台湾日記  2004年2月〜
 
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2月28日
人間の鎖
○ 中国の台湾に向けたミサイル配備に反対して、人が手をつないだ「人間の鎖」を、台湾の南北に縦断させるキャンペーンが、今日28日、成功裏に無事行われた。参加者は、150万人とも220万人とも報道されている。長さは、約500km。台湾は、九州と同じくらいの大きさなので、九州縦断の人間の鎖だと思うとイメージしやすい。

○ 李登輝前総統が呼びかけ人として企画したもので、陳水扁総統も参加。今日は、李登輝氏と陳水扁氏が実際に手をつないで壇上に上がり、台湾の民主主義の発展と台湾海峡の平和を訴えた。中国との統一を積極的に進めることに賛成しない、台湾重視の本土派が支持したもので、与党民進党にとっては、来月20日に行われる総統選挙に向けた最重要キャンペーンである。

○ 野党国民党は、台湾の民族を超えた融和を訴え、聖火リレーを行った。こちらは、対抗上やらざるを得なかったといったところでしょう。

○ ところで、今日2月28日は、国民党政府が台湾住民を弾圧した事件「228事件」のあった記念日。228事件については、この僕のサイトでも台湾の歴史教科書の記述を紹介している。(ココ

○ 李登輝というのは、実にこういう課題の設定が上手いので感心してしまう。228事件の弾圧側であった国民党を相手にする総統選挙の20日前に、平和でほんわかしたやりかたで大動員をかける。なんとも巧妙である。また、高齢にかかわらず成功させてしまう実行力にも驚かされる。

○ ただ、支持者の間で、228人間の鎖キャンペーンの成功により達成感がでてしまい、3月20日の選挙や公民投票で、与党側が思うような結果にならないかもしれない。なにせ、今度の選挙は、全く分からない。台湾の人は、みんな、投票日前1週間の勝負だと言っている。


2月26日
これでもか!
○ 日本で商業演劇のプロデューサーをしている人に教えてもらった話である。最近、インターネットなどでよく情報が行き渡っており、売れそうな芝居は、そんなに広告をしなくても、あっという間に前売り券が売り切れてしまうという。

○ 反面、意外なヒットを取るのは、難しい。昔は、日本ではまだ少し早いかなと思ったものでもチャレンジすると何本かに一本は、当たっていた。しかし、最近では、ちょっと冒険だけど、やっちゃえと思って芝居にすると、まず、売れない。冒険が出来なくなってきた。

○ また、一つでも売れる要素を詰め込んでおけば、その芝居のチケットをさばけることがあった。世間でホットな話題になっているテーマとか、人気のある役者とか、アメリカで売れたとか、の要素の内一つあるだけでも売れたことがあった。

○ しかし、今は、オーソドックスに売れる要素を、これでもか!というほど詰め込んだ芝居を企画しなければ、売れなくなっている。芝居に関わる人間として、面白くないっちゃー面白くないが、プロとして連続して赤字を出すのは、なかなか許されないので仕方が無い。

○ 考えてみると、最近、日本で流行るものは、韓国のテレビドラマにしても、片山恭一にしても、そして、もしかすると銀行株も、実にオーソドックスに売れる要素を積み重ねたものである。

○ つまり、これは、芝居に限らず、最近の日本での、消費者の感覚とその心の掴み方を上手く伝えていると思う。大切なのは、これでもか!であり、面白くないっちゃー面白くないが、我々は、プロなのである。


2月25日
らくちん人生訓2
期待しすぎず、あきらめず、


2月24日
国会の質疑
●  昨日(ココ)は、台湾への日本政府の対応について、長島議員の国会での質疑の内容を引用したが、今日2月24日には、中津川議員(民主党)の質疑があった。(今日の最後にまた、全文引用しておきます。)国会での他の質疑と同様、野次などの言葉に品のよさを感じないが、台湾に関心が高まるのは、結構なことだと思う。

○ 昨日分でも書いたとおり、議事録を読んでつくづく思うのだが、この質疑形式というのは、質問するほうも、答えるほうも、筋立てて話すのが難しいものだ。川口外相も、いかにも「誠心誠意のらりくらり答えている」姿が醜悪ですらあるが、誰が同じ立場になっても、そうせざるを得ないと思う。因みに、のらりくらりと対応することを、中国語では、皮肉を込めて「太極拳をする。」ということがある。「客の前で、太極拳でもするか。」と使う。手や足をゆっくり前に出したり引っ込めたりという動作が、その雰囲気をよく表わしている。

○ この二回の国会の質疑で問題になったのは、台湾の公民投票について、日本政府が台湾当局に対して危惧を表明したことがよかったかどうかである。僕は、小泉政権の外交を、大枠で賛成しているし、恥ずかしながら川口外相をそれほど嫌いではないが、どうも今回のこの台湾への日本政府の対応は、まずかったように思う。今回は、都合よく、勝手に質問し批判する側にたって、いくつか思いつくことを並べてみよう。

● まず、第一に、日本政府を批判する立場になるなら、一度、公民投票の内容を、パネルにかかげて読み上げてみればどうだろう。

質問1)「台湾人民は、台湾海峡問題の平和的解決の立場を堅持しています。もし中共が台湾に照準を合わせたミサイルを撤去せず、台湾に対する武力使用を放棄しない場合、あなたは政府がミサイル防衛設備を追加購入し、台湾が自主防衛能力を強化することに賛成しますか反対しますか」

質問2)「あなたは、政府が中共と交渉を進め、台湾海峡両岸の平和と安定のための相互連動の構造を確立し、両岸のコンセンサスと人民の福祉を追求することに賛成しますか反対しますか」

○ 日本政府は、日本が中台関係の現状維持を望む立場から、この公民投票が現状変更的だとして、台湾に懸念を伝えた。しかし、この公民投票の内容と、中国政府の公式見解である、「中台統一の為には武力行使を否定しない」という文言をパネルに掲げ、並べ比べてみるとどうだろう。どちらが現状維持的で、どちらが現状変更的なのかと外務大臣に聞いてみるのがいいように思う。以上、第一点は、文言からみた理論上の正当性に関する日本政府への批判である。

● 次に思うのは、この公民投票の最大の問題点であり、多くの台湾人がこの投票に賛成しかねている最大の理由は、現状変更的であることではなくて、むしろ、「必要性が無くて意味が無い」ことである。この点において、公民投票の実施は、台湾の民意の支持を十分得ているとは言い難く、陳水扁の今回の政治的賭けは、実は、それほど成功していないようにみえる。

○ そもそも、中台関係において最も重要な要因は、台湾人の民意である。また、その台湾人の民意の動向は、日本の国益にも大きく影響する。たとえ、日本政府が何らかの必要で、公民投票に賛成しない意思表示をするにしても、この台湾人の民意にある程度共感を得られる形で、行うべきではなかったか。例えば、「意味が無い国民投票を多用することは、民主主義の定着の為にはプラスにならない。」とだけシンプルに語っていたほうが、まだましだったように思う。(中国政府が台湾に対して行う批判にしても、こういう批判の方が、台湾の民意に訴えやすかったと思う。)以上、第二点は、台湾の世論を見据え、現実的な面からみた批判である。

● 第三に、長島議員も指摘しているように、日本政府が台湾にこういうやりかたでとやかく干渉がましく言うのが、適切だったかと思う。台湾人の多くは、「公民投票は、意味が無くて、する必要がないと思う。しかし、アメリカやフランスや日本に、やるなと言われると腹が立つ。干渉されるのは、いやだ。」と思っている。(中国政府の立場にたってみても、アメリカに頼み込んで反対の発言を取り付けたりする必要などなかったのではないか。中国政府にとって、建前上、台湾は、中国の一部なのだから、「氾濫分子の内ゲバの一形態であり、外国が干渉しとやかくいうことではない。」と打ち捨てておいた方が、外交資源を無駄に浪費しなくてよかったのではないかと思う。)以上、第三点は、干渉ではないかという手続き面からの批判である。

● 第四に、日本政府の対応は、最悪のタイミングでは、なかったか。アメリカが公民投票に反対を表明してから、いそいそ、のこのこ、「日本も同じ意見です」というのは、なんとも稚拙であった。中国政府内では、「ほらみろ、日本のことなんか無視してアメリカだけを見ていればいいんだ。どうせ日本は、アメリカについてくる。」と再確認したのではないだろうか。こういうのは、中国政府内で日本を重視してくれる、親日的な人達の立場をかえって悪くすると思う。同じ反対するなら、アメリカがする前にした方が、余程ましだった。また、あのタイミングでするなら、最後までノーコメントを続けたほうが、日中関係にもプラスだった。中国の唐家セン国務委員は2月17日に、台湾問題について「日本の姿勢は米国やフランスに比べてあいまいで、台湾に誤ったシグナルを送っている。独立反対のシグナルを送ってほしい」と求め、日本の台湾政策に不満を表明したそうである。ほらほらいわんこっちゃない。同じことを言っても後から言うと全然駄目なのだ。中国にもちっとも評価されていない。つまり、第四点は、タイミングの面からの批判である。

● 以上、理論面、現実面、手続き面、タイミングの面の4点から、日本政府の対応は、日本の国益の為にならなかったと、批判することは可能ではないかと思う。注意して欲しいのだが、とにかく共産党政権が好きか嫌いかといったイデオロギー論や、何が正しいかどうかという正義論、中国が怒るかどうかという日中友好第一論で議論して欲しくない。そんな議論なら、旧社会党がよくやっていた。新しい民主党が、政権担当能力を示しつつ、政府の政策を批判するなら、日本の国益の視点から議論し批判して欲しいと思う。

● ところで、余談だが、中国の立場にたった場合でも、公民投票の実施をあからさまに批判するよりも、無視し続けた方が良かったのではないかと思う。陳水扁にとっては、今回の公民投票について、中国に無視され続けるのが一番怖い。中国に無視され続けると、陳水扁は、中国の関心を引く為に、投票の内容をどんどん独立色の強い過激なものにしていっただろう。そして、投票内容が過激になった結果、十分「現状変更的」になり、陳水扁が後退できなくなった頃を狙って、一気に、アメリカや日本や、そして台湾の世論に「陳水扁は、現状変更的だ」と批判したほうが、中国政府の目的のためにも成果が大きかったと思う。ケ小平なら、これくらいのことをやってのけたのではないだろうか。

==中津川氏の質疑応答の引用==
平成16年2月24日、衆議院予算委員会において、11:15より中津川博郷議員(民主党)が台湾に関する質問を行った。全文は下記の通り。なお、口頭での質疑のため、わかりにくい箇所は適宜注釈を( )で挿入していることをご留意いただきたい。(筆記:金美齢事務所 早川友久)

 中津川博郷議員(以下、中津川と略す)
「民主党の中津川でございます。実はですね、昨年の12月23日、田中均外務審議官が中国政府外交部の李外交部長と会談した際、日本は「一つの中国」の立場を堅持して、「二つの中国」や「一台一中」に反対しました。
それを汲んでと言いますか、城之内秀久外務省中国課長(筆記者注:城之内ではなく堀之内の誤り)が台湾当局へ申し入れを出すよう、交流協会の台北事務所へ指令を出して、29日に申し入れがなされた、と台湾で報道されています。これは事実ですか?大臣」

川口順子外務大臣(以下、川口と略す)
「田中外務審議官が、そういう態度を表明したと言うことは事実です。それから12月29日に交流協会の台北事務所長が、台湾側に対して申し入れをしたということでございますけれども、この指示を出したのは中国課長ではなく、日本政府として指示を出したということでございます。ちなみに中国課長は堀之内と申します。」

 中津川
 「大臣、これ閣議決定したんですか?」

 川口
 「これは外交の案件ということで、政府としての決定を“決裁”を通じてやっております」

 中津川
「これは後でまた質問しますけれども、“総統府”というのは日本で言う“政府”のことですよね。大変に重いんですよ。それで先般、同僚の長島議員が質問しました。“内政干渉・選挙干渉”ではないかと。このこと自体問題になるんですが、 ― 今、田中審議官の件は事実を認めましたね ― なぜ、この申しれをしたのか、その意図を簡潔にお答え下さい。」

 川口
「まず、田中審議官が申し入れた立場、これは何も新しいことではなくて、わが国が台湾と中国との関係についてはずっと言ってきていることでございます。例えば、言った内容でございますけれども、「一つの中国、一つの台湾」「2つの中国」という立場はとらない、「台湾の独立を支持しない」、わが国としては台湾を巡る問題が平和的に解決されること、そのための対話が早期に再開されることを希望している。中国の武力行使には反対である、ということを言ったわけでございます。例えば、一語一句の文言がすっかり同じと言うわけではございませんけれども、前にさかのぼりますと97年に橋本総理(当時)が、中国で演説をした折に、日本は台湾独立を支持していないというようなことを言っておりまして、基本的に同じ立場を繰り返したということでございます。」

 中津川
「要するに現状変更をしてはいけないということですね。確認ですが、“現状変更”とう言葉が良く使われますね。これをしない、そういう意図でこれ(12月29日の申し入れ)を出したということでよろしいんですか。」

 川口
 「現状を変更しないということではなくて、わが国の台湾と中国に関する基本的な立場、これを述べたまでであって、これは日中共同声明に従って、台湾とわが国の関係は非政府間の実務的な関係を維持していくことでございます。田中外務省審議官の先ほど申しました発言、あるいは橋本元総理の当時の発言、それらはそういった立場に則って行われているということでございます。」

 中津川
 「12月9日に、中国の温家宝首相が訪米した際にですね、ブッシュ大統領が“中台いずれの側であろうと、現状を変更することに繋がるいかなる一方的動きについて反対する”と、このように発言しましたね。それで、現状を変更する恐れがあるというか、そういう意味での台湾の国民投票を支持しないという意向を伝えたとされています。そこで(日本国)外務省はすぐ反応して、だからわが国もアメリカと同一歩調をとっているんだと、だからこそ29日に申し入れをしたんだと、私はそのように理解しています。だけど、ブッシュ発言のうち、あとでライス補佐官がフォローしているんですよ。“我々は中国側に対し、もし中国が台湾に、軍事力あるいは威圧を加えようとするならば出動する”“台湾を守る”と、言っているんです。日本・アメリカ・台湾、これは大事なラインです。(ブッシュ)大統領もこの発言の際、中国側に“武力行使などの現状変更は許さない”これも明言しているんですよ、私が調べてみたら。(日本の発言は)アメリカに乗っかって、一方的に中国サイドに立った発言ではないかな、と懸念しております。ブッシュ大統領は、中台双方に現状維持を求めているわけですよ。だから、台湾に対してものを言うと同時に、きっちりと中国に釘を刺しているわけですよ。それを何ですか外務省の態度は。中国政府に対しては何にも言わずに、台湾に対しては内政干渉・選挙干渉ともとられかねない申し入れをする。日本の外交は志が低いね〜、そうとしか思えないよ。いかがですか。」

 川口
「まず、わが国のこういった申し入れ、これは米国がやったからとか、中国に頼まれたからという訳ではなくて、わが国のこの地域の平和と安定に関する考え方から主体的に行ったというのが第1点です。それから第2点。“台湾だけに言って、中国に言っていない”、これは全く事実に反することでありまして、例えば先般、逢沢外務副大臣が中国に行かれましたけれども、そういった折にも中国に自制を求めるということをやっていただいております。」

 中津川
 「今、しっかり聞きましたよ。中国はですね、496基のミサイルを配備しているんですね。聞くところによると、年間50〜70基のミサイルを増強していると、これは“現状変更”ではないですか。私はそう認識しますね。中国政府がいくら台湾にミサイルを向けても問題がない(ということですか?)これはきっちり言うんですね。今、川口大臣は具体的なことは言いませんでしたけれども、逢沢大臣が“きっちり言ってきた”と言いました。どんどんミサイルを増やしていることを中国に対してもちゃんと警告するんですね、大臣。」

 川口
 「先ほど申しましたように、中国に対しても“武力行使は反対である”ときちんと日本は言ってきているわけであります。先ほど、田中外務審議官の発言を紹介いたしましたけれども、その時にもそのことは申し上げております。ですから、台湾に言うと同時に、中国にもきちんと伝えているということでございます。」

 中津川
 「ホントかな〜と思いますね。じゃあちょっと突っ込んだ質問しますよ。(12月29日の申し入れ文書を手に取りながら)このペーパーですね、外務省アジア大洋州局中国課というところで出しているんですがね、すごく気になるところがある。台湾総統という表記の際に、なぜ“総統”の部分をいちいち「 」(カギ括弧)で括るの?このことは、これに始まったことじゃないんですよ。どうしてですか?」

 川口
「これは(中津川)委員が“これに始まったことではない”とおっしゃいましたけれども、まず、わが国の台湾に対する基本的な立場というのは、日中共同声明に従って台湾との関係は非政府間の実務的な関係として取り扱っていくということでございます。台湾を国として扱ったり、その当局を政府として扱ったりすることはないわけでございます。従いまして、わが国の政府の基本的な関連文書における関連表記は、わが国の基本的な立場を踏まえてやっているということでございます。そういうわけでございますので、この立場を踏まえまして、『外交青書』など、わが国の政府の立場を正式に示す文書では、わが国が台湾を“国として扱っている”という誤解を招かないために必要に応じて「 」をつけて表記をしているということでございます。」

中津川
「じゃあ大臣、北朝鮮はどうなんですか?国交がありませんよね?金正日総書記に「」をつけて表現していますか?」

(野次が飛ぶ「答えてよ!」「時間がないんだぞ!」「なんで答えられないんだ!」)

(委員長が外務大臣を促す)

川口
「仰るように、北朝鮮には「 」をつけていないようでございます。それは何故かということでございますが、― 色々な考え方があるかと思いますが ― わが国は、台湾については従来、国として扱っていたという経緯があるわけでして、国として扱っていたものを1972年の日中共同声明に従って“国ではありません、地域であります”ということを明確に表明したという観点で、誤解がないように「 」をつけたということです。そうした事情の変化があった、ということを明確に示すために「 」をつけて表しているということであろうかと思います。」

中津川
「失礼ですねー。民主化が進んでいるんですよ。台湾の国民が選んだんじゃないですか。「 」なんかつけるのは“自称総統のあなたは”ということすよ、実に失礼ですねー。この質問をするにあたって、私が調べてみたら、「 」つきで台湾の関連表記をしているのは中国しかないんですよ。おかしいですよ!おかしい!台湾という国はわが国と同じく海洋国家なんだよ。歴史文化でも多くの共通点があって、国交こそないけれど本当に親日家ですよ。わが国の国会議員も与野党問わず、毎年数百人が台湾に行っているんですよ。そして例外なく、台湾の民主化を評価して、台湾人の親日感情に感激して帰ってくる。こういう台湾の本当に素晴らしい人たちが沢山いる。彼らがなぜそれほどまでに親日なのかというのは色々な理由があるかと思いますが、私は、彼らの原点「武士道」の精神だと思っています。ここに、李登輝前総統の『武士道 解題』があります。私も感動して後ろに書評を書かせてもらっているんですが、やっぱり“強いものを恐れず、弱いものをいたわる”という精神が、日本人の武士道精神なんですよ。こういうものがあるから、やっぱりそれだけ日本に親しくしてくれているんじゃないんですか。

今までの一連の流れ、大臣が色々と言いましたけれども、これは武士道精神に反しますよ。弱者に威張って、強者に媚びる、あっちばかり見ているじゃないですか。今、「ラストサムライ」というのが流行っています。私が行きましたらね、ピアスとか髪がとんがったりしている若い今流のおねーちゃん・おにーちゃんたちがね、本当に感激して涙しているんですよ。日本もまだまだ捨てたもんじゃないなと思いますよ。国家も日本人も、もう一度武士道精神に戻るべきだと私は思います。

大臣、もう答えなくていいですから、“台湾のことは台湾に任せましょうよ!台湾の人が決めて、中国ともよく話し合いをして台湾人自らに決めてもらいましょうよ!”こんな「 」をつけてバカにしたようなことをして、いくら大臣が(先ほどのような)説明したところで台湾の人たちはそういうふうに思いません!お答えにならずとも結構です。議論は後でゆっくりしたいと思います。」
==引用終わり==


2月23日
第二回テレビ討論など
○ 総統候補による第二回テレビ討論が、21日、2時間半にわたって行われた。連戦氏は、公民投票に投票しないと明言。また、兵役の期間を3ヶ月に短縮すべきとした。この他、「一つの中国」の考え方、人種的なアイデンティなどが話題になった。陳氏は、呉淑珍夫人の株投資について不適切だったと陳謝した。中国時報によると、視聴率は19.5%。陳氏の方がよかったと評価した人は37%、連氏は27%。直後の支持率は、大きな変動はなく、陳呂ペアが37%、連宋ペアが42%だった。

○ ところで、日本では、長島昭久議員が2月20日に予算委員会で質問した。質疑の内容については、溜池通信の2月21日分に全文が載っている。日本の国会で台湾のことが真剣に議論されるだけも、日本の為にも台湾の為にも、そして、中国の為にもいいことだと思う。

○ 国会での質疑なんて、あんまり熱心に聞いたこともないし読んだこともないが、台湾のテレビ討論と日本の国会での質疑応答を見ていると、質問と対話形式で自分の意見を主張するのは、難しいものだと思う。明日は、この質疑応答を読んでの、幾つかの素人意見を並べてみる。

○ そうそう、溜池通信の繰り返しになるが、やはり、この質疑応答は、このサイトでも掲載しておこう。以下は、その全文である。引用の後に僕のコメントはないので、既にこの質疑応答を読み終わっている方は、台湾日記をここで読み終えてください。

==引用開始==

 長島昭久議員(以下、長島と略す)
「民主党の長島昭久です。民主党安全保障部会を代表して質問をさせていただきます。

さて、今日は台湾の総統選挙公示日でございます。この台湾の総統選挙、あまり報道されておりませんけれども、わが国の安全保障にとっては大変重要な出来事であると言うのはご案内の通りであります。今日ちょうどですね、産経新聞に中嶋嶺雄さんが一考を投じておられます。

『今回の選挙は台湾の命運を左右する大きな意味を持っている。日本の国益にも関わる岐路になるかも知れない。台湾人の政党である民進党が勝つのか、中国人の政党である国民党が政権を奪還するのか、という選択だ。仮に民進党が敗北し、中国が期待する国民党・親民党政権が誕生すれば、李登輝前総統が12年間に渡って蓄積してきた台湾民主化と台湾人としてのアイデンティティ深化の路線が大きく揺らぐことになろう。そうなれば、近年ますます強大化しつつある中国が台湾を呑み込んでしまうことにもなりかねない。』と、こういう大変示唆に富むご指摘をされておられます。

煎じ詰めればですね、今回の台湾の総統選挙というのは、アジアにおける民主主義の真価というものを問う大変重要な試金石であると同時に、この事態を中国というこれから伸びていく、伸び盛りの大きな大国がどう扱っていくのか、どうやってそのような事態に対応していくのか、中国の対外姿勢の成熟度も示す試金石になると思います。中国大陸から来た人たちではなくて、いま台湾の人口を占めている8割の台湾人による、台湾人のための政権、台湾人の自由な意志に基づく政権作りをしていこうという、この今回の大変意義深い総統選挙。
96年で初めて李登輝政権が民主選挙を行いました。そして、2000年には日本もあまりやったことがない政権交代をしっかり実現をしたこの台湾。今回この台湾人の民進党政権がどうなるかということは、大変重要な、私ども日本にとっても重要だと思うんですね。

そして、この台湾の民主主義については、私ども日本人の多くが、心ひそかに応援をし、そしてその成熟振りに拍手を送ってきたと思います。
1972年、日中国交正常化の時に台湾と断交を致しまして、以来、非公式な関係に留まっておりましたけれども、その非公式ながら、文化やあるいは経済の分野で日本と台湾は大きな交流を続けてまいりました。いまや、人の交流だけとっても年間200万という大変な交流がありますし、経済・貿易の総量で見ても、アメリカ・中国・韓国に次ぐ、日本の貿易相手国としては第4番目の相手国となっております。

こういう台湾で行われる今回の総統選挙、今回、陳水扁政権は総統選挙にあわせて、公民投票、わが国で言えば国民投票でありますが、公民投票をやろうという、こういう発表を致しました。ところがですね、この国民投票は中国から大変評判が悪い。アメリカもたしなめた経緯があります。再選を目指す陳総統がとった手段というのは、中国のミサイルの脅威 ― 中国は台湾に向けて496基のミサイルを射程におさめている。この脅威はもう尋常な脅威ではありませんね。私どもも明治の時代にあのロシアの南下政策で相当な脅威を被った歴史的経緯があります。こういう強大な国がまさに両岸を挟んで存在するということ、そしてそういう中でギリギリの立場で選挙をやる。そういう中で、ミサイルの脅威に対して台湾はどうしたらいいでしょうかという公民投票を陳水扁政権がやろうということ、これに対してですね、日本の外務省は「待った」をかけましたね。なぜでしょうか。」

川口順子外務大臣(以下、川口と略す)
「台湾についてのことでございますが、まず、そもそも台湾に対するわが国の立場ですけれども、これは日中共同声明にある通りでございまして、「2つの中国」とか「一中一台」と言われる立場はとっていないわけでございます。台湾の独立も支持をいたしておりません。わが国としては、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いを通じて、平和的に解決をされること、そのための対話が早期に再開をされるということを望んでおるわけでございます。それで、先生が「待ったをかけた」というふうに仰られましたけれども、わが国としてはこの公民投票の実施を含む台湾の動向につきまして、台湾海峡及び地域の平和と安定の観点から、わが国としては関心を持って注視をしているところでございまして、昨年の末に慎重な対処を希望するということを台湾側に申し入れたということでございます。」

 長島
「それは外務省が申し入れたということですか。日本国の外務省が申し入れたということでしょうか。」

 川口
「これは、日本政府として、相談をした上で、具体的に申し入れた人間というのは、交流協会の所長が申し入れたということでございます。」

 長島
「申し入れの内容についてもう少し詳しく説明していただけませんか」

 川口
「これはまず大きく言って2点ございますけれども、最初に、台湾に対するわが国政府の立場は、日中共同声明にある通りであり、わが国としては台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いを通じて平和的に解決されること、そのための対話が早期に再開されることを強く期待している、ということです、これが1点目です。
2点目ですけれども、しかし、最近の陳水扁総統による公民投票の実施や新憲法制定等の発言は、中台関係を徒に緊張させる結果となっており、わが国としては台湾海峡及びこの地域の平和と安定の観点から憂慮している。わが国としては、現在の状況が今後さらに悪化することは回避する必要があると考えており、陳総統が就任演説で行った「4つのノー、1つのナッシング」を遵守され、この地域の平和と安定の為、慎重に対処していただくことを希望する、とそういうことでございます」

 長島
「重要な問題が2つありますね。正式な国交の無い日本と台湾であります。この大不幸な歴史がありました。にも関わらず、日本政府が外交チャンネルを通じて、台湾に向かって“ああだこうだ”と言うというのは、これは公式のチャンネルではないのでしょうか。」

 川口
「交流協会の所長、つまり台北事務所長から申し入れたというふうに先ほど申しましたけれども、交流協会というのは日台間の交流を円滑に進めていく為の民間ベースの実務処理機構ということで、台湾の各方面との間で協議・交渉を行っているということでございまして、このこと自体、これは日中共同声明に反するものでもなければ、こういったことを行うということについては問題はないと思います。」

 長島
「本当に問題ないですか。台湾のどなたに交流協会の所長から、 ― 私手元に持っていますよ― わが国政府の立場を伝達したのですか。文化交流や経済交流なら問題ないんです。極めて政治的な、高度な政治性のあるものについて、外務省はわが国政府の立場を交流協会の所長を通じて、台湾のどなたに伝えましたか。」

 川口
「この相手方でございますけれども、邱義仁総統府秘書長であります。」

 長島
「台湾の場合はちょっと名称がわかりにくいのですが、秘書長というのは、日本に例えていえば官房長官であります。これは立派な公式チャンネルではないでしょうか。公式チャンネルの行使をしたということをお認めになりますか」
「もう一言申し上げましょう。交流協会のカウンターパートは、本来、台湾の亜東協会ではないですか。カウンターパートである亜東協会に言えば済むことではないですか。それを飛び越してわざわざ相手様の官房長官をやっているような方に申し入れをした。これ、全然問題ありませんか。」

 川口
「交流協会は日台間の交流を円滑に進めていくというための組織でございまして、今回、交流協会が行ったようなルートでこういう種類の話をするということは問題があるとは考えておりません。」

 長島
「これは問題大ありですよ。中国だって戸惑っているんですよ。中国はですね、申し入れをした次の日に「よくやった」とうような外務省のコメントを出しているんですね。しかしその後、「待てよ?」と。これは公式のチャンネルを使ってやっていることではないかということで、中国もかなり戸惑っているそうなのですが、全く問題ないと本当にお考えですか。72年に断交してから、こういった政治的な問題に、日本国政府の意思をこういう形で伝達した前例はありますか」

 川口
「中国の反応でございますけれども、唐家セン国務委員・王毅外交部副部長はじめ、中国政府からは“日本政府の態度表明を評価する”という反応が出ております。そして、この交流協会から申し入れたということ自体は、日中共同声明との関係でこれに反するものではないと考えております。
それから、こういうような問題について今まで申し入れたことがあるかということでございますけれども、何をもって「政治的な問題か」ということにもよりますが、例えばこれまでも交流協会を通じまして漁業の問題、つまり排他的経済水域の問題ですね。そういうことについては、台湾側に対してわが国の立場を申し入れているということでございます。
ただ、他方で地域の平和と安定に関する問題、地域の平和と安定という観点から日本の立場について、台湾側に申し入れたというのは今回初めてであります。」

 長島
「そうなんですよ。これは政治的には大変高度な問題なんですよ。しかもね、この公民投票というのは総統選挙と一緒にやるんですよ。これはあからさまな選挙干渉じゃないですか。内政干渉と同時に、選挙干渉に当たるんですよ。そういう効果についてどれだけ政府の中で議論があったんでしょうか」

 川口
「まず、これにつきましては、台湾海峡および地域の平和と安定という観点から、わが国の主体的な判断に基づいて申し入れたわけですけれども、政府としての意思決定を行ったうえで行っています。」

(野次が飛ぶ)

 長島
「今、質問が後ろから飛んでおりますけれども、どういう形で政府の意思決定がなされたのか、ご説明下さい。閣議ですか。決定の責任者が誰か、あわせてお答え下さい。」

 川口
「これはきちんと官邸も含めて決済を頂いております」

(「影の外務大臣か!」の野次)

 長島
「この問題はギリギリ突っ込んで行ってもいいんですけれども、次の質問に行きましょう。
中台関係を徒に緊張させる結果となったというんですね、この公民投票の実施や新憲法の制定といった発言が。中台関係を徒に緊張させるってどういうことですか、具体的に説明して下さい。」

 川口
「96年の選挙のときのことを思い起こしていただきますと、この時は米国が空母を派遣し、そして中国が様々な行動をとったというような事態があったわけでございます。こういった台湾海峡および地域の平和と安定に関しての、その観点から注視をしているというのはわが国だけではありませんで、例えば米国につきましても、それからフランスにつきましても、それぞれこういうような主旨の意見の表明ということをやっております。」

 長島
「今、アメリカとフランスもやっているから日本もやるんだというお話がありましたけれども、フランスはほとんどこの地域に対して関心ありませんから問題外だと思いますけれども、アメリカはですね、外務大臣ご存知のように、一旦緩急あれば(つまり)中国が武力行使に出てくるような事態になれば、最後まで責任をとるというような台湾関係法があるんですよ。

独立は許さないといいながら、もし中国側が武力行使をしてきた場合には、アメリカは飛んでいって助けると、ブッシュ大統領も温家宝首相が行かれたときに、例の、今回は現状を変更することになりかねないから慎んだほうがいいと発言した、その同じ文脈で、もし中国が武力行使に出るようだったら、“we will be there”って言ったんですよ。我々はそこに駆けつけるだろうという、そういう言い方をしているんですよ。アメリカは最後まで責任をとる覚悟と能力があって介入しているんですよ。日本は空手じゃないですか。

しかも、96年の話を前例として引かれましたけれども、96年の時だってわが国は耐えがたきを耐え、偲びがたきを偲んで沈黙を破らなかったんですよ。今回、沈黙を破った緊急性、どこが96年当時あるいは2000年当時と状況が違うのか、今回どこに緊急性があったのか説明して下さい。」

 川口
「96年の時点でも同じようなことがあったわけでして、公民投票ですとか、新憲法制定の動きとか同じような動きがあったということでございます。それから、先ほどアメリカのケース、アメリカは最後に責任をとるつもりだからというふうに言われましたけれども、アメリカは何を言っているかと言いますと、これは中台いずれの側であろうと、現状を変更するいかなる一方的な動きについては反対である。台湾指導者による最近の言動は、現状の変更を一方的に決定しようとしている可能性を示すものであり、米国はこれに反対である。最後は(長島議員が)仰ったような形で、最終的に色々なことが出来るアメリカですら、こういうことを言っているわけでございます。わが国としては、台湾というのはわが国のすぐ近くに存在する“地域”であって、台湾海峡が平和安定であるということはわが国の平和と安定に密接な関係を持っている、非常に強い影響を持っているわけでございます。そのような観点でわが国としては申し入れたということでございます。」

 長島
「仰ることを伺っていると、アメリカが現状変更をすることは許さないと、だから慎んで欲しいという、その理由付けを外務大臣も正しいと思っておられるようなんですが、公民投票をやることがなぜ現状を変更することに繋がるんでしょうか。ご説明下さい。」

 川口
「96年の例を申し上げましたけれども、台湾海峡あるいはその地域の平和と安定と言っていますのは、今回起こったような様々な動き、あるいは前回起こったような様々な動き、ということの観点からしますと、まさに公民投票あるいは新憲法制定の動きということがもたらしうる“結果”、これを懸念しているということであります。」

 長島
「どういう結果ですか、はっきり言って下さい。これは国民もインターネットを通じて見ているんですから。どういう結果がもたらされるのか、明確にお答え下さい。」

 川口
「まさに先ほど申し上げました通り、96年に起こった、台湾海峡をめぐる緊張、そういうことを見れば、そういうことが再来をすることは望ましくないということであると思います。」

 長島
「私たちは民主主義の国に住んでいるわけですね。民主主義の要求というのはブレーキ利かないんですよ。公民投票をやるというのは、民進党結党以来の党の党是なんですよ。その民進党を台湾の人たちは選んだんですよ。したがって党是に基づいて、公民投票をやろう。
今回、公民投票の問題で、茶々を入れました外務省、これから永久にこういう問題になったら介入していくようになるんですか。積極的に。まぁ、それも一つの手ですよ、それも一つの道ですよ。

今回、大きな方向転換をしたんでしょうか。お答え下さい。」

 川口
「どういう状況で他国にものを申し入れていくか、これはその時その時の状況によって総合的に判断をしていく話であるというように考えております」

 長島
「もうこれは“ぬえ”のように逃げ回るだけなので・・・。
でも、この部屋におられる皆さん、あるいはインターネットを通じてこのやり取りをご覧になっている皆さんは、恐らく相当重要な問題が起こっているなということを感じていただいたと思うんですね。

はっきり申し上げて現状を変更しているのは、変更しようとしているのは、中国ですよ。496基のミサイルを毎年50基から70基増やしてきているのは中国ですよ。台湾の人たちがやっているということは民主主義をそのまま深化させていこう、公民投票もやろう、自分たちの憲法もつくってみよう、これは自然な発露じゃないですか。

日本は実力も能力も意思も無いのに、今回のような火遊びはやったらいけないんですよ。沈黙するというのもあるときには必要な外交手段だと思います。私たちにとって、中国にとっても、アメリカにとっても、日本にとっても、一番重要なことは、現状を維持することです。だからアメリカは曖昧政策をとっているんですね。どういうときに介入するか分からない。でも、最後の一線を越えたら我々は踏み込むかもしれないとこの現状維持というのは、今の中国と台湾との関係、先ほど私が申し上げました ― 中国がどんどんどんどん国際社会において大きくなっていく、経済も大きくなっていく、両岸の交流もある。どんどんどんどん、このまま何もしていかなかったら呑み込まれるトレンドなんですよ。海の上に小さな小舟を浮かべて、漕がなかったらどんどん潮の流れに流されて移動していくじゃないですか ― 台湾が今やろうとしていることはそういう現状維持を何とか維持し続けていく為に、たゆまぬ努力をしている。それを今回のまさに浅はかな、川口大臣が恐らく責任者だと思いますけれども、こういうことで、それを逆の方向へ振れようとしてしまったということ、是非責任を痛感していただきたいと思います。

==引用終わり==


2月22日
金原ひとみ「蛇にピアス」
○ すごい才能。驚いてしまって、こんな月並みな言葉しかでてきません。すごい。すごーい。

○ 芥川賞の一部の選者よりは、才能があるのではないでしょうか。登校拒否、肉体改造という際どい言葉で、この作者と作品は、メディアで伝えられるでしょう。しかし、この小説は、凡庸とみまがうほどに健全な創作姿勢と、月並みと言いたくなるほどに自然で必然的な表現によって作られています。それでいて、この小説でしか表現できない普遍的な何かを伝え、軽々と存在感を示してしまうのは、作者の才能と驚くほかありません。

○ 例えば、受賞インタヴューを見てみましょう。
―なぜ、自傷癖が出たんですか。
どうしてでしょう。中二から中三の頃、結構疲れていたんですよ。その頃付き合っている彼氏とうまくいかないとか、暴力を振るわれたりということもあって、そういう自分の状況に対してすごく切羽詰まっていて、手首を切ったりしていたのかもしれません。そうしてそういうことは、普段の生活の中ではなかなか言葉にして話せないことなので、小説を書くことによって、自分の気持ちを埋めたかったのかもしれません。(文藝春秋3月号)

○ よくもまあ臆面も無く!「普段の生活の中ではなかなか言葉にして話せないことなので、小説を書くことによって、自分の気持ちを埋めたかった」なんて、まるで、小説家講座の期末試験での、模範答案のようです。小説を書く動機としては、聞いているほうが恥ずかしくなるほど優等生的で、健全で、まっとうです。

○ 小説の題材と登校拒否という履歴を聞き、ルックスを見た最初の印象は、いかにも「いかれているコギャル」(<-これって死語?)ですが、 実は、小説を読む限りでは、まっとうすぎるくらい健全な精神をしているように感じられます。

○ と、ここまで書いてきて、突拍子もないことを思いついてしまいました。金原ひとみをニュースステーションなどでコメンテーターして起用したら面白いと思いますがどうでしょう。

○ 「見た目変わっている、でもよく聞くと、言っていることは、実は、まっとう過ぎるくらいまっとう」というのは、ニュースステーションの最初に久米の相手として、コメンテーターをしていた横山やすしと同じだと思います。

○ 聞くところによると、「蛇にピアス」は、実は、40歳代、50歳代のオジサンがよく買っているとのことです。確かに、おじさんとしては、彼女のようなこぎゃるみたいなのが、どう考えているのか興味がありますし、個々の社会のニュースについて、どうコメントするか聞いてみたい気もします。見た目や感じ方は、若い女性のままでも、 彼女の場合、ちゃんとオジサンに分かる日本語を話せそうです。それは、稀有の人材といえましょう。

○ そんなことをある立派な会社のエライさんとお話していると、文学賞などには興味のなさそうな真面目なその方も、金原ひとみには、好印象をお持ちでした。彼が、何気なしに見たテレビで金原ひとみが話している内容を聞いて「若いのに魅力的な女性だな。」と思ったそうです。あとから、芥川賞を受賞した作家と聞いて驚いたそうです。意外と10時、11時頃にニュースをみるおじさんに、受けるような気がします。この手のタイプは、久米みたいなのが料理すると上手くいくかもしれません。古舘じゃ、タイプとして、無理かとも思いますがどうでしょう。

○ まあ、でも、いい小説を一杯書いてもらった方が、世のためには、いいでしょうねえ。僕も、作家として活躍してくれることを願う方です。


2月19日
総統選、酒場の声
● 台湾の総統選に関して、酒場で聞いたコメントを紹介したい。尚、ほとんどが、テレビ討論の前に聞いたものである。

● (以前にもこのサイトで載せたことがある飲み屋のママ。02年12月16日、ココ
私は、今回は、国民党に決めたわよ。公民投票は、意味が分からない。お客さんもよく知っているように、私達中華系は、面子を重んじるのよ。それを知っていて、あんな中国の面子つぶすようなことして、いいことないじゃない。陳水扁さんは、今しかないと考えて、いまやれるだけのことをやろうとしているようにみえる。二期目は、もっと色々するかと思うとちょっと危なっかしいわね。前の選挙では、民進党を支持したけれどね、実際に民進党が政権とってやってみると、やっぱり、人材がいないわね。誰も経済が分からない。

○ 陳水扁は、真面目な人よ。女がいたなんていう噂もあったけれども、私は、信じないわ。あの娘の性格は、すごくキツイでしょう。あの家庭では、きっと女が強いのよ。浮気なんてできないわよ。

○ 呂副総統は、大嫌い。服のセンスも悪いしね。(らくちん注:確かに、野村サッチーを思わせるセンスではある。)外国の人に見られると恥ずかしいわ。呂さんはね、昔は、偉い人だったのよ。アメリカの大学まででて、頭も良かった。反政府運動して、刑務所で凄くつらい経験した。偉かったわ。でも歳とってからおかしくなった。わざわざ日本の下関(台湾の日本統治が決まった下関条約の地)にまで出かけて行って、台湾が日本の植民地になって良かったなんて言った。そんな馬鹿なことないよね。日本の統治でいいことも一杯あったと思うわよ。でも、偉い人が自分から出かけて行って、統治されて良かったなんていっちゃあ駄目よ。

○ 連戦のお金のことが問題になっているけれどね。あの人は、仕方ないのよ。元々お金持ちの家に生まれているんだもの。元々お金持ちの人に、あんたお金もっているから悪いなんて言っても仕方無いわよね。それを言うなら、陳水扁の方がむかつくよ。あの人は、本当に貧乏で苦労した人で偉いわよ。でも、最近は、「貧乏だった」、「貧乏だった」と繰り返し宣伝してきた訳でしょう。それなのに、息子は、ジャガー乗っているじゃない。あの人はずっと政治家だったんだから、本当は、他に収入源があるはずないしね。でも、今は、お金持ちになっているのよ。そのお金どこから来たのとも思うわね。

○ 外省人、本省人なんて、私は、気にしない。なかよく暮らしたいのよ。228事件なんて最近知ったわ。未だに、本当にそんなことあったの、と思っちゃうくらい。

○ 票の買収は、今は、無いと思うわ。昔は、みんなやっててね。相場まであったりしたんだけれども、今は、無理ね。国民党系の政治集会では、一人NTD300(900円)くらい払って来てもらっているらしいけれどね。それと、投票は、また別だろうからね。

● (別の飲み屋のママ)
私のお父さんは、民進党支持だった。でも、呂さん(現副総統)がどうしても嫌いで、次の選挙では、呂さんが副総統候補なら、もう民進党にいれないって言っていた。絶対いやんなんだって。でも、結局、呂さんが副総統候補になったでしょ。お父さんは、すごく悩んでた。結局、しかたないけど、民進党にしようかって言っているの。え、票の買収?昔はありました。でも、今はないと思う。いなかではあるのかなあ。やっぱりないだろうなあ。今は、マスコミが凄いから。

● (ある証券会社社員)
僕はね、実は、民進党支持なんですよ。内緒にしてくださいね。ご存知のように、金融関係は、外省人の力が強いのでね。会社では、国民党支持の顔をしています。今度の選挙は、分かりませんね。全く5分5分です。でも、強いて言えば、僕は、民進党が勝つと思います。多くの世論調査は、民進党不利にでていますが、概して言うと、国民党支持者は、ああいう調査に答えるが、民進党支持者は、あまり答えないんです。ですから、出た調査結果よりも5-10%、実際は、民進党支持者が多いんです。票の買収ですか?無いと思いますよ。そんなことして、マスメディアに見つかったら、大変ですからね。リスクが大きすぎます。国民党系は、集会の参加者の動員の為に、一人一回NTD300(約900円)くらいでているようですけれど。民進党は、お金がないからそんなことはできません。


2月18日
テレビ討論
○ 3月20日の台湾総統選挙に立候補する陳水扁総統と連戦候補のテレビ討論が、2月14日に行われました。討論は2時間半。最高視聴率は18.7%。TV討論について、陳水扁候補者の弁論の方がよかったと感じた視聴者が39.6%、連戦候補者は32.1%でした。しかし、TV討論終了後の支持率は、ほとんど変化なかったようです。このあたりが、難しいですね。第2回目の討論会は21日(土曜日)に行われます。

○ 取りあえず、陳呂ペアと連宋ペアの支持率の世論調査を挙げておきます。2月14日の調査は、どちらもテレビ討論後の調査です。

連合報の調査

1月5日 1月17日 1月30日 2月6日 2月13日 2月14日
陳呂ペア 38% 35% 37% 36% 37% 35%
連宋ペア 44% 42% 40% 40% 41% 41%
未決定 18% 23% 23% 24% 22% 24%

TVBSの調査

1月3日 1月16日 1月30日 2月6日 2月12日 2月14日
陳呂ペア 37% 33% 35% 35% 33% 37%
連宋ペア 48% 47% 47% 47% 44% 43%
未決定 16% 20% 18% 18% 23% 21%


○ 溜池通信でも、再び台湾総統選挙に関す詳しい解説がでています。
 本サイトでも、これまでも色々書いていますので御参照ください。
 台湾総統選挙2月2日公民投票(住民投票)1月28日台湾世論調査1月4日
 台湾の住民投票1月3日
 総統選挙12月6日総統選挙世論調査10月25日
 次回は、総統選に関する飲み屋で聞いた街の声です。


2月17日
よしながふみ「愛すべき娘たち」
○ とても理知的な漫画です。構成が実にしっかりしています。僕は、それを好もしく思いましたが、作者の組み立ての論理が垣間見え、鼻につく読者もいるのではないかと思うほどです。時にストーリーが崩壊してしまうこともありながら、感覚的な描写でひきつける岡崎京子と対照的でした。台詞の無いこまの使い方などは絶品で、安心できるしっかりした技術に支えられて、表玄関から入りこんで深いところで心に触れてきます。

○ 色々な大人の女性の生き方、恋、家族がなぞられています。僕は、決して普通の読み方でないことを自覚しながらも、読み終わった後、全編から「母と娘の関係」について考えさせられました。僕は、河合隼雄の受け売りで、日本や東南アジアの母性の果たす役割の強い社会での、母娘結合の強さを意識していました。しかし、最近、母と娘との関係の強い結合だけではない、淡白で、冷たく、さくい面を聞き知ることがあり、自分の長年の感覚を組み直していました。そういうときに、すぽんとこの漫画に出会ったので、そういう風にしか読めなったのかもしれません。

○ 作品から離れ、とりとめ無く話を拡散させるのを許しください。この漫画を読んだ後、再婚したばかりの少し年下の男の人と個人的な話をすることがありました。僕が、この「愛すべき娘たち」という漫画の話をすると、彼が曰く、最近人に言えず驚いたことがあるといいます。こんな話です。

○ 離婚した相手の女性は、実母との関係が余り良くなく、自分との夫婦関係が上手くいかないときでも、決して実家に戻らなかった。こちらとしては、精神的に不安定なのが分かっているので、いっそ実家にでも戻ってもらったほうが安心できる。しかし、行方が分からなくなったり、一人で引きこもったりしてしまって、決して実家に帰らないので大変心配もし辛かった。

○ この女性と離婚して何年か経ちようやく心の傷も癒え、最近再婚した。今度の結婚相手は、表面上は、実母との関係は普通で、実母もよく連絡してくる。しかし、しばらく一緒に暮らして気付いたのだが、どうやらその女性本人は、実母のことをよく思っていないらしい。決定的にそれを感じたのは、自分が出張で数日不在のときに、寂しいとかなんとかといいながら、そう遠くない実家に帰ろうとしなかったときである。思い起こせば、実家とは、よく電話しているようで、本人からは、ほんのたまに実務的な連絡しかしておらず、そこそこ訪問しているようだが、ほとんどが自分と同行したときだけである。そればかりか、そう思ってみると、彼女が実母に対する態度は、どこかさめて冷たいところがある。

○ 再婚したばかりの男にとって、離婚した女性と再婚した女性の共通点に気付くこと程、自分への嫌悪感をもよおすものはありません。と、彼は、話を結んだ。


2月16日
台湾人のアドバイス
(50歳代の台湾人。女性。本省人。北朝鮮の日本人拉致事件について)
とにかく、どんな手を使ってでもすぐにとり返してきなさい。とり返した後は、一切付き合わないこと。取引とか交渉なんて絶対あてにしちゃだめよ。あの手の政権は、全くどうしようもないんだから。そんなこと、私たちは、ようく知っているんだから。


2月14日
情人節
○ 今日は、バレンタインデー。こちらでは、「情人節」と書く、恋人の日である。らくちんは、長く縁がなくなってしまったが、遠い記憶をたどれば、確か、日本では、女の人が男の人にチョコレートを贈る日では、なかったか。

○ 台湾では、男の人が女の人に花束を贈る日である。いや、なにせこちらのカップルは、男が女によくつくす。今日は、西洋の情人節で、彼氏から彼女に花束を贈る。また、旧暦の7月7日は、中国の「情人節」ということで、また、男から女に贈り物をする。こんな調子だとどんなイベントでも、イベントがある毎に、結局、男が女に何かすることになるのだろう。普段は、バイクで送り迎えをするし、なんともマメなのだ。

○ 先日、台湾の男女の前で、「2月14日に男から女にプレゼントするなら、一体、3月14日のホワイトデーは、どうするのか」と聞いてみたが、みんなきょとんとしている。男達は、僕に向かって、また日本人がこれ以上余計なことを言わんでくれという顔をしていた。


2月13日
読点のとき、
○ モーニング娘。は、句点だったけれども、今は、何故か、「 、」の読点が目立つように思う。それは、僕だけの奇妙な感覚だろうか。思えば、モーニング娘。の句点には、バブル崩壊後のもやもやした事態を、「 。」によって、すっぱりとケリをつけようという気合がこもっていたように思う。

○ 今は、ケリをつけるというよりも、ローンの返済にしても、今勤めている会社にしても、なんとか続けられるといいがなあ、自衛隊の安全も、年金にしても財政赤字にしても、こんなことをしていて継続できるのかなあ、大丈夫かなあ、でもなんとか続けられるといいなあ、といった気分が強くて、逆に、ケリをつけたくなくなっているでは、ないだろうか。終わりを明確にせずになんとか継続させようという意思に、淡い希望を感じる時代なのかもしれない。

○ また、見方によっては、今の状態を継続しようという意思ではなくて、今そこにある現実が良からぬ場合でも、その現実をあるがままに受け入れ、前提として動いていこうという意志にも感じられる。北朝鮮との関係も、イラクの復興も、日本経済の低成長にしても、そう慌てて結論を出そうとせずに、辛抱強く粘り強く継続するのがいいようにも思える。それが時代の気分ではないだろうか。

○ そういえば、かんべいさんも、今年のキーワードは、「持続可能性」Sustainabilityだとおっしゃっていた。やはり、今は、句点よりも、読点のとき、なのではないだろうか。読点は、継続の意思と願いを表しているように思えてならない。


2月11日
商いの話:集中ととびとび
「戦略」とか「選択と集中」とかとおっしゃいますが、いい商売ってやつは、時間においても、場所においても、分野においても、とびとびにあるものですぜ。旦那。


2月10日
博打の必勝法
○ 博打の必勝法がある。例えば、サイコロで偶数がでるか奇数がでるかに賭け、当たれば2倍もらえ、はずれると、掛け金が戻って来ない、シンプルな博打だとする。

○ 必勝法は、簡単。10円賭けて負けたとき、次の博打で、11円賭ける。それでも負けたときは、22円賭ける。つまり、一回勝てば、これまでの負けを取り返し少し余りが出るだけの金額を賭け続ければ、いずれは、勝つ。これは、自分の資産が無限にあるというありえない前提のもとだ言われるかもしれない。しかし、無限というのが有り得ないとしても、大数の法則が働くだけの回数のトライをできるのに十分な自分の資産があれば、成り立つ話ではある。

○ 博打に必ず負ける方法がある。今度は、一回目で全財産を賭ける。一回目に勝った場合、勝って得たお金を含めて全財産を、次回、全部賭ける。これを繰り返すと、いずれスッテンテンになる。次のトライができない状態になってしまう。大数の法則が働くのに十分な回数だけ、賭けを続ければ、絶対に負ける。

○ ビジネスの世界で、上の必勝法に近い方法を実践している成功者をときどき見かける。一方で、上の必敗法を実践してしまっている人も多い。上の二つのケースを見比べると、結局、勝ったときに、不必要に賭け過ぎず、負けたときに、慎重になり過ぎてはいけないとも読み取れる。ビジネスというのは、煎じ詰めると、上の二つの方法を混ぜ合わせてやっているだけだという気が時々する。

○ いや、この話、実は、ビジネスに限らないだろうし、賭けるものもお金に限らない。個人の人生だって、ものごとがたまたま上手くいって得た無形の大切なもの全てを、あるとき賭けてしまって、えらい目に会うことも多い。一方で、上手くいかないからといって、ぐずぐずしていてもいいことはない。また、諸国の歴史をみても、成功したときに賭けすぎ、失敗したときに臆病になりすぎて、国難を招いた例も、多々ある。

○ やっかいなのは、上の二つの方法が、一見したところ、いずれも掛け金を上げていく点で、よく似ていることである。自分でも、必勝法を実行しているつもりで、結局は、必敗法を実践してしまっていることがよくある。また、他人を見る時でも、成功しているようにみえる人を信頼したところが、実は、たまたま成功しているだけで、上の必敗の道を歩んでいる人だったということもある。

○ そうそう、ところで、博打で勝つことが幸せか、という別の大切な問題を忘れないことこそが、実は、人生の必勝法かもしれない。


2月9日
USBフラッシュメモリー
○ USBフラッシュメモリーという便利なものがある。消しゴムほどの大きさで、パソコンのUSBポートに差し込むだけで簡単に記憶デバイスになる。最近のビジネスの打ち合わせでは、客を訪問したとき、それぞれがパソコンに持っている資料をプロジェクターで見せながら説明し、その後、USBフラッシュメモリーを介してその資料を相手と交換する。これが、一般的なビジネスの打ち合わせのスタイルになっている。

○ 今日も客先でこのフラッシュメモリーを使って打ち合わせをしながら、ふと思ったのだが、僕のホームページ、僕の小学生時代の作文、仕事で書いた報告書、将来書いた文、全てを含めても、一つのフラッシュメモリーに入ってしまう。僕は、自分が作っているこのホームページを大変意義深いものと感じていて、死後は、墓よりもこのホームページが残っている方がありがたいとさえ思っている。しかし、このホームページを今後40年続けたところで、データ全体が一つのUSBフラッシュメモリーに入ってしまう。

○ 大抵の場合、人間が一生に書く文章なんて、このフラッシュメモリー一つに十分入ってしまうだろう。夏目漱石が一生に書いた全ての文だって、一つのフラッシュメモリーに入るだろうし、松下幸之助だって、チャーチルだってそうだ。

○ 伝達可能な知識というものは、結局、文章のことだろうが、人間が一生に書く文章、即ち、ある一人の人間が、後世に残せる伝達可能な知識というのは、すべてこの消しゴム大の石ころのようなものに入る。そう思うと、虚しい。一方で、漱石だって幸之助だって、チャーチルだって、そんなもんだと言われると、起きて半畳、寝て一畳、ほっ、ともする。また、地球上のこんなに多様で転変流転する世界の中にいて、自分自身の存在が消しゴム大の大きさにでもなれば、立派ではないかとも思う。

○ USBフラッシュメモリーの価格は、128MBで、5,800円である。


2月8日
忘れてはいけないが..
忘れてはいけないが、大騒ぎもしたくないもの
ウェストのサイズ。年上の女性の誕生日。靖国神社。2・28事件。大人の恋。


2月5日
元宵節
○ 今日は、旧暦の1月15日。正月の終わる日、元宵節。昔の農家は、一年中休み無く働き、正月にだけようやく休みをとった。今日は、年に一度の長期バカンスの打ち上げの日である。台湾では、地方色豊かな行事が各地で行われた。

○ 台北市では、中正記念堂で、ランタンが披露された。クリスマスツリーですらも、「もったいなから」という理由で、旧正月の明けまで片付けない人々は、もちろんこの元宵節のランタンも、一二週間は、華々しく展示し続ける。子供たちは、手に灯篭をもってねり歩く。

○ 台南では、「蜂炮」といって、花火をど派手に打ち上げる。人に向かって平気で花火を噴出させるので、みんな、バイクのヘルメットに、ウィンドーブレーカーを着て見に行く。花火が派手で危なっかしいほど、今年は、幸せなのである。

○ 台北にとっての横浜のような、港町基隆。そこから山にしばらく分け入ったところにある、台北県天渓では、ロマンティックな「天燈」が行われた。小さな熱気球のようなもので無数の燈篭を空に上げていく。夜空にあがる灯篭は、星の助けを借りて、しんしんと輝く。天の川にかかる精霊流しである。来年は、是非、見に行きたいものだ。


2月4日
読者の質問
○ 最近の読者からの質問のうち、いくつかを、お返事とともに紹介します。

○ 友人が「台北では、コンビニで横浜中華丼がそのまま売ってたぞ」と言っていたのですが、本当なのでしょうか?

らくちんの答え)
早速7−11に行って確認したところ、横浜中華丼は、売っていませんでしたが、“横浜「ロ加」哩拉麺”なるものが、売っていて、たまげました。僕の頭の中では、「横浜」と「カレー」と「ラーメン」の三つがどうも結びつきません。

○ 東アジアへの農産物輸出のことを調べていてこのHPを見つけました。 近年、台湾や香港、上海など、経済力の高い東アジア向けに、高級リンゴ、減農薬栽培の米、二十世紀梨などの輸出が本格化しています。 そこで、台湾にお住まいの方に教えていただきたいのですが、実際のところ、台湾の方々にとって、これらの日本産の農産物の評判はどうなのでしょうか?人気は高いのでしょうか。

らくちんの答え)
2,3人の台湾の人に聞いてみたところ、次のようなコメントでした。
日本からのリンゴ、カキ、二十世紀梨などは、昔、随分好まれて食べた。今でも、お年よりは、日本からの輸入品だというと喜んで食べる。ただし、最近は、台湾でも、品種改良や、栽培法の進歩があっておいしいリンゴや梨が出来るようになったので、昔ほどは、ありがたがられない。
それでも、日本品がまだおいしいと思う、一番は、桃。その次が柿。リンゴ、梨は、台湾で、美味しいのができる。減農薬栽培の米というのは、あまり聞かない。と。
笑いながら、「日本産のバナナがでると、みんな珍しがって買うだろうねえ」と言っていました。すいませんが、統計的なデータは、手許にありません。台湾産なのか、日本産なのかは、わかりませんが、スーパーに行くと、りんごのフジが山になって売っています。

○ [台湾日記1月11日分「偽物屋」(ココ)について]
いや〜まだありますか?
かつて、華西街あたりの、時計やバッグを売る店にいって、「コピーはないか?」というと、全く同じように怪しげな一室に連れて行かれたものです。そのときのオヤジの口上は、「この時計のムーブメントは、日本製だから安心だ」というものでした。でも、すぐに壊れるものも多かったように記憶しています。さすがに修理に持っていったことはありませんがね。
あれは友人の話ではないですよね?あまりに内容がリアルで、知っている人には解ってしまいますよ。


「友人」の返答)
あります。あります。 −いや、聞いた話ですが.. ははは
最近は、△X?*の前あたりで、あやしげに呼び込みをしていたりします。僕の知っているのは、XXXX路にあります。先日、実は、酔っ払って偽物のスーツ(LV)を作ってしまったのですが、どうも、すっきりしません。偽物もボールペンとか時計だと、半分jokeのようなものですが、偽物のスーツを着ていると本当に自分がインチキビジネスマンになった気がしてきます。それに、成田で見つかったら、パンツ一丁で、通関からでるんかいなと思ったり、悩みは尽きません。あまりお勧めできるものではありませんね。

以上、知り合いの話でした。


2月3日
らくちん人生訓1
右のほおを打たれたら、左の足を踏みかえせ


2月2日
台湾総統選挙
○ 僕が愛読している、溜池通信の1月30日号で、「台湾総統選挙と公民投票」(ココ)という特集がされています。僕の知っている限り、今回の選挙について、最もまとまった記述ですので、一読をお勧めします。なんといっても、巻末の「後記」で、僕の書いた「台湾版悪魔の辞典」が引用されているのは、感激ものです!(台湾日記では、1月19日。ココ

○ 台湾総統選挙について、ポイントを再度挙げておきます。まず、今年の台湾の総統選挙は、日本にとっても、世界にとっても、非常に重要だということです。後で歴史家が振り返ったときに、イラクやアフガニスタンの選挙より重要だったといわれる可能性もあると思います。

○ さらに、人口の80%を占める本省人を支持基盤とし、ミスターデモクラシーと言われる李登輝が支持する現職の陳水扁が勝って当然、と多くの日本人が思いがちですが、そうではありません。数字上では、ほとんどの調査で、現職の陳水扁が不利です。「そうはいっても盛り返すだろうから」と考え直した上で、みんなが、「ほとんど互角」と言っているのです。

○ もうひとつは、一般論として、政治でもビジネスでも、「現状維持を目標として行動し、現状維持の結果を残すのは難しい」という点を指摘したいと思います。この困難な道を、過半数の台湾人が進もうとしています。僕は、よく「台湾人は、リカバリーショットの天才」と言って、困難に直面しそれを自覚したときの台湾人の正確な判断と勇気と粘り、そして潔さというのを、すばらしいと常々思っています。しかし、果たして、今回、一体どのように収めるのか目が離せません。

○ 最後に、最近の各社世論調査の結果を示しておきます。再三書いているように、台湾の世論調査は、余りあてにできません。ここで示した調査結果も、支持率の差の正確な把握というよりも、数字が調査によって大きく違うことを示しているだけか思うほどです。

聯合報のアンケート(支持率):陳呂ペア37%、連宋ペア40%
TVBSのアンケート(支持率):陳呂ペア35%、連宋ペア47%
「年代」のアンケート(支持率):陳呂ペア29.3%、連宋ペア40.7%
民進党のアンケート(支持率):陳呂ペア37.9%、連宋ペア38.8%
国民党のアンケート(支持率):陳呂ペア25.3%、連宋ペア35.9%


2月1日
テレビの時代
(昨日の「2004年のエレクトロニクス産業」からの続き)

○ 04年の主役は、テレビだと思う。大型化、薄型化、高解像度化という大きな波にのり、ブラウン管以外(非CRT)のテレビが普及する。もちろん、当面、ブラウン管は、台数ベースで半分以上を維持するだろう。しかし、世界市場で年間1億3千万台(1億6千万台という資料もある)という巨大な「既にある市場」の買替えに、全く新しい製造技術の製品が、売れ始めるというのは、生産者の立場から見れば何十年に一度のチャンスに違いない。

○ さらに、デジタル技術を使った、DVDレコーダーや、ホームゲートウェイ、デジタルセットトップボックスなどの周辺機器が出始める。これらを含めると、04年に限らず、今後3年くらいは、テレビは電子業界の主役でいられるように思う。また、テレビは、パソコンに比べ日本メーカーの得意の分野である。一方で、米、韓、台湾もこんなに大きな獲物をじっと見ているはずは無く、猛烈に日本を追い上げている。さて、どうなりますやら。

○ まず、大型化、薄型化、高解像度化の波は大きい。40インチクラスの最新のテレビで、デジタルBSを一度見ると、他のテレビが本当につまらなく見える。この見栄えというのは、玄人でしかわらない他の細かい仕様上の数字と違って、ユーザーにとって、一度堪能してしまうとなかなか後戻りできない。また、薄型になっているので、新しく買い換えると家の中のスペースがかえってひろ広くなるのも、特に日本市場では、大きな意味がある。

○ 大型化、薄型化、高解像度化、デジタル化を実現するのは、LCD、PDPなどのブラウン管でないテレビである。―それに、僕は、今年の注目株商品として、背面投射型プロジェクションテレビ(リアプロTV)を加えたい。リアプロテレビについては、また、日を改めて書いてみたい−まず、LCDとPDPを比べてみる。

○ LCDの強みは、パソコンのモニターで鍛えた生産技術なので、部品の標準化が進んでおり、生産キャパも豊富なことである。以前に書いたとおり(02年4月7日、ココ)、パソコンのモニター用のLCDパネルとテレビ用のLCDパネルは、仕様が大きく違っていてそのままでは、代替出来ない。しかし、パソコンのモニターを大量に製造して韓国と台湾の各社が蓄積したノウハウを、大いに活かせるのは、間違いない。一言でいうと、LCDは、PDPより技術が熟している。しかし、LCDの製造ラインの投資額は、PDPに比べ一桁多いともいわれ、とにかく採算を合わせるには、数量を確保しなければならない。これが、長所でもあり短所でもある。

○ PDPは、LCDに比べて、大型化が容易、明るい、広視野角などの長所があるが、消費電力が高く、製品寿命が短いのが短所である。また電磁波も気になる。PDPの製品寿命については、初期に出荷したPDPが、もう数年で劣化し始めると、市場での評判が落ち、致命的になると言う人もいる。僕は、買い換えればいいので、そんなに気にしなくていいのではないかと思う。それよりも、どの日本メーカーも先行したパイオニア以外は赤字と言われており、コスト面が本当に大丈夫かと、心配させるものがある。

○ 今、市場には、LCDは、20から40インチくらい、PDPは、30から60インチくらいが出ているが、結局、04年は、40インチ以上が、PDP、それ以下が、LCDで住み分けるのだろう。数量については、04年、LCDテレビは、10百万プラスマイナス3百万台(03年:約4百万台)、PDPテレビは、3百万プラスマイナス百万台(03年約:0.8百万台) といった予測が多い。ある人によると、LCDテレビの普及の鍵を握るのは、台湾勢が、27インチテレビ2000ドルの小売価格を実現できるかどうか。そのためには、台湾のテレビ用LCDをリードする奇美(あの許文龍さんの率いる奇美グループ)が、$700台でパネルを供給できるかにかかっているとのことである。

○ テレビに関して、いくつか興味深い点を書いておきたい。
まず、興味深いのは、PDPが、なんでも大きいものが好まれる北米市場で思いのほか売れないことである。これは、家にスペースがあるので、「薄型」の長所がアピールしないからだと思う。同じ大画面のリアプロテレビが、半額で手に入れば、少しくらい奥行きがあってもいいやということなのだろう。

○ 次に、LCDにしてもPDPにしても、巨額の投資を必要とするパネルの製造ラインと生産能力に目を奪われがちだが、商品の売れ行きを左右するのは、画像のよさであり、即ち、見栄えを良くする、昔ながらのテレビの技術である。今は、LSIで実現する画像の調整も、微妙な色合いを含めた感覚的な最終調整は、昔からテレビを作っているメーカーが強く、日本メーカーが強い。この何十年と成熟産業であったテレビが、最近、急に新機種の開発が活発になったので、テレビの技術者が引っ張りだこである。日本の大手テレビメーカーですら、テレビの技術者の割り当てに苦しんでいる。

○ もう一つ興味深いのは、次世代テレビについて、日本メーカーが一番リードしていると衆目一致しているにもかかわらず、最近の海外の展示会などでは、今ひとつ存在感の薄いことである。追いかける側の韓国、台湾、米国系の方が、にぎやかだったりする。一つには、日本メーカーが技術を外に出すのに慎重になっていて、大騒ぎするのを嫌がっているということもあるだろう。しかし、もう一つは、普及期にはいり技術が熟すると、結局は、モジュール化が進み、資金量で押してくる韓国、台湾勢にかなわないという弱気もあるのかもしれない。よく言われるのだが、韓国、台湾のこうしたハイテク産業は、優遇処置により、税負担が非常に少なく、何年かに一度、大きく稼いだ資金をそのまま投資に振り向けてくる。一方、日本のメーカーは、何十%という高い税負担を課されている。投資できる資金量で勝負を決する半導体、LCDの業界で、数十%のキャッシュフローの差があると、致命的に厳しい。こうして最後に、日本メーカーは、部品と製造装置の供給だけになるのではないかという声も聞かれる。今回の次世代テレビの大きな波は、新しい技術を開発した果実をどれだけちゃんと取り切ることができるかという、日本の電機メーカーにとっての最後の挑戦になるかもしれない。


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