試合レポート


 
最終節・5月27日 横浜マリノス対ジェフ市原 国立競技場


 前節雨の三ツ沢で心までびしょ濡れになって、それでも可能性のある限りはしっかり戦って欲しいと、25日には様子を見に練習場まで足を運んだ。その人が来ると勝率が悪くなる“彼”は、今欧州に居るはず、つまり絶対国立には来ない。今朝の夢では、川崎FがC大阪から点を奪っている。正夢になることを祈りつつ、国立競技場へ。予定より早く到着したマリノス側の席には、結構たくさんのサポーターが来ている。私の座ったまわりには、どちらかの熱心なサポーターというよりは、サッカーが好きで見に来たという感じの人達が多かった。夜から雨の予報だが、何とか試合終了まで持って欲しい。前節の二の舞はご免だ。

 2時半過ぎ全員一緒に登場、練習が始まった。わき上がる能活コール、そして順番にフィールドの選手の名が。先発の発表では、アウェイチームにもかかわらずオーロラビジョンに写真も出て、声援はホームチームよりも多い。いったん引っ込んだ選手が再登場、ゴールが交代になり相手GK下川とタッチしながら移動した能活は、ジェフサポーターの前に行ってしまった。でも大丈夫、どちら側にいったってゴールポストは能活の味方。キックオフは3時ちょうど、長居競技場でもC大阪対川崎Fが始まっているはずだ。

 今日のマリノスはコンビネーションの悪さが目立つ。本来ボランチの遠藤が出場停止の三浦に代わって左サイドに、空いたボランチのところに原田が入っているせいだろうか。いや、それだけではなさそうだ。俊輔から外池、上野から永山といったパスも上手く渡らない。前節に続き、今節もプレッシャーのせいか動きがぎごちない。例えば俊輔がボールを持てば、いいパスが来るのだから、それを信じてゴール前に走り込むことがなぜできないのだろう。それでも1点目は俊輔からの短いパスを、エジミウソンが上手く決めてくれた。後半の2点目も起点は俊輔、外池との見事なワンツーが決まって遠藤のゴール。

 能活はいつも以上に気合が入っていた。最初から声を張り上げ前の選手を鼓舞する。1点入っても、喜んでいないで早く次を始めるよう促す。時には皆を落ち着かせるよう、イエローぎりぎりの時間稼ぎをする。いわゆる“ファインセーブ”というのはそれほど多くはなかったが、ハイボールは確実にキャッチ、相手選手と交錯しながらのパンチングは一歩も譲らず、相手が倒れても能活はすぐ立ち上がりプレイを続ける。絶対にゴールを割らせないんだというオーラが、ポストまでも味方にする。その結果が、久しぶりの完封となった。

 この試合、私の目に付いたのは上野である。真ん中でボールを捌いていたと思えば上がってゴール前に顔を出す。タイミングを計ってパスカットをしたり、DFのカバーをしたり。実を言うと私は、彼の良さがこれまでわからなかった。気合が顔に出る選手ではないし。だが、今日ばかりは彼の“頑張り”を感じたのだ。もちろん他にも、貴重な追加点を上げた遠藤、松田が退場した後に入ってDFをした岡山などもいい仕事をしていたし。マリノスは最低限の条件、すなわち“2点差以上で勝つ”はクリアしたわけだ。

 試合が終了して能活が榎本と抱き合ったとき、胸に迫るものがあった。GKコーチが居ないなか、試合前の練習を2人でしているのを見て、これでは高校サッカーのようではないかと思ったものだ。勝っているときは良くても、負けたり失点が多かったときに、キーパーの心を支えてくれるコーチが居なくて大丈夫なのかと不安に感じて。しかしそれは杞憂というものだった。今まで孤立してキーパーだけでしていた練習を、フィールドの選手とずっと一緒にすることで、改めて11人の中の1人という自覚を産んだようだ。それでもキーパーにしかわからない気持ちもあるだろうから、2人の姿に心が動いたのだ。

 そしてここからが長かった。延長に入った長居の試合をみんなで待つ。選手の中にはじっとオーロラビジョンを見入っているもの、見ていられないのか後ろを向いているもの。能活は正面を向いて座りながらも、後ろを向いたりうつ伏せになったり。接触プレイで痛めたのだろう、腰の左側あたりのアイシングが激闘の後を物語る。サポーターからはフロンターレ・コール。よそのチームをこんなに応援したことはない。

 やがてみんなの祈りが通じたのか、川崎FがVゴール!ここからはもう、選手・スタッフ・報道陣入り乱れての大騒ぎ。なかでも監督の胴上げが胸に残った。ラジオ番組で「アルディレスを男にしたい」と言っていた能活。その望みが叶ったのだ。実際、戦力は整いながらチームとして機能していなかったマリノスを、よその負けに助けられたとはいえ優勝に導いたのは、他ならぬ彼だ。ボロボロに負けても、次に必ず修正してくる。今までにはなかったこと。まだまだ内容の伴わない勝ちが多いが、監督が求め続ける限り、選手はそれに応えようと成長をしていくだろう。

 今日一番嬉しかったのは、チャンピオンシップへの出場権を得たことだ。それに勝ち、アジアのクラブチームとの戦いに勝ち、世界クラブ選手権に出ることが能活の夢。その彼を応援しにどこまでも行くのが、私の夢。もちろん、セカンドステージも優勝して、CSを戦うことなくリーグを制覇してくれてもいっこうにかまわないが。代表選手は休む暇なく遠征に出かけることになる。こと代表に関しては、最近ストレスが溜まるばかりだが、今日だけは幸せな気分の中でゆっくり眠り、すっきりした気持ちでモロッコに向かって欲しい。

          
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