Ex-diary サルの恩返し2

Extra diary

小ネタ置場。

破壊王子。輪っかベジたん。ちょっとした連載小説から日記での小ネタログ、その他分類不能な文章置き場です。連載小説はカカベジ/くだらないギャグ系中心。飽きたorくだらなすぎて耐えられなくなったらさっさと辞めてしまうであろう、極めていい加減企画です、ご了承ください(゚Д゚;)ハアハア

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サルの恩返し [2] (元ネタ ツルの恩返し)

2009/10/27

単にタイトルのダジャレを言いたかっただけにしか思えない昔話パロ・カカベジ。時代考証とかムチャクチャです(゜Д゜;)ハアハア




男は、カカロットの返事も待たずにずかずかと家へ上がり込んできました。
「ふん、狭い上に汚ねえ家だな。キサマよくこんな場所で暮らせるな」
「なんだよおめえ、人んち勝手に上がり込んで図々しいやつだな」
失礼な男の言葉にさすがにカカロットはちょっとむっとしかけましたが、雪にまみれた男の肩は、良く見ると小刻みに震えています。よほど雪山を長く彷徨っていたのでしょうか、すっかり凍えきっているようです。それを目にしたカカロットは再び落ち着きを取り戻しました。
「おめえ、よっぽど雪ん中歩いて来たみてえだな。寒いだろ?とりあえずこっち来て火にあたれよ」
そう言って囲炉裏端の席を勧めると、男はぷいとそっぽを向いてしまいます。
「ふん。こんな狭い場所に座ったら足がつりそうだぜ」
「まあいいからいいから」


言われて男は、暫く所在なさげに立っていましたが、そのうちしぶしぶと言った様子で火の近くに腰を下ろしました。その時、男のお腹がグウゥッと盛大に鳴りました。
「―――っ!!」
「あ、そうか。おめえ腹減ってんだよな。ちょうど良かった、オラも今から晩飯にするとこだったんだ」
腹の虫の音を聞かれて赤面する男に、カカロットは囲炉裏にくべてあった串と、鍋を勧めました。鍋の蓋を取ると、湯気と共にむわっと辺りに異臭が立ち込めます。
「うわっ!!な、何だこの匂いは!!」
「干しイノシシのあぶり焼きにタヌキ汁だ。美味えぞ?」
立ち上る獣臭に、男は鼻を押さえて叫びました
「こんな臭いもん食えるか!」
「何だおめえ、タヌキは嫌いか?じゃあしょうがねえな、全部オラが食うとするか」
そう言ってカカロットは、串に刺さった肉をむしゃむしゃ食べ始めました。
「ひゃーっ美味ぇ!最高!!」
その見事な食べっぷりを見ながら、男の腹の虫がまた、ぐうぅっと鳴りました。
「……………。」
「ほらおめえ、腹減ってんだろ?いいから食ってみろって」
そう言われて男は、いかにもしぶしぶと言った感じで碗に継がれた汁を一口すすりこみました。その途端、その目が大きく見開かれました。
「…美味い」「な?美味えだろ?」
肉のダシの利いた暖かい汁の味が、じわりと凍えた体を温めます。得意げなカカロットの言葉を聞きながら、男は夢中になって碗の中身をすすり始めました。
「あ、熱いからゆっくり気をつけて飲めよ」
「……熱っちい!!」「ほらやっぱり」


舌をヤケドしながらも碗を抱えてふうふう言いながら汁をすすりこむ男を、しばらくカカロットは笑顔で黙って見ていました。実は、おじいさんが亡くなって以来、ここで他の誰かと食事をしたのは初めてだったのです。彼は誰からも好かれる性格の良い男ですが、実は典型的な独身体質で、自分の領域内にはめったに人を踏み込ませる事が無かったのでした。
「…う~ん、そう言えばさぁ」
再びカカロットが口を開きます。
「まだおめえの名前聞いてなかったな。名前は何ていうんだ?オラは『悟空』って言うんだ」
本当の名前はカカロットだけどな、と彼はおじいさんに付けてもらった名を名乗った後に付け足しました。碗を床に置き、男はジロリとカカロットを睨みながら、こう答えました。
「――俺様の名はベジータだ」
「ふーん、そうか。変な名前だな」
「キサマだって大して変わらんだろうが!!」


自分から聞いておいてそれか!!と男…ベジータが憤慨する中、二人で分け合った慎ましい夕餉が終わりました。大鍋いっぱい食べてもまだ腹に余裕のある程大食漢のカカロットが、小さな鍋一杯の汁を2人で分けて食べた程度ではほとんど腹がくちくならなかったのですが、それでも久々に二人で食べた夕食に彼は満足していました。
いつの間にかすっかり夜も更けています。相変わらず外では凍えるような寒さの中しんしんと雪が降り積もり、囲炉裏の火は細く、薪は白い灰になった頃、ベジータはすっかり乾いた腕を伸ばしながら、ふわぁっと一つあくびをしました。



「俺様は疲れているんだ。おい、カカロット、キサマそろそろ俺の寝床の準備をしろ」
どこまでも態度のでかいベジータに、しかし今度はカカロットは腹を立てず、替わりに何か考え込む素振りを見せました。
「どうしたカカロット、さっさとやりやがれ」
「良いけどさぁ、ベジータ」
「何だ」
ここで一つ、彼は重大な事を口にしました。
「オラんち、布団が一組しかねえんだ」
「…何だとぉっ?!」






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