Ex-diary サルの恩返し1

Extra diary

小ネタ置場。

破壊王子。輪っかベジたん。ちょっとした連載小説から日記での小ネタログ、その他分類不能な文章置き場です。連載小説はカカベジ/くだらないギャグ系中心。飽きたorくだらなすぎて耐えられなくなったらさっさと辞めてしまうであろう、極めていい加減企画です、ご了承ください(゚Д゚;)ハアハア

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サルの恩返し [1] (元ネタ ツルの恩返し)

2009/10/25

単にタイトルのダジャレを言いたかっただけにしか思えないが、カカベジ。




むかしむかし、東の都のはずれ、パオズ山の山奥にカカロットという少年が住んでいました。彼はおじいさんと死に別れて以来、その家に一人で暮らしていました。基本的に正直者ですが働き物では断じてなかったカカロット。彼には、現金収入はまったくありませんでしたが、彼は腕っ節が強くとてもワイルドな性格をしていたので、山で狩りをしたり川で魚をつかみ取りをしたりして、食べ物に困る事はまったくありませんでした。


そんなある日の事です。カカロットはいつもと同じように山へ食糧調達に出かけました。その日は朝からしんしんと雪が降り積もるとても寒い日でした。山は一面の雪景色、獣たちは皆、巣に籠ってしまい、めずらしくカカロットの収穫はゼロでした。
「まいったな~…これじゃあ今日食うもんがなにもねえぞ」
困ったカカロットが辺りを見回しますが、雪がますます激しく降るばかりで、タヌキ一匹通りかかる気配はありません。大飯食らいのカカロットに空腹はつらいものでしたが、これ以上探しても何も見つかりそうにありません。がっかりしたカカロットが、仕方なく収穫坊主のまま家に帰ろうとしたところ、雪の中で何か動くものが見えました。
「……ん?何だあれ?」


そこは以前、カカロットが罠を仕掛けておいたところでした。
「……っ!……っ!」
――なんと、一匹の子猿がカカロットの仕掛けた罠にかかって、じたばたと暴れているではありませんか。つんつんとがった髪型に、ふっくらと丸い頬。それは子猿というよりは、人間の子供のようでしたが、猿のしっぽが生えているので、おそらく猿なのでしょう。しっぽを罠にはさまれた子猿は、雪まみれになりながら暴れていましたが、暴れるほどに罠は子猿のしっぽを締め付けます。子猿は、カカロットの姿を見かけた途端、叫びました。
「おい、そこの奴!さっさと俺を助けろ!!」
その様子を目にしたカカロットは、飛びあがって大喜びしました。
「ぃやったぁ!晩飯つかま~えたっ!!」


カカロットの言葉を聞いた途端、子猿はぎょっとした顔でカカロットを見ました。
「おいキサマ、『晩飯』って何のことだ?!」
「そりゃあ『晩飯』っておめえの事に決まって……ん?何だおめえ、猿のくせにしゃべれるんか?」
カカロットが驚くと、子猿は怒ってまた叫びました。
「誰が猿だ!!この俺が猿に見えるのか!?」
「うーん、そう言われっと普通の猿とはちょっと違うみてえだなー」
「ちょっとどころじゃねえだろうが!!いいからさっさと俺様を助けやがれ!!」
憤慨した子猿……人間の子供は、丸い頬を真っ赤にして叫びました。
「猿に見えなくもねぇけどなぁ……何だ、猿じゃねえんか」
まだあまり納得のいかないカカロットでしたが、首をひねりながらも子猿……子供を助けてやる事にしました。
「じっとしてろよ、動くなよ。今はずしてやっからな」
「さっさとやれ!下手クソめ!!」
カカロットは悪態をつく子猿……子供の言葉も気にぜず、そのしっぽを締めつけていた罠をはずしてやりました。


「ウスノロめ、もっと早くやりやがれ!!」
漸く解放された子供が再び悪態をつきますが、カカロットは気にせず、子供のしっぽをしげしげと見ました。ずっと罠に締めつけられていたそれは、傷ついて血がにじんでいました。
「おめえ、しっぽケガしてるじゃねえか。……ちょっとまってろよ」
そう言ってカカロットは、自分の片袖を破って、子供のしっぽの傷を縛って、手当をしてやりました。
「これで良し、と」
凍えるような寒さの中、片袖を無くしたカカロットの腕はとても寒そうでしが、彼は気にも留めず、にっこりと笑いました。それは太陽のように暖かい笑顔でした。
「…………。」
子供は目を見開いて、カカロットの顔を見つめました。


「おめえ、一人で帰れっか?」
「…………。」
カカロットの問いかけに子供が黙ってうなずくと、カカロットも満足した様子でうなずき返しました。そのお腹では、ぐうぐうと腹の虫が鳴いていましたが、彼は満足していました。
「よし、じゃあもうオラ行くからな。気を付けて帰れよ」
「おい、キサマ待て……」
子供が何かを言いかけましたが、カカロットは答える事無く、じゃあなと子供に手を振って帰っていきました。
子猿……もとい、子供は、まだ何かを言いたげに立ち尽くしていましたが、暫く後に、林の中へ消えていきました。その直後、子猿が消えた林の中から、ボール型の宇宙船が舞い上がり、空の彼方へ消えていくのを、カカロットが見る事はありませんでした。





それから10年の月日が経ちました。少年だったカカロットは、今や立派な体躯を持つ青年に成長しています。相変わらず現金収入はゼロでしたが、性格は朗らかで、おまけにとんでもなく強くなっていた彼は、襲来する宇宙人を撃退したりして、皆から感謝され慕われていました。
そんなある日の事です。いつかと同じく、その日は朝からしんしんと雪が降り積もるとても寒い日でした。山は一面の雪景色、そんな日は獣たちは皆、巣に籠っている事を知っているカカロットは、出かける事なく家の中で雪が止むのをじっとまっていました。
「あーあ。早く雪止まねえかなぁ。食うもんが無くなっちまうぞ」
以前にもまして大飯食らいになったカカロットが、備蓄食糧の心配をしていると、誰かが家の入口を叩く音がしました。
ガン!ガンガン!ガン!
……すごい音です。今にも扉が壊れそうです。
「うわわわわっ!!誰だよ一体?!今開けるから、ドア壊すなよ?!」
びっくりしたカカロットが、慌てて入口に駆け寄って、扉を開けました。




――すると、そこには目つきが非常に悪い、けれど小柄でとても愛くるしいツンツン頭の男が一人、雪にまみれて立っていました。男はドスの利いた声で、こう言いました。
「この雪で道に迷った。おいキサマ、ここに泊めろ。それから何か食いモノをよこせ。寝る場所も準備しろ。ぶっ殺されたくなかったらさっさとやれ。」





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