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written by Keis
with the idea of Hiroki Maki
Ricordanza II
六分儀ゲンドウ、彼の人生は不運と挫折の山でもある。
実家の六分儀家は極普通の一般家庭だった。が、彼が幼い頃突然彼の両親は交通事故で鬼籍に入った。
しょうがなく彼は親戚に引き取られたが薄情な親戚が多く、彼自身内気であまり人に懐かなかったため、親戚中たらいまわしにされた。
最後には血が本当に繋がってるのか疑わしいくらい遠い血縁の家に預けられたが、そこでの扱いはそれまでにも増して酷いものだった。
彼は完全に邪魔者扱いされ、その家の子供には苛められ、保険など彼に属するべき資産は全て取り上げられた。
しかし、ゲンドウは幼いながらもこの家を追い出されたらもうどこにも行く所がないと判っていたので、何をされても文句も言わず我慢した。
しかしその態度が不気味に見え、更に苛めがエスカレートするという悪循環をも生み出した。
彼はその家の子供のお陰で学校でも苛められ、散々な目にあっていた。
しかし彼は学校に通いつづけた。幸か不幸か、彼は勉強がよく出来た。勉強以外することが無いからでもあろうが。
成績がその家の子供を上回ったことで更に扱いは悪くなったが、彼は気にせず勉強しつづけた。学問だけは彼を裏切らないからだった。
幼児期の酷い体験により、彼は完全に人間不信に陥っていた。その分学問への依存は大きい。
そして、学問以外何に対しても割と執着心が薄かった。彼が欲しがったものは経験から言って、いずれとりあげられるだろうからである。
彼は高校三年間、必死になってバイトをして、大学入学と同時に家を出た。勿論学費は奨学金、生活費はバイトでなんとかした。
自分が育った家からなるべく遠い国立大学、しかもそれなりのレベル、という基準で受験した彼が通うことになったのは京都大学である。
誰とも親しくせず、わき目も振らずに勉学に勤しんだ。担当教授の冬月という人にはその才能に敬意らしきものを抱いたが、所詮彼も他人だった。
そして彼が大学院に入った年、彼の人生における一大事件にあった。碇ユイとの出会いである。
良家のお嬢様であるユイが冬月教授の研究室に入り浸り、ゲンドウとの接触を持ったのであった。
最初、当然ゲンドウは彼女を無視した。彼女も他人だ。彼を傷つける存在なのである。
しかしユイは何が気に入ったのか、ゲンドウに対して猛烈なアタックを開始したのである(その理由は京大七不思議の一つに数えられている)。
二人の付き合いは実に色々と紆余曲折を経て、山あり谷あり、晴れの日も雨の日も、という感じだったのだがそれは本題ではないのでここでは省略する。
とにかく、やがてゲンドウの頑なな心もユイにだけは少し開かれ、出会いから二年後、二人は学生結婚したのだった(急いだのは出来ちゃったから、という噂もある)。
やがて息子シンジも生まれ、幸せ一杯の家庭のように見えたが、それはどこか不安を孕んでいた。
有能すぎるが故に学会では異端児扱いされ、学内では排斥される、それらの事態についてはゲンドウは慣れっこだったので特に問題とは感じていない。
問題なのはやはり心の底からはユイを信じきれないことだった。
どうしてもユイも他人であり、いつか自分を傷つけるのではないかという意識が先立つのだった。
それはユイがシンジを可愛がる姿によって更に助長された。シンジにユイが奪われるのではないか、と。
ゼーレが誘いにきたとき、彼は研究が邪魔されたことに怒りを感じて彼らの提案を断固拒否した。
その後、ユイが人質に取られたことを知ると、彼は速やかに折れた。
やはり唯一彼が心を開いた相手であるユイを彼らに殺させるわけには行かなかった。
それに最初は反発していたものの、自由に研究できる環境、というのも実は彼を魅了していたのだ。
そしてラオスまでやってきた彼は興味ある研究対象を手に入れた。EVA、そして適格者たるレイである。
彼は研究に没頭した。そして先のユイとの不幸な行き違いが生じたのである。
これは彼がやはりユイより学問を愛している証左となった。そして彼はユイに冷たくされたことによって、やはりユイが他人であることを確信したのである。
2007年、遂にゲンドウはEVAのシンクロについての理論を確立した。
これには葛城博士の協力も大きかった。
彼はこの頃S2機関をメインにEVAのハードウェアの研究に没頭していたが、レイのシンクロ試験中、コアが妙な波長の信号を発していることに気がついた。
これを追求していくうちに、この波長に似た波長の信号を発している存在に気がついた。レイである。
彼はたまたま暇が出来た時、このことについてゲンドウに話し、ゲンドウはこれに大いに興味を持った。
そして研究を重ねた結果、A10神経のシンクロとの関係が発見された。
これは脳内において恋愛感情を司ると言われる神経の名称なのだが、レイのA10神経細胞が常人と比べて異常に肥大していることがわかったのである。
これと超能力がどう結びついているのかはわからないが、少なくともなんらかの関係があるであろう事は容易に想像できた。
そしてこれにより、ゲヒルン、ひいてはゼーレの全メンバー及びその家族がMRIによって検査された。
その結果、一般的に子供はこの神経細胞が大人より大きいことが判明し、中でも三人だけ、他の子供たちと比べて大きい細胞の持ち主がいた。
しかしながら、その三人にしてもレイのそれには遠く及ばなかったのである。
とりあえずその三人については貴重なパイロット候補ということで直ちに、そして密かに護衛がついた。
そして本当にA10神経がEVAとのシンクロにかかわりがあるのかの試験が行われた。
つまり人間のA10神経細胞を人為的に肥大化してシンクロするか確かめようとしたのである。
この実験は失敗に終わった。というより、実験にまで至らなかった。人為的にA10神経細胞を肥大化させられた被験者が発狂したためである。
その後二回この実験が行われ、二回とも同様の結果になったのでこの方法は諦められた。
事ここに至って研究者たちは大人の搭乗を半ば諦め、興味の対象は三人の子供たちへと移った。
EVAは三体、既にパイロットは一人いる、ということは3人のうち一人は失っても構わない。
とまあ、こんな思考に沿って、3人の中で一番A10神経細胞の肥大化が進んでいる子供がシンクロ試験に臨んだ。
結果は失敗。その子もまた精神汚染を受けて発狂した。
残り二人の子供で試した所で同じ結果に終わることは目に見えていた。
そこで、一旦この子供たちは脇において、まずこのA10神経についてより詳しく調べることにした。
その結果判明したのは、恋愛、または親愛、を持つ二人の人間の間でシンクロに必要と思われる波長の信号を出すことである。
これは相手に対しての精神的な干渉を伴うことも判り、今までの被験者たちが発狂したのはただ精神汚染されただけではなく、EVAに「食われた」ことも判明した。
そして、この時、六分儀ゲンドウは悪魔のような計画を思いついたのである。
ノックの音がした。答えるより先に扉が開く。
「キール所長。」
「六分儀君。あれのパイロットの選出方法についてと聞いたが?」
ゲンドウに礼儀作法など言った所で無駄なことは既にわかっている。小さく溜息をついて、本題に入る。
「はい。あれの操作にはいわゆる超能力と呼ばれるものが必要であることは先程提出したシンクロ理論によって既に明らかです。」
「うむ。だがその肝心な超能力者がいない。」
キールの声は無念そうだ。
「はい。しかしながら小さい子供には超能力を持つものが、それほど多くはありませんが、存在します。」
「では、子供なら乗れると?」
キールは身を乗り出す。が、ゲンドウはあっさりとその希望をも断った。
「いえ。第一適格者のような強大な力を持たない限りそれはありえません。」
「それでは話は堂々巡りだ。」
「そこで提案したいのがマルドゥク計画です。」
「マルドゥク計画?」
「ええ。マルドゥクは母ティアマトを引き裂いて倒し、その死体を使って世界を創造したといいます。」
「私はそんなことを訊いている訳では・・・!ひょっとして君は・・・?」
「ええ。いわばシンクロ補助理論ですが、あれに微弱な能力を持つ子供の母親を接触させて取り込ませ、子供の能力の増幅器となさしめるのです。
A10神経は恋愛感情を司りますが、この場合子供が対象であるため最も恋愛に近い親愛の情を抱く親をEVAに食わせればいいのです。」
「なんとまあ、君は新世紀のメンゲレ
になろうというのか。で、超能力を持つ子供はいるのかね?」
「候補として私の息子とラングレー氏の娘がいます。」
「研究のためなら子供も妻も差し出す、か。たいした男だよ、君は。判った、その計画を承認しよう。直ちに進めてくれたまえ。」
キールの口元が一瞬皮肉げに歪むが、すぐにそれは消えた。
「判りました。それでは。」
ゲンドウが退室し、広い室内に一人残ったキールは暫くして額の前に両手を組んだ。
「天よ、我らを救いたまえ・・・」
ゲンドウは適格者に対する全般的な研究を指揮していたが、ユイは別のセクションで働いていた。
EVAとのシンクロには超能力が必要とまだ判っていない時点で設置された部門だが、その研究内容は主に大脳生理学だった。
人は自らの脳を100%使いこなしていない。使用されず眠った部分が多く存在する。
そんな部分を使って行われる、かつて人から失われた能力の一部がシンクロには必要なのではないか?
そんな発想から研究は行われていた。
具体的な研究内容、それはもちろん人体実験となる。電気や磁気で直接脳を刺激するのだ。
人間の脳は未だ人の理解する所ではなく、多くの犠牲者を出した。彼らこそ、新世紀のメンゲレなのである。
そんな倫理感の欠片もない研究を行っているだけに、犠牲も多いが収穫も多い。
赤外線が見えるようになったり、可聴域が大幅に増大したり、反応速度が大幅に上昇したり、記憶力がアップしたり・・・
そんな状況で、ユイはシンジを溺愛する余り彼女の手でシンジを改造していた。
おかげでシンジの反応速度や記憶力には目を見張るものがあった。
それによってシンジは勉強がよく出来るようにはなったが、反応速度が上がっても筋肉が着いて行かないので体力面は余り発達しなかった。
また、ユイの意向で感覚器官の改造は行われなかった。しかしシンジが持って生まれた能力とあいまってシンジがちょっと人間離れしているのは否めなかった。
第七世代コンピューター・MAGI、これは有機コンピューターである。ニューロコンピューターとも呼ばれるが、生物の脳神経細胞を使用した物である。
日本で前世紀末に第五世代コンピューターと銘打って知能を実現する新世代コンピューター開発計画があった。MAGIはこの流れでもある。
前世紀の半導体利用スパコンはスイッチングに50ピコセカンド(10−12s)かかったが、MAGIではパルスレーザーを利用した光学スイッチを使用し、これは切り替えに25フェムトセカンド(10−15s)しかかからない。
判り易く言うならばクレイのスパコンの2400倍の計算速度である。
更に赤木親子は新しい概念を構築した。3台同じ物を作りこれらの合議制としたのである。其々に異なる思考方法をセットしておき常に三者で協議するのだ。
MAGIの完成を持ってライフワークの終焉と見なしていた赤木ナオコだが、MAGI完成の一年後、更なる次世代コンピューターを模索し始めた。
どうやら手持ち無沙汰になったというか、つまるところ彼女は閑だったのだ。
なんと、目標はゲノム・コンピューターをすっとばして量子コンピューターである。ゲノムコンピューターは既にEVAに搭載されているから、らしい。
シュレーディンガーの猫の例えでわかるとおり、量子は0と1両方の状態を同時に取りうる。
これが計算速度に与える影響は計り知れない物があり、これが完成した暁にはMAGIでさえ算盤のように見えるだろう。
ナオコはこの意欲的テーマに夢中になり、MAGI管理はすべてリツコに押し付け、自分は再び研究三昧の日々に戻ったのだった。
前世紀末には既に(民間では)5qubit のプロセッサは開発されていたが、高度な利用をするには大体300qubit の並列プロセッサ辺りが必要と思われていた。
ナオコは400qubit のプロセッサを並列に積む事を目標に、日々研究に勤しんだのである。
そのコンピュータは仮称<アインシュタイン>と呼ばれる事になる。
東方の三賢者より遥かに賢いのだから・・・といった理由の、ナオコによるブラックユーモアだった。
ある日、完全に別居状態(と言ってもゲンドウが自宅に帰ってこないだけ)のユイの元をゲンドウは訪れた。
「ユイ。」
「あら、何の御用ですか?」
ユイの反応は極北の吹雪のように冷たい。
「頼みがある。」
「何を今更・・・離婚ですか?それならすぐに応じます。それ以外なら全てお断り。」
「EVAに乗ってくれ。」
ゲンドウはユイの言うことを聞いているのかいないのか、勝手に話を進める。
「・・・何故私が自殺しなければならないんですか?」
ユイの反応は冷たいを通り越して殺気に近くなってきた。
「シンジのためだ。」
「・・・どういうことです?」
ユイの唯一といっても良い関心事であるシンジの話題になり、ユイの殺気が少し和らいだ。
ゲンドウは相変わらず淡々と状況を説明した。
シンジが弱いながらサイキックである可能性があること。
サイキックしかEVAとシンクロ出来ないこと。
ほっておいたらいずれEVAに放り込まれてシンジが死ぬこと。
「それで、何故私がEVAに乗って死ぬとシンジが助かるのです?」
「お前はEVAに吸収される。それによってシンジがEVAとシンクロする手助けが出来るのだ。」
それからゲンドウはユイにA10神経とシンクロ理論、そしてシンクロ補助理論について説明した。
彼が急にユイの所に来たのは、今日、実験準備が整ったからだ。
シンクロ補助理論を発案して3年、予想外に難航したがMAGIの開発成功によりようやく軌道に乗り、一年後の今日、遂に完成したのである。
ゲンドウの説明が終わり、しばらく沈黙が続く。やがてユイが口を開いた。
「判りました。明日、やりましょう。」
「そうか。」
ゲンドウは短くそう返事をすると、さっさと出て行った。
ユイもすぐに立ち上がると部屋を出た。
ほぼ同時刻、ラングレー家でも大筋同じような会話が交わされていた。
to be continued...
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