試合レポート


 
第1節・3月11日 横浜マリノス対FC東京 横浜国際競技場


 春と言うにはまだ寒い曇り空下、2000年のJリーグ、開幕である。
5時半にはサポーターの応援が始まった。ホーム側のゴール裏は、結構人が入っている。アウェイ側、FC東京のサポーターは人数こそ少ないが声が揃っていて良く通る。ただし一般のお客さんは少なそう。観客は21841人だった。6時にマリノスの選手全員がスクリーンで紹介され、横浜市長の挨拶が。その時わざわざ“都知事コール”をする、FC東京のサポーターのセンスは理解しがたい。

 川口選手が出てきたのは6時18分、今シーズンの練習着は水色だ。ヘッドコーチは出てきたがボールを蹴るのはサブに入った榎本。高校のクラブ活動じゃないんだから。マリノスに入ると、キーパーコーチの修行も出来るようだ。だが、能活はいたって機嫌がよさそう。最後にバックパスの処理の練習をして引き上げていった。フィールドの選手の練習はなし。先発メンバーは、以下のとおり。

 川口・小村・松田・波戸・上野・三浦・遠藤・中村・永井・柳・マルドナード
 サブ  榎本・大橋・吉田・岡山・井手口

 レーザー光線と花火のあと選手入場。能活の新しいユニホームは黒づくめだ。円陣を組んだ後ピッチに散る選手達、松田がDF陣に気合を入れる。この試合にかける意気込みが伝わってきた。
7時4分、キックオフ。試合開始からマリノスは中盤でプレッシャーをかけるが、どうも人が重なる。味方同士ぶつかったり。そしてボールを奪っても、なかなかゴール前までそれを運べない。期待の俊輔がボールを持つと、2人3人と敵が寄ってくる。始めは久しぶりの試合で楽しそうだった能活も、あまりの責め手のなさにもどかしそうだ。アルディレスはパスを繋ぐサッカーを目指しているそうだが、それはどこ?という感じ。

 東京は責めさせるだけ責めさせて、最後の5分で攻撃という戦法らしい。前半の終わり近くに、コーナーキックを直接キャッチしたのが、能活の唯一の見せ場だろうか。その前のシーンで、3人付いていながらセンタリングを上げられたときは、怒っていたが。マリノスもシュートらしいシュートは、俊輔のループ気味のものだけだった。あまり見せ場の無いまま、前半終了。引き上げてくる能活の顔は、当然不満そうだった。


 後半も、ボールキープ率は高いが、相変わらずシュートまで行かない。10分ようやくいい形からゴール前に持っていき、こぼれ球に後ろから永井が飛び込むも、シュートはワクからはずれてしまう。振り返ってみれば、これが唯一最大のチャンスだった。スペースに走り込む動きがないから、DFをはずせない。たまにパスが繋がっても狭い地域でばかり、ピッチはあんなに広いのに。結局は相手にはじき返されてしまう。そんなもどかしさからか、能活はFWの足元に飛び込んでセーブしたボールを素早くフィードするが、長すぎて外に出てしまい顔を覆う。東京の選手交代の時には、味方の後ろで吠えていた。

 去年はファウルの多さが自分たちの首を絞めたマリノスだが、アルディレスが来たからと言ってすぐにそれが減るとは思えない。そして結局はそのファウルが試合を決めた。これは延長戦かと思い始めた後半40分、上野選手が相手を倒してしまう。能活にとっては最大の見せ場だったけれど、あっさり決められた。取れる気はしなかったが、取られる気もしなかった点が、そんな形で入ったのだ。今までと同じように、失点するといきなり攻撃のテンポが上がる。だがロスタイムを合わせても残り9分、コーナーキックも俊輔のドリブルからのシュートも松田の最前線への上がりも功を奏さず、PKによる1点がこの試合両チームを通じて唯一の点ということになった。

 終了後、DFの選手を労う能活は、一人東京の選手と挨拶をしていた。顔を下に向け歩く仲間たちを促して、メインスタンドへ。攻守に渡って気を吐いていた松田が一人先に引っ込んでしまったのは、よほど悔しかったからだろうか。退場ゲートに向かう選手達に、去年から何も変わっていないことに対する不満か、ブーイングが浴びせられる。横浜マリノスの開幕戦は、0−1で敗戦となった。

 負けたものは仕方がない。15分の1と割り切って、切り替えてもらいたい。しかし15日には日本代表の試合があるため、攻撃の中心となる俊輔をそちらにとられてしまって練習が出来ないのだ。次の相手は昨年セカンドステージ優勝の清水だというのに。前途多難なスタートではある。

          
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