キミは観たか? なに?観てない? いやあご愁傷様。こんな試合めったに観られませんって。え?何のことかって? アホ! 小林聡対スカボロスキーに決まっとるだろ!
というわけで、レポート
この日のスカボロスキーは計量で500gオーバー。しかし、その身体つきに減量の後はない。腹ぼよぼよ。この一戦をなめきっているのがよくわかる。それもそのはず。ムエタイの超ビッグネーム・ロバートを、ラスベガスでKO。この日の場内アナウンスでは、タイで4勝4KOと紹介されていた。超世界レベルのハードパンチャーなのだ。
空席の目立つ後楽園だが、わかる人にはわかるこの一戦。セコンドに藤原敏男氏がついたことでも伺いしれる。おそらく、セコンドについたのは、世界タイトル獲ったとき以来2度目だと思う(違うかな?)。なんのタイトルもかかっていないこの一戦に、藤原さんをそう思わせるほどの選手なのだ、このフランス人。
そして、試合開始直後、スカボロスキーがただのハードパンチャーでないことが証明される。前蹴りが伸びる伸びる。まるでタイ人みたいだ。ジャブは、速い鋭い伸びる。組んでの横からのヒザも抜群。高く上がったヒザが、小林さんの側頭部を襲う。これには後ろで観てたユタポンもびっくり。「こいつ強いよぉ〜、小林危ないよぉ〜!!」。タイ人が、いわゆる外国人を褒めるところなど初めて聞いた。
直線的な動きだけではない。柔らかいウィービングに、サイドステップもなめらかだ。ミドルキックも、タイ人レベルではないが、高い水準にある。わしが今まで観たタイ人以外のキックボクサーで、余裕で最高。デニー・ビルやムラッド・サリなど、問題外だ。完成度の高さでは、デッカーよりも上だと思う。
そんなスカボロスキー、1R中盤も過ぎると、いよいよエンジン全快。タイでKOの山を築いたパンチの連打を出してきた。槍とも違う、鎌とも違う、まるで鞭が連続して襲ってくるようなパンチが小林さんを襲う。早くも棒立ちになりかける場面も見えた。
1R終了時点で、小林さんの勝利を想像出来た人は、ほとんどいなかったはずだ。かくいうわしも、「こりゃ厳しいだろ」と思った。唯一、ローはよく当たった。このフランス人の弱点はローか?
しかししかし、そんな単純ではないのがキックボクシング。2R、スカボロスキーは「パンチで行ける」と思ったのか、パンチで打って出る。これは、もちろん小林さんも歓迎。火の出るような打ち合いがスタート。そして、その中で小林さんが繰り出した右ストレートがジャストミート。崩れ落ちるスカボロスキー。「おい!いったい何が起きたんだ??」という表情を浮かべて立ち上がる。だが、足はふらついている。「ここを逃すか」とばかりに、小林さんが早くも勝負をかける。スカボロスキーもこの野郎とばかりに打ち合いに応じるが、すでに「効いちゃってる」スカボロスキー。時折り小林さんもぐらつくが、それ以上にぐらつく。そして、続けざまに二つのダウンを奪われ、ジ・エンド。
心からのガッツポーズの小林さん。スカボロスキーに向かって「なめんなよ!」とばかりに罵声を浴びせる。なんと、セコンドの須田氏までもが、スカボロスキーに怒声。真面目に減量すらしてこなかったフランス人の鼻をへし折って、ざまあみろだ。そして、マイクを取った小林さん、
「今、この瞬間、俺が世界最強!」
うわ、かっちょええ。こんな試合見せられて、文句言えるはずもありません。いわゆる「ムエタイ」だったら違うかもしれんが、「キックボクシング」的価値観から言えば文句ないでしょう! 異議のあるライト級の方、スカボロスキーとやってみなよ。やれるもんなら。そんくらい凄かったこのフランス人。そして、それを倒した小林さん、もっと凄い! いやあ、いいもん見せてもらいました。
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