歴史小説

布武の果て


著者名 :上田 秀人
出版社名:集英社
登場人物:今井彦八郎、魚屋與四郎、天王寺屋助五郎

update by 2022/06/11


「堺商人たちが辿り着いた、「本能寺の変」の驚くべき真相とは」

本書は堺の商人である主人公の3人が、茶飲み話をするかのようにして、時世を語りながら物語は進行していく。

歴史小説の主人公として、武将ではなく商人からの視点にすると、もしかしたら地味に思えてしまうかもしれない。
たしかに武将が率いる軍勢同士の派手な合戦場面、命を賭した勇ましい姿、謀略を仕掛ける緊張感はなかなか感じられないだろう。
よいところ取引のある大名に取り入り、その相談役として歴史に介入する姿や、商売敵を貶める策を講じて、販売網を拡充するなど経済戦争であろうか。

本書も想像通り、勇ましく合戦に華を添える様な歴戦の武将の姿は描かれていない。
さらに歴史を動かしたという事実を無理矢理に作られていない。
堺という自治都市が生き残るため策として、織田信長に組したという事実はあるが、時代を動かした人々とは違うだろう。

もっぱら3人の商人による意見交換、それも茶飲みに吟じての雑談から生まれる世間話。
ここから時代背景や社会事件などを読者に説明をする様にして物語は展開しておくのである。

しかしそれがつまらないとは言えないのは、この題材をうまく料理して提供していれた著者の力量だろう。

大筋では織田信長の上洛から本能寺の直前までの、躍進を描いているといっていい。
織田信長の歴史的な活躍についても、当然ながら3人による茶飲み話の一つとして語られているだけだ。
それでも興味を掻き立て読者を飽きさせない。

さてさて「本能寺の変」の驚くべき真相?とは、その黒幕とはだれなのだろうか。

謎であり真相が闇の中である「本能寺の変」。
結末を迎えるまでの伏線も、その回収も含め大いに楽しめます。


★ ★ ★ ★ ★ 5 stars
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北条五代(全二巻)


著者名 :火坂 雅志 , 伊東 潤
出版社名:朝日新聞出版
登場人物:伊勢新九郎、北条氏綱、北条氏康、北条氏政、北条氏直


なかなかお目にかかれない北条氏五代にわたり、およそ100年間の栄枯盛衰を描いた歴史長編小説。

伊勢新九郎(早雲)が旗揚げし、氏綱の時代に基盤を整え、氏康によりその勢力範囲は最大となり関東地方を席巻。
しかし時代の変革期に直面した氏政は北条家の舵取りに困惑し、そして氏政の時代に幕を下ろした。

まさに波乱万丈の北条家一〇〇年史ともいえようか。
難しいことは無しに、その歴史をおよそ八〇〇頁にまとめ上げた歴史書ともいえる。

本書は当初、火坂雅志氏が執筆していたが、結末にたどり着く前に急逝。
未完で本書の続きを受け継ぐカタチで、伊東潤が書き下ろした両氏による合同作品ともなっている。

物語は「禄寿応穏」を合言葉に掲げた北条氏が、代替わりしてもその思想は引き継がれ、理想郷を追い求めた国造りに奔走する、まさに北条家の物語。
一口に戦国時代とは言え、初代早雲の時代と五代目氏直の情勢は全く違っていることがよくわかる。

早雲や氏綱の時代はまさに北条氏の黎明期であり、まさに日の出の勢いの如く勢力拡大に努めた時期でもあった。
関東諸国は牽制しあい、虎視眈々と隙あらば攻め寄せるという群雄割拠の時代。
それが氏康に代替わりする頃になると、領土拡張を推し進め、関東屈指の大名家へと成長していた。

しかしそれは国境を接する隣国の甲斐武田家、さらには駿河今川家も同様に強大な国力を保持する戦国大名の誕生である。
さらに北へ目を向ければ、越後長尾家にも景虎という新星が誕生したことで、関東地方に未知なる新しい風が吹き付けていた。

それらの勢力と干戈を交え、または和睦を約し、一進一退の攻防を繰り広げていた。
関東での争いなどあざ笑うかの様に、時代は天下統一の道を織田信長により着々と進めれていたい。

結局その信長は本能寺で家臣である光秀に討たれ、志半ばで横死して北条家の危機は取り除かれるのだが、 その志を継いだ羽柴秀吉が信長に取って代わり天下の掌中に収めようとしていた。

北条家始まって依頼の苦難が、氏政そして氏直親子に突きつけられることとなる。

さて、北条家の栄枯盛衰を上下巻で壮大に描かれ、また火坂雅志 , 伊東 潤という巨匠がリレー形式で記された物語。 その結末を知っていても読んで損なし、おすすめです。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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