written by Keis

with the idea of Hiroki Maki



Malédiction



 ところで、LASER、というものがある。

 LASER(レーザー)とはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光の増幅)の頭文字を綴って作られた言葉。

 ある物体(例えばルビー結晶)の原子が刺激を受け、電子が活性化された状態と休止している状態の間を振動する事で、このエネルギーを集中した赤外線波として放射した物である。

 アメリカにおけるレーザーの軍事利用の歴史は半世紀以上にも及んでいる。旧ソ連においても同様である。

 1966年のガスダイナミクスレーザーを皮切りに電子放電レーザー、フッ素と水素の化学レーザーが次々と開発された。

 米陸軍は車載型電子放電レーザーMTU、空軍は旅客機搭載型ガスダイナミクスレーザーALL、海軍は艦載型化学レーザーシーライトを次々と作成したが、いずれもあまりの能力の低さにすぐにお蔵入りした。

 しかし、80年代に入って当時のレーガン大統領はソ連(当時)の核ミサイル攻撃を阻むべくスターウォーズ(SDI)計画をぶち上げた。

 これは宇宙空間での敵ICBMの撃破を目的とした物である。実に色々な手法が研究された。

 化学レーザー 、 X線レーザー 、 パルス核レーザー 、 レールガン 、 粒子ビーム 、 ヨウ素レーザー 、 短波長パルスレーザー 、 自由電子レーザー ・・・

 挙げれば切りが無いとはこのことである。

 威力を増すには元の出力も大きくする必要がある。宇宙空間に大発電量の発電機を打ち上げるには非常に金が掛かる。しかも威力を増すとビームの幅が狭くなる。

 地上で大発電量で作り出して衛星軌道上の鏡で反射させる案も出たが、鏡の反射面の精度の制御がほぼ不可能である。

 使い捨ての爆発発電機は打ち上げに手間がかかるし、これまた使い捨てのX線レーザーは大気圏外での核爆発がEMPスプラッシュを起こすので自国防衛には使えない。

 そこで有望そうなのはグレーザー、ガンマ線である。

 レーザーのように電子が振動するのではなく、原子核そのものが振動する。

 例えを用いるならば、電子が野球ボールだとすると家に投げてもガラスが割れるくらいだ。

 しかし陽子や中性子を投げつけた場合、車を投げるのに等しく家ごとなぎ倒されてしまう。

 それぐらい両者には差があった。その波長はÅ以下、ビーム幅は約4Km、出力20兆W。

 アメリカは何とか極秘に試作品を作り上げた所でデタント、冷戦の終わりを迎え試作品はひっそりと倉庫の片隅で埃を被った・・・筈だった。

 この緊急事態において贅沢なことは言えず、アメリカは使えそうな物を片っ端から戦線に投入したのだ。

 ヨーロッパ各国や日本も同様、どこからか秘蔵の怪しげな兵器を引っ張り出してきた。

 強力な武器は宇宙空間での使用を想定した物が多い、ならばなんとかしてあの人型兵器を宇宙におびき寄せる必要がある。

 そこでまず彼らは世界中の対軌道輸送力を使用してありったけの戦力を軌道に打ち上げた。

 彼らの打ち上げ基地はこの戦いの冒頭に破壊されてしまったので使えない。そこで彼らは保有する全SSTOを輸送機に改造したのだ。

 予想通り、緒戦で破壊された人工衛星の破片などのスペースデブリによって使用前に破壊されてしまうモノも多かったが、多少の損害は無視された。

 そして彼らはまず最初の火蓋をFOBSで切って落とした。人工衛星から核兵器を地上に向けてばら撒いたのである。これと同調してICBMも弾頭をばら撒く。











「異様な物体群が領空に差し掛かっています。高度5万メートル、速度マッハ13!」

 その報告に一瞬発令所に沈黙が広がる。

「高度と速度をもう一回、お願い。」

 そう聞き返すミサトに、相手は咳払いしてからもう一度報告した。

「高度5万メートル、速度マッハ13です。」

「なんてこと・・・」

 ミサトの呟きに反応するようにリツコが言った。

「向こうさんがとち狂ってスペースシャトルを再突入させたのでなければ、あれは弾道弾かFOBSね。」

「すぐ初号機と弐号機を迎撃に向かわせて!零号機は後詰。」

「了解。」

 もう最近は何度も宇宙まで上がっているため青い地球にも感動することもなくなってきた子供たちは、レーダー画面に多数の目標を発見、迎撃を開始した。

 空気が無いため音が伝わらない真空空間において、爆発の火花が音もなくいくつも連続して花開く。

 多国籍軍は頃合を見計らって、数多の核弾頭をATフィールドで叩き潰すのに気を取られた隙を突いて弐号機をグレーザーで襲う。

「うっとうしいわね、羽虫みたいにばらばらと、って、きゃあ!」

 だがアスカにとって幸運にも、そして多国籍軍にとって不運にもその不可視の光線は丁度彼女が展開したATフィールドに当り、はじかれてしまった。

 それも長い間照射されれば、破られてしまっただろうが、試作品ゆえの初期不良か、グレーザー発射衛星の方が先に爆発してしまった。

「アスカ!大丈夫?!どうしたの、一体?」

「判らない、だけど何らかの光学兵器、恐らくグレーザーね。」

「ぐれーざー?それって・・・」

Fare! Peligro! 危険! Danger! Gefahr! Pericolo! опасность!
Fare! Peligro! 危険! Danger! Gefahr! Pericolo! опасность!
Peligro! 危険! Danger! Gefahr! Pericolo! опасность! Fare!
Peligro! 危険! Danger! Gefahr! Pericolo! опасность! Fare!
危険! Danger! Gefahr! Pericolo! опасность! Fare! Peligro!
危険! Danger! Gefahr! Pericolo! опасность! Fare! Peligro!
Danger! Gefahr! Pericolo! опасность! Fare! Peligro! 危険!
Danger! Gefahr! Pericolo! опасность! Fare! Peligro! 危険!
Gefahr! Pericolo! опасность! Fare! Peligro! 危険! Danger!
Gefahr! Pericolo! опасность! Fare! Peligro! 危険! Danger!
Pericolo! опасность! Fare! Peligro! 危険! Danger! Gefahr!
Pericolo! опасность! Fare! Peligro! 危険! Danger! Gefahr!
опасность! Fare! Peligro! 危険! Danger! Gefahr! Pericolo!
опасность! Fare! Peligro! 危険! Danger! Gefahr! Pericolo!

 だがシンジにその質問を言い切る時間は与えられなかった。

 彼らが混乱している隙を狙って放たれたレールガンの砲弾が偶然にも初号機の腹部装甲の隙間に直撃したからであり、それによって・・・

「ぅぐ・・・ごふっ・・・!」

血だらけ(笑)


パイロットに重大な問題発生!パイロットに重大な問題発生!パイロットに重大な問題発生!
パイロットに重大な問題発生!パイロットに重大な問題発生!パイロットに重大な問題発生!

 エントリープラグではNervによって後付けされた身体機能監視プログラムがパイロットの危機を喚き立てていた。

「シンジ・・・?シンジ!」

 モニタを見たアスカはシンジが口から血を吐き出すのをモロに目撃してしまった。

 よく知られているように、ある物体の運動エネルギーはmv/2 である。すなわち、質量より速度の方が遥かに影響が大きい。

 そしてレールガンの砲弾は秒速10Km、すなわち光速の0.003%という猛速が出せるのである。

 例え砲弾が小さな物であろうと、それが持つエネルギーはとんでもない量であった・・・初号機を貫通するぐらいの。

 シンジは初号機と90%台のシンクロ率を誇っていた。つまりそれだけEVAからのフィードバックも大きい。

 NervにもEVAの装甲を破るような兵器は無かったのでシンクロしてのEVAへの深刻なダメージがパイロットへ与える影響については未知だった。

 そしてそれはATフィールドという無敵の盾があるため等閑に付されてきたのだが、それが重大な誤りである事が今このとき露呈してしまった。

 なんと、一体どんな原理によるものか、シンジにも初号機と同じ傷がついたのである。

 全くの謎だが、シンクロしているパイロットだけならともかく、パイロットが着ているプラグスーツにまで穴があいている。

 そしてそこから覗き見える中には・・・

 表皮、真皮、皮下脂肪、筋肉を突き破り、正中線よりやや左、柔らかい腹部に大きな穴が開き、内臓を食いちぎり、背中に無残な破孔を開けていた。

 その怪我を見て取ったリツコがミサトに声をかけるより早く、ミサトは命令を下していた。

「アスカ、初号機を確保して可及的速やかに本部へ帰還! レイ、アスカ達が取りこぼした弾頭の迎撃、任せたわよ。」

 その後ろでリツコは医療班に連絡を入れていた。

 アスカは一瞬呆然とした所で、ミサトの叱咤するような命令を聞いた。

 既にFOBSやICBMは粗方攻撃を終えていたので、残りのいくつかの弾頭は地上のレイに任せアスカはシンジの初号機を大気圏に突入する前に捕まえた。

 いくらEVAでもATフィールドも張らずに突入しては摩擦熱に耐えられないかもしれないのである。

 レールガンは使い捨て式の爆発発電機を利用するので二発目以降を気にする必要はない。

 アスカは大急ぎで本部へと向かった。











 汚れた大気圏の上、高度590Kmを周回しているそれは、10年の歳月と12億ドルの費用を費やして製作された。

 ―――――ハッブル宇宙望遠鏡。

 激変する宇宙空間の温度差に耐える超低拡張ガラス製235cmレンズを備えるそれの外見は、目隠しをした背の高いビール缶と言ったところだ。

 見かけこそそんなだが、地上設置型の望遠鏡と比べて50倍の倍率を持ち、映像は10倍鮮明で、7倍遠くが観測できた。

 観測データはゴダード宇宙センターに送られ、更にジョンズ・ホプキンズ大学の宇宙望遠鏡科学研究所にまわされ、詳細な分析と調査が行われる。
スペースコマンド S  P  A  D  O  C
 だが、今回はリアルタイムの衛星中継でシャイアン山脈にある合衆国 宇宙軍司令部 宇宙防衛作戦センター へと送られた。



 ハッブル望遠鏡で戦況を観察していた多国籍軍指揮官たちは狂喜乱舞した。

 無敵のバリアを持つとは言っても、操るのは人間、飽和攻撃によって隙も出来るだろうという彼らの読みが当り、悪魔のような人型兵器2体を戦闘不能に追いやったのである。

 しかも囮である核弾頭は一発も爆発しなかった。

 多国籍軍艦隊へのゼーレによる核攻撃は余りにも死傷者数が多いために各国政府によって報道管制が敷かれていた。

 何故ならこれは先のN2弾頭攻撃の報復攻撃である事が明らかであり、ゼーレに報復能力があることを事前に察知できなかった無能を露呈するからである。

 しかも、当然この核攻撃によって死亡した乗員の遺族らを中心とした反戦運動が燃え盛るだろう。

 勿論、船が何隻も存在しなくなり、乗員も生き返らないので完全な隠蔽は望めないが、短期的な問題とはならない。

 N2弾頭が頻繁に爆発していたので、各国の核実験監視を任務とする地震計に記録されたデータも誤魔化せたのである。

 だが、これが裏目に出ていた。多国籍軍が(建前上既に放棄していたはずの)核弾頭を先制使用する口実が無かったのである。

 もともとゼーレによる核使用の隠蔽に反対していた軍部は核弾頭使用許可を政府からもぎ取れなかった。

 宇宙空間での爆発ならばいくらでも事実の隠蔽は可能だという読みだったのだが・・・。

 よって軍部は万一のことを考えて弾頭を不活性化して爆撃を敢行したのだが、何かの間違いでNERVが迎撃し損ねた弾頭が爆発する可能性もあった。

 つまり、ある意味NERVの迎撃に頼る面があったことも否めなかったのである。

 それはともかく、彼らは直ちに計画の第二段階を開始した。海上で待機していた戦闘機、爆撃機に命令が下った。

(これらの機体には、万一のEMPスプラッシュに備えて電子回路を保護する処理を受けていた)











「敵機多数確認、全方位からです!」

 オペレーターがレーダーから得た情報を報告する。

「ちっ、力押しにきたか。空軍に連絡、なるべく遠くで迎撃させて。敵にはもう極超音速ミサイルは無いはずよ。普通の巡航ミサイルだったら迎撃可能でしょ。

 余った奴はレイに迎撃させて。それとアスカも急がせて。初号機を回収し次第弐号機もミサイル迎撃!」

「「了解。」」

 ミサトは一渡り命令を下し終えるとリツコに近寄って小声で尋ねた。

「初号機とシンジ君はどう?」

「初号機の損傷はたいしたことないわ、割と短期間で直せる。けれどシンジ君はそうはいかないわね。再出撃なんてとても無理。」

「くそっ!奴らこれで決めるつもりね。例え本部に直撃が出なくても奴ら狙いつけずに撃ってくる、国中満遍なくN2なんて喰らえば国ごと物理的に無くなるわよ。」











 レイにはシンジに何かあったのがすぐに判った。

 彼女に悲鳴のような苦痛を訴える叫びが一瞬強烈に襲ってきた、そして次の瞬間にはそれが消えうせたのである。

 それはつまりシンジが大怪我をして、なおかつその苦痛に気を失った事を示していた。

 レイの顔色が、普段にもまして白くなる。

 唇が戦慄く。

 体が震える。

 シンジを失う。

 そう思っただけで身も世も無い恐怖がレイを襲った。

 LCLにレイの涙が一滴溶けた時、本部からの命令が届いた。

 レイは恐怖を怒りへと変換し、いつにない勢いで戦場へと向かった。











 アスカはシンジに何があったのか、その場で見ていた。

 会話の途中でいきなりシンジが血を吐く。

 モニタには無残に穴の開いたシンジが写る。

 口と穴、双方から血が大量に飛び出し、LCLが普段より色濃く染まる。

シンジ?

 無意識のうちにシンジの名前が口から漏れ出る。

「シンジ!」

 そして思いっきりシンジに呼びかけた。

 その声量によってシンジの目を覚まそう、もしくは自分を悪夢から目覚めさせようとでもいうかのように。

 しかし、シンジは答えず。

 かわりにミサトの叱咤が聞こえてきた。

 それによってアスカは未だ戦闘継続中であることを思い出し、初号機が地球へ向かって落ちていくのを発見し。

 慌てて初号機を確保しに行く。

 だがその行動に移る一瞬前、シンジに痛撃を与えた敵衛星群を呪詛せんばかりの勢いで睨んだ。

ぼっ・・・ぼっ・・・ぼっ・・・・・・ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!
 冥土の土産、とばかりにアスカの邪眼は数多の人工衛星を発火させたのだった。











 慌しく迎撃を指揮する発令所、だがその能力にも限界はあった。

 数に劣る味方はほぼ全ての戦闘機を撃ち落され、SAMもほぼ撃ち尽くされ、レイも活躍したが、それでもまだ敵ミサイルは生き残ったのだ。

 国中満遍なくとは行かなかったが、主要な基地は全て破壊され、ダムや発電所、交通結節点なども容赦なく吹き飛ばされた。

 それに付随して人的損害も膨大な数に上る。だが、都市などの防衛には辛くも成功した。当然本部もである。

 これはMAGIが弾道計算をして人口密集地区へと向かう弾頭を優先的に迎撃したためであり、途中から参戦した弐号機のお陰でもある。

 敵は発電所を狙う事でこちらの電力を絶とうとしたのだろうが、なんといってもEVAとS2機関があるのでこれは無駄な事だった。

 しかし、ダムの破壊は大いに痛かった。当然のように下流域一帯が時ならぬ濁流・泥流に襲われ、多数の死者を出したのである。

 もっとも、ゼーレの広報はこの「多国籍軍による悪逆非道な大虐殺」をおおいに喧伝したのだが。

 基地の破壊は最早大した意味は持っていなかった。

 ゼーレの空軍及び防空部隊はほぼ全滅した。よって基地があっても使用者が居ない。メンテナンスの必要も無い。

 陸軍の主な部隊はゼーレ国内にはいなかったので無事であった。彼らは占領先の国の基地を使えばよい。

 他の場所に比べて襲ってきた弾頭の数が多かった本部もEVAとATフィールドのおかげでまたも無傷ですんだ。

 初号機の修理には多少の時間がかかる。専属パイロットの容態は予断を許さないほど厳しいものだ。

 全体的に見て、致命的な損害を受けているわけではないのだが、ゼーレ側のジリ貧の感は拭えなかった。











 医師達は緊急治療室にシンジが運ばれてきた途端に彼らの仕事が長くてつらいものになる事が判った。

 今回、主治医のリツコは専門職である彼らに処置を依頼した。彼女自身忙しい上、最近はあまり臨床に携わっていなかったためである。

 彼が酷い状態である事は素人目にもはっきり分かった。

 シンジはほぼ昏睡状態で、腹部から大量の血を流しつづけており、肌は蒼褪め、呼吸は弱く不規則だった。

 専門家から見ると、彼は生命に重大な危険があり、一瞬の遅滞無く治療に取り掛からなくてはならなかった。

 彼の大量の出血だけでもショック状態にあることが判ったが、彼の蒼褪め具合はそれを疑問の余地無く証明していた。

 血圧はほぼ0/0で、彼の血液循環機能がほぼ停止している事を知らせていた。

 彼の糸のように細い呼吸はショックの結果生じた肺とそれを取り巻く筋肉組織の間のエアーポケット、つまり気胸が肺に圧力を加えており、なかば潰れていることを示唆していた。

 もちろん、シンジの場合は空気ではなくLCLが入り込んでいる。

 状況は呼吸困難を示しており、外部からの治療によってこれを緩和しない限り、確実な死へと繋がっていた。

 この場合の優先順序はまずX線や開腹手術による内臓への怪我の断定より前に、彼の生命兆候を安定化することだった。

 主治医はすぐに彼のアシスタントたちへ素早く断定的に指示を出した。

「MAST、RBCパックを7ユニット、太い輸血管、吸引器を用意、急げ!」

 医療のプロが時計仕掛けのように無菌状態で働く様は一般的だが、命を救う戦いが際どく張り詰め混沌としており混乱した冷や汗物である救急治療室より速い所は無い。

 彼らが行っているのはとにかくシンジを手術台の上に載せるまで死なせないための治療だった。

 気胸からLCLを抜くにあたって、患者を呼吸させつづける必要がある。つまり完全閉管胸郭開口術式の必要があった。

 肋骨に沿って切開、ケリー鉗子で皮下組織を広げる。

 そして壁側胸膜を鉗子で突き破り十分な大きさに穴を広げてから鉗子を抜き取り、指を突き入れる。

 肺と横隔膜に触れ、胸腔内に達しているのを確認してチューブを差し込む。

 医師はその状態で患者を観察し、安堵の溜息をついた。患者の呼吸はより強くなり、肌の色は大幅に改善された。

 医師はチューブの周りの皮膚を縫合し、密閉状態を保つ。

 まだこれから非常に長い夜が待っていたが、とりあえずシンジは死に抗う機会くらいは手に入れ、手術室で開腹し、体内がどうなっているのか見る事となった。





一晩中、手術中ランプは付きっ放しだった。






to be continued...







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