強い風で雲の吹き払われた空の下、競技場に向かう。寒いけれど陽射しは暖かかったので、いつもの席ではなくバックスタンドに近い日向に席を取る。ピッチでは神戸と横浜の外国人クラブが試合をしていた。30分ちょうどに選手登場、客席もゴール裏はいっぱいになってきた。開幕戦とあってマスコミも多い。先発紹介のアナウンス、俊輔で黄色い声が飛ぶのにはもう慣れたが、田原にも「きゃー」という声が飛んでいて、ちょっとびっくり。試合前には市長からの花束などもあり、4時4分、キックオフの笛が鳴る。
この日の先発平均年齢は22歳とちょっと。若いチームになったものだ。前半20分まではその若さがイキの良さとなって、見る者をワクワクさせてくれた。石川のスピードに驚き、走り回る田中に手をたたき、木島のドリブルに声を上げ。久しぶりに“動くマリノス”を見た気がして。だがそれも25分頃までだった。小さなミスがでて、停滞し始める。次第に神戸の時間に。それでも能活が蹴ったキックを城が落とし俊輔の足元に行ったときは「決まった!」と思ったものだが、ループシュートに見えたそれは、相手DFのクリアだった。その後も、木島のシュートが味方に当たったり。このあたりで点を取っておかなかったことが、後になって響いてくる。
DFにとりたてた破綻はなかった。例によって松田が上がったまま帰った来なかったりはするものの、日本代表候補にもなった波戸や新キャプテン小村がしっかりあとを守る。能活の仕事はキックの方が多かったような。前半の終わり頃にはさしたる攻撃も見られず、石川が消えていた。0−0のまま、前半は終了する。
後半外池が入ってきて、驚いた。ワントップでいくのではなかったのか?消えていたとはいえ石川ももう少し見たかったし。そして心配していたことが起こる。前にボールが入らず、俊輔が下がり気味で、右に回った木島はミスが目立ち初め、すべてがチクハグに。能活の叫びがだんだん多くなってくる。俊輔のいらだちが遠目にも明らかだ。その彼もまたボールを持ちすぎて取られたりする。いつもいつも思うけど、素人でも考える「俊輔が持ったらとりあえず前に走る」ということがどうして出来ないのだろう?期待の新人・田原が入っても事態は変わらず、ついに0−0のまま延長へ。
幕切れはあっけなかった。田原が相手キーパーと1対1のシュートを止められるという大きなチャンスを逃した後、気がつくとマリノスのゴール前にボールが運ばれ、能活が対峙していたもののシュートを打たれる。ボールは頼りなげにころころと転がり、ポストに当たるとゴールに入っていった。選手の一部は何かを審判に言っていたが、オフサイドもファウルもない。ゴールはゴール。マリノスは開幕戦で、延長負けをしたのだ。サポーター席はその瞬間凍ってしまった。少なくとも私の座ったあたりでは、選手が挨拶に来たって、拍手もブーイングもない。覚えているのは、能活が若い田中に声をかけていたことくらいだ。ただの15分の1ではすまされない重苦しさを抱えて、競技場を後にした。
次にマリノスが横浜国際に戻ってくるのは4月7日、約1ヶ月先のことだ。アウェイで連勝して帰ってくることを、サポーターとしては信じるしかない。
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