〜あ行〜

蒼き信長(全二巻)
著者名安部 龍太郎
出版社新潮文庫
主な人物織田信秀、織田信長
ひとこと 織田信長という戦国武将を取り上げた小説は数多くあれど、実父である織田信秀となると、そうそう描かれる機会は少ない。

どんな実績を積み、どんな人間性を持っていたのか。本書では尾張守護代の被官という立場でありながら、尾張一国を統治しようという野心を抱いている信秀が描かれている。さらに実子である信長と父子二代に渡る奮戦模様を悪戦苦闘しながら、尾張どころか隣国の美濃までも併呑してゆく、まさに国盗り物語である。

前半部分では織田信秀が躍動する話が中心となる。尾張国内のみならず、隣国の三河へ出兵して今川家と争い。そして北隣の美濃へ侵攻すれば斎藤家と対峙。

さらに「うつけ」と呼ばれた信長との親子関係も、新鮮に思えたのは気のせいか。他の小説でも描かれることが多い親子関係。しかし本書は何かが違う。もしかしたら信長の母の描写がそれを際立てているのかもしれない。

そして信長はなぜ、父信秀の葬儀で焼香を投げつけ、また従来からの家臣に疎まれ、さらに実弟である信勝を殺害しなければならなかったのか。
本書では特に前半部、信秀が活躍する時代、信長の青年時代が描かれている。全二巻の構成であるが、すべてを読み終えた時、信長という武将の新たな一面を見ることができる面白い作品だ。
お薦め度★★★★
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足利義昭−流れ公方記−
著者名水上 勉
出版社学陽書房
主な人物足利義昭,ぬい
ひとこと 足利幕府最後の将軍である足利義昭。彼の侍女として義昭とともにその流浪に従ったぬい。その両者の間をぬいによる淡い恋心を含みながら口伝でつたえる,一般的に想像する歴史小説とは異なる視点で描かれている。将軍の座に腰を据えることすらままならない時勢であった戦国時代。実兄である第一三代将軍の義輝が、三好三人衆と松永久秀の反逆にあい奮戦むなしく自害した。義昭と同じように仏門に帰依していた弟の周ロも,さらには実母も殺められたしまった。そんな状況下でただ一人命を救われ,そして還俗した義昭。将軍に就くための義昭主従による逃避行がはじまった。各地を転々とする中で,各地の人々と触れあい,その地の情景を作者自らの感想も交えて語られている叙情的小説である。
お薦め度★★
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悪党の戦旗-嘉吉の乱始末-
著者名岩井三四二
出版社新人物往来社
主な人物小寺藤兵衛、上月左近、間島彦太郎
ひとこと 嘉吉の乱をご存じだろうか。まだ応仁の大乱も起きる前、室町幕府六代将軍である足利義教が、播磨・備前・美作の守護であった赤松満祐の手により、暗殺されるという事件の事である。これにより赤松家は四方の敵から攻められ、主君の満祐をはじめとして一族郎党の殆どが落命することになった。赤松円心より続いた赤松家が滅んだ瞬間でもあったのだ。しかし一部の家臣達は、赤松家再興を夢見て方々へ散り機会を伺っていたのである。これは赤松家復活に命を掛けた忠義心溢れる物語。戦国時代には時間があるが、彼ら戦国に先んじて主家の復活を願い、命を賭して戦っていたのであった。
お薦め度★★★
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明智左馬助の恋(全二巻)
著者名加藤廣
出版社文春文庫
主な人物明智左馬助、綸、明智光秀
ひとこと 加藤廣氏による「本能寺三部作」の完結編。信長の側近であった太田牛一の視点から描いた「信長の棺」。さらには天下人として君臨することとなる豊臣秀吉を描いた「秀吉の枷」。そして完結編となる「明智左馬助の恋」。本書では、事変の首謀者でもある当事者、明智光秀からの視点で語られている。主人公は明智左馬助。明智左馬助は明智光秀の養子となり、やがて光秀の娘を娶り、婿として明智家に迎え入れられた。いわば明智家の家臣団の中でも、光秀により近い武将の一人であったと想像できる。よって様々な機密情報を知り得る立場にいた人物であり、その彼による視点で描かれたのが本書「明智左馬助の恋」だ。前二作も想像を超過する発想で、本能寺の変に隠された謎を描写しているのだが、本作でもそれは不変である。成り行きで3作目が作られたのではなく、「1つの謎は3つの方向から追うのがいい」というあとがきの言葉とおりの結果だ。前二作を読んでいれば、隠された謎が真相となり、受ける衝撃は倍増され、読み手を惹きつける魔物が棲んでいる。さて、表題にもなっている「明智左馬助の恋」であるが、恋多き男の物語ということでは無い。ここで語ることは憚れるので、最後まで読んで頂きたい。その意味を理解していただけることであろう。
お薦め度★★★★
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明智光秀
著者名早乙女貢
出版社文藝春秋
主な人物明智光秀、堀隼人正、天野源右衛門
ひとこと 戦国時代の中では教養人であり、また軍を率いる将としても優れた、まさに文武両道を絵に描いた様な明智光秀を描いた作品。物語は光秀が籠城していた城の落城というから場面から描かれている。そこから後の将軍足利義秋に仕えるのだが、そこまでの過程が少し中途半端な感じもする。小説の中の時間は時が経つのが早く、良い言い方をすればテンポ良く進んで読み進んで行きます。光秀は何故、本能寺において織田信長を襲ったのか?それは読んでからのお楽しみ。さらに山崎の合戦後、光秀は生き延びたといった事が描かれてます。また光秀をつけねらう、堀源右衛門という人物の執拗さも、話を盛り上げております。
お薦め度 ★★ 明智光秀


浅井長政
著者名星 亮一
出版社PHP文庫
主な人物浅井長政、市、織田信長
ひとこと 浅井長政といえば、北近江浅井家三代目の当主。さらに付け加えれば、浅井家最後の武将ということになる。織田信長の妹である市を娶り、確固たる地位を築き上げて行く。そんな中、優柔不断である長政は時期を時流を読めずに、やがて義兄である織田信長に対して反旗を翻す。しかし破竹の勢いでもって周囲を平定してゆく織田信長に、対抗する事は難儀であり、やがては滅亡への道へと進んで行くのは誰の目にも明かであった。そんな近江の小谷城主浅井長政の半生を描いている作品です。
お薦め度★★ Amazonで購入


安土城の幽霊−「信長の棺」異聞録−
著者名加藤廣
出版社文藝春秋
主な人物木下藤吉郎、織田信長
ひとこと 以前に「信長の棺」という小説を読んだ。斬新な視点で描かれたそれは、世間での評判も上々であったという。単なる歴史小説という枠にとらわれず、歴史ミステリーとして仕上がり、読者も堪能できる作品であった。そして「安土城の幽霊」はその外伝的な作品となっている。本書は長編小説ではなく三編がおさめられた短編小説。どんな物語を読むことが出来るのか。それは羽柴秀吉がまだ藤吉郎と名乗っていた若かりし頃を描いた「藤吉郎放浪記」。こちらは信長に仕え、そして頭角を現すまでの展開が描かれている。設定は「信長の棺」に繋がることであり、その特殊能力によって認められてゆく過程が描かれている。そして本書の題目となっている「安土城の幽霊」。こちらは徳川家康の戯れ言から物語ははじまる。信長を恐れおののかせるという密命を帯びた服部半蔵。安土城で彼が目にし信長の姿に仰天。歴史小説としては異質でありオカルトモノを思わせる内容だ。最後の三編目は九十九茄子と呼ばれた名物茶器が主人公。茶碗を手にした足利義満からはじまり、所有した者達の数奇な運命を描かれている。その名も「つくもなす物語」だ。
お薦め度★★★
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姉川の四人 信長の逆切れ
著者名鈴木 輝一郎
出版社毎日新聞社
主な人物徳川家康、明智光秀、木下藤吉郎、浅井長政、織田信長
ひとこと 「金ヶ崎の四人 信長、秀吉、光秀、家康」の続編となる作品。今度は北近江の姉川が舞台となり、戦国武将が滑稽な姿を披露する物語。
事は伊勢国の千草において、織田信長が何者かに狙撃されるという凶事から始まった。信長の命を狙った者不届き者とは誰なのか。既に織田方からは離反していた浅井長政が仕向けた刺客なのか。いやそうでは無く、身近にいる織田家内部の誰かであるのかもしれない。猜疑心の強い信長は容疑者を3人に絞った。
生への執着心がとても強く、下賤の身から這い上がった木下藤吉郎。将軍足利義昭と織田家に仕える賭博師の明智光秀。そして本作の主人公ともいえる徳川家康だ。
なんとか名誉回復、疑いを解くために気を遣い、銭を使い、そして命を賭けて戦う姿を描いている。とくにクライマックスである姉川での戦いでは家康の深層心理が絶妙に描かれていることに敬服。また歴史には名を残すことが無い足軽たちの戦場での姿もあわせて、武将達が繰り広げる戦国絵巻として書きつづられている。
お薦め度★★★★
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あばれ狼
著者名池波正太郎
出版社新潮文庫
主な人物沼田万鬼斎、鈴木右近、真田信幸
ひとこと 表題作を含む全七編の短編集です。「あばれ狼」と他三作品は手越の平八を主人公にした股旅ものです。他の四作品は一応は戦国時代を題材としております。「白い密使」は大阪夏の陣前夜、盗賊六人が徳川方の密使をたまたま捕らえる物語。「角兵衛狂乱図」は真田家の樋口角兵衛の異様な絵から始まる話です。その絵とは、自ら片方の眼球を短刀で刺し、それをえぐり出している角兵衛。「幻影の城」は以前に読んだ「まぼろしの城」の短編バージョン。そして「男の城」は真田信幸とその臣、鈴木右近の話です。
お薦め度★★★
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尼子経久
著者名中村整史朗
出版社PHP文庫
主な人物尼子経久、尼子詮久、毛利元就
ひとこと 戦国時代の幕を開いた西国の武将、尼子経久を主人公に据えた小説です。若年の頃に国元を追放され、再起の時を待つ。そして数年後、「時は来たり」と、わずかな家臣と共に月山富田城を奪取に成功。これを足掛かりとして山陰地方を中心として中国地方の覇者をめざす。しかし大内氏や毛利元就といったライバルが出現し、さて経久はどう動くか。この小説では経久は万能に近い力を発揮しています。また経久の死後、尼子氏の滅亡までがエピローグとして書かれています。尼子経久ファンは一読してみてください。
お薦め度★★ Amazonで購入


暗殺の城(全二巻)
著者名津本 陽
出版社幻冬社文庫
主な人物うの、武田勝頼、徳川家康、服部半蔵
ひとこと 徳川家康と武田勝頼による、遠州・高天神城の攻防を軸にして描かれ、そこで活躍する「くの一」(女の忍び)を中心とした物語です。「くの一」である「うの」の父が、徳川家康に無情にも無き罪に問われ、切腹させられてしまう。生涯を徳川家康の首を狙うことに掛け、その身も武田の忍びとして預けることになった忍の「うの」。物語は主点は高天神城での戦いでありるが、その中でも忍び同士の戦いなども描かれている作品でです。
お薦め度★★★
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家康、 江戸を建てる
著者名門井  慶喜
出版社祥伝社
主な人物徳川家康、徳川秀忠
ひとこと 天正十八(1590)年、小田原北条家は滅亡した。
代わりに関東へ入った徳川家康は、未開発地であった江戸の町を本拠と定める。しかしそれは、人の手が加わっていない地を開発し、いちから作る必要があった。東京という町は今日では、世界屈指の大都市として発展した。
その町の礎を築くことになる大事業。それはどの様にして、建築されていったのか。徳川家が威信を賭けた大プロジェクトが始まろうとしていた。
江戸の町へ流入している大河、利根川の流れを変えてしまうという「流れを変える」。徳川の貨幣を流通させるという「金貨を延べる」。江戸に暮らす人々の生活用水を給する「飲み水を引く」。町の中核となる江戸城のなわばりに重要な石垣の話である「石垣を積む」。そして最終話である「天守を起こす」では、それまでの識豊時代では、天守の壁は黒色であったものが、徳川時代のそれは白色となっている。その謎を家康と秀忠という親子の目線で解明している「天守を起こす」。
こうして江戸が築かれていたのかと考えると、街並みを歩く時の面白味もまた格別である。
お薦め度★★★★★
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家康・十六武将
著者名徳永真一郎
出版社PHP文庫
主な人物徳川家康
ひとこと 狩野永納が描いたと伝わる「徳川二十将図」が、日光東照宮に保存されている。そこには徳川家康を陰日向となって支えた徳川家二十人の武将が描かれているという。本書はこの中から十一名を選びだし、さらに五人の武将を追加して、一武将一編毎に家康に仕えての活躍を綴った短編小説である。徳川四天王と言われた本多忠勝や井伊直政を始め、本多正信や大久保忠世などといった多くの人にその名を知られている武将。槍の半蔵と唱われた渡辺守綱や弓の達人でもあった内藤正成など、あまり知られていない列伝も記されている。そんな中で興味深く読むことが出来たのが、京都所司代として辣腕ぶり発揮した板倉勝重。武将といっても槍を手にして戦場を駆け巡った訳ではない。裏方として町奉行から大名並みに出世していった彼の姿も、戦乱の世が終焉して太平の世になることを示した時代なのだろう。
お薦め度★★★
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一夢庵風流記
著者名隆慶一郎
出版社新潮文庫
主な人物前田慶次郎、直江兼続、前田利家
ひとこと いまから一昔前に、某週間漫画にて連載されていた作品の原作となった小説です。連載を読まれていれば、内容は自ずとわかると思いますが、漫画の豪快さもいいですが、それ以上に読み応えがあると思います。前田慶次という人物を、そして「かぶき者」という人を、世に認めさせた作品で有ることは誰もが認めるところでしょう。また漫画の内容と読み比べて、若干異なる所もあり、読んでみると新たな発見があるかもしれません。是非一度読んでみてはいかがでしょうか。
お薦め度★★★★
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宇喜多秀家
著者名野村敏雄
出版社PHP文庫
主な人物宇喜多秀家,豪
ひとこと 宇喜多秀家という武将の名前をご存じだろか。関ヶ原の合戦において西軍の中心的な将でありながら,死罪を免れて八丈島で命を全うしたその人である。この本では朝鮮出兵の模様を中心に話がすすみ,その過程でもって秀家という人物像が描かれている。彼を取り巻く盟友や家臣,そして家族。秀家の半生がまとめ上げられ,気軽に読める1冊としておすすめできます。
お薦め度★★★
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宇喜多秀家-備前物語-
著者名津本陽
出版社文春文庫
主な人物宇喜多秀家,宇喜多能家,宇喜多直家
ひとこと 宇喜多秀家という冠が付けられた小説ではあるが,これは備前から興った宇喜多家の物語である。宇喜多秀家が活躍するのは後半になってから。それも天下人となった豊臣秀吉に目を付けられてからのことである。前半までは備前の宇喜多家が,どの様な攻防でもって家を保っていったか。彼の地の歴史を知ることもできる1冊となっている。宇喜多秀家の半生ということで本書を読み始めると拍子抜けがしてしまう。だがそこは津本陽の作品。膨大な資料を調べ上げたのだと,納得できるほど細かい事項が綴られている。歴史小説としては読み応え十分であろう。
お薦め度★★★★
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海の稲妻(全二巻)
著者名神坂次郎
出版社講談社文庫
主な人物呂宋助左衛門,南無右衛門
ひとこと 読んだ感想から「助左衛門とゆかいな仲間たち」という副題を付けたくなった。助左衛門が十郎太と名乗っていた頃は,種子島で暮らしていた。そこでの仲間等と供に,戦国の日本を鉄砲という当時の新兵器を駆使しながら生きて残りをかけ,青春を駆け抜ける。当初は傭兵として合戦に参陣し,日本全国が豊臣秀吉の元で統一されると,視点を海外へ向けルソンとの間で交易を行う助左衛門。公家の山科言経との交流や,物語に花を添える奈々とのほのかな恋,さらに父との別れなど,波瀾万丈の生涯を描いている。
お薦め度★★
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裏関ヶ原
著者名吉川  永青
出版社講談社
主な人物黒田官兵衛、佐竹義宣、細川幽齋、真田昌幸、最上義光、織田秀信
ひとこと 関ヶ原の合戦にまつわる短編モノ。

関ヶ原の地における決戦を「表」とするならば、直接決戦の地へ参じることができなかった武将の思惑を描いた作品集となっている。
どの話も秀逸であり、一般的な関ヶ原合戦モノとは異なった見解が描かれており、瞬く間に読み終えてしまうほど没頭してしまう。

勝手ながら佐竹義宣を描いた「義理義理右京」や織田秀信の「鷹の目」といった物語をおすすめである。

視点を変えてみれば、その見方から考え方、さらには印象も様変わりしてしまうのが歴史の面白さだ。関ヶ原の合戦を語るうえで、その時の日本全国を俯瞰して、その動静を見た気にさせてくれる作品だ。
お薦め度★★★
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英雄にっぽん
著者名池波正太郎
出版社角川文庫
主な人物山中鹿之介、立原久綱
ひとこと 山陰の覇者は尼子家から毛利家へと渡ろうとしていた時。鹿之介は尼子家の運命を背負いながら、毛利家との間で対決を行うのであった。しかし毛利家の謀略の前に尼子家は膝を屈してしまうのであった。主家であった尼子家の再興に粉骨砕身した、戦国時代の正直者「山中鹿之介」が主人公の小説です。
お薦め度★★★
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大阪城炎上
著者名早乙女貢
出版社角川文庫
主な人物片桐且元・淀君・徳川家康
ひとこと その名の通り大阪城落城を描いた作品です。ちなみに初めて読んだ早乙女氏の作品でもあります。時代は豊臣の世からから徳川の世へ移ろうとする時代の変換期です。始まりは関ヶ原の合戦後から。また豊臣家の為にと紛争する片桐且元や大野長治らの、活躍もこの作品では見逃せません。結果はみなさんのご存じの通りです。また大阪の陣で活躍する真田幸村らも当然登場してきます。
お薦め度★★


王の挽歌(全二巻)
著者名遠藤周作
出版社新潮文庫
主な人物大友宗麟、矢乃、フランスシスコ・ザビエル
ひとこと 九州北部の六ヶ国を治める大友家の家督を、父親が家臣によって謀殺された事から、継ぐことになった大友宗麟。元来、大友家では内紛が絶えなかった。家督はついだものの宗麟には大友家の屋形として、さらに一門および諸土豪等を纏める自信は失していた。そんな中で出会った人物が宣教師のフランシスコ・ザビエルである。彼の語る基督教(キリスト教)に惹かれはじめた宗麟は、やがて自らも洗礼を受けることになる。日本国内で、どの様にしてキリスト教が受け入れられていったのか、また既存の宗教(仏教)との対立などなど、読み応えがある作品です。
お薦め度★★★
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桶狭間の四人
著者名鈴木 輝一カ
出版社毎日新聞出版
主な人物明智光秀、松平元康、木下藤吉郎、織田信長
ひとこと 今度は四人が初顔合わせであり、桶狭間の戦いを舞台として繰り広げられる戦国時代の喜劇。とでもいおうか。

舞台は京の都から。ばくち打ちでうだつの上がらず、老齢の域に達した明智光秀。その光秀に対し密かに接近する織田家の隠密と名乗る木下藤吉郎。そこに今川家に従っている若き武者である松平元康が登場。そして尾張の太守であるが、隣国である今川家からの圧力苦しむ織田信長が現れて役者がそろうと、時代が動きだす。

この四人が偶然、いや時代に請われる様にして出会い、そしてそれぞれ四人の思惑を胸に秘め、交錯しながらも任務を遂行してく姿が描かれている。

過去のシリーズ同様に、それは平坦な道のりではない。あるときは邪魔が入り、また互いに牽制しつつ、常識では達する事などできない難儀な使命を成し遂げ様と道を突き進む4人。そして歴史の表舞台への幕が開けられる。

光秀を中心として破天荒な戦国武将の姿が楽しめ、期待を裏切らない作品であること間違いない。歴史的な知識が無くとも、登場人物は比較的知名度の高い4人の英傑。だれもが楽しめる1冊だ。
お薦め度★★★
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桶狭間の勇士
著者名中村 彰彦
出版社文春文庫
主な人物毛利新介、服部小平太
ひとこと 永禄三(1560)年の出来事として、後の日本史に刻まれることとなる「桶狭間の戦い」。様々な逸話や謎は残っているが、織田信長という尾張の大名が、駿河の太守であった今川義元を討ち取ったという事実は変わらない。さらにこれによって織田信長は名を挙げ、歴史の表舞台に躍り出ることになる。しかし実際に義元に一番槍を突けたといわれる服部小平太,さらには首級を挙げたという毛利新介という武者の名はあまりしられていない。そんな二人に焦点を当てて、桶狭間以後の半生を描いた作品が「桶狭間の勇士」である。桶狭間で武功を挙げた両名であったが、以後は各々異なった路を歩むこととなる。どちらも高禄を得て大大名と出世したわけではないが、今川義元を討ったという功名を誇りに思ながら、数奇な運命を歩むことになるのであった。
お薦め度★★★
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織田有楽斎
著者名堀 和久
出版社講談社
主な人物織田有楽斎、羽柴秀吉、織田信雄
ひとこと 織田長益、織田信長の弟ではある。武将としての器量はどうであったのだろうか。物語では初陣を難なく飾るが、戦での活躍はここまで。その後は茶道など生き甲斐にして行く。有楽斎に転機が訪れたのは、天正十(1582)年に起きた本能寺の変であった。織田家当主であった兄の信長が謀殺され、世継ぎとなるべく甥の織田信忠も二条城で討ち死にしてしまう。そこで織田信忠の子で、まだ幼い三法師が世継ぎと決まるが、その後継者の一人として有楽斎は生きて伸びて行く。織田信長無き世のこれから、どの様に天下は動いていくのか。有楽斎はその動きに関わっていく事になるのでした。
お薦め度★★★
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織田三代記
著者名羽生道英
出版社PHP文庫
主な人物織田信秀、織田信長、織田信忠
ひとこと 織田信秀、信長、そして信忠。尾張守護代に仕える三奉行でありながら、その実力は守護をも上回るものであった織田信秀。尾張をその手で舵取りする前に急死してしまうが、その志は息子である織田信長に引き継がれた。しかし信長の胸の内に潜む大志は、尾張一国だけに収まらずに、「天下布武」を掲げて日本を統治するものであった。あまりにも急ぎ過ぎたことから、周りからの反感を多く買う事となり、嫉みや恨みは四方八方に存在していた。それを間近でみていたのが織田信忠である。その生き様には感銘しつつ尊敬もしている父信長。だがそのやり方に対しては危惧を抱いていた。そして天正一〇年六月二日。京本能寺において三代に渡った大河は途絶えることとなる。
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男の一生(全二巻)
著者名遠藤周作
出版社日本経済新聞社
主な人物前野将右衛門、蜂須賀小六、羽柴秀吉
ひとこと 「武功夜話」を元に描いた作品。前野長康の半生を描きつつ、その目を通して豊臣秀吉の天下統一を眺めて行く作品ではないかと思います。また運命に翻弄される主人公である長康の、波瀾万丈の人生は題目の通り、まさに戦国当時を生き抜いた一人の男の生き方でです。木曽川周辺の野武士として、蜂須賀小六と共に生きた時代。そして妻となる「あゆ」との出会い、さらに織田家の小者であった木下籐吉郎との出会い。やがて長康は城持ち大名へと出世していくのですが、豊臣政権下での苦闘などなど、読み応えがある作品です。
お薦め度★★★★
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武士(おとこ)の紋章
著者名池波正太郎
出版社新潮文庫
主な人物滝川三九郎、真田信幸、真田幸村
ひとこと 池波正太郎氏の短編集です。真田信幸を主人公にした物語があれば、真田幸村や黒田如水を題材にした作品もあります。全八編のはなしが詰められています。その中でおすすめするのが、この本の題名になっている武士(おとこ)の紋章です。律儀だけが取り柄の滝川三九郎という武士が主人公のお話です。時代はちょうど戦国から太平の江戸へ移った頃です。はなしの中で真田家との関わり合いがあり、特に真田ファンにはお勧めの作品です。
お薦め度★★★★
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おのれ筑前,我敗れたり
著者名南條範夫
出版社文春文庫
主な人物滝川一益,龍造寺隆信,丹羽長秀,佐々成正,斎藤道三
ひとこと 戦国時代を生きた12人の武将を語った小説である。しかし彼らは勝者では無い。後生から見る限りでは敗者である。今風に言い換えれば負け組に含まれるかもしれない。勝者との違いはどこにあったのか。明暗を分けた所作は?決断は誤りだったのか?どこでボタンが掛け違えたのか?それを解き明かせる短編集として,読者を愉しませてくれる一冊です。
お薦め度★★★
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