タクシーの運転手さん
私は時々、タクシーを利用することがあります。
今回はそのタクシーの運転手さんにまつわる話です。
タクシーの運転手さんにも色んな人がいますよね。
無口な人とか、ちょっとした世間話をする人とか、お喋りな人とか。
ある日、乗ったタクシーの運転手さんは、妙に明るくってお喋りな人でした。
白髪の……60歳代後半くらいのおじさまなんですけども、これがチョット困りました。
走り出してすぐに、「あっ、今、赤いコート着た、女の人とすれ違ったでしょ!」って話しかけてきたんです。
そのあたりは飲み屋さんが多い場所。深夜でもかなり人通りが多いところです。
が、私は何しろタクシーに乗ったばかり。
まだ外の景色を眺めるというところではなかったんです。
なので、「え? そうでしたか?」って答えました。
どうやら、その赤いコートの女の人というのは、運転手さんが良く行く飲み屋の女将さんなんだそうです。
そして────長い話が始まりました。
その女将さんの身の上とか、飲み屋さんでの楽しみ方とか、(運転手さん自身が傑作と思っているらしいけど全然笑えない)冗談のやりとりとか……。
さらに話題は飲み屋さんで働く他の女の人たちの身の上話にまで発展していって……。
なんで、私にそんな話をするんだろう?と訝しく思いつつ、適当に相づちを打っておりました。
そこまではまだ許容範囲だったので。ハイ。
だけどね……、
頼むよ、おじさま!
お願いだから、走行中に後部座席を振り返らないでくれぇ〜〜〜〜!!
その運転手さん、私に同意を求めるたびに、振り返ってくるんです。
法定速度をはるかに超える速度で走っている(と思われる)のにぃ…。
怖かったじゃないのさ!! 寿命縮まったよ!
10分くらいの乗車時間でしたが(普段は15分以上はかかる)、降りたとき、私はぐったりと疲れ果てておりました。
なにしろ、ずーっと命のキケンを感じてハラハラしながら、知らない人の人生を3人分聞かされたんだもの(笑)
ちょっともうあの運転手さんのタクシーには乗りたくないなぁ、と思ってしまったのでした。
話は変わって、別のタクシーの運転手さんの話。
今度は面白い(っていうか、抜けてる?)運転手さんと出会いました。
タクシー乗り場で乗ろうとしたのですが、そのタクシーの運転手さん、自分の車が先頭なのに、なかなか扉を開けてくれないんです。
他の車のクラクションでやっと気がついて、私を乗せてくれました。
が……乗ってみて、上の空の原因が分かりました。
その運転手さん、ラジオの「不景気で税金対策に苦しむ人々の話題」に夢中で聞き入っていたのです(^_^;)
でも、行き先を告げたら、ちゃんとそちらの方へ走り出してくれたので、ホッとしながら乗っていました。が……。
あと少しで目的地へ着くというところで、運転手さんが気がつきました。
私を乗せてから、ずっと「空車」の表示のまま走っていたことに……(爆)
いやぁ、あれはビックリした。
まさかそんなことがあろうとは。
慌ててメーターをONにしたものの、初乗り運賃から2回ほど料金が上がったところでタクシーは停車。
どうするつもりかなー、と思っていたら、運転手さんは苦笑いしながらこう言ったのです。
「私はこの辺を良く知っているからねぇ、だいたいココまで来ると1500円ちょっとになるんだよね、普通なら。
今はほら、メーターがこうなってるけど……最近不景気だしねぇ、お客さんの判断に任せるけどさ、料金は。でも普通なら1500円だよ、1500円。ねぇ!?」
……メーターを下げなかったのはその運転手さんのミスであって、私には関係ないことだし……安くすむのならその方がありがたいなぁ。
などという、悪魔のささやきは聞こえないフリをして、私はいつも通りの金額を払っておきました。
まぁ、もしここで運転手さんに、「お客さん、メーター倒してなかったの、知ってたンじゃないの?」とかいう責任転嫁な態度を取られたら、また違った展開になってたかもしれませんけどね。
さぁて、次はどんなタクシー運転手さんに出会うかなぁ?
楽しみだったり、ちょと怖かったり。
1999-03-26