。元新竹市長と恋仲であったのは有名であったが、男性にはもてたようで、妻子持ちを含む10人足らずのボーイフレンドがおり、その様々なボーイフレンドと、様々なスタイルで交遊を楽しんでいる様が、明確に映像に撮られている。中には、ボーイフレンドとコトが終了した後、風呂上りで裸体のままタオルだけ巻いて別のボーイフレンドに甘い声で電話している様子などもある。

○ 雑誌にでたのは、もちろん本人のX嬢の本意ではないようだ。では、誰が出版社に持ち込んだのか。X嬢の女友達が今疑われており、警察から事情を聞かれている。一方で、元新竹市長氏もボーイフレンドにも関わらず一度も映像にでてこないことあり、却って関与したのではないかと疑われている。しかし、撮影すること自体は、X嬢が自ら知っていたとも言われている。

○ このような事実や噂が日をおいて少しずつでてくるのだから、マスコミも連日の大報道で世間も大騒ぎである。話題の焦点のX嬢は、多数のマスコミに追いかけられながらもノーコメントを通していたが、先日、マスコミの前に出てきて、泣きながら声にもならない弱弱しい声で世間を騒がせてすいませんと、謝罪した。

○ この謝罪は、台湾では、珍妙なこの事件のなかで一つのまともなことと受け止められているようだが、らくちんには、よく意味が分からないでいる。どうしてX嬢が、しかも、世間に対して謝罪しなければならないのだろう。X嬢は、世間やマスコミに対して怒りこそすれ、謝るような話ではないと思う。もちろん、不倫のお相手の奥様には、謝るべきかもしれないが、それは個別に謝ればいいのであって、マスコミに向かって謝るものでもない。世間を騒がせたというが、雑誌社にその映像を渡したのは本人ではないのだから、世間を騒がせたのは、X嬢ではなく、出版社であり、マスコミである。ううん、謎は深まるばかりである。

12月30日
台湾立法委員選挙
○ 遅ればせながら、12月1日の立法院委員選挙(国会議員選挙)に就いて書いてみたい。
結果は次の通り。カッコ内は、改選前議席数。

民進党 国民党 親民党 台連 新党 無所属
87(66) 68(112) 46(20) 13(1) 1(8) 10(12)


○ 与党民進党が躍進、初めて第一党となった。また、李登輝率いる台湾団結連盟も予想以上に躍進した。しかし、両党合わせて過半数には、達していない。一方、国民党は惨敗。国民党から分離した親民党は、躍進したが、新党は、惨敗であった。

○ 今後の政局であるが、民進党+台連の連合は既定路線。それでは、過半数に届かないのでこの与党連合が国民党及び無所属の委員の内台湾本土志向の強い委員と連携し、過半数を形成できるかどうかにかかっている。民進党側は、自信を持っているようだがどうだろう。

○ この結果を、どういう民意の表現と解釈するかは意見の分かれるところだが、らくちんの意見は次の通り。
− 中国との統一は、NO
− 陳水扁の内政特に経済政策には、不満
− 陳水扁・民進党にチャンスをもう一度与えた

○ いくつか、ややことの本質からずれることも含めらくちんのコメントを書きたい。

○ 台湾の国民の政治に対する、絶妙のバランス感覚に感心せざるを得ない。民主主義に忍耐強く付き合って欲しいなんて偉そうなコメントをこのサイトで書いたこともあるが、そんなコメントが恥ずかしくなるほど、民意を確実に伝える絶妙の結果であった。

○ 李登輝の偉大さ。各種の世論調査でも、李登輝が今政治活動を再開することには、大半の国民が反対だったようだ。にもかかわらず、予想以上の支持を集めた。台連の存在について、対大陸の経済政策で、らくちんが面白く思っていることがある。李登輝が台連を発足した直後に、陳水扁が、李登輝の「急がず忍耐強く」という対大陸経済政策を放棄し、「積極解放、有効管理」に転換した。この転換は、陳水扁が、李登輝を裏切ったとも、はしごをはずしたとも言われた。李登輝もこの点に関しては、陳水扁を批判もした。しかし、結果的に、民進党+台連の連合の政治的な支持層の幅を広げたと思う。統一的なるものに絶対反対する人は、台連に投票し、統一には反対だが経済面での関係は無視できないと思う者は、民進党に投票できる。つまり、台連の結成によって、ある程度の支持層を台連に流れることを覚悟しつつ、民進党がより中道よりにスタンスを変えることができたともいえる。これは、結果論である可能性が高いが、いい換えれば、陳水扁と李登輝の政治的センスの良さの結果ともいえる。

○ 国民党党首連戦の弱さ。今回の大敗で責任を問う声もあったようだが、結局、リーダーを続けることとなった。これだけ選挙に弱いリーダーがその地位を追われないわれないのは、少し不思議でもある。馬英九台湾市長では、若すぎるとの声が大勢のようだ。こんなに連戦が選挙に弱いと、民進党の側も、連戦の続投を望んでいるのではないかとさえ思う。

○ 宋楚瑜の政治的実力は、李登輝を除けば頭一つ図抜けている感がある。今回も、巧みに、政治的に中央よりにスタンスをとり、結果的にキャスティングボードを握る位置にポジションをとっている。宋氏を支持しない人も彼の実力は、認めているようだ。むしろその実力ゆえに、恐れられていうふしがある。彼がリーダーになると統一をしてしまうのではないかという不安がぬぐいきれない。極端な想定ケースではあるが、宋楚瑜が総統になった場合、大陸中国が宋楚瑜に合併中国のリーダー(といっても名誉上のもの)のポジションを提供することを条件に、合併(国共合作)を申し出たら、受けてしまいそうな気がしないではない。

○ 今後の多数派工作の次に注目したいのは、国民党の財産の扱いである。国民党は、世界一の金持ち政党であり、コングロマリットともいえる国民党系の企業群をもっている。これは、一党独裁当時に築いた資産であり、民主主義社会の一政党が持っていていいのかという議論が常に起こりうる。その資産の社会的存在が余りに大きいので、誰が語るにしても慎重な言動になっている。しかし、国民党が第一党でなくなった為に、この国民党の資産に対する、政治的な駆け引きが起こりそうである。

12月31日
2001年の死語
○ 年末にかけて、2001年の流行語の総括が各メディアでされていた。ここでは、ちょっとひねくれてみて、2001年の死語に就いて書いてみたい。もちろん、「流行語化」の時期は特定できるが、「死語化」の時期は特定できない。ここは、その視点の新しさに免じて、死語化の時期が本当に2001年だったかどうか、厳密に追求するのは、おいておいて欲しい。いいでは、ないですか、おもしろければ。

○ ネットサーフィン
最近、ネットサーフィンという言葉を言わなくなったし、実際にも、漫然とリンクをたどって、ウェブサイトを逍遥するなどということをしなくなったと思う。ショッピングという明確な目的があれば、ショッピングサイトを漁り、レストランを探すなら、グルメサイトを探す。調べたいことがあれば、サーチエンジンで探す。何がしかの特定の目的の為に、サイトを見ることは、ごく普通に行うようになったが、逆に、インターネット普及の初期のようにサイトを見るために見るともいうべき、サイトを見ること自体を目的とした時間を使わなくなった。インターネットは、手段として定着したが、それ自体が目的としては、存在しなくなった。それだけインターネットが身近に且つ、生活に入り込んだという証しであろう。更に言うと、ウェブ(あるいはサイト)は、テレビのような受身のメディアではなくて、利用者に積極性を要求するメディアであることがはっきりしたと言うべきだろう。

○ ポータル
「ポータルサイトを目指します」という、ビジネスプランを見かけなくなった。昨年ITバブルが崩壊した後も、ポータルを目指すという、インターネット系ヴェンチャー企業を見かけたが、最近は、とんと、そういう話を聞かなくなった。恐らく、YAHOOなどのごく一部のサイト以外は、ポータルで儲けることはできないことがはっきりしたからだと思う。ポータルで儲ける一番よくある方法は、アクセス数を増やし、そのアクセス数を武器に広告収入を得るものであるが、その広告収入を確保するのが至難であることがはっきりして来た。100万円の広告収入を得るのに、(アクセス数を増やす為)1000万円の広告費を支出するようなビジネスプランに投資家を含め世間が愛想をつかせたともいうべきだろう。先に述べたように、インターネットが漫然と逍遥する受身のメディアでないとすると、広告とは、とても相性の悪いメディアのようだ。(但し、ブロードバンドになっても同じかどうかは、分からない)

○ 保守と革新
小泉首相の登場で、政治の軸を「保守VS革新」の枠組みで語ることがなくなった。代わって、「改革VS抵抗勢力」になってしまった。従来の「保守VS革新」の枠組みでは、靖国参拝、テロ対策などでの論争や政治的な駆け引きが、とても理解不能になってしまう。もちろん、「保守」と言う言葉は、長い歴史を持つ用語で、多様な意味を持ち変化しつつも分析上の有用性を持ち続けてきた言葉なので、今回も、意味に若干の変更を加えて使い続けると思う。しかし、当座のところ「抵抗勢力」のことを「保守勢力」と呼ばず、且つ、呼び得ないことが、小泉改革の本質の一つを示している。

○ もう、台湾でも2002年がやってきてしまった。時間もきたので、マブダチとアベックでディスコに行って、フェーバーしてこようっと。

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