戦国時代について好き勝手に語っているサイトです。
太陽を斬る | ||
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著者名 | 南原 幹雄 | |
出版社 | PHP文庫 | |
主な人物 | 海野小太郎(真田幸隆)、海野棟綱 | |
ひとこと | 表題の「太陽を斬る」をはじめとして、全部で7編が収められています。 どれも手軽に読め、楽しめる作品です。あえてここでお薦めするとしたら、「太陽を斬る」でしょうか。真田の祖というべき、真田幸隆(作品中は小次郎)がまだ海野姓を名乗っていた時代の、若かりし時代の話しです。父の海野棟綱と相対して、武田についてお家再興を成し遂げる、序盤の話しです。武田家に信州から追われれて、上野より旧領の回復に機会を待つことに。父棟綱は関東の協力を得て、旧領回復を計画。息子の幸隆は、信濃に侵攻が著しく、また敵でもある武田家の配下となり、旧領の回復に勤める事になる。そして父と子が戦場で再会することとなる。他にも手軽に読める話しが6編収められてます。 | |
お薦め度 | ★★★ | Amazon へ |
大軍師 黒田官兵衛 | ||
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著者名 | 桜田晋也 | |
出版社 | 祥伝社 | |
主な人物 | 黒田官兵衛、小早川隆景、竹中半兵衛 | |
ひとこと | 戦乱の世、播磨の国人であった官兵衛は、類い希なる知謀を活かし、やがて天下を統一する羽柴秀吉の軍師としてとなる。その生涯は困難が続く道であった。播磨姫路時代の官兵衛は、その居城である姫路にあり、主君小寺氏の防波堤となり、隣接する赤松勢に苦しめられていた。また西に毛利家が君臨し、東より織田家が迫ってくる状況下において、官兵衛がx説いた道筋により小寺家内では孤立を強めていった。これが引き金となり、有岡城に幽閉されるという辛酸をなめることとなる。また秀吉に仕えた後、毛利家との激突をするのだが、本書のクライマックスといっても良く、もしかしたら一番読みごたえがある場面かもしれない。またこの辺りで、竹中半兵衛と共有した時間や、毛利攻め以後における小早川隆景や吉川元春との親交があるなど、謀略家としての一面だけでなく人との交流から人柄が表されている。九州攻め後は前線から一歩退いた立ち位置で、官兵衛が描かれている。もちろんその敵役は石田三成となるのだが。ちなみに官兵衛の生涯は関ヶ原合戦後まで続き、家康の時代まで見届けることとなる。また本書についていえば、戦陣で軍師として活躍するのは中盤までであり、朝鮮の役などでの活躍は希薄である。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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大軍師 黒田官兵衛
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沢彦(全二巻) | ||
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著者名 | 火坂雅志 | |
出版社 | 小学館文庫 | |
主な人物 | 沢彦、織田信長、明智光秀 | |
ひとこと | 織田信長を影で支え、知恵を授け、そして天下布武へ道を導いた沢彦。若き頃の信長の養育係として、その若者の成長を見守り、難局を乗り越えていく様子を描いた、ちょっと異色な雰囲気が漂う戦国時代小説。そもそも歴史の表舞台に姿を見せることなく、岐阜の改名や天下布武を授けたと言われているのが沢彦という人物。珍しい人物が主人公になったものであると思いながら読み始めた。僧であることは間違いないだろう(著者の作品には同様のものが存在している)。またここまで信長という覇者を弟子として飼い慣らした姿を描いた作品は、今までになかったのではないだろうか。少なくとも読んだことは無い。どの様に結末を迎えるのか、興味を抱きつつ読み続けた。やがて両者の間の師弟関係に陰りが見え始め、そして修復不可能な程の溝となるのであるが、詳しくはここで語れないでの本書を手にとってください。それにしても快川和尚や太源雪斎、鷹匠の忍び、さらに謎の女早蕨など、戦国武将以外の人物も多彩である。しかし極端な話の成り行きに、少々辛口な評価を加えてしまいそうな作品なのはなぜだろうか。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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沢彦 上 沢彦 下
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武田勝頼(全三巻) | ||
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著者名 | 新田次郎 | |
出版社 | 講談社文庫 | |
主な人物 | 武田勝頼、武田信豊、穴山信君、真田昌幸、織田信長、徳川家康 | |
ひとこと | 戦国時代の名将として後生にまで名を馳せている武田信玄。その後継者として武田家を継ぎ、また最期の頭領となった勝頼。一部では愚将とまで呼ばれている。新田氏が「武田信玄」の続編として記した「武田勝頼」では単なる凡将としてではなく、悲劇の将として武田家の終焉までが語られている。先代が偉大であったため、存在を認められない名ばかりの若い頭領の勝頼。名目だけで実権は親類衆筆頭である穴山信君に握られ、信玄の重臣達も大っぴらに反論することを憚れる体制は、勝頼にとっては無念であったことが伝わってくる。織田信長、徳川家康連合軍に一泡吹かせようと臨んだ設楽ヶ原の合戦での敗北は、武田家の命運を左右した合戦であるが、かなり綿密な取材を行ったことが伺える描き方がされている。勝頼の側近として活躍する跡部勝資、長坂長閑斎の両名と、曽根内匠、真田昌幸の意見の対比は文官と武官の争いは見物である。また小さな記録の小事にも目を配り、話の中に埋め込む術は単なる勝頼の一代記では終わらせていない。最期を迎える天目山での思いは、すべてを読み終えた読者の心に、きっと何かを残してくれる筈だ。 | |
お薦め度 | ★★★★★ | |
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武田騎兵団玉砕す | ||
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著者名 | 多岐川 恭 | |
出版社 | 光文社時代小説文庫 | |
主な人物 | 武田勝頼 | |
ひとこと | 甲斐の名門である武田家。滅亡の発端となったのが、設楽ヶ原で起こった合戦。後世に長篠の合戦と伝えられる戦いであっただろう。武田家が他家と比べ誇っていたのがその人材。しかし設楽ヶ原の地では名を轟かせた名将勇将が落命。そして強力な騎馬軍団の多くが死傷したことが衰退への要因になったことは否めない。その時の大将であったのが武田勝頼である。勝頼が戦国最強と当時の人々が口にした騎馬隊を率い、三河長篠城を囲んだことから衰退への秒読みが始まった。だが城を攻め落とすどころか、逆に設楽ヶ原において織田・徳川連合軍に大敗を喫してしまう。偉大な父である武田信玄の遺言、「その死を三年の間は伏せ守りに徹せよ」に背いてまで東奔西走して、戦い続けた勝頼であるが、信玄を崇拝しつづける重臣達との軋轢に心を痛め、葛藤が描かれている。さらに長篠城に籠もる徳川方の兵士達。長篠城の攻防から設楽ヶ原での戦いまで、大きな視点で眺めた長篠の合戦が描かれた長編小説である。 | |
お薦め度 | ★★★★ | |
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武田三代記 | ||
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著者名 | 新田 次郎 | |
出版社 | 文藝春秋 | |
主な人物 | 武田信虎,武田信玄,武田勝頼 | |
ひとこと | 甲斐の武田信玄および,その父である信虎,子である勝頼。これら武田家三代に関わる人々のエピソードを集めた短編集。作品は「信虎の最後」,「異説 晴信初陣記」,「消えた伊勢物語」,「まぼろしの軍師」,「孤高の武人」,「火術師」,「武田金山秘史」の七編。どらも著者による独自な解釈で書かれているが,その内容がどれも興味深いものばかりである。 | |
お薦め度 | ★★★★ | Amazon へ |
武田信玄(全三巻) | ||
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著者名 | 津本 陽 | |
出版社 | 講談社 | |
主な人物 | 武田信玄、武田義信、上杉謙信 | |
ひとこと | 津本陽流の武田信玄一代記。新田次郎氏の同名小説と重なる内容である。しかしそこは津本流の信玄が描かれていた。同じ人物を描いている筈なのだが、まったく異質な物語となっている。新田次郎氏の小説に浸かってしまうと、どうもアナザーワールドに陥った風ではあるが、なかなか読みごたえはある。賛否は様々な口から出てきどうではあるが,武田信玄の読み物を探している人や、津本氏のファンである人達には是非読んでもらいたい。 | |
お薦め度 | ★★ | |
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武田信玄(全四巻) | ||
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著者名 | 新田次郎 | |
出版社 | 文春文庫 | |
主な人物 | 武田信玄,上杉謙信,山本勘助 | |
ひとこと | 昭和六十三年に放送されたNHK大河ドラマ「武田信玄」の原作になった小説である。大河ドラマでは主人公の信玄を中井喜一氏が演じ、かなりの高視聴率を確保しており、今でも語りぐさとなっている。放送当時はまだ小説は未読であったが、ドラマには夢中になっていた記憶がある。ドラマが放送されてからおよそ10年を経て、過去の映像を返りながらやっと読んでみた原作。武田信玄を主人公に据えて描かれた小説はいくつか存在している。しかしこれが武田信玄という人物像に与えた影響は少なくない。順位を付けるとすれば上位に位置するのは間違いない。物語は信玄が晴信と名乗っていた青年時代から、甲斐国主となり、信濃を制覇して越後の長尾景虎と対峙する川中島の合戦。さらに関東へ踏入、駿河を制圧して西へ軍を進めるまでを描いた長編小説である。個人的だが、この小説を手に取ったきっかけには、かなりドラマの影響を受けている。しかし武田信玄という武将を読むのに勧めるのであれば、これを最初にお奨めするだろう。 | |
お薦め度 | ★★★★★ | |
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竹千代を盗め | ||
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著者名 | 岩井三四二 | |
出版社 | 講談社文庫 | |
主な人物 | 与七郎 | |
ひとこと | 甲賀の忍びである伴与七郎。彼のもとに仕事の依頼が持ち込まれた。それは松平元康の嫡男である竹千代と、その母君を駿府から救い出して欲しいというのだ。大金を目の前にして仕事を請け負った与七郎。仲間を集い、そして駿府へと忍び込んだのであった。しかしそこで待ち受けいたのはあり得ない現実であった。さて与七郎はどの様にして竹千代らを駿府から救い出すことができたのか。歴史をご存じの方であれば、結末は見えてくるでしょうが、本書のポイントは結果ではない。与七郎という忍びの者がどの様にして、その成果を上げるのかということだ。与七郎が困難を打ち破る秘策とは如何に。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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竹千代を盗め (講談社文庫)
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血の城 | ||
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著者名 | 鈴木英治 | |
出版社 | 徳間文庫 | |
主な人物 | 瀬兵衛、名無し、八木繁之介、武田勝頼、徳川家康 | |
ひとこと | 天正八年一〇月、遠州の地では甲斐の武田家と三河徳川家との闘争が日々続いていた。武田方の楔として存在していた高天神城では、岡部元信が徳川勢に包囲されながらも頑強に籠城を続けていた。また城近くの沢木村では、百姓である瀬兵衛が妻なみと、長男太郎の三人で貧しいながらも幸せな生活を送っている。城近辺では、徳川方の兵達を狙った野伏せりが往来していた。こうした状勢下で、遠州の周辺では同世代の子供が一斉に姿をくらますという神隠しが起きており、沢木村を始め周辺の各村々に、そうした情報を伝えているのは薬売りであった。戦とは無関係な高天神城付近に居を構える人々。これとは別に徳川家康の嫡男である信康が殺されたことのなぞを解き明かす騒動。さらには親族集に裏切られた武田勝頼の最期までを描いた道筋など、戦国時代を変わった趣で描いた戦国もの。少々目を背けたくなる場面にも出くわすが、数々のなぞがひとつひとつ解き明かされていくあたりは、ミステリー小説を読んでいる雰囲気でもある。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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血の城
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千世と与一郎の関ヶ原 | ||
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著者名 | 佐藤雅美 | |
出版社 | 講談社 | |
主な人物 | 細川忠隆、千世 | |
ひとこと | 細川忠興の長男であり明智光秀の甥にあたる与一郎忠隆。そして前田利家と正室まつの娘である千世。二人は天下人となった豊臣秀吉の仲立ちにより婚姻。そして仲睦まじい生活を送ることとなった。しかし歴史は残酷にも、二人の仲を引き裂く様に仕向けられていたのである。運命という名に翻弄される二人。天下分け目の決戦である関ヶ原前夜、そして新しい体勢が整う関ヶ原後、中世という時代に翻弄された、忠隆という武人、というよりも一人の男としての姿を描いていた作品。なかなかスポットが当たらない忠隆であるが、これを読む限り興味深い人物に仕上げられている。また歴史的な解釈をひとつひとつ、記録から掘り起こし斬新な内容も取り込まれており、予想以上の満足感を得ることが出来た。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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長宗我部元親 | ||
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著者名 | 近衛龍春 | |
出版社 | 講談社文庫 | |
主な人物 | 長宗我部元親 | |
ひとこと | 「姫若子」と呼ばれ、初陣に至っては当時としては二二歳という。長宗我部家の御曹司といえども、周囲からは厳しい視点で評価がされていたことであろう。それでも元親は信念を曲げずに、冷静な目で長宗我部家を、土佐国内をそして日本という国を俯瞰していた。大陸の「始皇帝」を祖とする長宗我部家。その血筋を宿命と感じていたのか、元親は土佐統一を試み、四国全土を制覇した暁には、日本を一つにという大望を抱き天下統一を目指すこととなる。知識不足であるためか、どうしても地名の位置関係を把握する事が困難な状況で読み続けた為か、読み終えた後も、モヤモヤ感が拭い払えなかった。しかし元親という四国統一を半ば達成し、中央への進出は拒まれながらも、地方の武将としての生き様を垣間見ることが出来る一冊であったかもしれない。もし土佐である高知県へ訪れる機会があれば、もう一度読み返してみるとまた違った感想が得られるかもしれない。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
Amazon で購入 :
長宗我部元親
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蝶の戦記(全二巻) | ||
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著者名 | 池波正太郎 | |
出版社 | 文藝春秋 | |
主な人物 | 於蝶、杉谷善住坊、上杉謙信 | |
ひとこと | 前に紹介した「忍びの風」の前編にあたる話。何も知らずに手に取ったため、順序が逆と成ってしまった。正しい順に読み進めればまた面白みも高まり、物語への思い入れも一層深まっただろう。しかし今回の事で「忍びの風」に登場する主人公である於蝶の過去を探るという視点、これもまた小説を読む楽しみの一つだと考えれば良い結果となる。さて本書のストーリーであるが、戦国時代に蔭ながら躍動する忍びの姿が描かれている。誰がこの乱世を沈めることができるのか。未来などと語る隙も与えられない混沌とした時代。今までの生活における価値観が崩れ、新しい世に向かおうとしていた時代でもあった。於蝶は杉谷忍びという、甲賀忍びの中でもとりわけ少人数の組織である。越後の上杉氏、近江六角氏や浅井氏など、諸国の大名に手を貸しているのだが、その結果は・・・読んでみてください。 | |
お薦め度 | ★★★★ | |
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梅雨将軍信長 | ||
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著者名 | 新田次郎 | |
出版社 | 角川文庫 | |
主な人物 | 織田信長,平手左京亮 | |
ひとこと | 織田信長という人物は,桶狭間の戦いでもって,今川義元という天下に尤も近かい武将を討ち取った。また長篠合戦においては,武田勝頼率いる武田騎馬軍団を鉄砲と新兵器を駆使して崩壊させた。それらの戦いに共通しているのは梅雨というキーワード。また本能寺の変で明智光秀に討たれてしまうのだが,これまた梅雨が一つの引き金となっている。気象庁に一時期席を置いたと言われる新田氏ならではの見解である。他に8編を収録した全部で9つの話が盛り込まれた短編集です。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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鉄砲三国志ー大阪の陣外伝ー | ||
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著者名 | 南原幹雄 | |
出版社 | 角川文庫 | |
主な人物 | 和田重友,庄平,後藤又兵衛 | |
ひとこと | 戦国時代,鉄砲の産地といえば堺や国友が真っ先に浮かんでくる。しかし他にも近江には国友の他に,日野という鉄砲開発拠点があった。同国内の国友や堺などと比べれば技術的に遅れた製法であり,世間からは「うどん張り」と蔑まされていた。世は関ヶ原の合戦前夜のこと,日野の鉄砲鍛冶らは,日野産の鉄砲を徳川家へ献上・。しかしそれを使用される事は無く蔵の中へ。それを伝え聞いた鉄砲鍛冶職人の和田重友は将来に危機感を抱き,新技術獲得の為に庄平を従えて諸国放浪の旅にでるという話。重友らの命をねらう刺客がでたり,後藤又兵衛との出会いなど,大阪の陣までを描いた歴史小説。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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鉄砲無頼伝 | ||
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著者名 | 津本 陽 | |
出版社 | 角川文庫 | |
主な人物 | 津田監物、おきた | |
ひとこと | 紀州の津田監物は、種子島へ鉄砲を買い付けに行く。手に入れた鉄砲を早速紀州にて大量生産し、日本で最初の鉄砲隊を形成。その力は足軽の十倍以上だろうか。傭兵集団として各地を転戦し、時には野党の群におそわれもする。自由人津田監物の物語です。 | |
お薦め度 | ★★★ | Amazon へ |
天駆け地徂く | ||
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著者名 | 嶋津義忠 | |
出版社 | 講談社文庫 | |
主な人物 | 服部三蔵、本多正純、お藍、徳川家康 | |
ひとこと | 組織の中で生きて行くのか、それとも一人の身となっても、己の信念を成し遂げるのか。服部半蔵に育てられた忍び者である服部三蔵。そして徳川家康の側近である本多正信の嫡男である本多正純。この二人の奇妙な友情を描いた忍者活劇。三蔵は忍の集団から一人抜けだし、単身で忍びの活動を続けることを心に誓うという信念を貫くことを誓った。そんな三蔵の行く手には、命を狙われる危機も身に迫る困難が待ち受けていた。一方の正純。家康の懐刀として出世を約束され、江戸幕府の中枢を座り、政治を司る位置にまで出世をしていた。それは主君である家康の胸中を読み解き、自らの信念を政治に反映させよう志を胸に秘めてのことであった。この三蔵と正純、二人の生き方が対比され、今日に伝わる歴史の「表」と「裏」の両面で活躍する両者が、心を通わせる展開になるのだが、これが新鮮な雰囲気を持っていた。これは忍者小説としても、時代小説としても、思いの外、楽しめてしった。 | |
お薦め度 | ★★★★ | |
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天駆け地徂く
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天正十年夏ノ記 | ||
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著者名 | 岳宏一郎 | |
出版社 | 講談社文庫 | |
主な人物 | 勧修寺晴豊、織田信長 | |
ひとこと | 織田信長という戦国時代を生き抜いた人物を、描いた作品は多々ある。信長自身を主人公として扱った物から、その家臣であった明智光秀や羽柴秀吉物。または敵対した勢力など。どこを主点として描くかにより、その人物像が大分、変化しているものである。この作品は主人公の勧修寺晴豊という公家を通して、信長の上洛後の京都の情勢、および朝廷側の立場に立って見た、織田信長という人物を描写しています。また公家社会の苦労なども書かれており、今まで知らなかった、当時の一面を読むこともできます。 | |
お薦め度 | ★★★★ | Amazon へ |
天下 家康伝(全二巻) | ||
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著者名 | 火坂 雅志 | |
出版社 | 日本経済出版社 | |
主な人物 | 徳川家康 | |
ひとこと |
江戸幕府を創設することとなる徳川家康。
三河での一向一揆による苦渋からはじまり、総仕上げとなる関ヶ原の直前までをの半生を描いた、火坂流の家康物語。 織田信長の様な革新性は無く、武田信玄の様に軍略にも長けておらず、また豊臣秀吉の様に人の懐に入り込む業も持ち合わせていない、凡庸な武将として描かれている家康。なぜ家康は戦国時代というサバイバルレースを生き抜くことが出来、天下という頂に辿り着けたのか。 信頼していた人に裏切られ、同盟者である筈の信長からは、家臣同様の扱いを受ける重圧。さらに隣国武田家から忍び寄る侵略の恐怖と戦いながらも成長し、天下へと歩む姿が描かれている。 また、著者が書きたいと思い込んだ部分に絞り込んだ為か、無駄が少なく脱線すること少なく読みやすい。これが展開の良さがとなり、物語に引き込まれてしまう要因かもしれない。 なお本書は、著者である火坂雅志氏の遺作となった作品である。 | |
お薦め度 | ★★★★ | |
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天下 家康伝 (上巻)
天下 家康伝 (下巻)
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天下城 | ||
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著者名 | 佐々木誠 | |
出版社 | 新潮文庫 | |
主な人物 | 市郎太,辰四郎,千草 | |
ひとこと | 永禄年間から天正年間にかけて大きく進歩したモノが,城の縄張りの仕方であろう。城の構造が「土」で囲む土塁から「石」を積む構造である石垣へ,「堀」についても「空堀」から水を引き入れた「水堀」に,そして見張りや倉庫といった単なる「櫓」から、権力者の象徴となる「天主」へと変貌していった。「天下城」では石積職人として,戦国という時代に翻弄された市郎太という人物を主人公に据えて語られている。元は信濃の豪族笠原氏の家臣。武田晴信に志賀城攻められ,甲斐の金山に送られ奴隷の様な生活。絶対に落ちない城を築くという信念を持つ。これが原点となり,三浦雪幹という兵法家と出会い諸国を巡り兵法家を目指す。しかし師匠の逝去後,近江の穴太でもって石積職人の親方に出会い人生が変わった。単なる石積職人から,城の石垣を積む技術者となり,天下無双の城の石垣を築くこととなる。 | |
お薦め度 | ★★★★ | |
Amazon で購入 : 天下城〈上〉 天下城〈下〉 |
天地人(全三巻) | ||
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著者名 | 火坂雅志 | |
出版社 | 日本放送出版協会 | |
主な人物 | 直江兼続、上杉景勝、お船 | |
ひとこと | 平成21(2009)年の大河ドラマ「天地人」の原作本。大河ドラマについての私見は避けるが、原作本だけあって内容は、ドラマそのままとなっている。主人公は直江兼続。上杉謙信の薫陶を受け、またその後継者として「義」を旗印に乱世を生き抜くという信念は持った武将。主君である上杉景勝と共に、越後上杉家を背負いながら、生き抜く若者達といった雰囲気だろうか。謙信の死後に勃発する後継者争い「御館の乱」を経て、豊臣秀吉による統一政権下に組み入れられる。やがては徳川家康との対決という時代の波に翻弄されてゆく姿が描かれている。そんな中で兼続の心境に変化が見られるのが、ちょうど「関ヶ原の合戦」の前後だろう。「義」を理想に掲げ、上杉家の舵取りをしていたが、現実を肌で感じとることで「義」という考え方を改めることになる。さて本作には架空の人物として初音という者が登場する。またその姉弟である真田幸村や、豊臣政権の筆頭奉行である石田三成とも兼続は親交を持つのだが、描写についてどうも中途半端な感じがしてしまうのは気のせいか。映像化することを前提にして書き下ろした作品では無いと思うが、ドラマ共々、残念な結果であったのが非常にもったいない。と勝手に思っているだけかもしれないが。しかし直江兼続という人物に脚光を浴びせた功績は十分あったと推察できる。 | |
お薦め度 | ★★ | |
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天地人〈上〉 天地人〈下〉
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天と地と(全五巻) | ||
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著者名 | 海音寺潮五郎 | |
出版社 | 角川文庫 | |
主な人物 | 上杉謙信・宇佐美定行・武田信玄 | |
ひとこと | 「天と地と」を読んだのは高校生の頃。歴史に興味を持ち始め、さらには本書を原作とした映画いが公開されるということで、手に取った記憶がある。この頃はちょっとした「天と地と」ブームだったのか、同名のゲームなども売り出されていたと記憶している。ちなみに本書は、上杉謙信、といっても作品中では上杉政虎として活躍する永禄四年の八幡原の戦いまでを描いている。関東管領上杉氏の名跡を継ぎ、名実共に関東の覇者を目指す政虎。そこに至までの波瀾万丈の半生を描いている。兄弟で家督を争い、家臣に裏切られ、領主の地位が嫌になり自ら出奔。結末は見えていても、読めば映画よりも楽しめる。ちなみに当時は文庫で全五冊であったが、現在では全三冊へと変更となっている。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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藤堂高虎 | ||
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著者名 | 徳永真一郎 | |
出版社 | PHP文庫 | |
主な人物 | 藤堂高虎、渡辺勘辺衛、徳川家康 | |
ひとこと | 織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康。戦国時代はこの3人によって収束して、太平の世への礎が築かれたことは間違いない。戦国時代を武将として生き抜いた者は大概、太平の世になると生きづらくなり、さらには徳川家に近くない者にとっては表舞台で脚光を浴びることなど不可能な時代であった。しかし戦国時代から徳川政権下になっても、家康から秀忠といった将軍から徳川家譜代と同等の扱いを受けた戦国武将がいた。それが藤堂高虎である。主をことあるごとに変え、難局を乗り越えていくいきぬきの術。姉川の戦いおいては、ただの一兵卒での出陣であったが、それから20数年を経ると、城持ち大名にまで大出世を遂げていた。本書は高虎の活躍場面を中心にした描いた作品であり、彼の人生に興味があれば一度読んでみてはどうだろうか。 | |
お薦め度 | ★★ | Amazon へ |
藤堂高虎 | ||
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著者名 | 高野 澄 | |
出版社 | 学研M文庫 | |
主な人物 | 藤堂高虎 | |
ひとこと | 江戸時代初期、まだ戦国の息吹が残っている頃、徳川家康にもっとも信頼されていた外様大名といえば藤堂高虎である。その信頼はどの様にして勝ち得たのだろうか。本書ではその出世話を、まだあどけない少年時代から順をおって描いている。高虎という人物を題材にした稀少な小説でもある。淡々と時代が進む様には、どうにも共感を得られる部分が少なく、余談がないのですらすら物語が進行していくのだが、何か物足りなさを感じてしまう。ただ高虎という人物の歴史を語るとき、その時に何をしていたのか、誰に仕えたていたのか、何処を料地として与えられていたのかは読み取ることができる。人物の軌跡を追った物語と考えれば納得もできるものかもしれない。 | |
お薦め度 | ★ | |
Amazon で購入 :藤堂高虎
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峠越え | ||
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著者名 | 伊東 潤 | |
出版社 | 講談社 | |
主な人物 | 徳川家康 | |
ひとこと |
徳川家康という武将は、実におもしろい人物だ。これが本書を読み終えた感想である。
人並み以上の腕力があるわけでも無く、知恵が泉のように湧き出てくるわけでもない。さらに家臣を惹きつけるカリスマを持ち、人心を束ねているわけでもない。家康自身も認める凡庸な武将だ。 物語は家康が、自身の過去を振りかえる回想から始まる。青春時代を駿河で人質生活を強いられた際、唯一の師匠でもあった太源雪斎とのやりとり。また織田信長との同盟関係を維持すべく、奮闘に耐え忍ぶ姿がまたおもしろい。 本書のメインとなるのは、信長が本能寺にて自刃した報を受けた家康の行動。後生に伝わる「伊賀越え」である。 謀略には謀略を用いて対抗し、自らの活路を切り開く。大きな壁が立ち塞ると、それを乗り越えて進まなければならい。まさに人生における山や谷、峠を無事に越えなければ成らない難所が多くある。それを乗り越えて手にしたのが、「征夷大将軍」となり江戸に幕府を開くという偉業だったのだろう。 単なる歴史小説としておくのはもったいない、歴史に興味の無くとも試しに手にとって頂きたい一冊だ。 | |
お薦め度 | ★★★★ | |
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峠越え
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遠く永い夢(全二巻) | ||
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著者名 | 茶屋二郎 | |
出版社 | 日新報道 | |
主な人物 | 徳川家康、明智光秀、石田三成 | |
ひとこと | なんと言うのでしょうか、一言でいえばサクサクと読み進める事のできる作品です。時間が許せば一日中読んでしまいそうです。さて物語ですが、天下の覇権が織田信長から徳川家康に移る過程を、描いている様に思われました。信長が天下布武の途中で光秀によって本能寺にて討たれ、その光秀も秀吉によって、山崎の合戦にて破れる。その秀吉の志を受け継ぐかたちの石田三成と、戦国の生き残り徳川家康が、関ヶ原にて最後の合戦に夢を賭けて挑む。至る所に良く知るエピソードも交えてあるので、歴史小説になじみの無い人にもお勧めです。 | |
お薦め度 | ★★★★ | |
Amazon で購入 : 遠く永い夢〈上〉 遠く永い夢〈下〉 |
独眼龍政宗(全二巻) | ||
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著者名 | 津本 陽 | |
出版社 | 文芸春秋 | |
主な人物 | 伊達政宗 | |
ひとこと | 戦国末期の東北の英雄、伊達政宗の生涯を綴った物語。苦労に苦労をかさね、奥州の大半を平定。しかし中央へ進出する機会を失い、天下は秀吉の手の内に入ってしまう。秀吉政権・徳川政権下にて耐えた、正宗の半生をよんでみてください。 | |
お薦め度 | ★★ | Amazon へ |
独眼竜政宗(全二巻) | ||
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著者名 | 早乙女貢 | |
出版社 | 講談社文庫 | |
主な人物 | 伊達政宗、伊達成実、片倉小十郎 | |
ひとこと | 奥州制覇に挑んだ伊達政宗。伊達輝宗の嫡男として生まれた政宗の半生の物語です。幼少期に疱瘡を煩い片眼を失い、家督を相続すると、父が敵方に捕らわれるという惨事。東北の戦国乱世を伊達政宗を中心として、伊達家家臣、伊達家の血族、さらには戦国武将など様々な挿話を交えながら描かれた作品です。 | |
お薦め度 | ★★★★ | Amazonへ |
利家とまつ(全二巻) | ||
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著者名 | 竹山 洋 | |
出版社 | NHK出版 | |
主な人物 | 前田利家、まつ | |
ひとこと | 2002年NHK大河ドラマの原作本です。小説として読むと、少々物足りなさを感じますが、ドラマの原作本だと割り切れば、楽しめる作品ではないだろうか。加賀百万石の祖となった前田利家とそれを支えた妻のまつ。さらに織田家中における同僚でありライバル、そして後の世に天下人となった羽柴秀吉。もちろん主君である信長との対峙。大河ドラマと同様に歴史ホームドラマとした内容である。日曜の夜八時が待ち遠しかった人は、是非読んでみる事をおすすめします。ただ原作よりはドラマの方が愉しめてしまう。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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徳川四天王 | ||
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著者名 | 南原幹雄 | |
出版社 | 角川文庫 | |
主な人物 | 本多忠勝,榊原康政,井伊直政,酒井忠次,徳川家康 | |
ひとこと | 徳川家には数多の才能に秀でた家臣が存在していた。特に酒井忠次,榊原康政,井伊直正,そして本多忠勝。彼ら四人は「徳川四天王」と呼ばれるほどの重鎮であった。彼らの活躍を描いた作品と思い込み読み始めたのだが,ちょっと期待はずれに終わってしまったことをまずは書いておこう。物語は桶狭間の合戦前からはじまる。まだ徳川家康が松平元康と名乗っており,今川家の人質として生活を強いられていた頃だ。中心人物となるのは徳川四天王の一人である本多忠勝。忠勝を軸にして徳川家の守り神の様に集う,小平太こと榊原康政と万千代こと井伊直政。彼らにも活躍の場が与えられるはずであった。しかしここで語られるのは躍動する忠勝が大部分。さらにひょんなことから徳川家に肩入れする様になった鈴鹿の群盗一味。特に前半では忠勝とこの鈴鹿の群盗の活躍に終始しており,彼らが徳川家を支えているとでも訴えている様に思えてしまった。後半になると他の武将等の活躍も所々に描かれるのであるが,時を逸した感は否めない。忠勝の活躍を読みたい人にはお勧めしたい作品である。 | |
お薦め度 | ★★ | |
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豊臣秀長−ある補佐役の生涯−(全二巻) | ||
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著者名 | 堺屋太一 | |
出版社 | 文春文庫 | |
主な人物 | 豊臣秀長,豊臣秀吉 | |
ひとこと | あるお人とは豊臣秀吉。この秀吉の補佐官として,天下を掌握した人物こそが実弟の秀長である。作中で著者も記しているが,資料が今の世に残されていないとか。そんな彼を主人公に据えた小説である。残念なのは彼が生き抜いた戦国時代の説明で,話の大半が割かれており少々落胆してしまった。しかし豊臣秀長を扱った数少く,そして彼の偉大さを伺い知ることのできる一冊として楽しませてもらいました。 | |
お薦め度 | ★★★ | |
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