Ex-diary 春来りなば1

Extra diary

小ネタ置場。

破壊王子。輪っかベジたん。ちょっとした連載小説から日記での小ネタログ、その他分類不能な文章置き場です。連載小説はカカベジ/くだらないギャグ系中心。飽きたorくだらなすぎて耐えられなくなったらさっさと辞めてしまうであろう、極めていい加減企画です、ご了承ください(゚Д゚;)ハアハア

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春来りなば 待ち人遠からじ [1]

2010/04/03

ブウ編後のカカベジ。ベジたんが乙女です。原作ベース/甘め…なのか?ハアハア。



カカロット、またの名を孫悟空という男。地球育ちのサイヤ人という変わり種だ。「戦いが大好きで優しいサイヤ人」と、かつてオレは奴の事を評した事がある。けれど最近ふと思う事がある。こいつは実は、誰よりも残忍で冷酷な、サイヤ人らしい精神の持ち主なのではないかと。そう、例えば…

「なあ、ベジータ」
恒例となった荒野での組み手、互いの技を出しつくした研鑽の後で汗をぬぐいながらカカロットが俺に声を掛けてきた。
「…何だ」
カカロットと同じくらいに消耗し(いや、それ以上か…)肩で息をしていた俺に、奴は邪気の無い視線を向けながらこう言った。
「オラ、おめえと修行すんの飽きちまった。もうここには来ねえと思うぞ」

…例えば、こんな時だ。





麗らかな天気だった。朝夕の風の冷たさは相変わらずだが、それでも春はすぐそこまでやってきている。沿道の木々は芽吹き、細く開いた窓からは花の香りを纏った良い風が入ってくる。西の都の中でもひときわ高いカプセルコーポレーションの窓からは、遥か彼方の街並みが、霞みを帯びて眠たげに広がっている様が良く見えた。
ぽかぽかと温かな日差しが降り注ぐ良い天気だ。本来なら、街はずれの丘にひとっ飛びして草の上で昼寝としゃれこみたいところだ。以前のオレなら考えもつかない事だが、最近は平和ボケした地球人の真似も悪くないと思い始めている。しかし、今のオレはとてもじゃないがそんな気分には、なれなかった。
「パパ、大丈夫?」
ベッドに横たわっていたオレの背中に、遠慮がちな声が掛けられる。トランクスだ。口を開くのも億劫だったオレは、そのまま寝たふりをしようと思って……やめた。
「ああ、大した事ねえ。それよりトランクス、窓を閉めろ。風が寒くてかなわん」
「う、うん」
背を向けたままのオレの言葉にトランクスがうなずく気配がし、続いて窓を閉める音がした。細く開いていた隙間から漏れ聞こえていた街の喧騒が遮断されて、急に部屋が静かになる。本当は風が冷たいどころか、むしろ暖かくて心地良いくらいだったが、ぽかぽかと温もった春風は今のオレにはひどく腹立たしく、そして憂鬱なものでしかない。

オレが横たわるベッドの脇を子供が歩く音が聞こえ、続いて心配するような、トランクスの声が上がった。
「何だ、パパ全然ご飯食べてないじゃないか」
ベッド脇のサイドテーブルには、ブルマの持ってきた食事が配膳された時のままの姿で置かれていた。
「ダメだよパパ、ママがさ、ちゃんとご飯食べないと元気になれないって言ってたよ」
こんなに旨そうなのになあ。言葉の裏に不満が滲んでいる。
「必要無い。オレは要らんからさっさとそれをブルマのところに持っていけ。ついでにあいつには『サイヤ人はきさまら地球人のようにヤワじゃないんだ』と言っておけ」
「でも……」
「何ならそいつはオマエが食っていいぞ」
そこまで言った途端、まったく手をつけられていない食器を盆ごと持ち上げていたトランクスの気配が明るくなった。
「本当に?!オレがこれ食べてもいいの?!」
「ああ、良いからさっさと持っていけ」「はーい!」
背後で嬉しそうな声がする。まったく、食い意地の張った奴だ。一体誰に似たんだか。



「あ、そういえば」
トランクスの気配が片手に盆を持ちながら扉を開け部屋を出ていこうとしたところで、一旦振り返った。
「ママがね、後で『すっごく良く効くクスリを持ってきてあげるからね』だってさ」
「ブルマが?」
間違い無く天才だが、研究者としては変人の部類に入るブルマの顔を思い浮かべる。あいつの持ってくるクスリなんぞ、どんな物か知らんがロクなものじゃないに決まっている。妙な物を飲まされないよう注意しなくては。そんな事を思っているうちに、トランクスの気配が部屋から出ていき、部屋は静寂に包まれた。

さて、これからどうするか。ベッドの上に身を横たえて布団をかぶったまま考える。本来ならトレーニングもせずに真っ昼間から寝転がっているなどサイヤ人の王子であるオレにはありえない話だ。けれど今はとにかく何もする気が起きない。枕代わりに頭の下に敷いていた腕から一旦身を起こし、寝返りを打ったところで、ぎくりとした。部屋の外で妙な違和感がする。部屋の外の空気が、音が、匂いが微細な粒子になって拡散し、渦を巻き、再び腕を伸ばしあって収束し、たちまちある人物の気配を形作った。……この気、間違い無い、あのヤロウだ!


トランクスの驚いた声が部屋の外から聞こえる。
「あれー、悟天のおじさん、来てたの?」
「ようトランクス、おめえの父ちゃんどこだ?」



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