ひろぞう戦国物語

戦国時代について好き勝手に語っているサイトです。


■歴史小説■ 〜な行〜


夏草の賦(全二巻)
著者名司馬遼太郎
出版社文藝春秋
主な人物長曾我部元親、織田信長、奈々
ひとこと 幼少の頃は姫若子と呼ばれた元親、成人して後に土佐一国を平定。その後、四国全土を我がモノにした戦国武将、長曾我部元親の人生を追った作品です。しかし元親が台頭した頃はすでに、織田信長によって中央を掌握されていた。その信長にたいして元親が打つ手はいかに。
お薦め度★★★ 夏草の賦


難儀でござる
著者名岩井三四二
出版社光文社文庫
主な人物甘利備前守、朝比奈備中守、山科言継、稲葉彦六
ひとこと 岩井三四二氏による短編集。戦国時代を舞台にした武将から農民や公家など、様々な身分の人物を主人公にして「難儀」に立ち向かう姿を描いた作品。各々は立場や身分の垣根を越え、「難儀」が主人公に襲い掛かかり、苦しみおして悩みながらも、この局面に立ち向かって振り払い、そして生き延びる為の知恵を絞って行く。現代にも「難儀」は存在していることであろうが、戦国時代には紙一重で「命」が掛かっていることが大きく異なる。さて本書の中に収められている作品の中で、異色と感じた作品が高天神城での籠城を描いた「羽根をください」。高天神城と羽根から連想することで内容を想像することができますが、まさにその通りの筋書きが読み取れます。悲しい結末が待っている。また逆に「信長を口説く七つの方法」では、先帝の十三回忌の費用を捻出するため美濃の織田信長を頼り、二百貫を捻出させようとする話。こちらはユーモアに描かれた一編だ。
お薦め度★★★★
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遁げろ家康(全二巻)
著者名池宮彰一郎
出版社朝日文庫
主な人物徳川家康
ひとこと 戦国時代の幕をおろした徳川家康。武門の頂点に立った彼だが、じつは非常に臆病者な性格で、時の流れで天下を取ってしまった?敵を恐れて真っ向からの勝負を避け、また自軍の損害を少なく、そして自分の命を大事に。題名にも成っている様に、危険な目に遭う前に遁げる。こういった信念の元で戦国時代を生き抜いた徳川家康の生涯を描いています。あまり徳川家康に馴染みの無い人にも薦められる一冊です。新たな家康像が見えてくると思います。
お薦め度★★★★★ 遁げろ家康


業政駈ける
著者名火坂雅志
出版社角川文芸出版
主な人物長野業政、上泉信綱、真田幸隆
ひとこと 上野国は箕輪城の主として君臨している長野業政。弘治二年、上野国へ甲斐武田家の軍勢が信濃を経由して侵攻してきた。武田家の総帥である晴信(後の信玄)が目論むのは、上野を支配下へ治めること。この軍事行動はその第一歩であった。この危急に対して上野の豪族達は、父祖伝来の地を守り抜く為、一致団結して武田家へ立ち向かうことを決意。その盟主として皆の上に立つのが長野業政であった。この小説、構想二〇年といううたい文句であったのであるが、いざ読んでみるとどうであろう。期待した分だけ口惜しい気持ちになってくる。いや当初の思い込みが強すぎたのかもしれない。ただ長野業政をはじめ妻や娘達、そして婿達との家族でわいわいといったホノボノとした雰囲気を受け入れられるという人にとっては、案外と愉しめる1冊に仕上がっているのかもしれない。
お薦め度★★
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丹羽長秀
著者名菊池道人
出版社PHP文庫
主な人物丹羽長秀、江口伝二郎
ひとこと 「木綿藤吉、米五郎左、かかれ柴田に、退き佐久間」。翁草にはこの様に織田信長の家臣等を謳っている。このなかで米五郎左が本書の主人公である丹羽長秀です。サブタイトルには「信長と秀吉を補佐した信義の武将」となっている様に、「義」を重んじている武将です。織田信長から重んじられて、後半ではその信長の子であった信孝や信雄に心を配っておりまる。また死ぬ間際まで織田家に対して、忠節を尽くした武将としての丹羽長秀が描かれております。
お薦め度★★ 丹羽長秀


忍者群像
著者名池波正太郎
出版社文春文庫
主な人物
ひとこと 全部で七編からなる、忍の者を主人公とした短編集です。織田信長の隠密として、明智光秀に付けられながら、本能寺の変を目の当たりにしてしまった甲賀忍者を題材にした「鬼火」。明智光秀が山崎の合戦以後も生きているのを信じ、その首を執念深く狙う「首」など。お勧めは戦国時代ではありませんが、江戸初期を描いている「戦陣眼鏡」でしょうか。戦国時代末期から江戸時代初期に掛けて、その陰の世界に生きた者達を語っております。
お薦め度★★★ 忍者群像


忍者丹波大介
著者名池波正太郎
出版社新潮社
主な人物丹波大介、真田幸村、
ひとこと 甲賀の忍びの物語。同じ様な小説で以前に「忍びの風」や「蝶の戦記」という作品を読ましてもらった。これらとはまた違った忍者の姿を読むことが出来る作品です。内容は主人公である丹波大介は頭領のやり方に我慢できず、ついに頭領を裏切ってしまい、一人の忍びとして生きる事を決意する。そんな大介の運命を左右したといっても良い人物に出会うことになる。それが真田幸村である。どこの大名家にも仕え様ともせず、単身で生き抜く事を決意。しかし真田のために真田忍と共に忍び働きをすることを、甲賀から命を狙われながらも徳川家康の命を狙う戦国を生き抜いた一人の男の話です。
お薦め度★★★ 忍者丹波大介


濃姫孤愁
著者名阿井景子
出版社講談社文庫
主な人物濃姫(帰蝶),岡部長教,山口右京
ひとこと 全部で三編の話が盛り込まれている。どれも戦国という殺伐とした時代背景であるが,どこか優しさを感じる。だがすべての話の共通することは,悲哀の一言である。本の題目にもなった「濃姫弧愁」。濃姫こと帰蝶が織田信長に嫁ぎ,そして最愛の父が異母兄に討たれ,そして生涯を終えるまでの孤独な半生が綴られている。他に,桶狭間の戦いで討ち死にした今川義元。その義元の首を奪い返したという岡部長教。その最後を描いた。「義元の首」。大聖寺城落城を描いた「冑の的」も悲しき結末です。
お薦め度★★★ 濃姫孤愁


信長(全二巻)
著者名佐藤雅美
出版社文藝春秋
主な人物織田信長,明智光秀
ひとこと 各歴史書をもとに筆者の独自解釈を加えた,織田信長の波瀾万丈な人生を描いた物語。淡々と話が描かれていく中で,各武将の心理描写でもって読み手を引きつけている。尾張一国を統一した若かりし信長。用意周到に謀略を駆使して今川義元を討ち取った桶狭間の合戦。美濃を制覇し,将軍候補の足利義昭を擁し上洛を果たし,京周辺の足固めを始めた信長。甲信の大名である武田信玄や,北国の上杉謙信を恐れた信長。やがて天下統一が目前に見えてくると,心に余裕が出来たためか,壮大な遊びをも催すなど様々な信長像が読める。また信長が中心に描かれるが,最終章では信長の命を奪うこととなる明智光秀が,本能寺へ兵を進めるまでの心理描写が心に残った。
お薦め度★★★
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信長が宿敵 本願寺顕如
著者名鈴木 輝一郎
出版社毎日新聞社
主な人物本願寺顕如、本願寺教如、鈴木孫一
ひとこと 今までの歴史小説という枠内で、ここまで人間味溢れた姿を見せた本願寺顕如はあっただろうか。さらに子の教如に至っては「武人」とした趣を感じさせる姿に、新鮮さを覚える。

さて本作は本願寺という日本国の仏教の宗旨のひとつである浄土真宗の総本山である「大坂石山」を舞台に、天下布武を掲げる織田信長との争いを描いた作品となっている。本願寺顕如が「大阪石山」に籠もり、元亀元年より天正八年までのおよそ10年の期間にもおよんだ戦を描いている。世に言うところの「石山合戦」だ。

顕如という父親と、教如という息子。本願寺という組織の頂点に君臨する顕如。それが結えに息子の養育には手を出さず、周りに任せきり、それに反抗心を抱く教如の姿は反抗期の青年と置き換えることもできる。
顕如が抱く心の葛藤など、人間味溢れる姿が描かれているのも本書の特徴の一つであろう。さらにこの父子関係を軸にして、妻であり母としての苦しみも描かれ、家族の絆的な要素も盛り込まれた小説にもなっている。

物語の中では脇役となる織田信長。「新しいもの」を生みだそうと、必死に生きる姿は他の作品とはまた異なる信長像が見られるかもしれない。
本願寺顕如と織田信長。二人の相対する「ふるきもの」と「あたらしきもの」。まさに時代の変換期に対立した両者であるが、いったい勝者はどちらであったのか。
お薦め度★★★★
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信長死すべし
著者名山本兼一
出版社角川書店
主な人物明智光秀、近衛前久、里村紹巴、正親町帝、織田信長
ひとこと 「信長死すべし」。天正一〇年に起きた歴史を揺るがした事件である「本能寺の変」。変の真相に迫った歴史小説は数多く発表され、人々に読まれ、様々な憶測が語られていた。本書は「火天の城」や「弾正の鷹」の著者である山本兼一氏から、新たにもたらされた歴史好きには堪らない贈り物だ。「本能寺の変」については、歴史好き成らずとも知る人は多いだろう。だが結論へ導くその筋道である、「なぜ明智光秀が?」という真相については解明出来ておらず、歴史の藪に埋もれたミステリーである。本書では正親町帝から「信長しすべし」という詔勅が下り、どの武将の手によって実現させるのかという点から始まる。なぜ織田家の臣である明智光秀でなければ成らなかったのか。そしてなぜ明智光秀は詔勅に従い、本能寺にいた主君である信長を急襲し自刃に追い込み、短期間で自らも滅しなければならなかったのか。織田信長という武士から、さらに帝という朝廷の権威から未来を見据えた時、難局を解決する為の打開策は過激過ぎた。様々な「なぜ」をひとつひとつ解明されながら運命の日を迎える。そして最期に笑う者は誰であったのか。いや、本書を読む限り、笑顔になるこは難しいことだろう。
お薦め度★★★★★
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信長と秀吉と家康
著者名池波正太郎
出版社PHP文庫
主な人物織田信長、豊臣秀吉、徳川家康
ひとこと 戦国時代の三英雄である織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康。これら3人の天下統一へ向かっていく過程を、分かりやすく難しい事は抜きにして書かれております。織田信長のうつけと言われた少年時代から桶狭間合戦や上洛を経て、本能寺の変に至るまで。その変を聞き付けて備中から大返して、瞬く間に天下を平定した豊臣秀吉。信長、秀吉といった時の権力者の元で力を蓄え、江戸に幕府を開き、徳川政権の基礎を築いた徳川家康。歴史に興味を持ち始めた人、これら3英雄の軌跡を知りたい人にお勧めです。
お薦め度★★★★ 信長と秀吉と家康


信長の棺
著者名加藤 廣
出版社文春文庫
主な人物太田牛一
ひとこと 織田信長の側近であった太田牛一。本能寺で信長が斃れる前,牛一は主君から謎の木箱と供に密命を受けていた。その密命と木箱と安土城を後にする牛一であったが途中,幽閉され解放された時には羽柴秀吉による天下統一が果たされようとしていた。牛一は主君であった信長の一代記を書き綴るため,残りの生涯をかける。しかし牛一が知っている主君の素顔と,世間一般に流布されている信長はまったく別物であった。信長にまつわる謎について牛一が読者に代わり信長に関する謎を解き明かす。永禄三(1560)年の桶狭間の合戦にはじまり,天正十(1580)年になぜ明智光秀は本能寺で主君を討たなければならなかったのか。本能寺の変後,発見されていない信長の遺骸はどこへ消えたのか。さらには天下人となった豊臣秀吉の出生の秘密など,いままでに無い切り口で,数々の謎が解き明かされていく戦国ミステリー小説。万人が楽しめる1冊であろう。
お薦め度★★★★
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信長の傭兵
著者名津本陽
出版社角川文庫
主な人物津田監物,おきた
ひとこと もともと「続・鉄砲無頼伝」として描かれた作品である。「続」と付けられている様に,「鉄砲無頼伝」の後編ということになる。主人公は前作にて鉄砲を種子島より紀州に持ち帰り,根来衆を鉄砲集団に仕立て上げた津田監物。この監物は歳をとっても鉄砲の腕は衰えることは無く,各地の大小名から要請があれば鉄砲衆を率いて,戦場へと向かう日々を送っていた。そんな折りに新興勢力である尾張の織田信長より加勢の依頼が根来にあり,監物は妻となったおきたや,組下の者を従えて尾張へ下るのであった。監物という人物と当時の新兵器である鉄砲。歴史の表舞台には現れにくい人物と,戦国という時代の歴史を一変させた新兵器鉄砲。火縄銃がどれだけ合戦で有効であるか,既存の飛び道具と比べて鉄砲の威力はもちろんだが,それを取り扱う人物の動作や,根来の僧兵である監物など,短い小説の中でそれが魅力的に描かれている1冊であった。
お薦め度★★★★★
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信長燃ゆ(全二巻)
著者名安部 龍太郎
出版社日本経済新聞社
主な人物近衛前久、織田信長、晴子
ひとこと 「本能寺の変」から三五年後。信長の小姓であった清麿が、「本能寺の変」の真相を語るというところから物語は始まる。新しい国家を創世しようとした織田信長。天下布武を目指している信長にとって朝廷とは,一つの道具に過ぎないという考えを知った近衛前久。この二人を基にして話が展開され行く。信長と朝廷との対立。そして信長と勧修寺晴子との恋。前久は朝廷を守るため,自らの身分である公家という存在を護り抜くため,信長排除の策をめぐらしてゆく。
お薦め度★★★ 信長燃ゆ〈上〉


信長を撃いた男
著者名南原幹雄
出版社新潮文庫
主な人物杉谷善住坊,蒲生典膳,織田信長
ひとこと 千草峠で織田信長を狙撃した男,杉谷善住坊。しかし放った弾丸は信長の命を奪うことができなかった。甲賀随一の鉄砲打ちも信長の運の良さには叶わず,逆に信長の怒りを買うこととなり,蒲生典膳という者の追跡を受けることに。典膳と善住坊の攻防がはじまるのだった。織田家の勢力が広がるにつれて,徐々に狭まる典膳への包囲網。撃った事実と,結末だけは史書にも記されているが,その空白の数年を描いた小説。結末はすでに頭の中で理解できているはずなのだが,引き込まれていってしまう。
お薦め度★★★
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のぼうの城
著者名和田竜
出版社小学館
主な人物成田長親、正木丹波守、柴崎和泉守、酒巻靭負、石田三成
ひとこと 忍城の攻防戦。同様の設定を小説にしたものは過去にもいくつか存在していた。しかしここまで成田長親という人間性を、奥深くまで追求して描いた作品は無かったのではないだろうか。主人公である長親を、一人の武将をここまで蔑んだ表現を用いるなど、前代未聞のことであり、なかなかお目にかかれるものではない。そして「なぜ?忍城はあれほどの大軍勢に攻められても陥落しなかったのか」。この疑問に対して、ここでは籠城側が奇抜な謀略を用いず、人心を掌握することで堅固に城を守り抜き、落城という最悪の結果を回避ということになっている。それを成し得た武将こそが成田長親であるという。彼無くして忍城の攻防は語れない。それでは長親は何をしたのかというと、それは読んでからのお楽しみだ。ちなみに本書は、歴史小説として読むと少々物足りなさを残る。エンターテイメントとしての演出が練られてた作品だからだ。しかし数多くある娯楽小説の一つとしてであれば、多くの人に勧められることであろう。
お薦め度★★★
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