ひろぞう戦国物語

戦国時代について好き勝手に語っているサイトです。


■歴史小説■ 〜は行〜


覇王の家(全二巻)
著者名司馬遼太郎
出版社新潮文庫
主な人物徳川家康、石川教正、酒井忠次、本多平八郎
ひとこと およそ三百年という長期に渡って政権を維持し日本国を支配下に治めた徳川幕府。その礎を築いたのは、三河から生まれた徳川家康と家臣団の皆々である。これはその徳川家康と三河武士たちの内実にまで掘り下げて描かれた小説である。臆病で覇気が無い大将である家康。彼に従うのは小心で猜疑心が強い三河武士。似たもの同士の主従。幼少期に今川家へ人質として生活を営んだ時代から、独立して織田信長と盟約を結びながら、三河をそして遠江までを手中に収め、太守となった徳川家。やがて駿河にまでその手は伸び、そして本能寺の変が勃発した後、その勢力範囲は甲斐と信濃を含めた五カ国まで拡大される。天下統一という野心は無いのだが、生き残る為には最善の思慮を持って事に当たる三河武士たち。一所懸命。この三河出身の武士、隣国である尾張出身の武士との対比は非常に面白い。天下を治めつつあった秀吉との小牧・長久手合戦前後の駆け引きは、本書でのクライマックスともいえるのではなかろうか。小さい事象でも挿話に加えて、読者に隙を与えず飽きさせない構成は流石である。
お薦め度★★★★
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覇王の番人(全二巻)
著者名真保裕一
出版社講談社
主な人物明智光秀、小平太、織田信長
ひとこと 400年を経ても今なお謎として語り継がれる本能寺の変。周知のごとく明智光秀が主君であった筈の織田信長を討った事件である。戦国時代を、日本史自体を語る上で最大のミステリーとなっている。なぜ明智軍は本能寺に軍勢を向けたのか、そして信長を屠らなければならなかった理由とは。これらの謎を時代小説とは縁がなさそうな真保氏が描いた会心の一冊。単純に光秀の半生を描き、本能寺までを綴った小説に終始していない。信長という「うつけ者」に仕えることになる光秀の心理。天下布武という旗印をもって、織田家内で中枢に属するまで躍進していく光秀。その時、織田信長という人間との間にできあがりつつある隔たり。小平太という忍びの者も絡めた展開は、単なる歴史小説の枠を離れ読者を物語に引き入れてくれる。そしてクライマックスである「本能寺の変」。真実を追究するというよりは、こういった考え方もある、と教えてくれる小説に思えた。
お薦め度★★★★
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覇王の夢
著者名津本陽
出版社幻冬舎文庫
主な人物織田信長
ひとこと 天下布武の末に抱いた,覇王信長の夢とは何であったのかを描く長編小説。津本氏の代表作「下天は夢か」から一六年後に書かれた今作では,信長モノの集大成と言えよう。序章でもって安土城建築までの軌跡を瞬く間に語りつくしてしまう。信長の偉業については,「下天は夢か」を読んでもらった方が良いだろう。本書ではそこでは書かれていない,信長が抱いた壮大な国家構想が述べられている。海外の情報は,南蛮から布教に訪れた宣教師ら,また異国との貿易に性を出す貿易商や航海者など,信長の目を通じて当時のアジア情勢などが語られている。そして「本能寺の変」へと向かう分けだが,その解釈は読んでからのお楽しみ。
お薦め度★★★★
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白鷹伝
著者名山本兼一
出版社祥伝社文庫
主な人物小林家次,清六,メルゲン,羽柴秀吉,織田信長
ひとこと 数多い戦国時代を扱った歴史小説。動物が脇役ながらも主人公に近いかたちで添えられるのは珍しい。「白鷹伝」は文字通り,白い鷹を中心となり物語が進行していく。また主人公は小林家次という鷹匠である。鷹狩りという言葉は,この時代の歴史小説であればよく目にする言葉である。しかし実際にどの様な仕事が家中で与えられているのかその実態は知らないことが多い。「白鷹伝」では前半部分を割き,鷹匠が持ちあるく道具を図付きで説明されており,中盤以降を読み続けるに辺り大変ありがたい。また鷹匠としての家次と,主人となった織田信長の遣り取りもまたこの物語の中で楽しみな部分でもある。ただ残念であるのは,終盤は駆け足の様に出来事のみを語っている点。それでも鷹の習性や扱い方など,玄人好みの内容であることは間違いないだろう。
お薦め度★★★★
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箱根の坂(全三巻)
著者名司馬遼太郎
出版社講談社
主な人物伊勢新九郎(早雲)、今川氏親、千萱
ひとこと 世に下克上の先駆者として、良く語られる北条早雲のはなしであります。伊勢家にて鞍づくりの男。この男が京から甥である今川氏親の後見人として、駿河へ下り、伊豆、さらには相模を手にするまでを描いた作品である。早雲という人物を、旧体制を崩壊させ、あたらしい時代の幕を開けた者に見えてしまいました。また、この作品を通して物語とは別に、当時の情勢が手に取る様に分かります。それをふまえると、早雲の考えに「正義」がある様に思えます。
お薦め度★★★★★
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奔る合戦屋
著者名北沢秋
出版社双葉社
主な人物石堂一徹、朝日、村上義清
ひとこと 「嗤う合戦屋」から16年前に遡った話。前作を読んでいるか、どうかはともかくとして、今作では北信濃を舞台に描かれいる。石堂一徹が心から願ったこと、命を賭しても貫こうとした志の根源を垣間見ることが出来る。一徹の強さの秘密というよりは、一徹のを育んだ石堂家の姿が描かれている。北信濃の村上家に仕えている石堂家。譜代の力が強い村上家中にあって、重要な金庫番を取り仕切る石堂家。さらには合戦では、一徹率いる新参者の台頭がめざましかった。家中でも発言権が大きくなる石堂家。それを支えるのが一徹の郎党達であり、また妻の朝日である。石堂家は一家を挙げて村上家の手足となり、誠心誠意尽くしていた。だが人間関係とは難しいものであり、人からの嫉みや僻みを受けることで出世が妨げられることもしばしば。特に主君を凌ぐ若輩者が出てきた時。主君はどうった態度を取るのであろうか。譜代の重臣からは新参者と疎まれることも。しかし一徹の胸には大きな志が秘められてた。志が開花するのか、それとも・・・。一徹の出来すぎた武将像に驚愕し、カブキ者なのかと問われれば、なんとも応えに窮する。しかし一徹の魅力に惹かれ集う仲間達をみると、壮絶な戦乱の時代であっても人との繋がりの大切さを感じてしまう。
お薦め度★★★
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覇者の決まる日
著者名南原幹雄
出版社角川書店
主な人物千石十郎太,渡辺宗右衛門,二郎丸,朝比奈小源次,伴京之助,百々丸
ひとこと 慶長四年のこと,徳川家康から密命を帯びた三人二組の一行は,石田三成の領地を目指していた。その目的地は国友である。国友という地は織田信長の時代より,鉄砲の生産においては堺や根来に並んで,日本でも屈指の産地であった。また腕の良い熟練工が多くおり,鉄砲の品質という点では日本一といってもよいだろう。そんな地へ六人が向かった理由は,国友の鍛冶職人に大筒,つまり大砲の制作依頼であった。徳川家康は来る石田三成との決戦に備えて大筒の開発を成功させ,またそれをもって合戦を優位に進めようと画策。しかし難問は国友が石田領であるということ。十郎太らは国友鍛冶等を説得し,無事に大筒を作り,さらに徳川家康の元に届けることができるのか。
お薦め度★★★★
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覇商の門(全二巻)
著者名火坂雅志
出版社祥伝社文庫
主な人物今井宗久、織田信長、松永久秀
ひとこと 戦国時代の豪商である今井宗久を主人公に据えた物語です。武将では無く、商人という立場から、天下を動かすという野望を持った宗久。武器商人として成功を収め、さらには茶道としての地位も手に入れる。また時には自ら傭兵を率いて戦場へ赴くなど、精力的に駆け回り、天下を盗って行く宗久の半生が綴られております。
お薦め度★★★ Amazonで購入


播磨灘物語(全四巻)
著者名司馬遼太郎
出版社講談社
主な人物黒田官兵衛、羽柴秀吉
ひとこと 羽柴秀吉の良き相談相手となったと言われている黒田官兵衛。黒田家の由来から語られ、そこから商人的な武家であることが読み取れた。物語自体は織田家の羽柴秀吉の中国攻めを中心に、主人公である官兵衛の知での活躍が描かれております。播磨の小豪族であった小寺氏の家臣であった官兵衛。時代の流れを読み取りいち早く安芸の毛利家から織田家よりに方針変換。しかし摂津での変事に応じるかの様にして、主人であるはずの小寺氏をはじめ播磨のおおかたは毛利方へ奔ってしまった。そんな状況で摂津有岡へ説得に赴くが失敗。捕らわの身となり、さらには半身不随という結果を招いてしまう官兵衛の一生が読むことができます。ちなみに官兵衛は「くゎんひょうえ」と当時は発音していたとか。
お薦め度★★★
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遥かな武田騎馬隊
著者名岩崎 正吾
出版社ハルキ文庫
主な人物滋野小太郎、真田幸村、武田信親
ひとこと 武田家滅亡を滋野小太郎という、猿使いの忍びの目を通して描いている作品。小太郎が武田信玄の盲目の次男に従い、新府城を訪れたのは、武田家滅亡の少し前。少年時代の真田幸村をはじめとして、真田十勇士を彷彿とさせる登場人物。かたや北条方の風魔忍の「くの一」。それだけでは収まらず、伊賀忍者の頭領、服部半蔵まで出てくる始末。だからといって、忍者もの小説という雰囲気では無い。あくまでも歴史娯楽小説という印象を受けた。またそれだけでは無く、武田信玄の嫡男であった、太郎義信の謀反の真相にも迫っています。これを読み終えると、ちょっと中途半端な終わり方の様に感じましたが、あとは読者の想像で、という事なのか。それとも真田十勇士が活躍する物語として、続編が出てくるのでしょうか。
お薦め度★★★ Amazonで購入


叛鬼
著者名伊東  潤
出版社講談社文庫
主な人物長尾景春、太田道灌、伊勢宗瑞
ひとこと 「長尾景春とは誰ぞや?」と思われた人は本書を手に取って読むことをお薦めします。
また、「長尾景春という人物は知っているぞ」という人には、楽しさがさらに倍増することでしょう。

さて、本作が舞台として描かれている地は関東。そして時代は室町時代。時間の針は京にて応仁の大乱が勃発している頃。関東地方での情勢を長尾景春という武将を通して描かれ作品です。

個人的に、よく理解しづらい古河公方と関東管領との関係とその対立。さらに太田道灌との死闘から享徳の乱。さらには永正の乱までが凝縮し、そして纏められた歴史小説。

特に時代の推移などは長尾景春の行動を基に、関東各地を転戦している描写が時系列に描かれ、そして淡々と綴られてます。通常であれば単なる中だるみと読み取るところだが、当時の複雑な戦況を顧みれば、多くを語らず解説の描写と考えれば大変にわかり易く、そしてありがたい。

また伊勢宗瑞が今川の客将として登場し、長尾景春と意気投合する様子は、下克上の第一人者として長尾景春を敬う様にも思えてくる。

実際、武将としての資質はともかく、連戦連敗が続く長尾景春ではあるが、苦境に立たされるたびに不思議と支持者が現れる。そして不死鳥のごとく復活し、関東中を駆け回る姿は、志を持った武将として格好良い。

ちなみに関東在住の者としては、訪ねた城跡が出てくることで、物語の一部とつながりを得た気分に浸れることであろう。
お薦め度★★★★
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反逆(全二巻)
著者名遠藤周作
出版社講談社
主な人物荒木村重、明智光秀、織田信長
ひとこと 天下不武のもとに軍事力を背景に、日本国の統一を図っていた織田信長。その信長に対して服従した者もいれば、刃向かった者もいるはずである。中には一旦は織田信長の傘下に入りながら、逆心を抱き身を滅ぼした者もあった。そんな信長に対して、反逆した者達が、この物語の主人公である。大和の松永久秀、さらには摂津の荒木村重、そして明智光秀。反逆の仕方も異なれば、それにおける結果も3人それぞれが異なる。それぞれの武将に秘められた思いとは、どんな物だったのであろうか。それは読んでみてからのお楽しみ。
お薦め度★★★★ Amazonで購入


馬上少年過ぐ
著者名司馬遼太郎
出版社新潮文庫
主な人物伊達政宗、脇坂安治
ひとこと 表題である「馬上少年過ぐ」。これは伊達政宗の青春時代を描いた作品です。梵天丸と称した幼少時代から、伊達家の家督を継いでからの苦悩。そして父である輝宗に向けて銃を向けさせた時までを描いています。また脇坂安治の半生を描いた「貂の皮」がお勧めです。これらを含む全七編からの短編集です。
お薦め度★★★★ Amazonで購入


非情の城-戦国女城主秘話-
著者名喜安幸夫
出版社廣済堂文庫
主な人物おつや、秋山信友
ひとこと 織田信長の叔母にあたるおつやの方。美濃岩村城に嫁ぎ、その岩村の地に根付いて行く生き様を描いた悲運な物語。三度目の婚姻の相手は岩村城主の遠山景任。夫となった景任は病弱の身であり、おつやが嫁いでまもなく他界してしまう。悲嘆に暮れながらも、おつやは領民に慕われ、岩村の地を離れることは無かった。それは甥である信長の元に戻る事ことを拒否して、岩村を女城主として守護する決意でもあった。しかし織田家の一員として甲斐、信濃を領する武田家は大敵であり、三方ヶ原にて織田方に与する徳川勢が惨敗すると窮地に陥った。ここでおつやは敵将の秋山信友の見込まれてその妻となることを決意。これにより家臣や領民達のの命を保証してもらい開城。だが甥の信長はこれを裏切り行為と見なし、今度は今まで身内であった筈の織田家と槍合わせを行うこととなったのだ。夫となった信友と共に、織田勢を相手に籠城して戦うが、彼女の選択は命運は風前の灯火であった。
お薦め度★★
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秀吉 秘峰の陰謀
著者名長尾誠夫
出版社祥伝社
主な人物竹虎、佐々成政、野入平右衛門、小川念之助、神保氏張
ひとこと 長編歴史推理小説。推理する、歴史の闇に潜む謎を、推理小説風に仕立てあげられている。越中富山の地にあった佐々成政はなぜ、越前にある末盛城を攻め立て、かつ敵勢に大敗を喫したのか。様々な憶測や事実も織り交ぜると多くの仮説が成り立つ。さて物語は竹虎という冬山の山中で佐々成政に命を助けられた者が居た。その者はなぜか命を狙われているのであった。彼を暗殺する様に命を下した人物とはいったい誰なのか。そして極寒の冬の中、飛騨山脈を決死の覚悟で越えて、徳川家康に援軍を求めた佐々成政が危険を冒してまで挑んだ理由とは。それら多くの謎がピースとして組み立てら、仕立て上げられて行く。単なる戦国モノと思えば間違えであり、物語の大半は冬山の、自然の恐ろしさを克明に記した登山小説といえよう。死と隣り合わせの恐怖を感じながら、成政一行は信濃を目指して雪をかき分けて進む。
お薦め度★★★★
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秀吉の枷
著者名加藤廣
出版社文春文庫
主な人物豊臣秀吉、竹中半兵衛、黒田勘兵衛、前野小右衛門、祢々、淀
ひとこと 「本能寺三部作」の第二弾である「秀吉の枷」。前作の「信長の棺」にて秀吉の出自を、摂関家藤原氏を遠祖とし丹波に隠れ住む「山の民」である、と大胆な発想で記されていた。話は竹中半兵衛と秀吉との会話から始まる。そして死を覚悟した半兵衛が秀吉に告げた「覇王の手先であってはならない」との言葉。さらに秀吉に授けた秘策。信長という人物が小さく見え、天下取りへの野望が芽生えはじめる心境の変化。信長の死から一気に秀吉の半生を描いた長編歴史小説。関白となり、そして太閤まで登り詰めた秀吉。人生の絶頂を味わった後に残されていた時間は、壮絶な惨劇が待ち構えていた。朝鮮への出兵や、甥の一族抹殺、そして跡継ぎである拾こと秀頼。あまり好きな武将ではない秀吉であるが、惨憺たる最期に不憫に感じてしまった。ちなみに「枷」とは自由を束縛するもの,もしくは行動を制約するための口実、などという意味がある。
お薦め度★★★★★
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秀吉の活
著者名木下  昌輝
出版社幻冬舎
主な人物木下藤吉郎
ひとこと 秀吉という人物を語る時、昔から多くの作家により描かれ、また庶民にも伝わるエピソードも豊富である。

百姓から武将となり、さらに天下人までの大出世。人々になじみが深く、身近に感じる武将の一人であはある。それ故に多くの作品の題材にも取り上げられ、実際に幾つもの作品を読ませてもらった経験がある。
しかし中には新鮮味が薄く、どこかで聞いたエピソードをまとめただけであったりと、残念な作品も含まれているのも事実というのが感想だ。

しかし本作は少し趣向が異なる。

秀吉という一人の武将の生涯、就活、婚活、昇活、転活、妊活、終活などの節目を「○活」として、まるで短編小説の様に、人生の区切り事に焦点を当て描かれている。そもそも本作のテーマは「活きる」である。これを「活」テーマとして描いているのはわかりやすい。

必死に活きる秀吉の姿は、マンネリ化した会社勤めの人達に対し、何かを訴えている様に思える。これはちょっと考えすぎだろうか。
また、本作において、秀吉の義父である竹阿弥。今までの秀吉作品では、なんとも地味で陰険な印象を与えていたが、いやいや本作では全く違う人物として描かれている。これはこれで読者を楽しませてくれる一つの要因だろう。
お薦め度★★★
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秀吉と武吉―目を上げれば海
著者名城山三郎
出版社新潮文庫
主な人物村上武吉,小早川隆景,羽柴秀吉
ひとこと 海賊衆である村上水軍の頭領である村上武吉,その半生の物語。村上一族は代々,瀬戸内の海を支配してきた。題名に武吉と並んである秀吉。もちろんこれは羽柴秀吉,後の豊臣秀吉である。物語中にはそれほど多くは出てこない彼であるが,武吉率いる村上水軍にとってその影響力は凄まじいものであった。謀により勢力は分裂し,その力は徐々に削られ,天下平定後には遂に海という領地をも失う羽目となるのである。海賊,そして武将として生きた村上武吉という人物に興味を持たれた人に是非どうぞ。
お薦め度★★★
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火の国の城(全二巻)
著者名池波正太郎
出版社文藝春秋
主な人物丹波大介、お蝶、加藤清正
ひとこと 「忍者丹波大介」の続編にあたる作品です。主人公は甲賀忍者の丹波大介。関ヶ原の合戦で討ち死にしたとい噂が立っていたが、真田の忍びの前に丹波大介は姿を現す所から物語は始まる。今度は真田家では無く、豊臣家股肱の臣である加藤清正の為に、情勢を探る事になった。今回は単身では無く、甲賀の郷にひっそりと暮らしている、山中忍びの生き残りでもあるお蝶などを仲間に引き入れてである。余談ではあるがお蝶とは「忍びの風」や「蝶の戦記」などで活躍した甲賀の女忍びである。さらに甲賀から裏切り者の汚名を着せられ続けている為、生き続けている事が知れ渡り、またまた命を狙われる事となる。
お薦め度★★★
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姫の戦国(全二巻)
著者名永井路子
出版社文春文庫
主な人物寿桂尼、今川氏親、大源雪斎
ひとこと 京の公家の娘である悠姫が、京都より駿河の太守今川氏親の元へ嫁ぎ、その後の今川家と、京都の公家との関係。また、相模の北条・甲斐の武田などとの関係を描きながら、今川家の発展を妻として、そして母としての悠姫の視線からかたる時代小説。ちなみに、この小説で寿桂尼という人物の事を知りました。
お薦め度★★★★ Amazonで購入


風神の門(全二巻)
著者名司馬遼太郎
出版社新潮文庫
主な人物霧隠才蔵,猿飛佐助,真田幸村
ひとこと 講談の立川文庫でその名が世に知られる様になった真田十勇士。その十勇士の中に霧隠才蔵という伊賀の忍者が含まれているのは,すでに多くの人か知っていることだろう。「風神の門」は才蔵が主人公となり,活躍する忍者小説である。時代は関ヶ原の戦の後。天下の形勢をつかみつつあるのは江戸を本拠としている徳川家。対する大阪の豊臣家との間に不穏な空気が流れ始めていた頃のこと。才蔵は人違いから命を狙われ,様々な奇妙な事件に巻き込まれ,やがては甲賀の猿飛佐助と供に,徳川家康の命を狙うにいたる。隠岐殿,青子,お国など,才蔵に惹かれる魅力的な女性たちの登場も話を盛り上げている。
お薦め度★★★★
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風林火山
著者名井上 靖
出版社新潮文庫
主な人物山本勘助、武田信玄、由布姫
ひとこと 武田家に軍師として仕えた山本勘助の、半生を描いた作品。話は諏訪家の姫である由布姫を交えながら、信濃侵攻をもくろむ信玄と勘助を中心に描かれてます。これを読んでいてふと気がついたのですが、確か数年前にこの「風林火山」を原作にしたドラマが放映された様な。たしか勘助を里見浩太郎、信玄を館ひろしが演じていた気がします。
お薦め度★★★ Amazonで購入


梟の城
著者名司馬遼太郎
出版社新潮文庫
主な人物葛籠重蔵、風間五平、今井宗久、豊臣秀吉
ひとこと 映画「梟の城」が公開になるのを知り、読みはじめた書籍です。内容は天正伊賀の乱で、信長によって壊滅させられた伊賀忍者の生き残りが、豊臣秀吉の暗殺を目論む話。伊賀の誇りに掛ける葛籠重蔵と、武士として新たな生活を得ようとする風間五平の、伊賀者同士の裏の戦い。また、伊賀者と甲賀者の戦いがあったり、謎の女性(小萩)が登場したりと、なかなか楽しめる長編忍者小説です。最後の結末に注目してください。ちなみに映画と小説の内容には、若干食い違いがあり、別物だと思った方がよさそうです。
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吹けよ風 呼べよ嵐
著者名伊東  潤
出版社祥伝社
主な人物須田弥一郎満親、須田甚八郎信正、長尾景虎(上杉政虎)
ひとこと 川中島の合戦と言えば、上杉謙信と武田信玄により繰り広げられた戦国時代での有数の名勝負として、後生に多く語り継がれている。
しかし多くは謙信や信玄自身を主としたモノが多い。本作も川中島の合戦が描かれているが、謙信でも信玄でも無く、またその重臣でもない須田満親という信濃の若武者からの視点で描かれている。
「義」の上杉と「欲」の武田。この対局にある陣営通しの考えは全編を通して描かれている。
甲斐武田家の信濃に侵攻。これにより信濃国に漂っていた空気は張り詰め、そこに住む人々の暮らしが一変してしまう。須田家嫡男である満親も人生の指針を狂わされた者の一人だ。
友に裏切られ、実父を殺められ、住む地を追われた若武者須田満親。その真っ直ぐな性格は「義」を彷彿とさせ、的を得た意見は上杉政虎に知恵者として言わせるほど、その才覚は認められた。そして旧領回復のため、上杉家は北信濃へ軍勢を進め、甲斐武田家との決戦へ向かうのであった。
好敵手との切所での死闘そして友情。妻初乃との愛情。満親が困難に打ち砕かれつつも成長していく姿を、川中島の合戦を背景として描かれた作品である。

もしも続編というのがあるのなら、須田甚八郎信正を描いた作品も読んでみたい。
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武神の階
著者名津本陽
出版社角川文庫
主な人物上杉謙信
ひとこと 津本陽氏が上杉謙信の生涯を描いた歴史小説。乱世の世に悲憤慷慨し、私欲での戦は行わず、毘沙門天の化身として数々の合戦に出陣し、また敵方に怖れられた武将の姿が描かれております。結末には戦国武将としての心得が、謙信の口から語られており、おそらく作者が綿密に調べたと思われる、中身の濃い戦国時代の物語です。
お薦め度★★★★★
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ふたり道三(全三巻)
著者名宮本昌孝
出版社新潮文庫
主な人物松波庄九郎,おどろ丸,松波庄五郎,小夜,無量齋
ひとこと 斎藤道三といえば戦国の梟雄として名前を後生に残している。その出自,生い立ちなど,美濃を奪った過程では謎が多い。また近年では親子二代による国盗りとも言われている。その謎を刀鍛冶,櫂扇派九代目隠岐充である’おどろ丸’を主人公に据えて,美濃が斎藤道三が統治するまでが語られております。櫂扇の伝承者であるおどろ丸の命を狙う裏青江衆,さらにかつて美濃斎藤妙椿が作り上げた忍び集団である椿衆など,歴史の裏での争闘。親子の愛や,同志との友情など読み応えのある作品です。ただ登場する人物の関係が入り乱れ,混乱しない様に注意が必要です。
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冬を待つ城
著者名安部 龍太郎
出版社新潮社
主な人物久慈政則、九戸政実、九戸実親、中野康実、南部信直、蒲生氏郷
ひとこと 南部家の内紛から始まった争いは、ついに天下の大軍勢を相手に終局を迎えようとしていた。豊臣秀吉による天下統一の総仕上げ、いわゆる「奥州仕置き」。

これを九戸政実の末弟であるもある、久慈政則の視点で戦国時代の山場ともなる戦いが描かれている。

どんな戦いであったのか。簡単に記せば、天下の豊臣軍の軍勢およそ一五〇〇〇〇兵であり、それに対する九戸軍はわずか三〇〇〇。この寡兵でもって天下の大軍勢を相手に、果敢に勝負を挑んだ九戸政実。

九戸政実だけではなく、その四兄弟が肉親という枠組みから外れ、各々異なった立場から展開してく。

読み進めると、史実との相違しているところは無くは無いのだが、この作品にとってはそんなことは関係無い。歴史書では無く、歴史小説であるのだから。序盤から結末まで大いに楽しませてくれる作品だ。

なにゆえ九戸政実は南部家と袂を分かち、天下の軍勢を相手に戦いを余儀なくされたのか。その真意について解き明かされてゆく。 また、豊臣秀吉の配下で、筆頭官僚でもある石田三成。彼が頑なに奥州の一武将である九戸家討伐に固執していたのか。実際に大軍勢を動員しなければならなかった訳とは。

徐々に明かされていく事実に、久慈政則は翻弄され、そして猜疑心を宿しながらも大決戦へと向かってゆく。

乱世にはつきものの裏切りに翻弄されながらも、家族や兄弟との絆を深めて立ち向かう姿が描かれた作品だ。同じ背景を題材にした小説は他にも拝読しているが、読んでみる価値はあります。
お薦め度★★★★
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北条氏康
著者名長岡慶之助
出版社学研M文庫
主な人物北条氏康
ひとこと 小田原北条家三代目当主、北条氏康の初陣からこの世を去るまでを描いた作品です。関東制覇の野望を持つ北条家。祖父早雲、父氏綱、そして氏康とその野望は引き継がれる。諜報網を万全に生かし、関東管領であった上杉憲正を関東より放逐する。しかし関東の大半を手にしたと思われた時、越後の長尾影虎が関東へ出陣。さらに友好を保っていた甲斐の武田信玄が同じ同盟関係の駿河今川氏と交戦状態へ。小田原へ危機が続々と続いてくる中、氏康が下した決断はどうなるのか?
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謀将石川数正
著者名南原幹雄
出版社新潮社
主な人物石川教正
ひとこと 徳川家四天王の一人として挙げられる武将石川教正。彼が徳川家を裏切り,敵方となる豊臣家に奔ったのは歴史の謎である。その理由を著者が,謀将シリーズの作品として描いた1冊。敵方へ奔ったその真意は主君である徳川家康を天下人へと導くためという信念の元,数正は舌先三寸でもって豊臣秀吉を言いくるめ,破滅への道に導く。それは旧主である家康に天下取りへの機会を与えるというもの。しかし教正は家康が掌握する天下を見ることなく,この世を去るであるがその志は息子に引き継がる。そして親子二代に渡って豊臣家を滅亡への道へと誘う。
お薦め度★★★
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謀将真田昌幸(全二巻)
著者名南原幹雄
出版社角川文庫
主な人物真田昌幸、真田幸隆、晃運
ひとこと 戦国時代も末期、豊臣秀吉から「表裏比興の者」と言われた真田昌幸、ならびにその父である幸隆の半生をつづった物語。武田晴信により領地を追われた滋野小五郎こと、のちの真田幸隆。家名再興の為に敵である武田晴信に仕えて真田姓を名乗る。その幸隆の三男として生まれ、2人の兄を長篠合戦で亡くし、家督を継いだ昌幸。信濃の小名真田家が、徳川、北条、上杉という大名相手に謀略でもって立ち向かう。ここではあまり語られませんが、昌幸の息子である信幸、幸村を主人公にした話も読んでみたいものです。
お薦め度★★★
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謀将北条早雲
著者名南原幹雄
出版社角川文庫
主な人物伊勢新九郎,千冬,雪舟
ひとこと 下克上の先駆けとして,戦国という時代の幕を開けた人物としられ,今の世に北条早雲という名でしられている伊勢新九郎。彼の生い立ちには謎が多いが,「謀将北条早雲」ではその幼少のエピソードから物語が始められている。故郷荏原庄を出て室町幕府に出仕していた新九郎であったが,姉の嫁ぎ先である駿河今川家のお家騒動を仲裁し,その非凡な才能を内外し知らしめ,結果として戦国大名への一歩を歩み出した。前半は京と駿河を行き来し,姉の千冬や家臣,そして絵師である雪舟などとの交流を描いている。戦国大名として世に出るクライマックス,伊豆堀越公方討ちや小田原攻めなどは物語の後半に詰め込み過ぎた感じは否めない。書名にある「謀将」の通り,数々の謀を企む新九郎。その計略が見事に的中しており,天才的な武将として新九郎を称えている様にも思えた。
お薦め度★★★
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謀将 山本勘助(全二巻)
著者名南原幹雄
出版社新潮文庫
主な人物山本勘助、上杉政虎、織田信長
ひとこと 兵道者と修行を積み、歴史の表舞台に立つ事のない、裏の世界で生きていた山本勘助。しかしあることによって甲斐の武田家に仕える事に。ただ仕えるだけでなく、その能力を当主の武田晴信に見込まれて、武田家の軍師という地位を得る。その手でもって、天下分け目の決戦を演出することを夢に、準備を整えて川中島の決戦へと持ち込む。通常だとこの永禄四年の川中島にて、勘助はその生涯を閉じるはずである。しかしこの物語には、まだ先が続いている。この書の見所は、ずばり後半部分であるとおもうので、最後までじっくりと読んでください。
お薦め度★★
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卜伝 !
著者名小島英記
出版社日本経済新聞社出版
主な人物塚原卜伝、神尾勘兵衞
ひとこと 塚原卜伝といえば、戦国時代を生き鹿島新当流の祖となり、世に名を広めた後生にまで語られる剣豪の一人である。その卜伝が主人公となれば期待するのは、剣豪同士が命を賭けて、太刀での一騎打ちが描かれたはなし。だが本書は趣が少々異なる。そうでは無く、剣豪としての神髄を悟るまでを描いていく内容なのかと思えば、それもまた違う。読み始めて気がついた。これは塚原卜伝の伝記と思えば良いのだろうと。しかしこれもしっくり来ない。なぜなら主人公である卜伝では無い登場人物、たとえば京で出会う足利将軍などであるが、彼らのバックグラウンドを語るのに多くのページが割かれているのだ。要所における真剣による斬り合いは確かにある。だがどうも手に汗握るという緊張感が伝わってこない。それこそ僅かな文字で終わらせてしまっている勝負もあり、何かが物足りないのだ。どうやら読み始める際に誤解をしていたようだ。これは剣豪小説では無く、卜伝を通してその時代背景を探る時代小説なのである。
お薦め度★★
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本多平八郎忠勝
著者名加野厚志
出版社PHP文庫
主な人物本多忠勝、鬼姫、徳川家康
ひとこと 徳川四天王の一人であった、本多忠勝は古今無双の強者であったのだろう。徳川家の合戦にはほとんど参加しながら、いっさい傷を負わなかったという伝説の持ち主を主人公とした物語です。この話での立場は、主でった徳川家康の良き相談役である。旧領岡崎を奪還したといから、天下統一への総まとめとなる関ヶ原の合戦までを、時には戦場を駆けめぐり、徳川軍を助け、また徳川家康を力付けた忠勝の半生がつづられています。
お薦め度★★ Amazonで購入


本能寺(全二巻)
著者名池宮彰一郎
出版社角川文庫
主な人物織田信長、明智光秀、細川藤孝、足利義昭
ひとこと 天正一〇(1582)年の六月二日未明、京にある本能寺において織田信長は、家臣であるはずの明智光秀の背叛によりこの世を去った。なぜ光秀は主君であるはずの信長を討ったのかは、今もって謎である。今までも数多の仮説が唱えられてきた。「本能寺」では織田信長の経済観、宗教観など、戦国武将とは思えない発想を元にその原因を探っていく物語である。信長を本能寺で討つに至る謎を、池宮流にまとめた戦国小説です。
お薦め度★★★★★
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本能寺の鬼を討て
著者名近衛龍春
出版社光文社
主な人物斉藤利三,明智光秀,織田信長,羽柴秀吉
ひとこと 明智光秀がなぜ,本能寺に宿営していた織田信長を討ったのか。時が経った現在でも様々な憶測で伝えられている。諸説ある因果関係を作者が文庫用に書き下ろした歴史小説。斉藤利三という美濃出身の武将が,己の器量を高く見越し,反りが合わず出世の見込みも無い稲葉家に見切りを付ける。そして縁戚であった明智光秀に泣きつき,その臣下に入れてもらうという,現実主義であり世渡りの巧さ。命を投げ出して合戦に当たっていたのだから,手当が少ないことに憤慨するのはごもっともなことである。明智家に仕官が叶うと何事にも明智光秀の側につき,軍師気取りの利三であった。腰の重い光秀をテコでもって動かす利三。主君である織田信長に,利三のことで光秀が主君に打擲される場面など,彼自身が蒔いた種である。そんな風に読み進めると,本能寺で信長を討った首謀者は明智の名を掲げた利三ということになるが,いかがだろうか。
お薦め度★★
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