歴史小説

ま行の小説

前田利家(全三巻)


著作名 :津本 陽
出版社名:講談社
登場人物:前田利家、まつ、豊臣秀吉

戦国の武将、前田利家の半生を描いた大河小説。

主君であった信長に勘当されたところからはじまり、加賀百万石の大名への立身出世を、時勢とともに語られてます。

前田利家は織田信長、豊臣秀吉に仕え、徳川家康とは、秀吉の死後の豊臣家の中で対等か、それ以上の実力を持った。

この三英雄(?)と同時代を生き、天下取りとは行かないまでも、大きく歴史を動かした人物である事が、この書によって再認識させられた一冊です。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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前田利家(全二巻)


前田利家

  著  者:戸部新十郎
  出版社:光文社
  登場人物:前田利家、まつ、豊臣秀吉


織田家の戦国武将、前田利家の生年時代からの半生を綴った物語。

織田家に仕えていた若かりし頃、まつを妻に娶るが出奔。
友人である羽柴秀吉との交流を加えながら、織田家に帰参して出世して行く。
しかし天正一〇(1582)年に起きた本能寺の変にて周りの状況は一変する。
直属の上官である柴田勝家は自刃、その勝者である友人の秀吉は天下人へ。

そして利家は天下人秀吉の良き片腕として、人生の華を咲かせてゆく作品です。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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まつと家康-明日を築く闘い-


  著  者:祖父江一朗
  出版社:ハルキ文庫
  登場人物:まつ、石田三成、直江兼続、本多正信、徳川家康


「加賀芳春記」の続編にあたる作品である。

前作で石田三成の謀によって殉死させられた片山延高。
戦国の世を終わらせようと奔走していた延高の意思、前田家の存続の為に「徳川を本尊とし、加賀前田を脇侍」を実行に移すこと。
この意志を受け継いだのは徳川家康の懐刀である本多正信。
しかし戦乱の火種は未だに燻っており、ついに石田三成と徳川家康の対立は避けられないものとなっていた。

三成は決戦を美濃関ヶ原の地と定め、家康を彼の地へ誘い込む策略を練る。
さらに会津上杉家の宰相である直江兼続が抱く野望をも利用して、日本という国をふたつの陣営に隔て、最終決戦へと歩んでゆくのであった。

延高の全てを受け継ぐ者や、本多正信の嫡子である政重などの活躍も見逃せない。

混乱が続いた戦国時代末期,明日を築く闘いの幕が開かれる。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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幻の城


  著  者:風間真知雄
  出版社:祥伝社文庫
  真田幸村、根津甚八、宇喜多秀家


大阪の陣を舞台にして、真田幸村という武将が躍動する活劇。

こう書けば幸村とそれを慕う忍び、十勇士が縦横無尽に戦場を駆け巡り、宿敵である徳川家康の首を狙う物語に思えてしまう。
しかしこの「幻の城」はそうではない。

大阪城に入城した幸村は、徳川軍を迎え討つにあたり、総大将に成り得る人物が居ないことに不安を覚えた。
そこで幸村は八丈島に流刑に処せられた宇喜多秀家を、大阪方の総大将として迎え入れることを決意し、配下の根津甚八を向かわせるのである。

真田幸村という現在でもその人気は衰えることが無い武将を主人公に据え、脇を固めるのが老将の後藤又兵衛。
さらには真田十勇士を彷彿とさせる人々を登場させることで、読者にサービスを提供してくれている。

さらに極めつけは宇喜多秀家。彼の描写が特筆であり、まさに狂気であるその性格がこの物語の本質ではないだろうか。 物語の鍵を握る重要な人物であることは間違いない。

読む前に期待度を設定したとすれば、良い意味で裏切られた気分である。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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まぼろしの城


まぼろしの城

  著  者:池波正太郎
  出版社:講談社
  沼田万鬼斎、ゆのみ、金子新左衛門


戦国群雄の時代、上州(群馬県)の沼田城の主である、沼田万鬼斎を中心に描いた作品。

戦国乱世、小さな勢力はやがて、大きな勢力に飲み込まれていくのが世の流れ。
特に沼田の地は、北関東における交通の要所として重要視されていた。

相模の北条氏、甲斐の武田氏、そして越後の上杉氏といった三大勢力から狙われることになるのは必然であった。
このような乱世で万鬼斎は己の領地はもちろん、城や城下に住まう領民、そして家臣を外敵から守る義務を果たす必要があった。
地方の国人領主である万鬼斎と、その家臣である金子新左衛門を主にしてその奮闘を描く。

彼らは無事に領地を守ることができるのか、そしてその運命はどうなるのか。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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三河雑兵心得 足軽仁義


  著  者:井原 忠政
  出版社:双葉文庫
  登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎


大名でも、武将でも、陰で操る軍師でも無い、名も無き足軽が主人公の物語。のちに天下人となる徳川家康を支える足軽の、汗臭く血なまぐさい、戦場を駆け巡った一兵卒から語られる戦国絵巻を彷彿とさせる題名である。

茂兵衛は村の暴れ者であり、周囲からも疎まれる存在である。しかしそれは気弱でうすノロである実弟の丑松を守る行動から出たものである。ある時、ひょうんなことから村を出て行く羽目となった茂兵衛と実弟の丑松。茂兵衛は夏目家に足軽として仕え、そして丑松は寺に奉公することとなった。

さて時は戦国、その地は三河。まさに一向一揆が勃発する時分の頃。いきなり一揆方の城兵として籠城することとなった茂兵衛。実戦を経験していない茂兵衛はそこで、上官や同胞とともに悪戦苦闘する姿は、命を賭しての場面であるにも関わらず、時に滑稽に読めてしまう。けっしておふざけでも、笑い話として書かれているわけでは無いことは追記しておくので誤解の無いように。

茂兵衛と丑松は、三河での一向一揆の騒動という巡り合わせに翻弄され、今後起こるであろう数奇な一歩を踏み出すこととなるのだろう。本書は今後へと続くプロローグであり、「三河雑兵心得シリーズ」として続編が楽しめである。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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三河雑兵心得 旗指足軽仁義


  著  者:井原  忠政
  出版社:双葉文庫
  登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎


「三河雑兵心得」の続編となるシリーズ第二弾。

戦国時代の名のある武将でも無く、エピソードが豊富な人物を描く、歴史小説とは様相が異なる作品だ。本書の主人公は乱世の時代、その末端でありながら命を懸けて、泥臭くとも生き抜いていく茂兵衛。

今作では徳川家康に仕えている茂兵衛が、本多平八郎の旗指足軽へと出世したところからはじまる。 場所は遠州。今川方の城、掛川城攻めである。

前作では籠城の苦労を強いられていたが、今度は攻城方となって苦難を乗り越える姿を読むことができる。しかし敵は攻めている城の兵だけではない。三河の北方の信濃そして甲斐を領する武田家。一応、今川家という敵に対して共同戦線を張っていても、いつ何時、徳川家に刃を向けられることかわからない。

また命を狙われる茂兵衛、そしてヒロインが登場して場を和ませようとしているのだが。この先の展開については、茂兵衛の出世と合わせて次巻以降のお楽しみといったところだろうか。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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三河雑兵心得 足軽小頭仁義


  著  者:井原 忠政
  出版社:双葉文庫
  登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎


「三河雑兵心得」の続編となるシリーズ第三弾。

前巻の最後において一〇年で出世してみせることを宣言した茂兵衛。次に襲ってくる強敵は甲信地方を統治する、甲斐の虎こと武田信玄。

出世するのも楽ではなく、苦難の道はまだまだ茂兵衛に近寄ってくるのは今までの展開通りである。

しかし今回は明らかに、これまでの展開とは違っている。茂兵衛は植田茂兵衛として、足軽小頭と少しではあるが出世している。人数は少ないながらも部下を持つほどの身分となったのだ。今度は部下を持つことの責任感をも問われることになる。現代における中間管理職といったところだろう。

さらに徳川家の血筋に繋がる少年、松平善四郎のお守りを命じられるという展開。驚くべきことにその善四郎は初陣というから、手柄のお膳立てもしなくてはならない。

さらに息つく暇も無く、武田家との戦は始まってしまう。今回は二俣城に籠城して、武田の猛攻を防ぐことになるのだが。果たして茂兵衛はいかにして立ち居振る舞うのか。そして徳川家の命運を賭した「三方ヶ原合戦」へと向かってゆくことになる。

はてさて茂兵衛は生き延びて、そして手柄を立てられるのか。

今回は、終わり良ければ総て良し、とは行かない。茂兵衛にとって今までに無い苦渋の決断を迫られ、そして深い悲しみを味わうこととなる。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 弓組寄騎仁義


  著  者:井原 忠政
  出版社:双葉文庫
  登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵


「三河雑兵心得」の続編となるシリーズ第四弾。今度の舞台は長篠の戦い。
遂に戦国最強と言われた武田軍との激突であり、徳川家からすれば苦渋を強いられて来た宿敵との決戦である。

長篠の戦いと言えば、織田信長と徳川家康による同盟軍と、武田勝頼が率いる最強軍団との衝突だ。昭和時代は織田徳川の鉄砲vs武田の騎馬隊という構図も語られたが、現在はその様相も怪しまれいる。

それはさておき、騎乗の武者となった茂兵衛の活躍が、三方ヶ原での屈辱を晴らすリベンジが見所でもある。単なる槍の突き合いだけで無く、そこは三河雑兵心得シリーズ。単に腕力が強いだけでは武将は務まらない。その活躍については読んでみてのお楽しみ。

また、今作では長篠の戦いの英雄である鳥居強右衛門が登場し、物語の重要人物として描かれていた。
強右衛門との茂兵衛の絡み合いはもちろん、同じ徳川家臣である乙部八兵衛や、弟の丑松、そして辰蔵といった面々に加え、新たに加わる配下達。
憎まれても、嫌われても、茂兵衛の奮闘ぶりを応援しつつ、その活躍を親の様な気持ちになってしまう。

本シリーズもこれで四巻目。そしてついに本書で茂兵衛が妻をめとり、妹のタキにも縁談話がでてくるなの明るい話題がちりばめられている。
今後、さらなる困難に立ち向かうであろう次巻以降が待ち遠しい。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 旗指足軽仁義


  著  者:井原 忠政
  出版社:双葉文庫
  登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎


「三河雑兵心得」の続編となるシリーズ第五弾。

今回も植田茂兵衛の活躍を読めると楽しみに手に取った読み始めた。
さすがに第五弾となれば、初期の茂兵衛と比べて大人となり、出世の階段も登り始め部下も増えてきている。 現代でいうところの中間管理職とでもいおうか。

当初の頃の悪童から比べれば大変な出世であり、成長した姿を追う楽しみも増してきた。

さて今回は遠江が舞台となる。茂兵衛が務めるのは山賊の様にして、敵方である武田家の輜重隊が運ぶ小荷駄を奪うという任務。 その姿は成長著しく、やっぱり応援したくなってしまう不思議な物語だ。


今回では大きな(有名どころの)合戦に槍を持って参じることは無い。

宿敵武田方の油断ならない動きに対して、兵糧を運ぶ小荷駄を襲撃するのだが、ここで茂兵衛のリーダシップが発揮された。 戦禍を挙げることはもちろんであるが、思いもよらぬ徳川家の秘密を垣間見てしまう茂兵衛。

やがてこれが主君家康と、その嫡男である信康という青年との関わってくることになるのだが。 さてさて、歴史を知っているものからすれば、今後の成り行きについて、茂兵衛がどう絡んでくるのかが気になる。

そして茂兵衛は徳川家康に認められ、小さいながらも山間部の砦の番人を任されるのであった。 砦とはいえ一城の主とでも言っても過言はないだろう。茂兵衛はついにここまで出世したのである。

それはともかく最期はちょっと切ない終わり方をしている。これも乱世であればこそか。 今回のことでさらに成長を見せる茂兵衛。

さてさて次はどんな困難に打ち勝ち、そして出世を果たしていくのだろうか。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 鉄砲大将仁義


著者名 :井原 忠政
出版社名:双葉社
登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎


「三河雑兵心得シリーズ」の第六弾。

言い方に気をつけなければならないが、第一巻を手に取った時点で、ここまで長編になるとは思わず、少なくとも続編を楽しみに待つなど想像も出来なかった。
それがここまでで六巻であり、つづけて七弾目も用意されているという。

「痛快娯楽戦国時代小説」と漢字を並べて表現したくもなる、戦国時代を舞台にした気軽に読める小説だ。

さて今回は武田家の滅亡から、その張本人でもある織田信長が、本能寺で明智光秀に襲撃されるという激動の期間が描かれている。

主人公の茂兵衛は百姓上がりであるが、その努力と人柄から、天正十年の時点で鉄砲五十丁、槍足軽四十人、寄騎三人などなど、総勢一〇〇人を指揮する足軽大将にまで出世していた。

徳川の家中で出世するということは、本多忠勝のコトバを用いれば、「徹底的にこき使われる」ということだという。
血反吐を吐く様な、損にも得にもならない事であっても、命を賭けて達成せねばならない。
そして本作で茂兵衛に与えられたミッションは、武田家を裏切りを決断した穴山梅雪に関連してのものである。

史実では徳川家は甲州攻めの際、駿河より甲斐へ攻め入るのだが、その際に道案内を務めたのが梅雪だと言われている。 なので甲州へ攻め入る先手として茂兵衛は出陣していくのであったのだが。

内容についてはネタバレになるので割愛するが、あらゆる危機に直面しながらも仲間と友にそれを突破していく茂兵衛。
配下の者からも慕われて、もう立派な中間管理職といったところだろうか。

そして今回は綾女との再会があるが、その後の進展はどうなるのか。

また実弟の丑松、義弟となった辰蔵といったいつもの面々の活躍も見逃せない。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 伊賀越仁義


著者名 :井原 忠政
出版社名:双葉社
登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎


今回のドタバタ劇は、徳川家康の逃避行として世にも有名な「伊賀越え」だ。

明智光秀の謀反により織田信長が死して、京畿に居場所がなくなる家康は急ぎ故郷である三河へ帰りたいのだが、そう易々とはことが運ばない。

もちろん植田茂兵が大活躍する珍道中となるわけです。

歴史を知らなくても十二分に楽しめるがの「三河雑兵心得」シリーズの良いところ。
史実として結果を十分にわかっていても、それでも高揚感を得ることができるのも魅力な本書。

さて本作の主題になる伊賀越えだ。

史実通りに本能寺の変がおき、混乱する気ないから本拠の三河までの脱出劇となる。
その道中には数々の難関が茂兵衛らを待ち受けている。

恩賞目当ての落ち武者狩り、天正伊賀の乱における反信長の精神に満ちた伊賀の人々、天然の要害となる山深い道。
立ちはだかる数々の苦難を乗り越え、時として思いもよらない事態に遭遇するのが茂兵衛。
持ち前の強靱な武芸と頼りになる仲間達、そして強運によって前途を切り開いてく姿は今作でもそこはシリーズを踏襲。

後半では武田家滅亡後の甲斐侵攻への道筋を立てるべく、茂兵衛は武田家旧臣達と共に一揆征伐への赴くのだが。
さてさて無事に切り抜けられるのか。

なお本作では名前しか出てこないが「マサユキ」という名が幾度か登場する。
もちろん真田昌幸のことであることは容易に理解できる。
続編への布石として名前だけ登場させ、そして昌幸に翻弄される徳川家康の姿が描かれると勝手に予想してしまった。
「たァけ」という家康の叱責が茂兵衛に降り注がれ、そして厄介な任務を茂兵衛に押しつけられるのか。

頑張れ、茂兵衛。

と声援を送りたくなる戦国時代絵巻である。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 小牧長久手仁義


著者名 :井原 忠政
出版社名:双葉社
登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎


今回の舞台は本作のタイトルにもある通り、織田信雄と徳川家康がタッグを組んで羽柴秀吉に対峙した「小牧長久手の戦い」である。
もちろん今回も、茂兵衛とその仲間達が大いに活躍する場面が見所となる。

そんな期待を持って読んでみると前半で絵がガレテイルのは、信濃惣奉行となった大久保忠世がの寄騎として派遣された信濃が舞台。

鉄砲大将である茂兵衛は、鉄砲隊と松平善四郎の弓隊を率いて、浜松から遠く信州小諸までを向かう。
しかしそこには大きな合戦もなく、華々しい戦功は挙げる機会も訪れない。

ここで満を持して登場してくるのが、前巻で名前が挙がっていた真田昌幸とその子息達。
子息というのは、源三郎と源二郎の兄弟。
この兄弟について改めて説明をする必要はないだろうが、後年の真田信之と真田信繁こと幸村である。

茂兵衛からすれば、悪党の類いである昌幸、病弱として描かれた源三郎。
真田家と親交を深めてゆく茂兵衛。
即に源三郎には好印象だが、これは後々の伏線となるのだろう。

また真田家、そして上田城をも紹介している姿は、次巻以降で茂兵衛が鉄砲隊を率いて・・・に繋がるのか。

それはそれ、今後のことであるのであまり関係ない。

そんな折りに茂兵衛にとって、いや徳川家としては緊急事態が勃発。
上方では豊臣秀吉が天下人になろうと、旧主筋でもある織田家を凌駕しつつあり、それに対抗して織田信雄が立ち上がった。

それも徳川家康を巻き込んで。
後世にも語り継がれ、本作のタイトルにもある小牧・長久手の合戦の幕が上がった。

直接、秀吉とは争いたくない茂兵衛。
しかし家中はそんな弱腰、臆病な者は許されない雰囲気の中、決戦場へと徳川家康は軍勢を進めた。

本作は戦いの結果は求めていない。
すでに後世の我々は大まかな結果はしっているのだから。
唯一知りたいのは、茂兵衛がどんな活躍をして、怒鳴られ、蹴散らされ、そして手柄を立てるのか。

読んでいて楽しくなる「三河雑兵心得」でありました。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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三河雑兵心得 上田合戦仁義


著者名 :井原 忠政
出版社名:双葉文庫
登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵

update by 2022/11/13


徳川家中では、対秀吉への戦略について、「和平」か「戦」かの考えが対立していた。
我らが茂兵衛はといと、秀吉との軍勢との戦うことに無意味さを感じ、平和的な解決をと考えていた。
これは主君である徳川家康とも一致した考えであったが、本多平八郎をはじめとした家中の重臣連中とは真逆の思想だった。

それでも茂兵衛は考えを頑なに曲げずに、平八郎からは距離を置かれつつも任務遂行にいそしむ毎日である。

さらに本作では茂兵衛に対する家康の態度にも変化が。
周囲を気にし、一定の距離を茂兵衛との間に作っていた家康であったが遂に・・・!。

そして今回の舞台は大阪、そして信州上田だ。

大阪へは家康の子息、於義丸を護衛して自ら鉄砲対を率いて向い、上田へは「表裏比興の者」と揶揄される真田昌幸の身辺調査である。
本編では題名にもある通り、「上田合戦」が主となるが、やはり真田の家名は偉大だと感じてしまう。

この家名を目にすると、勝手ながら胸の奥からこみ上げてくる何か不思議な感覚がある。
とくに本作では真田昌幸でも、真田信繁でもなく、真田源三郎として信幸がきちんと描かれているからだろうか。
少々病弱な若き武将として登場するも、茂兵衛との関係から今後も楽しみな展開を深読みしてしまう。

さて今回は上田合戦。

歴史を知っていれば、この合戦が徳川と真田の両家にとって、どんな意味を持っているのか。
今後の展開は歴史年表に照らせば理解できるだろう。
しかしここに茂兵衛がどう関わってくるのか。
真田との戦いで手柄をさらに重ね、さらなる出世への足がかりになるのか。

まだまだ茂兵衛の活躍は続きます。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 馬廻役仁義


書  名:三河雑兵心得 馬廻役仁義
著者名 :井原 忠政
出版社名:双葉文庫
登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、真田源三郎

update by 2023/11/18


「ところがどっこい―茂兵衛は生きていた。」

第一章はこの様な文言から物語ははじまる。

前作の最後において不慮の変事により、真田方に捕らえられてしまい、徳川方としても茂兵衛一行はすでに亡いものと覚悟していた。

しかしそう簡単には茂兵衛は死なない。

真田源三郎の計らいで上田城の北方にある砥石城の一角に、郎党と共に囚われの身となっていた。

いつもの和やかな雰囲気はなく、今回は危急の場からの幕が開いた。

このまま真田の幕下として生きながらえるのか、それとも主君徳川家康が救いの手を差し伸べてくれるのか。

勝手ながら気になってしまう書き出しである。

ネタばれは慎むため、これ以上は書くのはやめておくが、歴史は茂兵衛という人物に相応しい立ち位置を与えてくれた。

なお今回は三河徳川家で大事件が勃発するが、これは読んでからのお楽しみ。



★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 百人組頭仁義


書  名:三河雑兵心得 百人組頭仁義
著者名 :井原 忠政
出版社名:双葉文庫
登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵、本多平八郎

update by 2023/11/18


鉄砲百人組の組頭となった茂兵衛。

もう立派な一端の大将ともいえる、足軽大将である。

侍大将という微かな望みもあったそうだが、家中でのバランスを考慮した結果としてのこと。
文句などあろうはずがない。
また大きな手柄を立て、周囲を見返すほどの勲功があれば、誰も文句は言わないだろう。

さて、今回の話は宿敵である真田家と、徳川家との和睦である。

後世に生きる我々にとってはよく知ることだが、本多平八郎の娘である於稲をもって、真田源三郎との婚姻がここに成る。

そんな大役を仰せつかった茂兵衛であるが、今度はどんな知恵を絞って功を立てるのか。

武辺一辺倒ではない、バカおやじっぽい本多平八郎の姿が本書の魅力であるのだろう。

そして時間はすすみ、ついに名胡桃事件が起き、ついには北条征伐でと動いてゆく。



★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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三河雑兵心得 小田原仁義


書  名:三河雑兵心得 小田原仁義
著者名 :井原 忠政
出版社名:双葉文庫
登場人物:茂兵衛、丑松、辰蔵

update by 2023/11/18


さて出世した茂兵衛の活躍の場は、関東の雄である小田原北条征伐へと移っていた。

小田原の北条氏といえば、堅固な小田原城を頼りに籠城することで、伝説的な大名である武田信玄や上杉謙信を撃退している。

その再現を目論む北条氏に対し、豊臣秀吉は天下人としての大号令を発し、全国から集った兵で攻めようとしていた。

だか本書の楽しみは、北条の反骨心ではなく、大軍勢による城攻めでもはない。

茂兵衛の活躍、いや主君である徳川家康から押し付けられた無理難題に立ち向かう姿。そしてどう知恵を絞って手柄を立てるのか。

読者が気になるところといえば、この点だと勝手に想像してしまう。

今回は城攻めを軸にして物語は展開していく。

小田原城を守る支城の一つであり、東海道を防備している山中城。

そして北条氏の祖となる伊勢新九郎が拠点として、関東進出の足掛かりとなった韮山城だ。

茂兵衛の鉄砲隊はどんな活躍をみせ、手柄を立てるのか楽しさいっぱいである。



★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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見知らぬ海へ


見知らぬ海へ

  著  者:隆 慶一郎
  出版社:講談社文庫
  登場人物:向井正綱、本多正信、徳川家康


海を舞台にして、戦国時代を描いた歴史小説です。

向井正綱を主人公に据え、正綱が向井水軍を継ぎ、水軍から戦国時代を描いています。

まさに戦国を生き抜く武将の一人です。
また海に生きる人は、陸に生きる人との価値観の違いなども読みとれます。

これは徳川の水軍として天下統一への事業を達成していく物語。になるはずだったと思います。
というのも、この「見知らぬ海へ」が未完の作品であるからです。

オランダのリーフデ号が臼杵へ漂着したところで幕を閉じています。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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三成の不思議なる条々


  著  者:岩井 三四二
  出版社:光文社
  登場人物:石田三成


関ヶ原の合戦で敗将となり、斬首された石田三成。それから三十年が過ぎ去った太平の世となった時代に、当時の生存者を訪ね歩き、三成の軌跡をまとめる物語。

筆紙商いの文殊屋が、さる筋の者から内密に依頼されたのが、「ありし日の石田三成」について作成せよと言う依頼であった。
そもそも関ヶ原の合戦とはどんな戦であったのか。どんな大名方が参陣していたのか。
また三成という人物について、なぜ軍勢を率いて戦う必要があったのか。疑問を胸にして江戸から上方へ旅へ出たのであった。旅先で人々から話を聞くうちに、石田三成という人物の実像にせまり、素顔が垣間見えている。

なぜ関ヶ原から三十年という時間を経て、わざわざ敗将となった三成の軌跡を追っているのか。それは読んでからのお楽しみであるのでここでは語らない。

また主人公と三成について語る人々との会話はまるで、昔話を読み聞かせてくれているかの様であり、岩井氏の世界へ引き込まれてしまうことだろう。

定説で語られる三成像とは異なる解釈は、読み手を飽きさせる事無く、なぜ三成は家康率いる東軍と真っ向から戦いを挑み、そして敗れたのか。その一端を垣間見ることが出来る一冊である。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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水の城~いまだ落城せず~


  著  者:風野真知雄
  出版社:祥伝社文庫
  登場人物:成田長親、甲斐姫、石田三成


関東の武蔵に蓮の沼に浮かぶ城があった。忍城という。人々はこの城を「水の城」とも呼んでいた。この城が歴史的に名を刻んだのが、本書の物語でもある豊臣秀吉による小田原北条攻めである。関東の北条方の城は豊臣方の諸将により、陥落していく中で忍城は持ちこたえていた。さらに本城の小田原よりも戦い続けていたのである。この忍城で采配を振るったのが城代であった成田長親。そして城攻めを慣行した大将は石田三成であった。攻城軍がおよそ五万の兵をそろえるのに対し、籠城兵は百姓兵を合わせても三千ほどの人数。この劣勢の中でその様に城方の武将は采配を振るい、足軽達は戦ったのだろうか。成田長親と石田三成の相反する人柄が,物語を一層おもしろくしている鍵がなのかもしれない。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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光秀の定理


  著  者:垣根 涼介
  出版社:角川書店
  登場人物:明智光秀、愚息、玉縄新九郎


「定理」とは、公理や定義をもとにして証明された命題で、それ以降の推論の前提となるもの。

題名からして明智光秀を描いた物語であり、本能寺の変を扱った歴史小説であろうと思い込み、手に取ってみたのだが、読んでみると見事に期待は裏切られた。
本能寺の変を追求し、その様相については描かれていない。物語の大半は博打の勝率についてであり、「モンティホール問題」として作中の人物が語っているのだ。これが実に面白く読み込んでしまう。
物語は、剣の達人である浪人の新九郎と博打の坊主である愚息、そして明智十兵衛光秀が出会うところから始まる。この三人の生き様は三者三様であり、どれを肯定するでも否定するものでもない。その中で出世する光秀を中心として物語は進む。
そもそも明智光秀という武将が、主君である織田信長を討った「本能寺の変」は大概の人にとっては既知のことである。しかし光秀がその様な行動をなぜ起こしたのか、その事実については現在まで謎のままであり、その答えはだれも正解を導き出していない。
解答例として考えるのであれば、著者の考え方は大変面白く興味を持たせてくれた。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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密謀(全二巻)


密謀

  著  者:藤沢 周平
  出版社:新潮社
  登場人物:直江兼継、上杉景勝、石田三成


これまた関ヶ原の合戦を含んでいる作品です。

とはいうものの直接、徳川家康が率いる東軍と石田三成の率いる西軍の大軍が、関ヶ原の地で直接干戈を交えた戦いを描いている訳ではない。

羽柴秀吉による天下統一は目前に迫り、秀吉の軍門に下った越後の上杉家。物語はそこから始まる。

秀吉方の使者となった石田三成は、上杉家との交渉の赴く。そこで上杉方の将である直江兼継と出会い、やがては天下に名だたる謀を巡らすこととなる。

本作では上杉方からの視点でもって、徳川家康の天下取りが描かれている。

また武将以外にも裏で活躍する忍びの者や、幼くして母を亡くした剣豪なども登場し、なかなか読み応えのある関ヶ原モノである。


★ ★ ★ ☆ ☆ 3 stars
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夢幻


著者名 :上田 秀人
出版社名:中央公論新社
登場人物:徳川家康、織田信長


「夢幻」とは「ゆめとまぼろし」の事であり、はかないことの例えとして用いられる。

読んで納得な題目であった。

本作も題目の通りに「天下人」とは「夢」のまた夢である徳川家康と、天下人まで手が届きかけながらも「幻」と消えた織田信長を波瀾万丈な人生を2部構成で描いた作品。 第一部となるのは徳川家康。

幼少期より人質生活を余儀なくされ、独立したと思えば領内の和は収まらず、武田という大きな難敵に脅かされるなど、数々の苦難を乗り越えていく。 その中でも嫡男である信康や、正妻である瀬名姫との確執など身内に潜む難事も家康を襲う。

一方で、第二部は織田信長となる。

第一部の家康とは対照的に信長の半生は美濃を併呑し、近江の浅井家の協力得て上洛を果たすなど、まさに天下統一へ向けて順風満帆な道。
また嫡男として誕生した奇妙丸に対しては、後継者として英才教育に勤しむこと、前半の家康とは対照的な人生設計を送ることとなる。

それでも歴史は証明している。最後に笑うことになるのは家康であり、信長は天下まであと一歩まで進むも、遂に果たす事かなわず、幻と消滅してしまうのだった。

さてさて本能寺の変により二人の人生に大きな変革をもたらすであるが、その首謀者とされるのが明智光秀だ。
毎度の事ながら、なぜ明智光秀は本能寺で信長を弑さなければならんかったのか。

この本能寺の変に対して、光秀を突き動かす動機は本書の魅力といえるだろう。また、信長と家康の人生を端的に、一冊で読むことができるのは誠に贅沢な事である。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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武者始め


  著  者:宮本 昌孝
  出版社:祥伝社
  登場人物:北条早雲、武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、真田信繁


「武者始め」。あまり聞き慣れない言葉である。

武者の始まり、武者として武士としての第一歩を踏み出すと捉えれば、初陣や元服といった儀式的なことを思い手に取ってみた。

しかし読んでみると、少々様子が異なる。
というよりも勘違いをしていた様だ。つまり命を賭して、物事を成し遂げることが「武者始め」ということの様に思えた。
本書では北条早雲から始まり、武田信玄や上杉謙信といった戦国大名。さらに織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑。そして真田信繁という伝説的な武人の武者始めが描かれた全部で七つの話からなる短編集となっている。

ちなみに一つ推奨するとれば、真田信繁を描いた「ぶさいく弁丸」の物語だろうか。武将としての功績などは、増幅して語り継がれることが多い。
特に武将については、多くが美丈夫に描かれ、そして語られること間違いなし。しかし本書での信繁の容姿は、題名の通りに描かれている。そして信繁の武者始めはどの様なものであったのか。

結末については知られていることだが、武者始めについてはあまり知られていない事が多く、伝説的に後世に語り継がれることも否定できない。 本作品についても史実の様でいて、実際に資料や文献に書かれている描き方だ。疑うことなく読むことに没頭してしまった。

歴史小説として手に取った一読者からすれば、史実だろうが創作だろうが、そんなことは関係無い。楽しく納得ができる内容であるのであれば、それだけで満足を得られるのだから。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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村上海賊の娘(全二巻)


  著  者:和田   竜
  出版社:新潮社
  登場人物:村上景、村上元吉、村上景親、真鍋七五三兵衛


大阪本願寺から兵糧要請が毛利へ向けられた時、運命の扉を押し開く事になったのが、瀬戸内海の海賊である村上武吉の娘であり姫様である景。

日頃は領内での海賊家業に勤しみ、合戦に憧れを抱く乙女。
しかし彼女の容姿は醜女であり嫁の貰い手も無いというのが父武吉の悩みであった。

そんな彼女が本願寺を目指す信者等と出会い、そして舟で向かったが和泉国。
そこで出会ったのは真鍋七五三兵衛ら泉州侍。
そして本願寺と織田家との間で繰り広げられていた本物の合戦。

物語は毛利家が本願寺へ兵糧の搬入を完遂させる木津川沖合戦を主にしてるのだが、そこへ至るまでの時流を景の視点で語っている。

堅苦しい歴史小説とは異なり、少々軽い漫画風な娯楽小説とでも言えようか。

特に泉州侍が合戦でのその姿は滑稽である。血なまぐさい戦場である現実から逃避し、合戦場であることを忘れてしまうほどだ。

その独特で無遠慮な雰囲気を漂わせる世界観を受け止めることができるかどうか。


★ ★ ☆ ☆ ☆ 2 stars
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村上武吉-毛利を支えた水軍大将-


  著  者:岳   真也
  出版社:PHP文庫
  登場人物:村上武吉、小早川隆景、毛利元就


瀬戸内村上水軍の頭領、村上武吉の半生を描いた作品。はじめて読んだ水軍モノでした。世にも有名な厳島の合戦で、毛利方に就くかのか、それとも陶方に就くのか?迷いに迷って村上家の命運を預かる村上武吉。海に生きる武士の姿を垣間見た気がします。


★ ★ ☆ ☆ ☆ 2 stars
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村を助くは誰ぞ


  著  者:岩井 三四二
  出版社:講談社文庫
  登場人物:斎藤道三


尾張の織田弾正忠が美濃へ軍勢を差し向けた時、美濃を事実上統治していたのは斎藤道三。

さてその勝敗は如何に。

いやいやどちらに転がろうと、その地に住む者にとってはどうでも良い話。
とにかく勝つ方へ味方すればよいのだから。
それではどちらが優位なのか。
様々な立場の人が奔走する姿を描いた短編集である。

全部で6作品が治められいる。

これらの大半の話は、実際に存在している古文書からその題材を引っ張り出してきており、さらに滑稽で人間味が溢れるスパイスを加えた、物語として仕上がっている。

殺伐とした戦国時代、こういった小説を読んでみるのも良いものです。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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名将 大谷刑部


  著  者:南原  幹雄
  出版社:新潮文庫
  登場人物:大谷吉継、石田三成


戦場で武功を挙げることを夢見た平間こと、のちの大谷吉継。豊臣秀吉に仕えその才能をいかんなく発揮していた。しかし戦場での槍働きよりも、事務官としての才覚が認められ、同僚の石田三成と共に豊臣政権下での行政を司っていた。やがて敦賀を与えられるほどの出世を遂げたが、不治の病に掛かり志し半ばで、表舞台から退いた。そんなおりに、隠居の身である石田三成が兵を挙げる。そして事態は関ヶ原の戦へと向かうのであった。吉継は勝算の見込みは薄いと頭では理解しつつも、ひとかどの武将として最後の采配を振るうことを選択する。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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名将 佐竹義宣


  著  者:南原 幹雄
  出版社:角川文庫
  登場人物:佐竹義宣、石田三成、直江兼続


北関東の大名佐竹氏。北からは奥州の伊達氏に押され、南からは小田原北条氏から攻め寄せられ、奥州と関東の狭間で四苦八苦している時、転機が到来したのが天正一〇年のこと。天下制覇を目指す豊臣秀吉による小田原攻めである。佐竹義宣は、天下人の軍勢である豊臣方にいち早く馳せ参じ、石田三成から厚い信頼を勝ち得た。これにより常陸一国を支配することを天下人よりお墨付きを頂き大名へと躍進する。これによりいつしか、百万石の大名への出世を目論む義宣であった。自より豊臣家の石田三成に接近し、関東へ移封された隣国大名でもある徳川家康とは、意識して距離を置くようになった。そして自らの知恵に奢り、石田三成や上杉家宰相である直江兼続と謀り、密盟を結ぶことになる。これはやがて天下を賭けた決戦を仕掛けるにいたるのであった。この佐竹義宣を名将として語ろうとしているのはよく理解できた。しかしそれがかえって、時に凡将に見えてしまうのは気のせいだろうか。


★ ★ ☆ ☆ ☆ 2 stars
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毛利元就(全五巻)


毛利元就 著:榊山 潤

  著  者:榊山  潤
  出版社:富士見書房
  登場人物:毛利元就、浄現坊


安芸郡山の国人でありながら、中国地方一帯に勢力を拡大させた覇を唱えた戦国大名、毛利元就の半生を描いた物語。山陰の尼子氏と周防を中心として力を持つ大内氏。毛利氏はこの両氏の狭間で、なんとか生き延びる術を探る日夜であった。あるときは尼子氏へ頭を垂れ、次の日には大内氏へ手をさしのべてもらい、毛利の家を守っていた。大勢力に飲み込まれず、乱世ならではの困難に遭遇しながら、生存競争に勝ち抜いた毛利元就の姿が描かれている。力が無くとも謀略で勝負。また歴史に名を残す武将だけではなく、弱者である女性の不遇という視点から、読者を戦国という乱れた世を知らせてくれる。主人公は間違いなく毛利元就であろう。しかし物語は浄現坊という元就の隠密であり、僧侶の視点により進行している。やや読みづらい気もするが、読み終えると毛利がなぜに覇者と呼ばれる様になったのか、その源がわかった様な気になってしまう。


★ ★ ☆ ☆ ☆ 2 stars
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森蘭丸


森蘭丸

著者名 澤田 ふじ子
出版社名 光文社
登場人物 登場人物:森蘭丸、八重、平太

本書では森蘭丸の青年時代が語れいる。森蘭丸といえば織田信長の寵童という印象が深く、多くの人が人物像を先行して想像することでしょう。しかし本書での森蘭丸は、織田家の官僚という役どころ。また戦国時代というと殺伐とした雰囲気が漂うなか、10代の少年である森蘭丸という若者の青春ドラマとして読むことができます。


★ ★ ☆ ☆ ☆ 2 stars
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もろびとの空 三木城合戦記


著者名 天野 純季
出版社名 集英社
登場人物 加代、蔭山伊織、別所長吉、別所義親

いついかなる時代であっても、戦いで犠牲を強いられるのは弱者である領民である。
そこに一人の英雄は必要なく、欲するのは自由と平和と食料。

戦国時代における合戦の中でも、悲惨な攻城戦として現代にも語り継がれるいわゆる「三木城合戦」。

織田方の大将である羽柴秀吉は三木城を攻めるにあたって、徹底的な兵糧攻めを慣行。
別所家の武将はもちろん、織田方の兵から逃れた領民も併せて城に籠もって羽柴軍と徹底抗戦。

しかし城内に籠もった人々の敵は目の前に布陣している織田方の兵だけではなかった。
長期にわたる籠城により米蔵からはコメが消え、家畜も姿を消し、飢えが城兵や武器を持たない領民達を襲う。

「三木の干殺し」と後世に揶揄される。

小林村の農民加代も織田家の襲撃から逃れるため、弟と妹を伴い三木城に籠もった領民のひとり。

加代の目でもって城内の凄惨な生活を強いられる姿を描いている。
ある時は友人と語らう少女が、弟妹を守るために薙刀を手にして敵と斬り合う。
そこにあるのは功名心からでは無く、生き抜くために戦うという姿だ。

名のある英雄が活躍する戦国時代モノの小説は豊富に揃っており、また手に取って読む機会も少なくない。
しかし本書にはそんな英雄は存在いない。

最前線に立たされている人々の痛ましさが、心に突き刺さってくる。

物語の終盤、籠城戦を終わらせようと奮闘した人々。

爽快な気分にはならないが、敗者側からみた悲惨な籠城生活から、生き地獄を垣間見た気がする。


★ ★ ★ ★ ☆ 4 stars
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