試合レポート

 
第13節 7月7日 横浜マリノス対磐田 横浜国際競技場


 この日ほど90分の引き分けがあればと思ったことはない。

 七夕の夜、願いの書かれた短冊が笹に飾られ、マリノス側のゴール裏はサポーターでいっぱい。競技場全体を見回しても、Jリーグの試合にしてはたいそうな入りだ。その人達が何を見に来たかは考えないことにした。「ぼろ負けしなければいい」という意見もある中、私は漠然と「負けはしないのでは」という希望に基づいた予感を持ちながらゲームの始まりを待つ。練習中は笑顔を見せる能活だが、さすがにこの日は表情が崩れない。

 7時5分、キックオフ。まずマリノスの布陣を確かめるが、よくわからない。トップ下無しの3ボランチ?まあいい、システムなんて何の意味もないと始まってすぐわかる。中盤でプレスがかからない。ボールに行っていない訳ではなく、ジュビロの選手ほとんどがワンタッチでボールを出すので、後手後手に回って追いつけない。本当に、ジュビロはボールを回していろと言われればいつまででも回しているだろう。それに対してマリノスはあまりにも遅い。パススピードも判断も。その上単純なミスのオンパレード。下に行くほど上手いと言われている若い世代の子達にしても。それが集中力の無さから来るのか基本技術の問題か、私にはわからないが。

 そもそもユース年代の選手が3人もスタメンに入っていること自体がおかしい。確かに彼らは才能を持っているけれど、それは見習うべき先輩がピッチに居てこそ伸ばせる物だ。見本もないのにただがんばれと言っても無理だろう。ジュビロの高原が良い例だ。中山というプロ根性の権化のような先輩が居るからこそ、あそこまで伸びたのではないか。

 この日のマリノスの選手達からは、気持ちを感じることが出来た。いかんせん、技術が無さ過ぎる。FKやCKをもらっても、それを決められるだけの選手がいない。止まっているボールを、誰にも邪魔されず蹴ることが出来るのだから、もう少し正確に蹴れないのかと文句の一つも言いたくなる。技術というのは練習すれば向上する物ではないのだろうか?

 終始ジュビロのペースで進んでいた試合の、均衡が崩れたのは30分過ぎ。何度かしのいできたCKを、ついに決められる。至近距離からのヘディングに、さすがの能活も反応しきれず。それでも今までほど“がっくり”という感じでもなく、その後の攻撃を必至にくい止める。能活が大岩に頭を蹴られうずくまったときには、血の気が引いた。首の後ろあたりを押さえていたので、脳しんとうでは無いだろうと思ったけれど。後にビデオで見たところによると、蹴られたのは額だから、むち打ちのような感じかもしれない。それでも、立ち上がるなりフィールドの選手に檄を飛ばしていた。前半は0−1のまま終了。

 後半マリノスは選手交代無し。そうかあ、誰も代えないか。まあここで代えて良くなるようなら、最初からその選手を使ってるよね、とも思う。それでも後半20分を過ぎるとカードを2枚切ってきた。田中を平間に、石川を木島に。すると少し攻撃にリズムが出てきたようで、38分、結果的には相手のオウンゴールだったが、とにかくジュビロ側のゴールネットが揺れる。もう、サポータ−は大騒ぎ。私もメモを取っていたのだが、そんな物はどうでも良くなり、ただひたすら試合の行方を見つめる。がぜんマリノスは勢いづくも、それだけでは得点は生まれずとうとう延長戦へ。

 休憩の時間、能活は一人一人の選手に声をかけ、胸をたたき、頬に手を当て、励ましていた。それを見て胸が熱くなった。控えもスタッフも全員で円陣を組んだとき、きっと勝てると思った。・・・・・けれど私の予感は当たらなかった。せっかく藤田のシュートを、能活が素晴らしい反応で止めたのに、その何分か後にフリーの高原に決められて。私はその瞬間席を立った。喜ぶジュビロなど見たくもない。それ以上に、悔しさにゆがむ能活の顔も。

  Vゴールのシーンは、容赦なく繰り返し放映される。たとえ「あんなの誰にも止められない」と本人が言うゴールであろうと、能活の失点シーンとして映るのだ。考えてみれば、コンフェデ杯のような場合は別にして、リーグ戦でのキ−パーは失点シーン以外映ることはほとんどない。それを見た一般人やよそのサポーターからは「マリノスでは良くないよね」と言われる。下手をするとマリノスのサポーターからさえも。タフでなければやってられないのは、GKだけではない、GKのファンもしかりなのである。

 13節で優勝が決まったせいで、残り2試合は消化試合となった。もちろんマリノスはそんなことを言っていられる立場にはない。是が非でも勝ち点を取っておかないと、本当にJ2落ちも考えられる。もっとも私は単純に川口能活のファンなので、どこに行っても彼を応援するだけだ。そういう姿勢を非難する人もいるようだが、私は別に「真のサポーター」になりたいわけではない。“チーム”という、選手も監督も戦術もホームタウンでさえも変わることのある、不確定な物を応援し続ける精神は持ち合わせていないから。本当は海外に行ってくれれば一番良いのだけれどと思いつつ、次節も横浜国際に足を向ける私である。

          
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