中島みゆきが紅白に出るなんて、時代は変わるものだ。そして驚くことに、わしの周りでもネット上でも歓迎の声が多い。「紅白は観ないが、中島みゆきだけは観る」という人の、なんと多いこと! 日本もまだ捨てたものではないようだ。
これまではある意味アングラであり続けたみゆき様だが、急に表舞台に出たことで、各誌紙にいろんなことが書かれるだろう。だが、信用しちゃいけない。ちゃんと追っかけてきた人じゃなければ、わかりっこないし、かけっこない。週刊誌の芸能ライターで書ける代物ではないのだ(その人がファンなら別だが)。
今後、「なぜ中島みゆきは出場を承諾したのか?」といった類の記事がいっぱい出るだろう。現に東スポは早速「トリを保証した」などと出ていたが、少なくともそれが出場の原因だということは考えられない。あほくさい。
もちろんわしも、みゆき様の心情など知るはずもない。だが、一応おおやけになっている話をまとめてみると、昨年NHKのアタックを受けたときに「出たい気持ちもあるし、家族も私が出るところを見たいと言っている」ってことは言っている。みゆき様は現在50歳。親の年齢は推して知るべし(父親はみゆき様が20代のころに死去)。この年齢の人にとっては、「紅白=史上最大のイベント」だろうから、そりゃ喜ぶだろう。おまけにこの年にして、彼女は未婚である。そりゃ、親不孝との負い目はあるだろう。紅白出ることが親孝行という気持ちは、あるに違いない。
そしてもう一つ。彼女はヤマハの所属なのだが、現在はヤマハのポップス部門(?)「ヤマハ・ミュージック・コミュニケーション」の取締役なのだ。
http://www.yamahamusic.co.jp/corp/index.htmi
みゆき様のほかにも、チャゲ&飛鳥のチャゲもこの中にいるはずだが、本名わかんないのでどれかはわからない。で、取締役の立場としては、この数年売り上げに多大な貢献をしてくれたNHKの二年にわたる猛プッシュに、断り切れない心情的なものもあったと想像される。あなたが社会人ならわかるでしょ? 彼女はもう、単なる1アーティストでは許されない立場なのだ。
個人的にお金が欲しいわけでもあるまい。彼女は毎年、長者番付ポップス歌手部門で、安定して10位前後にいる。わしは学生時代、世田谷の北沢税務署で確定申告の申告書処理のバイトをしたことがある。そこで、中島みゆき、いや中島美雪さんの年収をこの目で見ている。今さら別に、金積まれてもどうってことはないだろう。要は上記のような事情があったのだ。
じゃあ、なぜこれまで出場しなかったのか? TVに出なかったのか?である。
彼女が紅白出場するにあたって、いろいろ条件を出している、と思う。彼女は「歌=作品」であることにかなりこだわっているため、その作品の価値・意図を歪めるようなことは絶対にしないはずである。
ただでさえTVには出ない中島みゆきだが、わしがファンになってからの12年くらいの間でまったくTVに出なかったわけではない。「浅い眠り」でドラマ出演したり、「ニュース23」の特集で筑紫と対談したこともある。映画も出た。はじめてのCMは「キリンプレミアムビール」だった。
歌も一度だけ歌っている。フジテレビのドラマ主題歌「浅い眠り」がヒットした年に、同局のFNS(フジテレビ)歌謡祭に出演したのだ。ドラマ出演のご縁で断れなかったのだろうが、それでも生では出演しなかった。歌はなんと、その番組のためにわざわざプロモーションビデオを撮り下ろし。それを番組でながしたのだ。
そこまで自分の歌が作品であることにこだわっている。
そんな過去を考えると、紅白出場の条件はこんな感じになるはずだ。
1 NHKホールでは歌わない
紅白には、あのくだらない出し物がある。昨年もNHK関係者によると「出るからには、わがままを言わずにアトラクションなど何でもやりたい。しかし、今はそこまで吹っ切れない」と言っていたそうだ。でも、出し物に参加する‥‥とは考えにくいなぁ。ホールに行って、一人だけ出し物に参加しないというわけにもいかないだろうから、まずホールでは歌わない‥‥と思う。そもそもあのNHKホールに来ている客は、歌を聴きにきていない。一応報道では黒部ダムから歌うことになっているというが、、、、ホールに来るなら、アドラクションはやるだろうが、やっぱイヤなんだと思う。
2 フルコーラス
紅白を含むたいていの音楽番組では、フルコーラスは歌わない。1番歌って、ワープして、ラストを歌って終わりがパターンである。若い頃TV出演をしたみゆき様は、この件でTV局ともめたという記述をどっかで観た。最後の生歌唱は、歌のヒットパレードでの「わかれうた」であったはずだ。「わかれうた」は、1977年の曲だからその頃の出演だろう(実際、番組観たわけではないから確定できないが)。
一曲の歌という作品は、1番から順に最後まで歌ってこそ成り立つ。映画やドラマを途中すっとばして放映するのがおかしいというのと同じ、まっとうな理屈である。実際、私見だけど、みゆきの歌は2番3番のほうが良い。中島みゆきはフルコーラス歌う。これは間違いない! でも、ホールに行くなら、そこまでみんなに合わせるのかなぁ。
3 バックバンドは自前
プロフェッショナルな人間にありがちな潔癖性をもつみゆき様にとって、バックバンドに見ず知らずの人間を使うことなど考えられない。NHKが調達した人を使うことなどありえない。野球選手がバットにこだわるのと、サッカー選手がスパイクにこだわるのと同じである。わしは音楽界のことはわからないが、彼女が「夜会」で使っているバンドは「ありえない」ほど豪華だそうである。今年は年末まで夜会をやっているはずだから、そのメンバーでやるのが妥当かな、という気がする。他の歌手と同じ、使い回しの演奏家を使うことは、絶対にない!‥‥ちゅうか、やめてくれ!
4 曲目は?
「地上の星」がヒットしているが、あれの何がいいのかわからない。はっきり言って、ハナクソである。純度100%の彼女の歌でなく、TV局が番組のために書かせた曲だ。名曲であるはずがない。「浅い眠り」のときにも、曲調その他に、かなりフジテレビから注文がついたと彼女は言っていた(「ヘッドライト・テールライト」は、主題歌でない分、彼女らしい曲にはなっているから許す)。
昔、長渕剛が3局歌って大御所からの反発を食ったが、みゆき様も「地上の星」を歌うなら、もう1曲くらいは歌ってほしい。「時代」なら妥当だとは思うのだが。
NHKは、ノーベル賞の田中さんを出演させ、プロジェクトX=中島みゆき「地上の星」とからませる演出を考えているだろう。中島みゆきという人は、こういう「お上の考え」を好んで裏切りたがる人種なのだ。一応、わしも同類だからよくわかる。紅白に出ると決めた以上、ある程度の妥協・制約は仕方ないと本人も思っていると思う。だが、このおばちゃんは絶対に素直に出ない。どこかで自己主張するはずである。
大晦日は、正座して紅白を観る。
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