書 名:家康の女軍師
著者名 :近衛 龍春
出版社名:新潮文庫
登場人物:於奈津、徳川家康
update by 2024/06/29
最近の風潮なのか、流行なのか、かつての様に絶対的に強いリーダとして描かれた戦国武将物の読み物には、中々出会わなくなった気がする。
武田信玄や織田信長はもちろん、今回の作品にもでてくる徳川家康も例外ではない。
どこかに弱点を持ち合わせており、それを隠すのではなく表にだしつつ、周囲のメンバーによってそれを補い、そして躍動してく姿を目にする。
天下人となった徳川家康。彼を陰ながら支えていた名称といえば、本多正信をはじめとして多くの徳川家臣団の名をあげることができるだろう。
本作品では彼らではなく、題目にある様に女性が家康の懐刀として活躍していくという話だ。
商人として店を切り盛りする主人公は、やがて家康の命を救うこととなり、側室として近侍するようになった。
ある時は家康の影武者となり、またよき理解者でありつつ、さらに相談者として天下取りにかかわっていくという壮大な話だ。
先にあげた本多正信をも上回る、その活躍ぶりには脱帽である。
単に相談相手として知恵を授けるだけではなく、「鶏鳴狗盗」を彷彿とさせるように声音を真似る場面があったりと、そんなことまでもと、行き過ぎ感はなくはないが、そこは素直に楽しめる内容になっているのは間違いない。
戦場での華々しい槍をふるう姿はなくとも、内々で語る言葉の一つ一つが歴史を動かしていたと、想像しながら読むのも一つの楽しみかもしれない。