written by Keis

with the idea of Hiroki Maki



Heröide funébre - Fortsetzung



「な・・・ん、ですって?」

 アスカが細かく震えながら言った。当然恐怖から、ではなく怒りから。

『保険をかけておくのは必須事項だとお前にも教えたと思ったがな、アスカ。』

 にやけながら答えるロバートに神経を逆なでされる。

「そんなことが、怖い、とでも思うの? 誰か助かるなら、それぐらい大した事じゃないわよ。」

 一語一語区切るように、食いしばった歯の間から声を出すアスカ。

 それを聞いて更にシンジがぴくりと反応したが、何も言わず、ロバートの笑いが響いた。

『お前はもうちょっと頭が良いと思っていたんだが・・・勿論そんなことはわかっているさ。

 ・・・妙な動きをしたら他の二体を吹き飛ばす、と言っているんだ。』

 初号機が震えた。

『そんなことは、させない・・・!』

『おやおや、何をいきがっている、サード? お前は自分のせいでアスカとレイ君が死ぬことに耐えられるのかな?』

 ロバートは見下すように言った。

『ふざけるな。僕のせいじゃない、あくまで殺すのはあんたなんだ、訳のわからん責任転嫁は止めてもらおう。』

 シンジは憎悪に目を光らせてモニタをにらみながらそう言った。

 それに対して実に楽しそうにロバートも応じる。

『ああ、そうかも知れないな。悪者は私さ。だが・・・

 それがどうした?

 どっちにしろ自分が動けば他の二人は死ぬんだ。これだけは変わりようが無い厳然たる事実さ。』

 シンジはぎりぎりと歯噛みした。

『そちらの要求は?』

 レイだった。普段より400%増しで、氷河の上で吹き荒れるブリザードの中飲むギムレットより、冷たい声だった。

『さすがはファースト、冷静だな。

 わたし達はヘリで北、中国へ向かう。お前たちはその護衛をすればいい。』

『了解。』

 シンジとアスカは何か言おうとしたが確かに落し所はそのへんだろう。

 どう虚勢を張ってみたところで仲間二人が死ぬことには耐えられない。それも事実だった。

 シンジとアスカは何か決心したように一つ頷いた。

 やがてジャングルの一部が開き、そこからヘリが出てくる。中にはキール、ロバート、ゲンドウの姿があった。

『行くぞ。ついてこい。』

 相手を完全に屈服させたと確信した者の傲慢な声。

 初号機は予備動作なしでフェムトグラム単位の反物質を作り出して放出、対消滅を起こした。

 ちょっとした大型爆弾ほどの爆発。

 だが狙いはそれではなく、対消滅の結果発生する電磁波だった。

『アスカ!』

 アスカは既に弐号機の顔を上げ、ヘリを睨んでいた。。

「これで遠隔爆破なんて出来ないでしょ?」

 有線で無い限り無線式起爆装置であるはず、それなら・・・というわけだった。

 レーザーや光による起爆は、それらが指向性であるが故に難しい。

 アスカはロバートに聞こえるはずも無いことを知りながら言った。

バイバイ、パパ。」

『アスカ――――――ッ!!!!!』

 ロバートの声が聞こえたような気がした。

ドン!

 狙い過たずアスカはヘリを炎上・爆発させた。

 それは彼女を呪縛しつづけた父という名の鎖からの脱出だった、その鎖を打ち砕いての。











 その頃、ナオコは『アインシュタイン』と共にいた。

「生まれたばっかりなのに、ごめんなさいね。」

 そう呟くと、ナオコは最後のコマンドを打ち込んだ。

 それとともに、今まで低くうなるように聞こえていた機械の稼動音が極端に小さくなり、当りの照明も暗く落とされた。

 『アインシュタイン』本体が浸かっている冷却水プールがまるごと密閉容器に収容され、周りを特殊ベークライトで固められ、巨大なクッションに包まれた上で地下深くへゆっくり運ばれる。

 これで誰かがパスワードと正しいコマンドを入力しない限り、この穢土へ降臨した新世紀の人造神は永遠に冬眠するのだ。

 自分ひとりがその手順を知ったまま、墓場までその秘密を抱いていくのも中々面白そうだが、あまり生産的とはいえない。

 彼女は一通のメールを認め、それを送信すると満足そうに微笑み大きく息を吐いた。

 ログアウトして席を立つ。戸口でドアを開く前に一回だけ振り向いた。

「・・・お休み。」

 そう一声かけるとナオコは部屋を出た。

 少し歩いてから手近な端末に近寄り、周辺区域の隔壁を全て閉鎖、間の空間にはベークライトを流し込む。

 これでそうやすやすと人手では近付く事は出来ないだろう。

 ナオコは肩の荷を下ろしたような気がした。

 目を閉じれば、瞼の裏にここに来てからの日々が走馬灯のように過ぎる。

 楽しい事もあればつらい事もあり、何よりも充実した日々だった。

 誰憚ることなく好きなだけ好きな研究に没頭したこの15年、悔いる事は何も無かった。

 いや、あるとすれば娘の育て方か。

 ふっ、と苦笑交じりに溜息をついて目を開くとそこにはいつのまにやら銃を構えたコマンドの姿。

 おそらく多国籍軍のコマンドだろう、捕虜にしようという行動は見せずにこちらに狙いをつけている。

(最後に煙草を一服したかったわね・・・)

 埒も無い事を考えたと思わず今度こそ苦笑した時。

ドドドンッ!

 ナオコの意識はそこで途切れた。











「アスカ・・・」

「・・・大丈夫。こうなることは判ってたんだから、平気よ。」

「じゃ、行きましょ。」

 しばらくアスカの気持ちを推し量って間を置いたが、シンジの呼びかけをきっかけとして各自行動を開始する。

 既にリツコたちからは本部脱出成功の暗号通信を受信しており、本部内の様子をモニタしたところ、多国籍軍コマンド部隊と激しく戦闘中らしい。

 ちなみに、本部周辺をサーチしてみたが米軍特殊部隊の痕跡は見つからないので、まだ彼らが生きているとしても脱出はしていないらしい。

 自分たちの司令が本部を見捨てて脱出しようとした事など知らない下級職員たちは己の任務を忠実に果たそうとしていた。

 勿論三機のEVAにも作戦部次席指揮官(軍出身)から日本や米国の首都を直接壊滅せよ、などといった多少無茶な命令が多数下されている。

 もっとも、そういった命令を聞くたびにシンジの顔が無表情になっていくのにレイとアスカは気がついていた。

「シンジ。」

『碇君。』

「二人とも、始めよう。」

「「・・・了解。」」

 シンジに声をかけるが、固い声の返事を聞いて二人とも自分の目標へと向かう。

 シンジは徐に、自分が地下から出撃してきた射出口にかがみ込むと、極限まで長く伸ばしたATフィールド製の剣によって地上からゲートまでの間の貫通孔を作り上げる。

 本部からの通信は全てカットしており、エントリープラグの中は静かなものだった。

 思い起こせば、自分の人生の大半はこの山の中にいた。物心ついたときには居たので、むしろ全人生と言ってもいいかもしれない。

 父に捨てられ、母に改造された。家族に関するいい思い出などありはしない。

 だが、大事な人たちに会えた。

 冷たい感じだが、自分たち適格者には柔らかく接してくれたリツコ。

 自分の命を賭けて救ってくれたミサト。

 明るく、いつも力強く自分を引っ張ってくれたアスカ。

 そして・・・衝撃的な出会いと再会を果たした美しく不思議で優しい少女、レイ。

 そんな、大切な思い出の詰まったNerv本部を・・・今ここに破壊する。

 憎むべき、敵を。

キュバッ・・・コォォォォォォオオオオオオオオオオオオオ


 シンジが深い悲しみとともに初号機に接した時、初号機は更なる段階へと進んだ。

 再びその背中に現われる光翼、だが、今回のそれは6対12枚だった。

 コクピットには、

 第三階梯、顕現

 の表示が(謎の言語で)現われる。

 シンジは10g弱の反物質を作り出し、貫通孔の一番底、ケージに送り込む。

 それと時を同じくして、ATフィールド製の翼を広げ、全速で退避する。

 対消滅によって山ごと吹き飛ぶ本部は、全力で展開したATフィールド越しに見ても綺麗だった。










 シンジが一筋の涙を流しながら本部を吹き飛ばしていた頃、アスカとレイは首都を強襲していた。

 治安維持活動のためにゼーレの陸軍は広く占領国内に分散配置されていたため、首都には警察しか存在しなかった。

(もっとも、ここ最近、農村部で被害が多発している事に関して農民が諸外国大使館前で抗議活動をしているので警備は厳重だった)

 まあ、幾ら軍隊が居た所でEVAを迎撃しようがない事は既に証明済みだったが。

 とにかく安心しきっていた政府及び軍首脳部を零号機と弐号機は効率的かつ容赦なく殲滅して回った。

 今まで周辺諸国でやった事を再現するだけであり、そこにはなんの躊躇いもない。

 こうして今まで襲撃してきた国々と同じく、ゼーレも一晩にして壊滅したのだった。











 三機のEVAは予定通りヴェトナム沿岸上空で落ち合うと東へと進路を取った。

 誰が言い出すでもなく、三人とも成層圏を突破、衛星軌道まで上がる。

 これで宇宙空間からこの丸い、青い、美しい地球を見るのも最後だろう。

 三人とも黙りこくって暫く地球を眺めていた。

「・・・二人とも、もういい?」

 シンジが静かにアスカとレイに問い掛ける。

 二人は頷いて答えた。

「「エントリープラグ射出!」」

 零号機と弐号機からエントリープラグが飛び出し、初号機がそれを腰のコンテナに括りつける。

「アスカ、もうお別れはすんだの?」

「・・・幾ら言ってもいい足りないわよ。適当に切り上げなきゃね。」

 ぶっきらぼうに、だが寂しげにアスカは答えた。

「・・・アスカ・・・」

 レイが気遣わしげに声をかける。

 だが、アスカは小さく微笑んで首を横に振った。

「大丈夫よ。・・・シンジ、それじゃお願い。」

「了解。」

 そう答えるとシンジは零号機と弐号機を深宇宙、宇宙の中心方向に押しやった。

 離れていく二機を暫く見つめる三人。

 やがて、初号機が再びその背中に光翼を煌かせ・・・二機のEVAに向かって反物質を吐き出した。

 凄まじい爆発が起こり、二機は修復不能なまでのダメージを負い、なおかつ壮絶なスピードで地球から遠ざかる。

 これでこの二機のEVAを回収する意味も手段も永遠に失われた。

 暫く三人で今まで共に戦ってくれた戦友に黙祷を捧げる。

「・・・バイバイ、ママ。」

 アスカの呟き声だけが宙に漂った。

 これで残るは初号機のみ。

 やがて初号機は地球へ向かって落下を開始、地球で一番深いといわれるマリアナ海溝の最深部の上の場所までやってきた。

 まずは二つのエントリープラグを海面に浮かべる。

「二人とも、大丈夫だとは思うけどまだプラグから出るのは待っててね。」

「わかったわ。」

「ええ。」

 二人から了承の返事を得るとシンジは浮かんでいるプラグから少々はなれたところで初号機を海底に向かってダイブさせた。

 だいたい沈降方向が一定してきた頃に腰に括りつけたコンテナを開ける。

 そこには色々な物が入っていた。

 核弾頭、劣化ウラン弾、毒ガス、病原菌・・・

 思いつく限りの劇物をリツコたちが用意したものだった。

 それらを一息に初号機で飲み込む。

 そしてフィードバックがくる前にエントリープラグを射出した。

 初号機が劇物で死んでくれるかは判らない、それもあって海底深く沈めるのだった。

 未だ、あれほどの重量の物体を深海の底からサルヴェージする技術は無いはずだ。

 それほどの技術レベルを得る頃には人間の理性も発達しているはず、そうでなければ戦争で絶滅しているはず、というのがリツコの読みだった。

 とにもかくにもシンジはエントリープラグで海上へと向かう。

 シンジにはアスカのような母を慕う気持ちなどなかった。

「さよなら、母さん。」

 そう一言呟いただけだった。












Harmonies du soir



バシュウッ

 そんな音を立ててプラグのハッチが開き、そこから明るい陽光が差し込んでくる。

 肺の中のLCLを吐き出してからハッチの外に出た。

「うわあ・・・」

 思わずそんな声が漏れた。なんとも言えず良い気分だった。生まれて初めて見る海。

 どこまでも続く青い海原、眩しい太陽の光、抜けるように青い空、涼しい風・・・そして近くに浮かぶ二つのエントリープラグ。

「もう大丈夫だよ。」

 そう通信を入れると、二人ともすぐに外に出てきた。

「うわあ、すっごい気持ち良い!」

「・・・」

 アスカが歓声を上げ、綾波が眩しげに目を細めた後僅かに目を見開いて驚いているのがわかる。

 と、何を思ったかアスカがプラグの上に立ち上がった。そしてこっちに手を振り声を掛けてくる。

「シンジー、見てなさいよー!」

 そう言うと、アスカは綺麗なフォームで海に飛び込んだ。そしてそのままこっちに泳いでくる。

 綾波もそれを見て無言で飛び込み、同じくこちらに泳いでくる。

「すっごい気持ちいいわよ。あんたも泳ぎなさいよ。」

 え・・・(汗)

 僕は思わず尻込みした。すると突然綾波の『声』が聞こえた。

『・・・入らないの?』

「い、いや。僕は遠慮しておくよ。は、あはは・・・」

 そんな僕を見てアスカがニヤリと意地悪そうに笑うのが見えた。絶対この世に子悪魔ってのは存在すると断言できた。

「あら〜?ひょっとしてあんた泳げないの?」

 その台詞を聞いて綾波がプラグに上がってきて僕の腕を掴んだ。

「大丈夫、私が教えてあげるわ。一緒に泳ぎましょう。」

 そんなにじぃーっと見ないでよぉ(涙)

「しょうがないじゃないか、人は浮くようには出来ていないんだ。海なんて見たことも無いのに泳げるわけ無いよ!」

 そんな僕の心の底からの叫びはあっさりと無視され、綾波と同じくプラグに上がってきたアスカによって海に蹴り落とされた。

 このところずっと続いていた緊張の糸が切れたせいだろう、僕たち三人はそれからしばらく波間で戯れた。

 遊び疲れて僕はプラグに這い上がって仰向けに横たわり、アスカと綾波も波間に漂う。

 静かに三人でぼーっと空を眺めていた。

「終わったね・・・」

 そんな僕の呟きを聞きつけて綾波が悲しそうな顔をした。

「どうしたの?」

「・・・もうEVAも無い、私の絆も無くなってしまったわ。」

ぱこっ

 アスカ、つっこみで人の頭を叩く時はもうちょっと手加減しようよ。綾波が涙目で睨んでるよ・・・

「あんた何馬鹿なこと言ってるのよ!?絆なんていくらでもこれから作ればいいでしょ?シンジもよ!これで終わったわけじゃないわ、これから始まるのよ!」

 それは何ともアスカらしい前向きな発言だった。

「そうだね。綾波、EVAなんてものは絆としてはろくなもんじゃない、何ていっても兵器なんだしね。もっとちゃんとした絆をこれから作ろうよ。」

 アスカと僕の言う事を聞いてちょっと考え込んでいたが、やがて綾波はあの綺麗な笑顔を見せてくれた。

 そんな時だった、空を震わすローターの音が聞こえたのは。

「ヘリ?どこのかしら。それにどうやって私たちを・・・」

「・・・プラグは射出されると救助を容易にするためにビーコンを発信するから・・・」

「マリアナ海溝の傍ってことは・・・グアムの米軍じゃないかな。」

 そして僕たちは夕日が海と空を紅く染める中、米軍のヘリに拾い上げられ、基地に向かう途中で事情聴取され、基地についたら即牢屋代わりの営倉に叩き込まれた。













Les épilogue



「ちょっと、あんた!何勝手なこと言ってるのよ?!」

「・・・」

 アスカは激昂して詰め寄るし綾波は僕のことを恨めしげに睨んでる。

「・・・はぁぁ。」

 思わず溜息をついてしまった。アメリカの女性専用刑務所なんて全然良い噂聞かないから二人を入れたくなかっただけなのに。

 弁護士に相談したら、ある制度の事を教えてくれた。

 僕たちの取った行動や年齢、環境からかなり同情的な雰囲気が上層部にはあるので、良い結果を生む可能性が高いという事も。

 何だか加持さんが色々と工作してくれて、リツコさんもいろいろ取引してくれたみたいだし。

 そりゃあ、確かにレイとアスカの二人には説明なしで完全に罪状否認させておいたけど、そんなに怒らなくってもいいじゃないか・・・

 それに僕は・・・今更ながら罪悪感に責め苛まれている。

 最後に本部を吹き飛ばした事だ。

 勿論、僕がやらなかったら多国籍軍コマンドが核で吹き飛ばしたであろうことは理解している。

 だけど僕はあの時、本部で働く人たちのことをさほど考えず、ただミサトさんを殺した奴らや僕に人殺しを命令しつづけた奴らが憎かった。

 それだけのために多くの人たちを巻き添えにしたんだ。

 それは弁解できるものではない。する気もない。

 とにかく僕は罪を犯した。だから罰を受ける必要があるんだ・・・











 数ヵ月後。

ワシントン・ポスト紙
特A級戦犯処刑!
 ホワイトハウス高官によると、先の東南アジア戦役において、人型巨大兵器を操り国連軍に多大な損害を与えたパイロット三名の処刑が今日未明、執行された。
 当局は彼らの身元などの情報を一切流してはいないが、一部ではパイロットは子供だったという噂等も飛びかっていた。
 かの国の政府が何故壊滅したのか、あの兵器がどうなったのかなど、当方の質問に対して沈黙を守りつづける当局に対する不審の声もあがり始めている。

「はん!馬鹿馬鹿しい。」

 その少女は読んでいた新聞を乱暴に畳むと道端のゴミ箱に叩き込んだ。

 傍らを歩いていた少女が、何も言葉を発しはしないが疑問の雰囲気を漂わせているのを敏感に感じ取り、説明する。

「私たち、処刑されたんだってさ。」

 無口な少女の唇の端が僅かに上がる。どうやらこれは彼女の嘲笑らしい。

「ね、馬鹿馬鹿しいでしょ?」

 賑やかな少女は同意を求めるが、無口な少女が頷くのも確認せずに次なる話題へと突き進む。

「あとどれぐらいだったっけ?」

「・・・5年と8ヶ月。」

 あなただって知ってるくせに、というニュアンスを乗せて無口な少女が呟くように答える。

「全く、そんなに待たされたら私たちおばさんになっちゃうわ。24よ、24!もうクリスマスイブじゃない。」

 そんなに待つのが嫌なら他の男を捜せば?私はいつまででも待ってるわ、という突っ込みが見え隠れする一瞥を放つ無口な少女。

 うっ、とたじろぐ賑やかな少女。丁度その時目的地に到着したのをこれ幸いと、今の会話を無かったことにする。

 心の中では、出所してきたらその足で教会に行って式を挙げる、とか大胆なことを考えていたが・・・

 管理棟に着くまでに色々と野卑な声が掛けられるが、いつものこととあっさり無視。係官に名乗りをあげる。

「ああ、お嬢ちゃんたちか。しっかし、毎週毎週よく来るなあ。あいつも幸せ者だよ。だけど、これからまだ5年以上あるがやっぱり毎週来るのかい?」

 面会係官の問に二人は顔を見合わせてニヤリと笑うと声を揃えて答えた。

「「ふっ、問題無いわ!」」





 アメリカを中心に,検事と被告人(弁護人)の間で答弁のための取引が行われる。

 これを司法取引――プリー・バーゲンという。





fin



ども、Keisです。
さて、本作はBLUMさんとのメールのやり取りの中で構想が始まった物です。
(思えば最初に話が出たのが去年だったような・・・遅くなってすみません、BLUMさん)
そんなわけで原作(元ネタ)はBLUMさんなんですね。
主なコンセプトは二つありまして・・・

その一は通常戦闘におけるEVAの効能、です。
インパクトとか使徒とかロンギヌスの槍とか補完計画とか難しいことは一切抜き。
現在の延長線上の世界にEVAが登場したら戦争はどうなるか、というものです。
真面目に考証すると、通常手段ではまるで対抗できないんですよね、ATフィールドのせいで。
そうするとどうやっても裏口から、つまりパイロットや保守管理する人を倒す以外方法が無いんです。
それでこんなお話になりました。

その二は立場と正義、です。
これは私が後から考えついたコンセプトなんですが。
私はよくある敵役はみんないかにも悪人でしかもお馬鹿って話が割と嫌いでして。
ほら、どう考えても組織力とか資金力とか遥かに懸絶しているのに、やたらおごったり油断したりして正義の主人公一人が勝つ話です。
実際そんなことあるわけない、と思うので、其々の立場と物の見方では其々が正義、という話が書きたかったんです。
所詮戦争と言うのは犯したミスが少ない方が勝つんですから、それぞれの信念に従ってそれぞれの目標に向かっていく、そんな話。

例えば、この話の中の戦争、誰が勝者だと思いますか?
ゼーレは潰れました。
国連の威信は大いに低下しました。
東南アジア全域も戦火で荒廃してる個所があり、これから軍と政府を再建しなくてはなりません。
日本、アメリカ、ヨーロッパなど多国籍軍組は膨大な数の死傷者を出し、軍の装備品を失いました。政権は倒れるでしょう。
ゼーレに肩入れした国々も後に批判に晒されるでしょう。
直接戦闘に従事したものはある者は死に、ある者は傷つき、その遺族や家族もこれから永く苦しみます。
EVAや量子コンピュータの存在は宗教界にも波紋を投げかけるでしょう。

結局メリットがあるのは色々な企業でしょうね。
今回消費した分の需要が大量にあります。武器にしろ建造物にしろ人工衛星にしろ・・・
葬儀屋だって大忙しでしょうし、怪我人の多さに医者も嬉しい悲鳴を上げ、軍人がらみの裁判も増えて弁護士も仕事が増え・・・
EVAの出現によって科学界も大いに沸くでしょう。先端兵器の研究なんかもですね。
こうやって考えると、やっぱり戦争ってのは経済活動なわけです。
インドの神々のなかの一柱にヴィシュヌというのがいます。
これは古い世界を破壊して新しい世界を生むという役目を持ってました(ちょっとうろ覚えですが)
新たな生産の前には破壊が必要だという論理も、あながち的外れでは無い、ということでしょう。

タイトル見れば分かって頂けるかとも思いますが、ルビに凝りました(笑)
<RUBY>というタグもあるんですがIE5専用と言うあまり役に立たない代物です。
そんなわけでIEにもNNにも対応させるべく、ひたすらテーブルタグで頑張りました。自己満足の世界です。
JavaScriptで表作成簡易プログラム作って、拾ってきたグラデーション支援ソフトでグラデかけて・・・
少々(かなり?)ソースが見苦しくなりました。最終的にはNN対応を諦めたんですけどね。

皆さん、最後まで読んでくださってありがとうございました。
そしてBLUMさん、拙作を引き取って頂いてありがとうございます。
それでは。

参考文献:
・・・どれとは特定できない・・・
敢えて言えば今まで読んだ本全部(笑)

感想・苦情等はこちらまで。

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